
第34期順位戦A級 最終節
最終節観戦記:佐藤 文彦(1日目)・山本 裕司(2日目)
この観戦記を依頼されたのが、前日の12月13日のこと。101には興味があるし、前日の依頼ということは相当困っているんだろうと思うとともに、日ごろ世話になっている平井編集長からの依頼ということもあり、安請け合いしてしまった。
当日、朝起きてから対局室に到着するまで、何を中心に書けばいいのだろうという中途半端な気持ちのまま、対局室に来てしまった。
対局前、平井さんも対局するにもかかわらず、観戦記のポイントを聞いてしまった。迷惑だろうなとは思いながらも・・・。
しかし、平然と答えてくれた。冗談を交えながら。
「ため息ランキングとか、強打ランキングでいいんじゃない?」
これは、他団体への皮肉ではなく、少々緊張気味に見える私の緊張をほぐすために言ってくれたんだと思う。続けて、
「小川を追って、こけてから(何に焦点をあてるか)考えればいいんじゃない?」
暖かさを感じた。
ということで、現在トップ目の小川選手を追うつもりで、本日3回卓につくB卓を中心にレポートすることとした。
◆◆◆ 29回戦B卓 ◆◆◆
〈小川5昇・村田1昇・平井△2・安田△2〉
小川はこの時点で2位に3昇差つける1位、平井・安田はそれぞれ8人中の7位・8位である。今期のA級は同点トップ・ラス無しなどが4回もあり、平井は期首順位の関係で0まで戻せば降級はほぼありえないが、安田は0でもまさかの降級がある。とはいえ、マイナスは少しでも早く減らしておきたいところだ。
東1局その1、開局は抑え目にいくというタイプと、状態がわからないから目いっぱい行くタイプ、また、そのようなことはお構いなしのデジタルな打ち手がいるかと思うが、小川・平井という開局からでも全開と私が見立てている面子がいるので、静かな立ち上がりにはなりにくいんだろうな、と思っていた。
そこにオヤの小川がもらった配牌が良い。













































そこに次巡、11巡目に役無しの次のテンパイを果たした平井が































東1局その2、簡単にアガリを拾えた小川ではあったが、まだ固さが取れないのか、チョンチョンの牌を取る手が震えているようだ。
配牌が飛びぬけて良かったのが安田である。
































東2局その1、全員の配牌が重い中、オヤの村田と南家の平井が懸命に手を作る。















































東2局その2、昇争いの上位2人が点棒を持ってしまっているこの状況を、下位陣が面白かろうはずもない。ここで平井が奮起する。もらった配牌が良い。















ツモもかみ合い、15巡目に20・40をツモり上がる。これには安田が目をむいた。ここまで、平井だけには放銃しないようにケアして打っていたように見えたが、よもやのラス目を押し付けられてしまった。
東3局【牌譜1】、オヤの平井が牌山と格闘する中、がっぷりと組んで戦っていたのが小川と村田である。
小川は配牌からピンズのイッツーが見える手を、そのまま育てていく。村田はピンズ7枚ある配牌から、ツモに従って手を育てる。オヤの平井は少し遅い手で、配牌暗刻2つと対子1つの手がなかなか進まない。ドラのがポツンと1枚あるのも、手の成長の厳しさを物語っているようだ。安田はソウズの一通が見えるものの、ペンチャンが2つあり、手は遠そうだ。
テンパイは小川が一番乗り。11巡目に出来合いのピンズイッツーのピンフをテンパイする。ワンズ2枚以外がすべてピンズではあるが、さすがにワンズは払わないだろう。対する村田は13巡目にこっそりとピンズのホンイチチートイツをテンパイするが、ドラの単騎。ツモるしかないような形である。平井は直後に





















結果は、16巡目にション牌の


東4局、オヤの安田は遠くに下のサンショクが見える形、南家の小川は遠くに上のサンショクが見える、村田はトイツ4つもらう配牌の中、平井だけは少し遠い。
しかし平井はツモにも恵まれ、自風の



しかし、よくアガリの出る半荘である。
南1局(小川119→平井04→村田23→安田)【牌譜2】、この局は、初めて牌山の積み直しがでた。東場が終わっただけとはいえ、精神的な疲労が出てきたのであろう。
見ていると、ここら辺から平井の様子がおかしい、と思えるようになってきた。平井は8巡目に



