第30期八翔位戦 卓別リポート

  1次予選2次予選準決勝出場選手システム

準決勝:6戦制/各卓2昇以上の単独首位者勝ち上がり


A卓:小川、コールド達成
A卓
終了
成岡 明彦 名翔位
±0
小川  隆 A級
3昇
石川 由人 東京
△1
中川 裕樹 仙台
△2

 2日目を迎えてスコアは上位から小川2、成岡1、石川由△1、中川△2の並び。6戦終了時単独2昇が勝ち上がりなので初戦(5回戦)が小川トップ、成岡ラスで決着という状況。とはいえ間違いなく3対1の戦いになるのでそう簡単には決まらないはず、と予想しながら会場入り。
 その5回戦は起家から中川、小川、成岡、石川由という座順で始まった。先手を取ったのは石川。ファン牌の仕掛け13巡目に引きアガリ。

 
 3・6の無難な立ち上がりだったのだが、実はこの動きでオヤの中川にもテンパイが入っていた。
引ければ決定打になったやもしれないチャンス手。ここまではA級選手2人にやられはいるが簡単には引き下がれないところであろう。
 東2局は再び中川と石川のぶつかり合いとなった。9巡目に中川がを仕掛ける。
 
ここに石川が無筋を切り飛ばし応酬。石川の手は
今度は中川が15巡目にを引き寄せた。
 続く東3局の中川の選択がもったいなかったか。10巡目に中川の手が止まる。
すでに単騎マチでテンパイをしているところでを持ってきた。中川の選択は打
結果は中川にとって最悪のものとなった。は石川に仕掛けられ成岡にもチーテンを入れられる。成岡のテンパイ打は。そして中川がツモ切ったに成岡から「ロン」の声。
 
僅か12の放銃だが精神的なダメージを受けそうな展開。が中川はここから頑張りを見せる。

 東4局、成岡の3・6後の南1局(オヤ中川)を成岡11→石川15→小川03→中川の並びで迎えた中川が7巡目にこのテンパイ。
そしてもはや流局かと思われた16巡目にを引いた。値千金の26オールである。これで小川がラスめに落ちた。

 流局を挟み運命の分かれ道となった南2局の小川のオヤを迎えた。まず12巡目に中川がツモ切りでリーチを掛ける。
 実はこの時の行き方がここまでの中川のそれとは違和感を覚えたので対局後に質問してみた。中川の答えは「オヤの小川さんが前にきていたので…」確かに既に小川はテンパイ。 
ここへ成岡の「リーチ」の声。但しその宣言牌は!!これでなんと小川勝ち上がりの並びができてしまった。がここまままでは終われない、との中川の思いが天に届いたかどうかは定かではないがその2の9巡目にこのテンパイが入った。
そして成岡から打たれたはもちろん見逃がした。が中川の渾身の見逃しも13巡目に成岡が3・6を引き実らず。実際のところ小川が掴んでも打ったかどうかは定かではないがこれで小川が勝ち上がりにぐっと近づいた感があった。
 その後南3局に石川が13・26を引き南4局を石川12→小川19→中川142→成岡の並びで迎えた。小川が12以上の手をアガれば勝ち上がりが決まる。そして小川の得た配牌がこれ。
ここへと引き込み早7巡目にテンパイ。
ここへ石川がを掴み小川がコールドゲームで成岡、石川、中川を下し決定戦へと駒を進めたのであった。



B卓:田村、堂々の決定戦進出
B卓
終了
平井  淳 A級
△3
石川 稔也 B級
1昇
猪俣 裕之 東京
±0
田村  洸 大阪
2昇

 準決勝B卓にはメンツ猪俣以外は攻撃的なメンツがそろい、打撃戦になることが予想された。
 1回戦、座順は猪俣・田村・石川・平井。東1局から早々に殴り合いが始まる。
・東1局:田村が石川からピンフ・ドラ1の20
・東2局その1:田村6オール
・東2局その2:石川が田村から12
・東3局:猪俣が平井から12
 ここまで、田村20→猪俣20→石川04→平井。激しい殴り合いは、なおも続く。
 東4局は、東家の平井が次の配牌を得る。

 ダブルリーチという役がないこのルールでの、現在ラスめの平井の打牌選択はだ。ここからツモ切りが続き、6巡目に切ったに石川がポンと喰いつく。次巡、平井のテンパイとなるを喰い取り、次のテンパイ。
 
 第1打としている石川の河からは、ホンイチの気配は感じられない。ジャブの応酬から一発KOの手が来たかと思われたが、石川の鳴きに合わせた猪俣のをリャンメンでチーしていた田村が、タンヤオ・サンショクの高目を猪俣から出アガり、事なきを得る。
 南1局、田村が平井からピンフドラ1の出アガリ。ここまで、すべての局でアガリが出ている。これで点差は、田村80→猪俣・石川24→平井。
 南2局、ラスめの平井が前に出る。メンゼンでホンイチをテンパイし、をアンカンして次の形でテンパイ。
 
 まず、石川がやめる。さらに、平井からドラが打ち出されたのを見て田村も手じまい。猪俣は…平井の後ろからはやめているかどうかの判断がつかない。結果は、このゲーム初めての流局。
 南3局、オヤの石川の配牌がこれ。
10巡目、トイメンの田村のを次の形からポンしてテンパイを取る。
 次巡の田村のツモ切りが。田村の河にはがあっただけに、もし石川がを鳴かなかったらどのようになっていただろう。この局も流局。
 南4局、ラスめの平井は何が何でもアガリがほしいところである。中盤、
にツモ。望まないツモなのか、手牌の前で持ってきたをドンドンと卓に叩きつける。打としてテンパイは取るが、その後手変わりしないまま最終手番前にリーチと行くが、あえなく流局。
 トップめの田村は悠々のオリをみせていたが、平井テンパイ後の切りは何だったのだろう。勢いは間違いなくあるが、危うさを感じる場面ではあった。
(◎田村1昇/石川・猪俣±0/●平井△1)

 2回戦、起家から猪俣・田村・平井・石川。この半荘は平井が大暴れした。
 東1局・2局と流局するが、この卓が静かなまま推移するはずがない。
 迎えた東3局、田村のタンヤオ仕掛けに対し、平井がリーチ。
 ただし、平井の河にはがある。田村は平井リーチの直前に、
 
からをひき、テンパイを組んでいる。結果は平井がを掴み、40の放銃。平井のこのリーチには疑問符が付いた。
 さらに次局、9巡目にチートイツでテンパイした平井が場に2枚切れの待ちでリーチとする。これに対してオヤの石川が長考、追いかけリーチと打って出た。
 結果は平井がを掴み、78の放銃。平井、平常心が失われてしまっているようだ。
 その2も平井の配牌はまずまず。
 ここにとひき入れ、次のイーシャンテン。
 ここから、2枚目のが上家の田村から切られてもスルー、トイメンの猪俣が切ったのもフカすと、3枚目のをひき入れてテンパイ。なぜかここはヤミテンとし、押してきた猪俣に28の放銃。
 東場を終了して点差は、石川38→田村22→猪俣194→平井。
 南1局。田村に大物配牌が入る。ダブのトイツにドラ3枚、ターツが3つ。うち2つはカンチャンターツだが、がコーツになれば簡単にアガれそうに見える。その待望のダブが鳴けてイーシャンテンとすると、ここで平井が果敢にリーチ。
 ここは平井が意地でツモり、10・20。
 南2局。3着めの猪俣とはまだ134差のラスめ平井にすれば、何とか差を詰めたいところ。5巡目にダブをポンしてテンパイを取る。
 
 10巡目、をツモってきた平井の手が止まる。少考とも言えないほどの間をおいてを河に捨てる。その後をツモり、さらにをミンカンしたのちにツモの20・40。このアクロバティックなアガリで猪俣との差を34とする。
 続く南3局、前局のアガリで気をよくした平井は次の手からリーチとし、この半荘4本目のリーチ棒を投げる。
 しかし、すでにテンパっていた石川に28の放銃。
 せっかく詰まった点差も、また72に広がってしまう。
 南4局。1回戦からの状況を見て、この2回戦も平井のラスかなと思える展開であるが、ここから平井が驚異のラス抜けをする。
 平井はこの局も、配牌はそこそこながらも、全くツモがかみ合わない。後ろで観ていてその焦燥感が伝わるのだから、同卓者にはなおさらのことであろう。
 8巡目、2着めの田村にテンパイが入る。トップめのオヤの石川とは96差。52以上の直撃か16・32以上のツモでトップである(16・32は同点トップ)。リーチをかけて高目をツモれば20・40でトップではあるが、石川直撃は高目限定。そこで田村は、どこからでもアガるつもりのリーチをかけようとしたのだが、その宣言牌であるに「ロン」がかかった。声の主はオヤの石川。開かれた手は、
 120の放銃。田村の顔が青ざめる。ラスめの平井とは84の差があるところからのまさかのラスめ転落。この放銃は田村の精神に少なからず影響を与えたようだ。

 南4局その2。オヤの石川は第1打からと、この局がこの半荘の最終局だよと宣言する打牌。これを見た田村はやはり焦りを感じさせられたのだと思う。
 7巡目の田村、
から少考後、切りリーチ。4枚目のはまだ姿を見せておらず、リーチをかけてしまうとアンカンの可能性も放棄することになる。
 このリーチはあるのだろうか? もしを打たれたら、ツモ条件だけになるこの手を、ヤミテンのままツモればラス抜けできるこの手で、平井からの高目直撃条件だけを増やしたこのリーチを、私は打てない。ここまでの平井の出来を見ての選択だろうか? あるいは、前局と今局の石川に、精神を破壊されてしまったのか? 
 ターゲットの平井の手も進まない。リーチの時点で、高目のは平井の手にトイツである。平井はオリを選択せざるを得ないのだが、石川の変則的な打牌もあり、河が安全牌を特定させてくれない。オリながらのチートイツを選択するのだが、それゆえに、終盤になり手が詰まる。を打つ可能性もあるような手格好になりながら、この局は何とか流局、命拾いする。
(石川1昇、猪俣・田村0、平井△1)