南2局【牌譜3】、テンパイ1番乗りが安田。9巡目にイーペイコウのみの単騎待ちに受けていた。小川はこれを察知していたのか、8巡目からオリに回っている。10巡目に持ってきた






























南3局(小川09→平井137→安田07→村田)、前局のリーチ棒のせいでラスに落ちてしまった村田は、この局はアガリたいところ。配牌に4つトイツがある。チートイツに向かうであろうが、この半荘、実に4回目のチートイツである。その村田は5巡目にチートイツをテンパイするが、7巡目にドラ


















南4局(小川03→村田36→平井107→安田)、前局のアガリで後がなくなった安田は前に出るしかない。村田は名翔位を目指すにはトップをとりたい。小川にラスを押し付けるのは、ここからではさすがに難しいだろう。平井も降級を免れるためにはトップが欲しい。皆が前に来るであろう展開が予想され、小川はやりにくいだろうなと思っていた。
案の定、村田は2巡目にオヤの安田から切られた

決着はすぐに着いた。村田が2軒リーチに対して、両者にきついと思われる

◆◆◆ 30回戦B卓 ◆◆◆
〈田中2昇・平井△2・愛澤3昇・小川5昇〉
東1局・2局ともテンパイには結びつくがアガリが出ない膠着状態が続く。が、見ていると、平井・愛澤のアクションが大きいように思える。1半荘終えて、愛澤は1位の小川との差が広がってしまったことが心に残っているのだろうか、また、平井はトップが見えるところまで迫りつつも逃したことが心残りなのだろうか。
東3局に場が動く【牌譜4】。





















すると、小川が4巡目に







東4局は降級ポジションから早めに抜け出したい平井がテンパイするものの、流局。
南1局【牌譜5】、最終手番で愛澤が平井に12の放銃。前に出ていたわけでもないのに、これにはびっくりした。オヤの田中のケアをしたとは思えるが・・・。というのも、ドラ

南2局その1、前局田中の立ち回りのゆえに愛澤の放銃が生まれた。この局はその田中が、狙い通りのサンショクドラ1をテンパイしたが、前巡にタンヤオで先にテンパイしていたオヤの平井に18を放銃してしまう。
南2局その2は、現在ラス目の愛澤がドラそばのカン

南3局、田中と100点差の愛澤のオヤ番であるが、このオヤ番はものにしたかったのか、私のイメージとは違う、なんとも中途半端な放銃を田中にしてしまった。愛澤→田中12。
南4局(小川05→平井36→田中25→愛澤)【牌譜6】、この局は、降級ポジションから逃れたい平井が積極的に仕掛ける。5巡目に田中からペンチャンの





この



2巡後田中はその



平井は二軒リーチに対して、4巡ほど押すものの、自分の河に2枚捨てられている

◆◆◆ 31回戦B卓 ◆◆◆
〈堀川△1・安田△3・平井△2・愛澤2昇〉
降級可能性のある下位3人の同卓となった。最下位の安田は何としてもトップを取って、さらに堀川・平井のどちらかにラスを押し付けたいところであろう。堀川にしても平井にしても、借金はなるべく早く返済したいところ。唯一プラスの愛澤は、最大6昇のところから前節と今節で、昇をここまで減らしてしまった。下位陣には足元をすくわれたくないところであろう。
東1局【牌譜7】
































実際は、



しかし、この

もしこの局の安田の進行が、ドラをトイツにしてのリーチであったら、堀川の打牌は変わったのだろうか。この局が違った一局となれば、この半荘が違ったものとなったはずであり、興味が尽きない。
東2局、この局は愛澤が軽い手をものにする。






























東3局(愛澤08→安田12→平井16→堀川)、29回戦・30回戦ともトップを取れていてもおかしくないようなところで、トップを逃している平井は、このオヤ番はものにしたいところ。8巡目にリーチをかける。

































東4局(愛澤06→堀川02→安田26→平井)、オヤを流されてしまった平井であったが、この局も早いテンパイを組む。6巡目に役なしのテンパイを取り、3巡後に両面に変化しピンフが付くとそのままヤミテン続行。11巡目に一手変わりサンショクをテンパイしたオヤの愛澤のテンパイ打牌を咎める(12)。
南1局(堀川02→安田04→愛澤10→平井)【牌譜8】、5巡目の安田の手牌が次の通り。
