3回戦  座順は田村→猪俣→石川→平井
東1局、初めての開局流局。

東2局、田村はオヤの猪俣との攻め合いに勝ち、5・10。

 東3局その1、平井が石川に18放銃。
 東3局その2、東4局と流局。3回戦は静かな展開で推移する。とはいえ、A級選手の平井は苦しい戦いを強いられる。
 南場を迎え、田村07→石川23→猪俣13→平井。南1局も流局。

 南2局その1、猪俣は
 ここまで耐える展開が続いていた猪俣の片目が開くためには、大きな大きな20オール(猪俣50→田村07→石川36→平井)。

 南2局その2は、田村が石川に12の放銃。
猪俣45→石川17→田村31→平井

 南3局も流局して南4局をむかえる。平井は何としてもラス抜けをしたいところ、石川・田村はトップを狙いつつ平井のラス抜けを阻止というところか。猪俣はトップを取りたいの一心であろう。オヤの平井は、相変わらず牌山との格闘が続く。そこに石川がリーチ。
 平井はタンヤオを狙うが、とにかく有効牌が引けない。14巡目にリーチ者の石川の牌をリャンメンチーすると、石川の手元には待望のが。石川のリーチは、何としてもトップを取るというものではなかったと思うが、結果としてベストの選択となった。
(石川2昇、猪俣・田村0、平井△2)

4回戦 座順は猪俣→平井→石川→田村
 東1局その1 平井はチートイツのテンパイからオヤの猪俣にタンヤオ・ピンフの30の放銃。この半荘もマイナスのスタートとなる。

 東1局その2 この局は自風をポンした田村に石川が28の放銃。この放銃に石川以外の3人の思惑が一致したであろうか。

 東2局、田村がとばす。
安目ながらもあっさりの7・14ツモ。

 東3局その1、石川が次の手をツモる。
10オール。

 東3局その2、猪俣4・8。
ここまで、田村13→猪俣42→石川45→平井

  東4局その1、6巡目に田村がをリャンメンチー。何故かテンパイ気配を感じたのだが、のちに平井に聞くと、平井も同じように感じたようだ。しかし、ラス抜けしたい平井は手牌との相談でを切ると、田村が手牌を開く。
 
 殴り合いの続くこの卓といえども、田村としてはこの半荘の大きなアドバンテージを得る。田村はこの半荘のトップを確定させるべく、テンパイ即打たれた打牌をとがめたが、この早い巡目ということで、見逃しをかける人もいるのだろうか? 

 東4局その2は、石川がチートイツでリーチするも、この半荘はじめての流局。ここまで、田村133→猪俣52→石川155→平井(供託10)。

 南1局、展開によりトップが取れない猪俣が、好配牌を受け取り、先行リーチをかける。
 ラス抜けしたい平井も果敢に追っかける。
 他の2人は傍観するも、流局。田村143→猪俣42→石川165→平井(供託30)。

 南2局、
 この手を石川がアガリ、トップ田村との差を詰める。
 田村105→石川38→猪俣199→平井

 南3局(ドラ)、状況的に厳しい平井は、配牌2トイツからドラ単騎のチートイツをテンパり、リーチを打つが流局。

 南4局(ドラ)、この局も誰も動けず、流局。
(石川2昇、田村1昇、猪俣0、平井△3)

 日が替わり対局者が集合すると、現在マイナス3の平井は深刻な顔で瞑想、他の3人は努めてなのか、平静を装っている。


5回戦、座順は平井→田村→猪俣→石川
 東1局、今日も田村の調子が良い。他3者が三色を見ながら手を進める中、田村が次の手で先制する。

平井はまたもラスめからのスタートとなる。
田村35→石川・猪俣07→平井

  東2局、気分よく迎えた田村のオヤを、他3者は軽く流したいところ。そう思ったのか、平井は手を高くすることをせず、オヤを流しに行く。
 
この準決勝で、平井は初めて点棒を卓上に置くことができた。
田村12→平井18→石川・猪俣

  東3局、平井はドラトイツの配牌をもらうが、アガリには少し遠いように見える。平井は条件的にもこの半荘はトップを取りたいところなので、何とかこの手はものにしたいところである。ここまでの調子の悪さを引きずるように、平井が牌山と格闘していると、11巡目に田村が次のテンパイからドラを切り出す。
平井は当然のポンで、やっとの1シャンテン。ここは石川がを田村に振り込む(差し込む?)
田村24→平井18→猪俣12→石川

 東4局(ドラ)、好調を維持する田村がこの半荘三回目のテンパイを組む。平井はハイテイをプレゼントするチーをするが、この局は流局。

 南1局、平井がまたもドラトイツの配牌をもらう。誰もがトップを取りたい、トップを狙える状況で、またも皆が前に出る。
 テンパイ1番乗りはやはり、田村。ここ半荘4回目の待ちだ。次にテンパイが入るのは猪俣。12巡目に次の手をテンパり、ドラを切り出す。
このドラをオヤの平井がポンして、次のテンパイ。
 
田村は流石に前に出られなかったが、猪俣は放銃を恐れず前に向かうと、3巡後猪俣のもとに待望のが引き寄せられる。
猪俣58→田村44→平井10→石川

 南2局(ドラ)、怖い田村のオヤを流したい猪俣は、ポンから平井の打牌をとがめ、16の加点。またも平井がラス目におとされてしまう。
猪俣74→田村54→石川06→平井

 南3局(ドラ)、何としてもトップが欲しい平井は、リーチと打って出るがあえなく流局。
 南4局(ドラ)、田村の動向を見ながら打ち進めていく平井であったが、最高の形は、猪俣からの80直撃以上または、30・60ツモ。ドラ1枚を持ってのタンヤオピンフ系の形にはなるが、進行が遅く、自らのトップを放棄するをチー。石川から20のアガリで、最低限の石川へのラス押しつけという仕事をして、この半荘の幕を閉じる。しかし、次の半荘が最終戦となりそうなこのアガリは良かったのであろうか? 難しい選択だったと思う。

(石川・猪俣・田村1昇、平井△3)

6回戦、座順は田村→石川→猪俣→平井
 勝ち抜け条件が6回戦終了時単独2昇のため、平井以外の3人はトップを狙えば良い。平井はトップ以外の着順の場合、同点トップがない場合は終局となってしまう。4人の思いが交錯する中、6回戦が始まる。
 東1局(ドラ) 、開局は、好調を持続する田村から平井が40のアガリ。
平井80→石川・猪俣40→田村

 東2局その1、この局も平井の調子が良い。9巡目に平井が次の手でテンパイする。

 次巡、オヤの石川が強烈なドラ切り。平井はホンイチとはいえ、ドラも怖いと思われる捨て牌もよう。石川の牌姿を確認しに行くと、次巡あっさりツモ。
ここでの26オールは、他3人を色めき立たせたはずだ。
石川64→平井40→猪俣40→田村

 東2局その2、勢いに乗る石川はリーチを打つが、田村が踏ん張り、3・6をツモる。
石川51→平井40→猪俣15→田村

 東3局、2着めの平井が2フーロする。オヤの猪俣は、それを横目に見つつ手を進めるが、イーシャンテン時に少考、を切ると平井の手が開かれる。
  
ドラの所在が分かっていなかっただけに、猪俣には少なからずショックを与えたようだ。しかし、この放銃は石川のトップを阻止するための並びを作ったのである。
平井29→石川106→田村65→猪俣

 東4局、田村が石川からメンゼンイッツーをアガリ、石川と平井の差を広げるとともに、自身も差を詰める。
平井57→石川50→田村93→猪俣

 南1局その1、田村が猪俣から18。少しずつ平井の背中をとらえていく。
平井57→石川32→田村129→猪俣

 南1局その2は流局。残り局数が少ないため、猪俣はそろそろ自身のトップより平井のトップを考えたほうが良い局面に入ってきたようだ。

 南2局、じわじわと差を詰めてきた田村にテンパイの気配が漂う。石川のオヤ番なので、石川へのけん制も含めたものであろうが、猪俣がそこに敢然と挑む。数枚の危険牌を切り飛ばしたのを見て、田村が首をかしげると、猪俣は敢然とリーチ。次の手をものにする。
この局のことを後に田村に聞くと、「猪俣さんの前への出方が強く、(点棒差もあり)もっと高い打点かと思った」とのことであった。石川のオヤかぶりもあり、猪俣のツモは歓迎でもあったようだ。
平井70→石川19→田村64→猪俣

 南3局、猪俣は最後のオヤで、何とか連荘したいところ。が、思惑通りには局は動かず、他の3人に手が入る。まず、田村が次の手でリーチを打つ。
この牌に石川がで鳴き、打。この時点でのイーシャンテンながらもドラトイツで80が見える形。田村には押していく腹を決めたようだ。このチーに苦虫をつぶしているのは平井。田村にも石川にもアガってほしくない。この仕掛けに対して次のツモでテンパイした平井は追いかけリーチをかける。
平井は、石川をおろしたいためのリーチでもある。思惑通り、石川は厳しい牌を引かされ、後退を余儀なくされる。さて、猪俣はどう動くか。田村と平井の差はこの時点で89。平井はリーチ棒を放っているため、田村のアガリは非常によろしくない方向に向かってしまう。ただ、最悪は平井から田村への放銃。これを考えれば、猪俣自身が前に出ての自らのどちらかへの放銃のほうが良いように私には思えた。しかし、猪俣はここで、どこにも放銃しないという選択をした。結果は田村の高目ツモ。平井の高目放銃よりは多少点差が少ないとはいえ、ほぼ最悪の結果を招いてしまった。
田村31→平井60→石川103→猪俣