9巡目に次のテンパイ。













南2局【牌譜9】、ここまでの闘牌を見ていて、何か違和感を得ていた。それがはっきりしたのがこの局であった。違和感の原因は、安田の間の取り方。他の方の間の取り方は、少なくとも私には理解できる範疇のものであったが、特にこの局の安田のそれは理解できないものであった。
具体的には14巡目である。



















ツモ切るんだろうな、と思っていたのに、予想をはるかに超える長考は、ただ悩んでいるだけにしか見えない。シロートの私でも、配牌をもらってから打牌するまでにいくつかのことを考える。配牌から最終形を想定した手牌・手役構想、他家の打牌からの牌の残り方と打牌の推理など。それらを考えながら準備しながら打ち進めている。一般の方も同じだと思う。が、安田の長考には、自分の手牌と河を鑑みての推理、という気配が感じられず、本当にただ目の前の手牌をどのように処理するかだけに悩んでいるようにしか映らない。ここまでの進行を見ていて、この手を成就させることはできないという判断を後ろで見ていた私はしていたが、安田はアガるつもりがあったのだろうか。
制限時間のない中での闘牌だから、どれくらい時間を使っても良いとでも思っていたのだろうか。内にこもった愛好会であるならば、どのような行為でも許されるだろうが、不特定多数の方々に観戦記を配信したり外向けにも配慮しているのであれば、無駄に時間を使うというのは好ましくない行為である。この長考は、順位戦A級選手という麻雀のアスリートの行為として、私には、はなはだ遺憾なものであった。
ただ、「牌流ドライバー」という連載がかつての101マガジンにあったが、あそこまでの深い思索があれば話は変わってくると思う。また、同じA級選手の中には、1巡目からのツモ捨てを思い出しながら他家の手牌を推理し、自分の打牌で他家を動かそうとしているのではないか、と思える方もいる。大変申し訳ないが、安田選手はまだそこまでに至っていないと思うし、ここではただ、準備不足を露呈してしまったに過ぎないと思う。安田選手を強く応援していた私としては、スペースを取ってでも言わずにはいられない。
結果として、安田は

南3局(愛澤31→安田05→堀川09→平井)、僅差で迎えたこの局は、平井がものすごい勢いで攻めているように見える。平井の14巡目のション牌

南4局、オヤの愛澤は、手なりでも60のアガリになりそうな配牌とツモを得たが、役満でもツモられない限りラス落ちしない点差となれば無理はせず、安全牌を集めながら余裕の手牌進行。安田も放銃さえ回避すればラスは無い。トップは欲しい局面ではあるが、ラス落ちリスクとトップ取りを天秤にかけ、ツモにも恵まれず安全な打ち回し。堀川は、チャンタとコクシを遠くに見ながら打ち進めるが、途中からオリに回る。唯一、アガらないとラス抜けできない平井が前に出るが、唯一テンパイまで漕ぎつけることができるのが、手順を無視したチートイツではノーチャンスと言えるであろう。この局も流局となる。
29回戦・30回戦とトップが見えながらも手にできず、31回戦は、降級が現実味を帯びる痛恨のラスを引かされた平井には、あの大きな体が一回り小さくなったようなそんな印象を受けるような敗戦であったろう。
◆◆◆ 32回戦A卓 ◆◆◆
〈平井△3・村田2昇・成岡△1・愛澤3昇〉
あまりにも大きなショックを受けているように思えた平井が気になったので、この半荘だけ、遠くからアガリが出た時だけ見たものをレポートしたい。
東1局、成岡が明るい声で声高に「ロン、2,000点」。振り込んだのは、と見ると平井である。一回り小さくなった平井の体が、また小さくなったように見えた。
東2局(成岡20→村田・愛澤20→平井)、またも成岡の出アガリの声。申告は「12,000点」。チョーマを支払うのは村田である。村田・平井ともに暗い顔となる。振り込んだ村田は当たり前だが、ここでトップを取れないと後がなくなりそうな平井もショックなアガリであっただろう。後日聞いた話だが、平井はこの牌姿を確認できずに16000だと思ったと語っており、精神状態が平静ではなかったと思われる。
東3局(成岡140→愛澤20→平井100→村田)、この局のロンの声は平井。申告も8000。振り込んだのは何と成岡。牌譜を見るとドラのWをアンコにしたイーシャンテンからである。平井の体が少し大きくなった。
東4局(平井・成岡60→愛澤120→村田)、ここまでの激しい打ち合いから一転、南2局まで流局。
南3局、その後声が聞こえないと思っていると、平井のロンの声。申告は「2000・4000」。平井の体が元に戻った。
南4局(平井120→成岡40→愛澤120→村田)【牌譜10】、この局も流局したが、ラス目の村田は、なんと11巡目にホンイチのツモリ四暗刻をテンパイしていた。テンパイ後に、2枚生きていたロンパイのうちのは平井の手に、もう1枚の
は王牌にあったようだ。また、愛澤もツモリ四暗刻をテンパイ。こちらはテンパイも遅く、ロンパイもすでに他家に納められていた。
◆◆◆ 32回戦B卓 ◆◆◆
〈堀川△1・田中2昇・安田△3・小川5昇〉
東1局の流局後迎えた東2局。イーシャンテンからオリにまわり、傷無くオヤ落ちした堀川がリャンシャンテンの配牌をもらう。9巡目一鳴きテンパイ。オヤの田中もその2巡後にピンフドラ2をテンパイするもののシャンポンを3巡後にツモアガリ、3・6。
東3局は誰もテンパイすることなく流局、東4局もオヤの小川にチートイドラ2が入るものの流局。
南1局その1は、南家・田中はトイツながらも、これを刻子にしない限り厳しそうな配牌。西家・安田はタンピンサンショクが見えそうな配牌ながらも、ツモがまとまらない。北家・小川は途中掴んだ
を切るほどの手牌にはまとまらない中、オヤの堀川が最終手番で8枚目の
の
をツモりあげる(10オール)。
南1局その2(堀川55→安田・小川03→田中)、勢いに乗りつつある堀川は4巡目にと
のシャンポン待ちでテンパイ。次巡、
をあっさりと引きあがる(8オール)。
南1局その3(堀川87→安田・小川03→田中)、一刻も早くこのオヤを流したい、またラス抜けまでも目論む田中は、の対子とピンズ7枚ある配牌から、ホンイチを見せつける河を作りオヤの堀川を牽制する。堀川もここは無理することなくこれに合わせ、他2人はテンパイを組むこともなく流局。堀川としても望むところの流局であったろう。
南2局、皆にそこそこの配牌がいきわたるものの、ツモとかみ合わず、またお互いの牽制もあり、誰もテンパイさえ組めず流局。
南3局、オヤの安田と北家・田中ががっぷりと組む。
安田の配牌は次の通り。






























田中は1巡目に





























































































南4局その1(堀川70→田中17→小川04→安田)【牌譜11】、このまま堀川のトップは決まりで、安田がどのようにラス抜けするかが焦点かと思われたこの局だが、とんでもないことが起きた。
5巡目の安田の捨て牌である



















南4局その2(小川17→堀川70→田中21→安田)【牌譜12】、堀川はここでトップを取れれば、降級の心配がかなり少なくなる。田中からすれば堀川がトップのままであればそれほど気にはならないが、まだ遠くはあるが、名翔位ということを考えれば小川にはトップを取らせたくない。両者の思いがこの局に表れる。
配牌は小川が早そうに見えるがツモが全くかみ合わない。一方、堀川の配牌は暗刻が1つあるものの、カンチャン・ペンチャンのターツが1つずつとあとはバラバラ。田中はドラの

ドラトイツを生かし、逆転トップまで考えたい田中は、10巡目、堀川から放たれた















が、次巡堀川がテンパイを果たす。ペン




その間、


























堀川も田中も、ぎりぎりまで自分のトップを取るための努力をした跡が、牌譜に刻み込まれていた。
ともあれ、田中は名翔位に近づく大きな大きな1昇を上げたといえよう。
1年間戦ってきてここまで半荘32回。泣いても笑っても残り3回戦で名翔位が決まる。もうすでに残留争いになり名翔位を諦めているものもいるだろうし、降級にはならないからひたすら名翔位を目指すものもいるだろう。どの様なドラマが待ち受けているのか始まる前から非常に楽しみであった。
ここまでの成績は小川5昇、田中・愛澤3昇、村田1昇、この辺りまでが名翔位争いか。そして残留争いは、成岡・堀川△1、平井△2、安田△4となっている。
◆◆◆ 33回戦A卓 ◆◆◆
〈小川5昇・愛澤3昇・成岡△1・平井△2〉
東1局【牌譜13】 平井の配牌がいい。

