 南4局、待望のトップ目に立った田村は、さえ鳴ければという条件付きながら、比較的早い配牌をもらう。
一方、何が何でもアガらなければならない平井はツモとの戦いもあるが、上家の猪俣からの援助を期待したいところ。十分アガれそうな次の配牌をもらう。
猪俣は倍満ツモ条件。しかも、遠くに倍満が見える手をもらう。ペンチャンターツカンチャンターツ4つを埋め、さらにドラをツモらなければ成就しない手牌ではあるが、遠くの倍満に目を奪われ、スーシャンテンの3巡目にを切ってしまう。結果論とはいえ、そのを鳴いた田村に、ドラを食い取られ、さらにまでツモられ終局を迎える。


 田村も、局後、「猪俣さんからが出てくるとは思わなかった」と語ったが、猪俣は平井の動向を見てからの打牌で良かったのではないか。遠くの倍満より、平井のアシストを優先すれば、この半荘での終局の可能性は減ったはずだ。101での訓練不足が出てしまったようである。ただ、猪俣もアマチュアの強豪。来年は自分が勝ち上がるための条件などを把握し、懐を広くして参加することだろう。
 田村と石川の間に差は見られなかったと思う。決勝への思いが田村のほうが少しだけ強かったのだろうか。ただ、周りがテンパイしてないときのドラ切りなど、思い切りよさの見えた田村に対し、石川はその後の状況の変化まで考え、丁寧な対応に終始した。八翔位戦という短い戦いでのハイリスクハイリターンな田村の戦いのほうがマッチしたというところだろう。ただ、ハイリスクハイリターンと書いたものの、田村は危険牌切り出し後に、さらなる危険牌らしきものをほとんど引かなかったのではあるが…。  ともあれ、田村さんおめでとうございました。外連味のない今のスタイルで決勝も頑張ってください。また、この文章に対してのご意見などがございましたら、平井編集長へのご報告をお願いいたします。ありがとうございました。

(佐藤 文彦)


C卓:田中、初の優出決める
C卓
終了
田中  実 A級
2昇
安居 嘉康 B級
1昇
山本 裕司 推薦
△1
大川戸 浩 東京
△2

 1日目を終了してのスコアは田中1昇、安居・山本±0、大川戸△1と他の2卓と比べて接近しており、まだ四者ともにチャンスがある。
  迎えての5回戦、座順は起家から、安居±0、山本±0、田中1昇、大川戸△1。東1局、10巡目に田中・大川戸が同時にテンパイ(ドラ)。


 田中はともかく、一人マイナスを背負う大川戸はリーチに踏み切ってもいいくらいである。その後、をひいて高目イッツーに振り替わっても大川戸はヤミテンを続ける。すると、序盤から行く気満々だったオヤの安居にチーテンを入れさせ、

 

 捨て牌からも出アガリは難しいこのマチに、何と田中が飛び込み60。行き過ぎから手傷を負った田中だが、東2局に早くも失点回復のチャンスが到来する。

 出アガリでも高目ハネマンのこの手を慎重にヤミテンに構えたが、大川戸に5・10の仕掛けでかわされてしまう。チャンスを潰し、決定戦進出に黄信号が灯った田中だったが、次局のオヤ番ですぐに挽回する。

 大川戸の仕掛けもあり、6巡目のこのテンパイを手替りを待つことなくリーチを敢行。すぐにツモ上がアガってトップめまで抜ける。その後、一度は安居がトップめを逆転するものの、南1局その2の13・26で田中が再度トップめに立つや、山本がヤマ越しでの田中狙いに徹する。しかし、一度は60を削ることに成功するも、二度目は裏目に出て田中にドラタンキをツモらせてしまう。南4局を迎えての点差は、田中50→安居158→大川戸98→山本(供託10)。ここで田中がトップなら決定戦進出に大きく前進するところである。しかし、田中の願いは続かなかった。安居にすんなりドラアンコのリーチが入り、山本がすぐに差し込んで田中の2昇目はスルリと逃げてしまった。

 決着のかかった6回戦(大川戸△1、田中1昇、安居1昇、山本△1)、決着権のない山本・大川戸はどちらかのトップで延長に持ち込むことができる。そんな二人の主導権争いは、東2局に大川戸から52を討ち取った山本に軍配が上がる。しかし続く東3局、そんな山本の思惑を打ち砕く田中の30・60。

 この後さらに7・14を加点した田中が決定戦進出に大きく前進し、南3局を迎えての点差は、田中143→山本62→安居29→大川戸(供託10)。ここで、逆転、そして延長を目指し、安居と山本から10、11巡目に相次いでリーチがかかる(ドラ)。


 緊迫した空気の中、ラスめ大川戸が突如として山本がツモ切った客風のをポン。対局者のみならずギャラリーまでもが首を傾げたこの仕掛け、次巡にをひき込んでのテンパイがこの形!

 

 客風をポンしても誰にも気づかれない? 役満テンパイというのも損なのか得なのか…(注:筆者以外に大川戸の手牌が見える位置には誰もいない)。しかし、大川戸最大の見せ場もここまで。安居が即座にをひき寄せ、この大物手は泡と消えてしまった。田中にすれば、自分と同じく決着権を持つ安居のアガリを快く思わなかっただろうが、こうして見えないところで助かっていた。

 続くその2で大川戸から48を討ち取った安居が逆転勝ちを視野に入れるも、次局では延長へと意欲を燃やす山本の7巡目リーチを受ける。

 逆転勝ちを目指す安居だが、チートイツイーシャンテンから3枚持ちとなったでこのリーチに飛び込んでしまう。オーラスを迎えての点差は田中73→山本114→安居105→大川戸。ここで、自分が田中を逆転するしかないと決意したであろうラスオヤの山本が仕掛けた。

 

 安居・大川戸からのアシストを期待しての仕掛けであるが、この手が一向に進まない。安居・大川戸ともに自分のアガリを目指しているのである。安居は80の直撃を夢見てのことだが、下家の山本にアシストするのが現実的だと思われたが…。大川戸に至っては、序盤からタンヤオ・サンショクドラ1のイーシャンテンとはいえ、これを田中から首尾よくアガったとしてもラスのまま。ならば下家の田中に対して牌を絞りつつ、山本への差し込みに備えるのが妥当であろう。
 こうして山本の手が進まぬまま、三者の連携ミスをついて田中がチーテンを入れる。

 

 一旦はアガれないをひかされるものの、打とした直後にをひいてテンパイ復活。田中が回り道をしていたにも関わらず、山本がやっとのことでを鳴いて田中に追いついた時には、そのテンパイ打牌のが間に合ってしまった。
 これまで一次予選敗退を繰り返し、ただの一度も勝ち上がったことがなかった田中が決定戦進出を決めた瞬間であった。


2次予選:6戦制/各卓上位2名勝ち上がり


A卓:タイマン勝負の行方
A卓
終了
小川  隆 A級
2昇
忍田 幸夫 推薦
1昇
田村  洸 大阪
2昇
奥田 直裕 東京
△4

 1回戦、起家は私。1回戦の起家というのは、自分の中でエンジンがかかりきっていないために好きになれない。そして今回の東1局に忍田が開いた手牌によって、これまで以上に嫌いになった。

 しかし、結果的にこれが東1局でよかった。ラス抜けを果たすまでまだ局数はたっぷりある。次局5・10、東4局にも5・10とアガり、南1局に小川が奥田から40を出アガってそのままフィニッシュ。奥田にラスを押し付けることが出来た。
 2回戦でも私は3局連続放銃で離れたラスめになっていたが、南3局のリーチ・ツモ・ドラ2でラス抜けに成功。これで奥田は連敗、この後も奥田にとっては苦しい展開が続くことになる。
 5回戦終了時のスコアは、小川2昇・忍田2昇・田村1昇・奥田△4。迎えた規定の6回戦、追う立場の私は前のめりに戦わなければならないが、守備力に自信がない私にとっては、むしろ得意な展開かもしれない。
 まず東2局に奥田が小川から40。小川がラスなら好都合とほくそ笑んでいたが、そう簡単にはいかなかった。東3局に忍田から小川に12、南1局に私から小川に18。そしてその2で小川がトドメの一撃が出た。
 これで小川のトップはほぼ決まり。となると私がすべきことは、忍田にラスをひかせることである。
 このあと私のアガリで一旦忍田をラスめに落とすことに成功するも、その忍田はオヤ番で6オールをひき再逆転。オーラスを迎えての点差は、小川127→奥田08→忍田15→田村となった。
 この点差、オヤ番が奥田なのが面倒である。目標は忍田のラスであるため、8・16以上のツモアガリは出来ない。3・6では忍田に届かないため、ツモアガリ条件は4・8以上7・14以下である(もしくは、自分自身がトップになる30・60以上)。小川や忍田からの出アガリにはほとんど条件がないが、早くて目立たないテンパイが入らない限りは流局歓迎の2人が放銃することはないだろう。
 このように厳しい条件だったが、あっさり手が入った。
 頼みのが早々にアンコになり、7巡目にこの早くて目立たず、奥田からの出アガリ以外はすべてOKというおあつらえ向きのテンパイ。2巡後にをひいて、延長突入が確定した。

 起家から奥田△4・小川3昇・田村1昇・忍田1昇の座順でで迎えた7回戦。あとは忍田との「タイマン」だ。まず先制したのは私。
 東2局にこの20・40。大きなアガリには違いないが、これで勝ったとは思っていない。相手となるのは、麻将連合の代表であり順位戦A級でも活躍していた、あの「忍田幸夫」である。
 その忍田が忍田らしさを見せたのは東3局。
 私のリードが消し飛び、オヤカブリの分で逆に20のリードを許す。簡単に勝たせてくれないのは覚悟していたが、こうもすぐにひっくり返されるとは。
 その後も私と忍田のアガリ合戦が続く。南1局に私が奥田から12、南2局に私が小川から12。南3局には小川が忍田のリーチに28を差し込んだ。これで私とラスオヤである忍田との差は24。
 気持ちを引き締めて迎えたオーラス。自分でめくったドラ表示牌のにがっかりし、配牌もいいとは言い難い。が、条件はリーチしてツモる、ただそれだけだ。そう考えて手なりで進行していたら、5巡目に小川からリーチがかかる。小川のリーチの意図はよく分からないが(後で聞いた話では、私と忍田の同点トップを阻止するためのノーテンリーチだったようだ)、とにもかくにもこれで条件は16出アガリでよくなった。そして10巡目に待望のテンパイ。ピンフのみの12では届かないので、当然のリーチ。
 ここから決着がつくまでの時間は本当に長く感じたが、実際には4巡しか経っていなかったようだ。14巡目に小川がツモ切った牌は、この瞬間に小川と私の勝ち上がりが決まった。

(田村 洸)


B卓:激しいアガリ合い
B卓
終了
平井  淳 A級
1昇
愛澤 圭次 A級
±0
小林  剛 推薦
△2
大川戸 浩 東京
1昇

 「ハッセン・イチマンロクセン」。2次予選が始まって10分で、隣の卓から聞こえた声である。
 別卓でよかった。こっちはというと、初戦の最大打点が30と何とも小粒。が、20の放銃が致命傷になりかねない。オリるにも必死である。途中、タンヤオ・サンショクをメンゼンでテンパイしたが、ドラがのカンでは簡単には出るはずもなく、その他は戦えそうな形にもならない。
 愛澤への18放銃もあり、私はラスめでオーラス南家。トップめ愛澤とは78差、3着めのラスオヤ小林とは02差。
 タンピン・高目イーペイコーののイーシャンテンになったところで上家の小林が打。メンゼンでテンパイした場合、高目を愛澤から直撃した場合のみトップだが、そんな都合のいいことが起こるわけもなしとチーテンを取る。小林にすれば、誰がツモアガってもラスなので、ラスめの私の仕掛けすらも気にしてはいられないか。次巡、小林のでラス抜けの12。ラス抜けがやっとの展開。先が思いやられるも、ラス抜けできただけよしと、ちょっとだけ前向きに解釈してみる。
 2回戦、平井から小林に12、大川戸から平井に16、愛澤から大川戸に12と3局続けてチョーマが細かく動いた東4局、ひとつ仕掛けた上家・平井に対して、私のテンパイは役なし、ドラのカン。うっかりドラでもツモらんものかと思った次巡、平井がツモ牌を手元に置いて「ロン」。見るとこれがそのドラので、タンヤオのシャンポンマチの高い方。誰かチーでもしてくれていれば、などとくだらないことを思うが、相手は安目でも40の仕掛け、こっちは役なし。デキの違いにため息ひとつ。
 これで平井が頭ひとつ抜け出し、あとはラスの押し付け合いになりそうな南場に入り、ラスめの小林が4巡目リーチ。ドラはで、私の手牌にはなし。ササったら40以上は覚悟しなければいけないので必死になってオリる。と、小林がをツモ切り。愛澤・平井からも出され、結局ドラは4枚とも場に。役ありならヤミテンだろうから、役なしリャンメンリーチか。
 オーラス、私が愛澤に12を放銃。が、小林が先ほど出していたリーチ棒のおかげで02差でラスにならずに済んだ。ラス抜けしたようなものかと、またもちょっとだけ前向きに解釈してみるが、何のことはない、やっとこさの3着が2回続いているのである。次は少しは戦える形になるだろうか。
 3回戦、まずは愛澤がピンフ・ドラ2の40を平井から。ちょっとだけ気が楽になるが、次局平井が小林から12。すると、小林がダブポンの10オールツモ。またラスの恐怖との戦いなのかとブルーになったが、次局平井のに小林から「ロン」の声。倒された手牌にはドラのが3枚。私は南場に入って小林から20を出アガるが、続くオヤ番でその小林が平井から28。オヤ番もなくなり、トップめが遥か彼方では、もはやなす術なしか。あとは平井にだけ気をつけることとして、残り2局は流局。
 またも3着だが、今回の持ち点は原点より浮いている。何となくよくなってきているような、そうではないような。
 4回戦に入って、平井8オール、流局後に愛澤26オール。また上が遠くなってしまったところで、私が小林に48放銃。小林はその後愛澤から78とすっかり王様。私はというと、平井に40放銃してラス抜けの道すら見えない状態に。その後、愛澤がタンヤオ・サンショクを力強くツモアガって小林に迫るが、小林はオーラスのオヤ番で平井から60を仕留めてほぼ万全のトップ。
 この日の小林は4戦すべてに連帯して±0。忙しい男である。明日もこの調子なのだろうか。一方、私はというと、4戦目に0−1の△1。しかも、3着・3着・3着・ラスである。ま、4戦目にラスをひいて、これ以上悪くはならないだろうと、根拠もなく楽観的に考えてみることにする。

 日付が変わって5回戦。開局、配牌にドラが2枚で俄然ヤル気が出るも、テンパイまでで流局。それでも、昨日よりはかなりいい感触。そこで色気出してやられることもままあるのだが、そうはいっても現在最下位。トップ取らないことには始まらない。
 東2局、小林がファン牌ポンの後、ドラのを手出し。テンパイ、それも好形か?
 が、その直後にこちらの手もこうなった。

 そうは簡単には引き下がれないし、そもそもオリられる牌がないのだ。そこで腹をくくって打。その甲斐あってか、ツモでテンパイし、小林ので20のアガリ。ひょっとして見逃す手もあったかと、アガれた幸運をそっちのけで考えるあたり、お気楽なものである。
 流局を挟んで、東4局は4巡目に、
 これはさすがに先手を取れただろうとリーチと打って出てみるが、トイメンの平井がを手元にひき寄せて「ロン」とツモアガリ。見ると、それぞれ2枚ずつのチートイツドラ2。最終手出しはであった。もう1トン、隣に積まれていればと悔やんでみてもしょうがなく、このまま平井トップ−小林ラスで、1昇2人・△1が2人と上下分かれて既定の6回戦へ。
 マイナス組の私は、とにかくプラスの2人のうちどちらかをラスに沈める必要がある。同じ△1の小林は私をラスに落とすアガリはしないだろう。
 東1局、をアンコにしてタンキの16を平井から終盤に出アガる。次局は小林に20を放銃するも、その次に20をまた平井から出アガって、マイナス組2人が上に立ついい展開。さらに東4には小林が7・14、南1局は私が平井からタンヤオドラ1の28をまたもや平井から。南3局は小林が3・6をツモってオーラスを迎えた。
 私と小林の点差は27。ここで私にピンフのみのテンパイが入り、ここが勝負どころとリーチ。ツモれれば首尾よくトップだが、あえなく愛澤に18の放銃となってしまう。
 その2、私のトップ条件は13・26以上、構想としてはピンフ・ドラ1をリーチしてツモ。が、意に反してドラは私の手には1枚しかない。このままでは条件を満たすテンパイはなかなか難しい。小林がトップならまだマシかと、半ば諦めていたところ、ドラがトイツになり、
となったところでがアンコになり、さらに手牌がヒートアップ。ここで打とすると、すでに1枚切っているをひいてきて打。ツモで打とて並びシャンポンのテンパイを取ると、ひいてきたのが。打でマチカエしたところ、トップめの小林からが出てきて80。スコアを±0に戻すと同時に、延長も決まった。

 7回戦開始時のスコアは、愛澤1昇、平井・大川戸±0、小林△1。
 私がトップが取れればほぼ決着だが、東2局に小林が20・40の先制。オヤが愛澤のため、このまま終われば全員イーブンスコアとなるが、まだ諦める点差ではない。
 東4局は私のオヤ番。アンコのタンキの絵が合って14オール。その後、平井から愛澤へ16、次局はお返しとばかりに今度は平井が愛澤から12。この後、大川戸から平井に12、平井6オールで迎えた南3局、愛澤から3巡目にリーチがかかるも、どうにか凌げて流局。
 迎えたオーラス、ドラは。平井がをポンした後、私にもテンパイが入った。
 ツモればトップ。ツモで打とした直後、小林のに平井からロンの声。
 
 鮮やかな逆転トップだが、そんなことよりも、もし私がをツモ切っていれば、私がラスとなり、勝負が決するところであった。
 これで愛澤の1昇が平井に移って再延長となった。
 8回戦、スコアは平井1昇、愛澤・大川戸±0、小林△1。もしこの回で勝負がつかなければ、続きは日を改めて行われることが開始前に決まった。
 東1局、私が愛澤にピンフ・イーペイコーの20を放銃。それにしても愛澤、実にピンフが多い。正直うらやましい。
 東2局、道中ドラのが重なり、チートイツ本線で手を進めるも、イーシャンテン取りでの打牌選択がドラ表示牌のとション牌の、そして自分で1枚切っているではもはや望み薄か。残りツモ1回というところで、をひいてテンパイし、打。「テンパイどまりか…」と溜息をつきながら持ってきた最終ツモ牌がなんと。「ロン」の声はさすがに上ずっていたように思う。
 これでトップめに立ったが、このまま終わらせてくれるような人たちではないだろうなあと考えていたら、やはり小林から7巡目に「リーチ」の声。その時点で私の手は、
 安全牌が全くない。泣きそうになりながら何を打つかを考える。が3枚あるので、ソウズの上はないだろうと勝手に決めてから切り出す。その後はソウズを全部払い、どうにか切り抜けられた。
 東4局は平井が8オール。迎えたその2で私にマチのチートイツ・ドラ2のテンパイが入る。その後のマチカエをどうしようかと思っていたところ、が3枚、が2枚、が2枚バタバタと河に置かれ、パッと見いい待ちに。そして数巡後、平井からが出る。自分の素点を考えてアガったが、平井は上家だし、ここは見逃して小林か愛澤から出アガるべきだったのだろう。それに比べて平井は、私への放銃でラスにグッと近づいてしまったにも関わらず、次局落ち着いて小林から28の直撃をしっかり取っている。さすがである。
 南2局はラスめ小林にとって最後のオヤ番。3着め平井との64差を残してあと3局である。このまま終わると、私と平井の勝ち残り。もし私のトップを消せたとしても、その場合はおそらく現在±0の愛澤がトップになるので、その場合でも小林は敗退。小林が望みをつなぐには、「自身のラス抜け」かつ「平井ラス」がほぼ絶対条件か。
 一方愛澤は、私がトップなら平井がラスにならない限り敗退なので、まずは私をトップめから引きずり下ろすことが第一命題か。自身がトップであれば、平井がラスでなければ勝ち残り。たとえ平井がラスでも、自身が昇を持った上での再延長なので、かなり有利に戦える。平井は自身がラスにならなければ、私と愛澤のどちらがトップでも勝ち上がりなので、上は勝手にやらせて3着死守か。
 各々の思惑が絡む中、南2局が始まったが、結果は愛澤のタンヤオ・チートイツのツモアガリ。これで3着め平井とラスめ小林の点差が80と開くが、私と愛澤の点差は44に詰まって、次局はその愛澤のオヤ番。愛澤にトップを奪われては負ける。ここが私にとっての正念場。
 配牌を取ると、 がアンコにが2枚づつ。道中が重なり、をポン。続いてもポンして、
  