愛澤は配牌では難しい形になりそうだった。













































結局、この局は流局となったが平井の第一打が

東2局は流局し、東3局【牌譜14】、小川らしくないミスをしてしまう。11巡目に





















東4局この半荘初めて点棒が移動した。

















南1局、ここは平井が8巡目に役無しテンパイになるがそのまま流局。誰もラスめの平井と勝負する人はいなかった。
南2局小川の4巡目




















南3局【牌譜15】平井の1巡目、








































成岡100→小川12→愛澤04→平井で迎えた南3局その2【牌譜16】。結果的にこの局が名翔位争いにおける一番重要な局になったようだ。ラス目の平井はもう頑張ってアガるしかないのだが、3巡目にダブ




















































自身がラス目でなければ、




14巡目小川がツモったところで長考する。平井と愛澤に対してどうやってオリたらいいのだろうかと。
















小川の選んだ牌は何とドラの

南4局は愛澤がトップ狙いで勝負に来た牌を平井が96でアガるもトップまで届かず。その2は平井→成岡40で終了した。
本来小川はラスになるような展開ではなかったのに一瞬の緩みでラスになってしまった。このラスが34・35回戦に響くとは、このときの小川はまだ知る由もなかった。
◆◆◆ 34回戦A卓 ◆◆◆
〈堀川△1・小川4昇・安田△5・成岡0〉
東1局に安田が3・6のアガり、東2局は流局でむかえた東3局【牌譜17】もテンパイ一番乗りは安田。5巡目に、





































東4局は成岡の一人旅。5巡目に、































東2局その2、7巡目に安田が




















小川は、




















南1局【牌譜18】、小川の4巡目、



















安田の4巡目、こちらも早い。















小川に8巡目テンパイが入る。







































結果は安田の7・14のツモアガリ。じゃあリーチをしておけばよかったかというとそうでもない。安田はこのテンパイの後ツモ


南3局に成岡が7・14で差を広げ、南4局【牌譜19】となった。注目はやはり堀川、小川のラス抜け争い(点差は、成岡48→安田43→小川10→堀川)であるが、小川の配牌は、













この手をがんばって、やっと9巡目に、













では堀川はどうだったかというと4巡目には、






















この





小川にこの


そういえば、この半荘が始まる前こんな話をしていたのを思い出した。成岡が、「残り2連勝して、小川さんが2連続ラスで、別卓で…、となると、まだ名翔位の目があるのか!! いや、そんなことあるわけないよ」と、言っていた。こんな考えが生まれるのは33回戦に小川がラスになったからで、ラスにさえならなければ成岡の名翔位の目はなく、このオーラスでの差し込みもなかった。小川は33回戦のラスが原因で34回戦もラスを押し付けられた形となってしまった。
残り半荘1回、降級争いしていた成岡にも名翔位の目が出てきた。
◆◆◆ 35回戦 ◆◆◆
大混戦になった名翔位争いも半荘1回戦を残すのみとなった。ここまでの成績を整理しておこう。
【A卓】
・成岡1昇 成岡・田中のトップラス、B卓で堀川・小川のトップラスとなれば名翔位
・安田△5 すでに降級が決定
・田中3昇 トップを取り、かつB卓で小川が−(バー)なら名翔位
・平井△1 トップを取ると残留、もしくは平井が−(バー)だとB卓堀川−(バー)で残留
【B卓】
・堀川△1 トップでA卓で平井が−(バー)なら残留、もしくは堀川が−(バー)だと平井がラスで残留
・愛澤2昇 愛澤・小川のトップラス、かつA卓で田中がラスなら名翔位
・小川3昇 トップで名翔位、もしくは−(バー)だとA卓の田中次第
・村田2昇 村田・小川のトップラス、かつB卓で田中が−(バー)なら優勝
名翔位の可能性があるのが5名もいるのは初めてのことらしい。
A卓東1局【牌譜20】、9巡目安田が、













