 ここで小林からが出て16。愛澤のオヤ番を流すことに成功した。
 さあ、オーラスだ。3着め平井とラスめ小林の差は96。小林に決着条件はなく、再延長条件は、
 ・平井から52以上の直撃
 ・20・40以上のツモアガリ
 ・私からの120以上の出アガリ
 ・出場所を問わない役満
 現実的にはマンガンツモのみか。
 一方、トップめ私と2着め愛澤との差は60。愛澤の決着条件は、
 ・13・26以上のツモアガリ
 ・64以上の出アガリ(ただし、平井からの120以上の出アガリ再延長)
 ・私からの32以上の直撃
 そんな条件の中、サイツが振られ、ドラがとなった。自分の配牌にが2枚あるのを見て、正直かなりホッとした。このまま流局してくれれば…。が、そんな願いも空しく、小林から早くも6巡目にドラ打ちのリーチがかかった。その同巡、私の手がこうなった。
 を打てばテンパイ、しかも打とすれば片アガリながら出アガリも可能だが、小林のリーチ宣言牌の前に、さらにその2巡前にが河に。を押す強い理由があるわけでもなく、ここは素直にを切って撤退。が、ここで愛澤からのヤマ越しの可能性をすっかり忘れていた。愛澤に28のテンパイが入っていなくて本当によかった。
 その4巡後、
 この形になったところで、平井からが出てくる。チーテンを取るのもアリだとは思うが、そうすると小林にツモを1回プレゼントすることになる。長考したが、結局自重してにヤマに手を伸ばす。
 これが例えば、
のような形であれば、平井からの差し込みも期待して鳴いていたのかもしれないが。どちらがよかったのかは未だに分からない。
 その後、愛澤にもテンパイが入ったが、小林・愛澤ともに最後までロン牌をひき寄せることができず、流局。こうして平井と私が準決勝に駒を進めた。

(大川戸 浩)


C卓:鳴り響く「わにとシャンプー」
C卓
終了
堀川 隆司 A級
△1
山田 史佳 B級
△1
山本 裕司 推薦
1昇
中川 裕樹 仙台
1昇

 過去2回八翔位戦に出場して、勝ち上がりはおろか1昇さえしたことがない(トータル9戦4降)が大阪での1次予選をバカヅキで通過して迎えた2次予選。組み合わせの通知を貰った時から楽しみであると同時に、ある不安を覚えていた。それは相手3人のうち、2人が全くデータのない相手だったからだ。そこでまず自分なりに情報収集した結果をピックアップしてみる(以下、文中敬称略)。
 堀川隆司:2004年に名翔位を獲得。順位戦A級においても常に安定した成績を残しており、一日どころか百日の長はあろうかと思われる。ただし、ほぼ初対面であり、過去の『101マガジン』を引っ張り出して牌譜を検証した結果、比較的受けマージャンに自信があるタイプだろうか…と勝手に解釈してみる。
 山田史佳:今期から順位戦に参加。正直、全くデータがないダークホース的な存在。当然初対面であり、失礼ながら名前を見て勝手に女の子だと思っていた。1回戦くらいは自由に打ってみて雀風を探るしかない。
 山本裕司:麻将連合μの認定プロ。諸大会で同卓や観戦は多々行ったことがあるが、「強い」の一言。破壊力満点の攻撃的な雀風でありながら、無駄な放銃もしないという実は守備力にも自信がありそうな隙のないマージャン。一度、大舞台で番勝負を挑んでみたいと思っていた。

 1回戦(座順/山本・山田・中川・堀川)。山田が東1局に堀川から20、東3局には20・40と快調な滑り出し。東4局に堀川から山本へイッツーの28。そして南1局の私の手牌は、

 5巡目にをポンして打。私の師匠である麻将連合の認定プロの黒澤耕一郎がいうところの「甘ったれた仕掛け」である。しかし次巡をひき、打をアンコにして結果的に(不思議な仕掛けと手出しに惑わされたか)山本からで80の出アガリ。
 南3局に山本がラス抜けとなる価値ある3・6をひきアガり、南4局を迎えての点差は山田63→中川94→山本11→堀川。私としては13・26ツモか32以上の山田直撃、あるいは64以上を脇から出アガることがひとつの指標になるわけだが、最低6回戦の長丁場を考えるとテーマをラスめ堀川マークに絞ってバー狙いの安全策も有力な作戦と思われる。
 これは余談だが、この対局の数日前、仙台の超強豪であり勝手に師匠筋と思っている櫻井一幸氏にアドバイスを求めたところ、「中川は人を見てもわからないだろうから、気にせずやれば?」とのありがたいお言葉。知恵比べや我慢比べでかなわない相手ならば、負けて元々自分のマージャンで思いっきりぶつかろうと思っていた。当然、結論は前者。そして終盤入ったテンパイが、
 が、ラス抜けのために間違いなく真っ直ぐであろう堀川はともかく、山本までもが自力決着のためにブリブリ押している。正直怖い。そして13巡目に堀川からがこぼれるが、目をつぶりスルー。2巡後に、3人の共通安全牌に窮した山田が痛恨のでオリ打ち、僥倖のトップとなった。
 ちなみに対局後、山本に尋ねたところ、で大三元のテンパイが入っていたとのこと。掴んだら三途の川を渡っていた(中川1昇・山田±0・山本±0・堀川△1)。

 2回戦(山田・山本・中川・堀川)。東1局、中川から山本へ12、東2局は堀川3・6ツモと、私にとっては苦しい立ち上がり。しかし東3局にイーシャンテンでをアンカンしてテンパイするや即リーチしてツモアガリ、ドラ1で26オール。その2は山本が3・6ツモ、東4局は堀川から山本へ12でまだまだどう転ぶかわからない。
 ところが南入してから3局連続で流局と膠着状態が続き(トップめの私からすれば大歓迎)、迎えた南4局に事件は起きた、いや、起こした。
 6巡目に、
のタンピンテンパイ。すでに2昇目確定気分。幸せ者だな…でも世の中そんなに甘くないぞ。そして、ラスオヤの堀川がをポンした後にひいてきたを手拍子でツモ切りしたところ、堀川が意外そうなアクセントで「ロン」の発声。開かれた手は、
 
のデバサイ!! あの堀川が客風牌のを一鳴きしてドラが見えていないことを考えれば、せめてション牌のではなくにスライドさせるべきだったか。であれば、もし仮に山本か山田からが出れば頭ハネで私のアガリである。結果論という声もあるかもしれないが、トップレベルになればなるほど、こういった微々たる積み重ねが、実はとんでもない差になってくるものだと私は思う。
 さて動揺して築牌に手間取ったその2、点差は堀川87→山本36→山田31→中川。
 手にした配牌は、
 山田との点差を考えればチートイツのハメ手リーチかヤミテンでのツモ直が本線か。ところがいきなりひいたのが。嬉しいような悲しいような…とりあえずを打ってお茶を濁す。そこからのツモが! 前局のダメージが嘘のような20代の鬼びき(麻将連合の小林プロから全力否定されそうだが)。アガラスをしないように20秒ほど点差を確認してリーチ。当然?のように即ツモの13・26でラス抜けに成功。
 ちなに山田は配牌リャンシャンテンのピンフ系の手だったとのこと。河を工夫すれば堀川・山本からの差し込みさえも期待できそうだっただけに、理不尽なこの結果に心中穏やかではなかっただろう。
 対局後、山本「相変わらず太いねー」、中川「太さ以外で勝てる要素ないので」の会話(中川1昇・堀川±0・山本±0・山田△1)。

 3回戦(山田・中川・山本・堀川)。山本が東2局の13・26のツモに続き、東3局のオヤ番では強い河で三者をオロし、のフリテンを悠々高目のタンヤオ・ピンフ・サンショク・ツモアガリでトップ確定。後の焦点はラスの押し付け合いか。
 東4局は堀川から山本へ16、南1局その1で山本から山田へ30、その2は逆に山田から山本へ20。南2局と南3局は流局して、迎えた南4局、点差は山本221→山田23→中川03→堀川。ラスオヤ堀川のポンに対して、長考した山田が初牌のを静かに河に置く。この意味を軽視した私は堀川の現物を手バラから抜き打ち、山田の待ちのピンフ・ドラ1にジャストミート。堀川は表情に全く出さないが、内心はガッツポーズだろう。この後しばらく、ももいろクローバーZの「わにとシャンプー」という歌が頭の中でリピートする。
「ヤバい、ヤバい、マジでヤバい!」(山本1昇・中川±0・堀川±0・山田△1)。

 4回戦(堀川・山本・山田・中川)。東1局に中川13・26ツモ、東2局その1に堀川が山本にチートイツの24を献上、その2は山本がリーチを放つも流局。しかし次局3・6ツモでしっかりリーチ棒を回収。さらに山本は東4局にもドラ雀頭の手をひき、テンパネ13・26。
 南1局、中川がポンのドラのアンコの手をひきアガっての20・40で、山本とのマッチレースの様相。南2局・南3局を流局で迎えた南4局、点差は中川48→山本107→山田54→堀川。
 8巡目に山本がリーチ。さすがにリーチをかけての直撃狙いは虫がよすぎるので、ドラ2の十分形ツモ専、あるいは両脇からの52出アガリも視野に入れたものか。
 ところが11巡目に堀川が追いかけリーチ。これは、山本から出たリーチ棒を加えた52出アガリのラス抜けが本命か。そして、ほどなくして堀川のに山本が手を開く。
 なるほど、堀川が追いかけてくることを想定しての出アガリ40のリーチが抜けていた。きっちり黒棒差で捲られアツいが、スコア的には悪くない(山本2昇・中川±0・堀川△1・山田△1)。

 2日目、5回戦(堀川・中川・山本・山田)。私事だが、前夜はアドレナリンが無駄に分泌されすぎて、2時間ほどしか眠れなかった。延長戦はなるべく避けたいのが本音。勝っても負けても短期決着させようと思っていた。
 閑話休題。東1局と東2局は流局と、前日とは違い静かな滑り出し。東3局、7巡目に堀川がポンテン、10巡目にタンヤオドラ2の10・20。南1局はオヤ番の堀川が11巡目にをポンしてテンパイ濃厚。これに対して山田がドラのをアンカンして堀川にカブせる。嵐の予感が脳裏をかすめたが、結局、山田が堀川の18に捕まり、山田以外の3人はホッと一息。その2は山田が中川へピンフの12。
 南2局、6巡目に山本がをポンしてワンズの一色手。これに対して私は勝負どころと見てドラ、初牌を立て続けにカブせる。そして15巡目、私が高目でタンヤオ・ピンフ・ツモ・イーペイコーの26オール。その2も6巡目にのポンテンでのシャンポン待ち、安目ながらツモの8オール。
 その3は山田がチーテンのタンヤオ・ドラ2を堀川から。この40は正直ありがたかった。いうまでもなく番手の堀川がマンツモ圏外になるからだが、これ以上負債を抱えられない山田も背に腹はかえられないので、ここはやむを得ないか。南2局は山本から中川へ20で、南4局を迎えての点差は中川140→堀川18→山田40→山本。
 その南4局、中川の、
からのカンチーに対し北家の山本が
のツモ直リーチ。直後の山田が念を込めるような仕草でヤマに手を伸ばすと、願いが天に通じたか。
 供託込みの14オール。しかし、山田の反撃もここまで。その2は中川が早い巡目で、
からポンテン、山田から16で終了(山本1昇・中川1昇・堀川△1・山田△1)。

 規定の6回戦(堀川・山田・中川・山本)。スコア的に有利になったはずにもかかわらず、東2局にやらかしてしまった。中盤、堀川の打に対して手出しで山田が初牌のを打ち出す。私が堀川に合わせてをアンコから打つと、山田から「ロン」の声。開かれた手は、
で痛恨の42。再びももクロちゃん登場、「わにシャン」リピート。
 それでも東4局にピンフリーチを狙い通り安目でひきアガり7・14。オヤカブリの山本とこの時点で同点ラスなしに。目論見通り南1局・南2局と流局して迎えた南3局のオヤ番。念じて配牌を取るが、見事にバラバラ。最初から流局希望の穴熊打法を選択。結果的にこれがよくなかったような気がする。堀川・山田連合軍にのびのび打たれ、堀川の4・8ツモでラスなし解消。死に手も使いよう、ブラフでもいいから強い河を作ればどうなっていたか。まだ南4局が残っていることを考えれば、2人が撤退することも考えられる。そのあたりの水面下の駆け引きが全然できていない。
 さらに南4局もアガれる見込みのない配牌とツモと必死に格闘、山本を押し上げるという作戦を完全に忘れている。流局カウントダウンが始まり、早く差し込んでほしい山本は内心「何やってんだよ」の心境だろう。明確にロン牌がわからなくとも、せめてその姿勢は見せるべきだった。
 当然のように流局に終わり、延長戦に突入。レースを混沌とさせてしまった(山本1昇・中川±0・山田±0・堀川△1)。

 延長7回戦(堀川・山田・中川・山本)。スコア的にも体力的にも勝手に満身創痍になった。マージャンのの技量はいかんともしがたいが、体調管理くらいは何とかしたいものだ。超一流のアスリートは成績もさることながら、怪我をしないようなトレーニングを日々心がけるものだ。イチロー然り、白鵬然り。
 さて、東2局に中川13・26ツモの後、東4局に堀川が12巡目に
でリーチを放つが流局。迎えた南1局、序盤に温厚な堀川がを手元に叩きつける。チートイツ・ドラ2の40オールでひと捲り。これが嵐の序曲。
 その2は流局して迎えた南2局、10巡目に山本がこのポンテン。
 
 が、山田もをポンして押し返す。山本がツモで打のマチカエの直後、私の手牌が、
 カマボコ状態なので、ハラを括って大好きな「突撃」の打。するとここからとひいて残すはハイテイ。盲牌で縦と斜めのラインが上下に…。を思わずメキリと叩きつけた。アガった人間が一番驚いている。点数申告まで約10秒、しかも60・120と間違える。慌てて立会人から「三倍満はありません」の声で赤っ恥。
 南3局は、山田が少しでも堀川を援護するべく10巡目リーチを放つが、私は、
をひき入れ、勝負の打。ほどなくして山田がを掴み、供託付きの78。これで番手の堀川とは193差、勝負あったかに見えた。
 が、その2で堀川がリーチ。
 終盤に差し掛かって山田が差し込みにいくが、不要とばかりに自力でをひき寄せ20・40。やはり簡単には勝たせてくれない。
 堀川との点差が73差になった南4局は、堀川にとっての条件緩和のために山田が第1打でリーチ棒を出すかと思われたが、ドラ色のワンズを河に出さず7巡目リーチ。これは、万が一の山本・中川からの80直撃を想定させて楽をさせない作戦か。その作戦通り山本・中川連合軍は撤退するが、苦悶の表情で摸打を続ける堀川に条件を満たすテンパイが入ることはなかった(山本1昇・中川1昇・堀川△1・山田△1)。

 対局を終えて:「各々の条件を考えれば自ずと打牌は決まってくる」とは黒澤師の言葉からの請け売り。今回は多少のバカヅキで勝てたが、全く条件が見えておらず、場違いな打牌をすることが多々あったように思う。反省点は挙げればキリがないが、それらを肴に準決勝までのひと時を楽しもう。そして準決勝でまた苦しもう。

(中川 裕樹)


D卓:阿吽の呼吸
D卓
終了
成岡 明彦 名翔位
1昇
明村  諭 推薦
△1
中村ゆたか 東京
△1
猪俣 裕之 東京
1昇

 初戦は、猪俣の3・6で静かに始まった。東2局は成岡が中村から20。南1局にはオヤの成岡がピンズ一色模様の3フーロ。これに対して上家の中村がドラをアンコにしてテンパイを果たすものの、ピンズを掴まされて自重したために流局。もし勝負していれば結果的にアガリはあったようだが、落ちついて次局に猪俣からの20でラス抜けを果たす。
 南3局は苦悶の表情で摸打を続ける猪俣がドラのを叩きつけると、チートイツで20・40。そのまま初戦は猪俣が逃げ切った(◎猪俣/●明村)。
 猪俣は続く2回戦でも東1局でモノにした5・10と南3局での加点によるリードを守って連勝を果たす(◎猪俣/●成岡)。
 しかし、2人の八翔位経験者による逆襲劇がここから始まる。
 3回戦は成岡の門風ツモの7・14で始まり、続く東2局その1、オヤの成岡が中盤にのトイツ落とし。その直後に猪俣がヤマ越しで切ったが成岡のタンヤオドラ1のカンに捕まって42。続くその2はまた成岡が、今度はダブをアンカンして3メンチャンをツモり上げ、40オール。
 東4局、もう1人の元八翔位・明村が猪俣からタンピンドラ2を打ち取り120。
 南場に入ってもこの両者によるトップ争いが続いたが、手数の多かった成岡に軍配が上がった。

(◎成岡/●猪俣)
 4回戦は東1局、中村の2フーロに対し、成岡がドラので20を打ち上げる。その成岡は次局に4・8ですぐに負債を戻すが、東3局に猪俣が強烈なアガリをモノにした。
 リャンシャンテンからと連続でひき込み、場に安いソウズ待ちになったテンパイから即ツモ。僥倖のアガリであった。
 ところが、やはり成岡名翔位が強い。東3局その2、東4局と連続でアガると、南場に入ってからは手を開けるのは成岡のみで、そのまま連勝を決めた(◎成岡/●中村)。

 5回戦を迎えてのスコアは、成岡・猪俣1昇、明村・中村△1の源平模様。5回戦の結果末次第では ‘’死のシフト’’ まで思い描いていた前者2人であったかは定かではないが、さすがに現実はそう簡単には転ばない。後がない2人の意地が炸裂する。
 開局早々、中村がチートイツドラ2をツモり上げる。オヤカブリは猪俣。東3局には、オヤの明村が猪俣から終盤に30。その後、東4局その1はオヤの中村6オール、その2は明村が成岡から28と、マイナス組がお互い相譲らず。
 南場に入り、加点を続けた明村が中村との差を徐々に詰め、オーラスを迎えて点差は、中村11→明村159→成岡21→猪俣。
 アガればトップの上位2人だが、5巡目に明村が上家・成岡の捨てたを仕掛ける。
 