すると成岡が持ってきたのはドラの



A卓東2局【牌譜21】、田中が2巡目に


B卓はどうなったのかと見てみると、こちらの東1・2局は流局して東3局になっていた。
親の小川が2巡目には既にドラ2のイーシャンテン。

































B卓東3局その2は流局し、東4局【牌譜22】となった。12巡目に親の村田がリーチ、実はこのリーチはノーテンリーチだった。同巡に堀川もリーチ。
















すると、これまた同巡に小川、

















南1局は堀川の最後の親番。この親を簡単に流されては降級の可能性が高くなる、とばかりに2フーロし、タンヤオの6オールでアガりリーチ棒も回収。しかしその2では手が入らずに流局となった。
その頃A卓はすでに南4局。東1・2局にアガりが出た後は、各自手が入るものの決め手に欠きずっと流局。結局点棒移動はその2局のみで田中・平井60→安田40→成岡となっていた。
A卓南4局【牌譜23】はトップ目の親の平井、そして田中にも手が入っていた。
どちらも無事流局すれば1昇なので無理することはなさそうに感じる。しかし田中は大きな狙いを秘め単独トップになることを目指していた。
田中は2巡目にはチートイツのイーシャンテンになっていて、これが6巡目にテンパイ。


















平井も9巡目に追いつく。















A卓がすでに終了し田中のトップが確定した。この瞬間B卓の村田、愛澤には名翔位の権利がなくなり、あとは小川がトップになるかどうかにかかっていた。小川がトップなら小川の名翔位。トップでないときには田中の名翔位となる。
小川60→愛澤10→村田16→堀川の南2局。村田が最終巡目でツモ。

















南3局は流局し、小川05→村田68→愛澤13→堀川の点差で南4局【牌譜24】になった。
親の村田、配牌は悪かったものの、ツモが良く6巡目にはイーシャンテン。































そして10巡目、愛澤が捨てた





















南4局その2、小川の配牌。















小川が今回名翔位を取れなかった原因は33回戦南3局その2のにあった。
→この64の打ち込みでラスになる。
→34回戦、成岡に名翔位の目が残ったので堀川に差込み、小川にラスを押し付けた。
→35回戦、34回戦で堀川がラスにならず残留の目が残り、オーラスに頑張ったため、村田に放銃しトップをまくられた。
この様に33回戦のラスで1昇を損しただけでなく3昇分損したような感じだった。
田中選手名翔位おめでとうございます。八翔位戦で負けた悔しさを順位戦で返した形となりましたね。残念ながら今回の観戦記では田中選手をあまり取り上げることが出来ませんでしたが、それは自戦記にお任せするとしましょう。
(文中敬称略)
【観戦記追加投稿(31回戦A卓=佐藤 文彦)】
第34期順位戦最終節初日の観戦記をかかせていただいたが、田中名翔位が、私が書かなかった、「31回戦A卓の観戦記を誰か書いてくれないか。」と言っていたので、遅まきながら追加投稿させていただいた。
◆◆◆ 31回戦A卓 ◆◆◆
村田1昇・小川6昇・田中2昇・成岡△1
東1局その1【牌譜25】、「3次元の雀士」であるオヤの村田がいきなり小川に焦点を合わせる。村田の印象はお弟子さんから聞いていたが、そのお弟子さんは「トリッキーなサーカスプレイ」に見えると言っていた。この局もそのように見える局面があった。まず2巡目、

















この局面では小川へのラスの押し付けをテーマとしている。局の途中で小川の手の内に

続く東1局その2【牌譜26】は、村田のリーチに対して田中が飛び込んでいる。田中は、自分の待ちに自信があると、点数の多寡にかかわらず押すことがある。これは行く局面だったのだろうか? この村田のリーチはアガリに向かったものだったのだろうか?
東2局【牌譜27】は、成岡が小川から52をアガり、東3局【牌譜28】はその成岡が村田に12を放銃している。成岡は言わずもがなの101の看板選手。彼も「3次元」の雀士だ。しかも容積が広い。ので、成岡の麻雀は私には解説できる部分が少ない。ただ、いつでもアガリを拾えると思っているのであろうか、印象よりも放銃が多いように思う。
南1局【牌譜29】は、ここまで良いところのなかった小川が意地を見せる。小川は素直な手作りから大きな手をアガる印象がある。この局のアガリも小川らしさが出ていると思う。
南2局【牌譜30】は、田中のツモ。そしてラス抜け。この待ちは自信がなかったのだろうか? それとも小川の爆弾に気づいていたのだろうか?
南3局【牌譜31】も南4局【牌譜32】も小川はラス抜けのために仕掛けるのだが、その後の上家である村田の対応、他2人の対応をみると、さすがの小川でもこの包囲網を突破するのは至難だったように思える。
田中 実名翔位自戦記(30回戦B卓南4局・32回戦B卓)
◆◆◆ 30回戦B卓 ◆◆◆
〈田中2昇・平井△2・愛澤3昇・小川5昇〉
5巡目、平井がペンチーで打
。ドラを見せることで最後まで面倒見てくれよとの催促ですな。露骨に協力したほうがいいのかとも思ったが、平井の仕掛けで小川の足も鈍ればトップを狙うチャンスもあるだろうと2段構えの作戦だ。もし敵が小川1人なら迷わず平井軍に入るのだが、現実には追手の1人に過ぎず、しかも4番手とあってはトップを放棄する踏ん切りがつかない。10巡目、
を引いたところでソウズのターツを払い思惑通り、平井との二人テンパイで小川を追い詰めた。と言いたいところだが私のテンパイが貧弱すぎる(悲)。リーチをしても
ツモではトップになれず、リーチ後平井に放銃すればラスとあっては、忍の一字。
待ちに変化したときだけは勝負する価値ありと思っていたのでリーチに踏み切ったが、流局。
A卓では2昇の村田がラスで、対局室の中は「小川で決まりか」という雰囲気に包まれていた。もちろん誰も口にはしないけれど。
◆◆◆ 32回戦B卓 ◆◆◆
〈堀川△1・田中2昇・安田△3・小川5昇〉
31回戦で小川がラスを引いたとはいえ、その牙城は微塵も揺らいでいない。直接対決はこれが最後なので、なんとか一つでも詰めておきたいが、東1局は攻め手がなく早々に手じまい。
4巡目にはドカンとかましたるぞ、と思ったのも束の間次巡ので一気に雲行きが怪しい。こんな順番で牌が来てアガったことないぞ、というのは言い過ぎか。どうせだめならと、ツモ
ではドラ打ち、ツモ
ではドラ待ちのテンパイも本気で考えたが・・・さすがに自重しました。
今局のようなテンパイはアガれなくても全然堪えないからまあいいんです。さらにを全部見せてもらったおかげでドラのくっつきに構えておくべきだったかと思う必要もなく心穏やかに次局へ。
さて、カブってラスめになったとはいえ最高の並びを作るためなら望むところでもある。おなじみの役なしドラ1で能天気に攻める(しかもテンパイもしていない)。安田の打ちにも関わらずツモ切った
はラスめとはいえあんまりですかね。対する安田は、それを見て嫌気が刺したのか
引くとメンツの中抜きで店仕舞い。私の最終手出しが
じゃなければ
でチーテンとったのでしょうか?
小川のオヤ番で、1巡目イーシャンテン2巡目リャンシャンテン戻しと派手にマークが並ぶが、テンパイしたのは終盤で例によって堀川が先に処理したペンとあってはまあアガリはないですね。自らの手牌進行はこんなものでしょうが、小川がアガリを逃したのは助かった。7巡目の
を手に残さざるをえなかったのが運の尽きか。このような早いチートイツのイーシャンテンでは、こう打っておくのだろうが堀川、安田に完璧に受けられてはあまり意味がなかったか。しかしド終盤に
打つヤツが1人いるからなあ。私の代わりに他の人が座ってたら、小川は序盤で違う牌残すんだろうな。ちょっとボカしておけば出ると思われている、そしてそれが当たっている、悲しいかなこれがわたしの今の実力。