 苦しい仕掛けだが、次巡、中村に合わせ打ちした成岡のをさらにチー。そしてすぐにをひき入れ、テンパイ。
  
 直後にラスめの猪俣からリーチがかかるものの、明村がをひき寄せて念願のトップをもぎ取り、星を±0に戻した(◎明村/●猪俣)。

 規定の6回戦(成岡1昇、明村±0・中村△1・猪俣±0)、全員に勝ち上がりの可能性があり、すんなり終わらなさそうな雰囲気が漂う中、開局終盤17巡目にオヤの猪俣が14オール。
 河に5枚切れのを前巡にひき込んでの即ツモ。前日に引き続いて好調さを感じさせる。
 東2局、猪俣に負けじと、同様に決着権を持つオヤの明村が10巡目にリーチ。
 明村のリーチ宣言牌はだが、一発目に成岡がドラのを叩き切る。スジとはいえ、もちろん勝負に来ている。それを見た猪が俣、明村の河にあるを抜き打って。読みどおり成岡16への差し込みに成功。
 東3局6巡目、西家・猪俣にツモリハネ満の勝負手が入る。
 2巡後、少考した成岡からが出て64。
 東4局、星を戻して延長を目論む中村がと仕掛けてテンパイを入れるが流局。
  
 南2局はオヤの明村が連続してアガり(14オール、成岡から30)、猪俣に28差まで詰め寄る。その猪俣に次局高目ピンフ・サンショク・ドラ2のテンパイが入り、安目ながら成岡がら出アガって、嫌な明村のオヤを終わらせる。
 猪俣68→明村76→中村108→成岡の並びで迎えた南4局。11巡目に明村が猪俣の切った場に安いピンズにドラアンコのチーテン。
 
 力のこもったツモを繰り返す明村だったが、最後までロン牌は姿を現さなかった。
(◎猪俣/●成岡)

 延長7回戦(猪俣1昇・中村△1・明村±0・成岡±0)、まだ勝負の行方がどうなるか全く分からない中、東1局6巡目にオヤの猪俣がドラのを切り飛ばし、14巡目にピンフツモドラ1の14オール。6回戦とほぼ同じ状況でのスタートとなったが、その後は一転。東2・3局と猪俣の放銃が続く。(成岡に12、中村に52)
 ラスめのまま南1局のオヤ番を迎えた猪俣、6巡目にメンツ手でもチートイツでもイーシャンテンのこんな手格好に。
 ここに、トイメンの明村からドラが切られる。ポンテンをとった猪俣が明村からで打ち取って120。
 その明村、南2局に中村からもぎ取るが、次局中村の2フーロの仕掛けに対して切ったがこんな120にササった。
  
 これで待望のトップめに立った中村。南4局を迎えて点差は、中村20→猪俣100→成岡212→明村。このままの並びで終われば再延長である。が、オヤの成岡が7巡目にピンフツモドラ2の26オールで2着めに浮上、トップめ中村まで16差に詰め寄る。
 猪俣とすれば、自身が20以上の手をアガって中村を捲るか、成岡をトップに押し上げるかのいずれも選択できる。さらに、アガリに向かった場合は、状況によっては上家の成岡からのアシストも受けやすい。
 そんな状況の中、13巡目に成岡が少考して打。同巡、猪俣がドラ()そばのをツモり、手を止めた。河からはは中村には当たりにくいこと、またテンパイ気配を感じてないことから、成岡へササれとの思いとともに切ったが見事に成岡のサンショクドラ1にジャストミート。
 続くその3は猪俣自らピンフをツモり上げ、成岡とともに準決勝進出を果たした。

(猪俣 裕之)


E卓:戦わなかった2次予選(嘆きの自戦リポート)
E卓
終了
村田 光陽 A級
△1
安居 嘉康 B級
±0
星賀 一彦 東京
△1
石川 由人 東京
2昇

 4回戦開始時のスコアは四者イーブン。南4局を迎えて(ドラ)、トップめはオヤの村田で、二番手の北家・石川とは10差の僅差。私、西家・星賀は3着めで、中盤に待ちのピンフののテンパイを入れたところで長考。7・14のツモアガリでトップ。条件を満たしたテンパイなのに、リーチをかけられなかった。ここでリーチ棒を出すと、ラスめ安居のマンガンツモ圏内に入ってしまうと、弱気になってしまったのだ。ピンズがという形で、もしをひければタンヤオに変わるため、そうなればリーチは不要ということもあったが…。
 そうこうするうちに石川の仕掛けが1つ入り、ひかされたのが使い道のないドラの。ここでしかたなく雀頭を外すと、石川に喰われてしまった。次巡、ツモで役なし・ドラタンキのテンパイに復活。が上家の安居から出れば喰い替えてタンヤオにするつもりでいたところ、なんとトップめの村田からリーチ!
 この瞬間、石川・村田が同点のトップめなので、ひょっとするとノーテンリーチなのか?と考えながら、ツモ切り。すると石川がこれをポンして3フーロ。すぐに安居が石川のロン牌を打って、石川の単独トップ。これでスコアは石川1昇・村田±0・星賀±0・安居△1となった。
 2人トップ阻止、自身のラス上等!の安居の差し込み。安居は1回戦で石川のコクシでオヤカブリさせられたの後の2回戦に苦しいラスめから抜け出し、3回戦でスコアをイーブンに戻している。そんな安居の戦いぶりに比して、自身の腰の退けた様を反省しつつ、帰路についた。
 2日目5回戦、東3局を迎えて点差は、星賀14→石川24→村田14→安居。星賀が下家・村田のピンズ一色手にが打てずに撤退。オヤの安居も押している。村田の15巡目のが安居のタンヤオ・ピンフ・サンショクの高目にササり120。その2は安居が8巡目リーチ、14巡目に中押しの20オール。東4局は星賀が9巡目リーチをドラの方でツモアガり30・60。これで、星賀02→安居182→石川114→村田となる。
 南1局(ドラ)、前に出る安居から石川が16。南2局(ドラ)安居がと食い仕掛けて、片アガリのダブをツモって10・20。迷いのない軽快な迷いのない仕掛けである。
 南3局は流局。迎えた南4局(ドラ)、並びは安居32→星賀232→石川124→村田。星賀は仕掛けて80のテンパイを入れたが、待ちのタンヤオの片アガリと苦しい。結果はオヤの石川に30打ち込み。その2のツモ直のテンパイも16巡目。流局して安居が再びスコアを±0に戻した。
  規定の6回戦。東1局(ドラ)、村田が7巡目リーチ。ドラ3枚の星賀が村田から2つ仕掛けてテンパイするも流局。東2局は、村田が1つ仕掛けてイッツードラ1の5・10。石川も20のテンパイを入れていたが、村田が自身のリーチ棒を回収してトップめに立った。
 東3局は流局。東4局は安居の10巡目のピンフリーチも流局。南1局は石川が安居から12+供託10。これで点差は、村田08→石川22→星賀27→安居。
 南2局は石川から村田に12。次局は流局し、南4局を迎えて点差は、村田27→石川10→星賀27→安居。僅差ではあるが、このままの並びなら延長となる。星賀・安居は村田を逆転してトップなら決着。さらには、トップでなくとも、星賀は村田から20以上を出アガれば「石川2昇・星賀0・村田△1・安居△1」、一方の安居は村田から28以上を出アガれば「石川2昇・安居0・村田△1・星賀△1」でいずれも決着となる。
 ここで8巡目に安居からリーチがかかった。ここからは受ける三者とも長考、拝み打ちの連続。しかし、星賀はここで真っ直ぐいくべきだった。前日の反省(安居の戦いぶりに感服したこと)はどこへ置き忘れたか。石川・星賀の放銃は、安居のアガリ点が64未満なら、村田のトップは守られる。自身がラスになると確かに延長では不利になるが、それはまだ途中経過。順位戦選手ならおそらく全員が真っ直ぐいったはず。私は何とか合わせ打ちで凌いで、手牌はこんなもの。

 手を進めていたわけではない。打てない牌を溜め込んでいただけで、手からは安居の現物であるを打っている。流局お願いである、次巡までに安全牌が増えてくれ、というだけのこと。ドラのが重なった。真っ直ぐアガリに向かっていればカンでテンパイ、当然リーチを打てたはず。が通るかどうかはわからない。が、これは立派な負け牌譜だな、と。
 村田がを打つ。安居からいつもより少しトーンの高い声で「ロン」。
 観戦者から後で聞いたところによるとはヤマに3枚残りだったとのこと。形としては頭ハネがあった。気持ちを強く持てば戦えていたはずだ。ラスを恐れて逃げ廻っていただけの2次予選だった。

(星賀 一彦)


F卓:打撃戦を制したのは
F卓
終了
田中  実 A級
1昇
石川 稔也 B級
1昇
山舗  徹 大阪
△1
佐藤 文彦 東京
±0

 開始前に、「かなりの打撃戦になるのではないか」という予想も聞かれたF卓。その予想どおり、足を止めての壮絶な殴り合いが繰り広げられた。
 1回戦、細かくアガリを重ねてリードした山舗に対し、南3局にタンヤオ・サンショクをひいて16差まで詰め寄る田中。このアガリは同時にラスなしを作り出すのだが、当然のことながらまずは自分の都合優先。結局南4局は流局し、逃げ切りでトップを取った山舗。幸先のよいスタートだったはずなのだが、続く2回戦で突如袋叩きに遭った。
 まず開局、完全なオリ打ちでオヤ石川に42を献上。8オールを挟んでその3、石川が中盤にをポン。三者ともにオリに回ったが、それぞれが徐々に安全牌に窮するようになり迎えた17巡目、山舗がひいたのが。河にはが4枚、そしても2枚。(まさか、な)と山舗が思ったかどうか、そのままツモ切るとなんと石川から「ロン」の声。驚いた様子の三者だったが、開かれた牌姿はさらに度肝を抜くものだった。

 
 まさに奈落の底まで突き落とされた山舗、貯金を一瞬で失う羽目に。
 続く3戦目で飛び出したのは田中だった。東4局で石川からチートイツドラ2の64をせしめると、続く南1局にはを叩いて早々とホンイチテンパイ。だが、岐路に立ったのが7巡目。
 