配牌でドラが2枚。けっこうチャンスかなと思いながら打ってたんだよなあ、確か。しかし時間をおいて牌譜を見返してみると及第点に満たない打ち方だとしか思えない。特に2〜6巡目の打牌はすべて違ったものになりそうだ。単にメンツ手とチートイツにたいする比重の問題でなく、うまく言えないのだがこういう局にこそ真理に近づくヒントがあるのではないか。そして、それは「何巡目の打牌はこっちのほうがこのくらい得だとか損だとか」と誰かに教えてもらって得られる類のものではないだろうとも思う。夜ごと頭を悩ませて、ひとつのことに気づいたと思った翌日にはやっぱりちがうんじゃないか、ということを続けていくしかないのでしょう。
またしてもドラ2。しかし堀川がまたツモアガリ。これで、堀川がけっこうなリードになったので焦点は自身のトップよりも小川ラスに傾いてきた。
堀川がもう1回アガりそうな配牌だったが、わたしが仕掛けると当然無理せずの構え。をひっぱっていた影響か小川と安田も早々に撤退し、安田はテンパイ取らずでアガリ逃し。
ポンで阻止したのは安田のアガリか、はたまた小川の3着転落か。
堀川がリードすると誰もアガれないことがよくわかる1局。当の堀川がアガリにきてくれないからね。昔、村田が言っていた「堀川が1回アガってくれたら楽なのに」を1年じっくり味わいました。小川からチートイツアガってくれよというのはこっちの都合。堀川にしてみれば打ってまで16の追加点を求めるより3者の点差がこのままのほうがいいのは当然。
この配牌にツモが、
とくればもらったな!と
より先に
を打つとオヤの安田がこれをポン。すると小川が安田の現物をトイツ落としと出たのでこれはシメシメと思った。2人で目一杯攻めればどちらかアガれるだろう。なんとしてもこれ以上流局するのは避けたい。
安田にさらに2つ喰われながらもピンフのテンパイ。できれば放銃するのは避けたいが、テンパイ打のがロンじゃなければ勝算大と踏んでここは最後まで押し切るつもり。バックしないための
と
の切り順、逆だとテンパイとる根性ないかもしれないので。
さて、とりあえずはラス抜けしたので、5・10ツモるか安田のアガリで目的達成だがチートイツに向かわなければならないとは正直苦しい。さらに小川にあからさまなホンイチ仕掛けを見せられては撤退するしかない。あとは安田頼みですが、都合のいいときだけお願いしてもダメですね。それにしてもこういう強烈なアガリを見せつけられるのにすっかり慣れてしまったものよ。
小川をラスにするどころか、一撃で突き抜けられてしまった。ついさっきまでは、現状のスコアのまま終えてもやむなしかなどと思っていたが事ここに至ってはやることは1つ。目的がシンプルになったぶん、それを成し遂げることだけに集中でき、小川がトップめに立ったことを悲観することもなかった。
チーなどせずもっとスマートにアガるという人もいるでしょう。しかし、
が残ったときはそれに賭けることはできないと感じていたので、下家にツモ切られた
を見ても動揺することもなく、本譜のように
をポンするときの待ちをどうするかもしっかり準備できていたと思う。
とにかく、1つ差をつめることができた。まだ小川絶対優位は変わらないが、対局室内の空気は30回戦後の休憩中とは少し変わったのを感じた。
第34期順位戦A級 第6節 星取表 (12月14・15日/東京)
選手名 |
開始前 |
29回戦 |
30回戦 |
31回戦 |
32回戦 |
33回戦 |
34回戦 |
35回戦 |
終了時 |
順位 |
成岡 明彦 |
△1 | A − |
A − |
A − |
A − |
A ◎ |
A ◎ |
A ● |
±0 | 5 |
小川 隆 |
5昇 | B − |
B ◎ |
A ● |
B − |
A ● |
A ● |
B − |
3昇 | 2 |
平井 淳 |
△2 | B − |
B − |
B ● |
A ◎ |
A − |
B ◎ |
A − |
△1 | 6 |
村田 光陽 |
1昇 | B ◎ |
A ● |
A ◎ |
A ● |
B ◎ |
B − |
B ◎ |
3昇 | 3 |
堀川 隆司 |
△2 | A − |
A ◎ |
B − |
B − |
B − |
A − |
B ● |
△2 | 7 |
田中 実 |
1昇 | A ◎ |
B − |
A − |
B ◎ |
B − |
B − |
A ◎ |
4昇 | 1 |
安田健次郎 |
△2 | B ● |
A − |
B − |
B ● |
B ● |
A − |
A − |
△5 | 8 |
愛澤 圭次 |
4昇 | A ● |
B ● |
B ◎ |
A − |
A − |
B ● |
B − |
2昇 | 4 |