 はテンパイ直前に石川に処理されており、残り2枚。田中の仕掛けを見ても全員がピンズをカブせてきていることもあり、「ピンズを咎められないと捌かれると思った(田中)」と打の待ち変えを決断。途端に山舗がをツモ切るものの、次巡再びツモで20・40。
 これでかなり有利になったと思われたの田中だったが、次局のオヤ番で悪夢が待っていた。南2局、山舗がダブと相次いで仕掛け、11巡目にひきアガったのがこれ。
  
 まさにひと捲りの40・80。(あの時タンキのままにしておけば…)と田中が考えたとしても無理はないが、もはや時すでに遅し。山舗はこの一発で得たリードを最後まで守りきって、先ほどのお返しとばかりに石川とのトップーラスを決め、スコアを1昇に戻した。
 さて、捲られた田中であったが、4回戦では東1局にオヤ番でドラ待ちチートイツをひき寄せた佐藤を10・20、石川から40(+10)と猛追し、南4局にラスめ石川のテンパイ打牌を咎めてトップ逆転。この結果、山舗1昇・田中1昇・佐藤±0、石川△1で2日目を迎えることとなった。
 田中・佐藤・山舗・石川の座順で始まった5回戦。一夜明けても打撃戦の展開は変わることなく、東2局、石川が1フーロのタンヤオ・チンイチをひき寄せ30・60。そのあともチョーマは動くが、このゲームの趨勢を決定づけたのは南2局だった。
 2巡目、オヤの佐藤がをポン。ピンズのホンイチを思わせる捨て牌を見て、3着めの山舗がリーチ。待ちは。ドラのをツモればタンヤオもついて20・40、トップ争いに加われる。ところが、そんな期待とは裏腹にその後のツモがピンズのオンパレード。祈るような表情でツモ切りを続ける山舗だったが、リーチ後5枚目にツモ切ったピンズがついに捕まった。
 
 打点は30だったが、『昇持ちの山舗がラス』というのは三者にとって一番望むところ。このあとガチガチに押さえつけられた山舗、結局そのままラスを押し付けられた。
 規定の6回戦。起家から、山舗±0・田中1昇・石川±0・佐藤±0。1回戦がラスなしだったため、田中がバーなら、三者ともトップで勝ち上がりである。唯一昇持ちの田中も、ラスをひいた瞬間それまでの有利さが吹き飛ぶ上に、アタマ狙いの三者と比べるとどうしても安全を買いたくなる心理状況。なんともいえない空気の中で始まった対局は、東2局に大きく動いた。
 東1局に3・6で先制した石川が第一打にを選ぶと、西家の佐藤が小考して動く。その後いくつかの手出しを経て、12巡目に佐藤が切ったのがドラの。これを山舗が叩き、場は一気に沸騰状態に。が、決着はあっという間についた。2巡後、山舗ツモ切りのに佐藤が手を開いたのだ。
 
 青ざめる石川と山舗。これで佐藤のトップめを捲るか、田中をラスにしない限り生き残れない。
 その後、南1局に石川が3・6をひき、とりあえずの点差詰めと前局自ら出したリーチ棒を回収するが、南2局には佐藤も山舗のリーチ宣言牌で16と一歩も譲らない。そして、佐藤66→石川30→田中102→山舗の点差で迎えた南3局がこのゲーム一番のハイライトとなった。
 先にテンパイを入れたのはオヤの石川、9巡目に田中からのを叩いてこの形。
  
 次巡、山舗も追いつき、当然の即リーチ。
 高目はもちろん、安目でもひければ田中のラスが現実味を帯びてくる。渾身の勝負手であったが、次巡の山舗のツモが。これでとうとう石川が佐藤を04差でかわした。
 南4局、佐藤が必死の形相でアガリに向かう。石川は端から流局作戦だが、間違っても田中には放銃できない。一打一打にそれぞれの思いが交錯する中、14巡目に田中が山舗の打牌を捕らえて2日間のわたる打撃戦が終焉した。



1次予選:4戦制/各卓上位2名勝ち上がり



A卓:ピンポイントの差し込み
A卓
1 2 3 4
終了
安居 嘉康 B級
±0
小林  剛 推薦
2昇
湯村 浩章 仙台
△1
堀井 統之 東京
△1

 初戦で40オールを決めて好発進した小林だったが、2回戦では、湯村62→安居26→堀井02→小林の並びで迎えた南3局、オヤ番の小林がドラを打つと、初戦唯一ノーホーラでラスをひかされていた北家・堀井が手を開く。

 これで堀井は僅差の3着めから逆に僅差の2着めとなって南4局を迎えるが、結局並びはそのまま。

 3回戦南4局、ラスめ湯村が打ったにチートイツテンパイの小林から「ロン」の声。が、その小林まで37差の2着目のオヤ・堀井からも「ロン」の二重奏が奏でられた。
 堀井の執念がほとばしるようなアタマハネによる連荘となったが、その2は安居が3巡目にドラのをアンコにするも、あっさり小林にピンフを放銃して小林の逃げ切りトップ。堀井にどうしても目が出ない。

 4回戦を迎えてスコアは、起家から湯村0・小林1昇・安居0・堀井△1。
 東3局堀井3・6、東4局堀井14オール、その2小林4・8とアガリが出て、迎えた南1局に小林の大物手が炸裂した。
 放銃は湯村。これで決着条件の並びになった。
 南2局、早々に安居が仕掛ける。3巡目にチー、6巡目に堀井からをポンしてこの形。
  
 小林からが出るが、無言でヤマに手を伸ばす安居。そしてツモ。
 一瞬フリーズする三者。しかし、すぐに意図を理解しチョーマを支払う。あと2局しかない。
 南3局、8巡目に堀井がリーチ(ドラ)。観念したかのような表情の湯村、ここは延長に持ち込むために堀井の援護役に回るか。
 2巡後、オヤの安居が後付けのチーテンを入れた次の瞬間、堀井がを手元に叩き付けた。
 これには、さすがの自称「クールビューティー」安居も苦悶の表情を浮かべる。
 南4局を迎えて、点差は堀井30→小林145→安居112→湯村。このまま終局してほしい堀井&湯村。もはや湯村もラス抜けなど考えていないだろう。
 一方、前局「やっちまった感」のある安居。延長に突入して堀井に競り勝てる陽気ではない。小林・堀井の同点トップであれば延長なので、ここは何としても小林に捲ってもらいたいところ。
 小林再逆転のハードルを下げる目的でリーチ棒を投げる手もあるが、何かをアピールするかのように序盤から綿々と小林への合わせ打ちを続ける安居。
 そして迎えた13巡目、小林がリーチを宣言した。
 宣言牌は。直前までカンのタンヤオ・サンショクでテンパイしていたところにをひき、あえて手役を崩してのリーチである。
 すると、あたかも「マチはここですよ」と言わんばかりのこのリーチに、安居が「待ってました!」とばかりに一発でをピンポイントで差し込んだ。響き渡る小林の「ロン」の発声と堀井の苦悶の表情のコントラスト。
 こうして小林・安居の勝ち上がりが決まった。


B卓:ラス抜けは任せろ 
B卓
終了
大貝 博美 B級
△1
西尾  剛 B級
△1
中村ゆたか 東京
1昇
奥田 直裕 東京
1昇

 幕開けとなる大貝のアガリはこんな60符3飜と、波乱を予感させるものだった。

 この放銃で黒星スタートとなった西尾だったが、2・3回戦に連勝。迎えた規定の4回戦(西尾1昇、大貝・奥田0、中村△1)、延長を目論む中村に好手が押し寄せる。東2局のオヤ番で、
 この手をテンパイ即で西尾から討ち取り、南4局も自ら20・40で締め、勝負を振り出しに戻した。

 全員±0で仕切り直しとなった5回戦は、ここまで唯一トップのない奥田が大爆発。20出アガリ、13・26とアガって迎えた東3局のオヤ番も序盤から積極的に仕掛けて40オールとトップを決める。
 
 一方、ここまで二度の放銃でラスめに落とされていた中村だったが、南2局の20・40でラス抜けに成功し、ノーホーラの西尾にラスを押し付けた。

 6回戦、東1局9巡目、再延長を策す西尾に絶好のテンパイが入る。
 しかし、トップにラス抜けと昇り調子の中村が要牌を次々とひき入れ、大きな20・40を成就させた(オヤ・奥田)。
 その後も中村は、8・16の加点で逃げ切り態勢。一方、なんとかラス抜けしたい奥田と、奥田ラスでの延長を保険にあわよくばのトップを目論む大貝・西尾の三者の間で激しいつばぜり合いが繰り広げられるも、出たアガリは奥田から大貝への12のわずかに1回のみ。
 南4局を迎えての点差は、中村128→大貝20→西尾24→奥田。ここで、ここまでラスめに落ちても必ずラス抜けを果たしてきた奥田が、今回も配牌からとひき入れて、3巡目にテンパイを果たす。
 これをヤミテンにした奥田に対して、大貝がすぐにをツモ切る。次巡をツモった大貝は一旦はこれを手の内に納めるが、2巡後には河に放たれ、奥田が中村と共に勝ち上がりを決めた。



C卓:意地のアシスト拒否
C卓
1 2 3 4 5
終了
安田健次郎 A級
△1
明村  諭 推薦
1昇
田村  洸 大阪
1昇
牧野 卓人 東京
 △1

 1回戦、安田が連続で28のアガリを決め先行するも、牧野が安田のオヤ番でをアンコからのミンカン。ドラ2枚の手牌を仕上げて13・26で逆転する。
 牧野32→安田51→田村38→明村で迎えた南4局、逆転トップを狙う安田とラス抜けを目論む明村が必死に手を作るもテンパイが入らない。このまま流局と思われた17巡目、田村が最終ツモで「ロン」の声。

この一撃で田村がトップをモノにした。

 続く2回戦東4局、初戦ラスの明村に大きなアガリが出た。
 このままだと1回戦の裏返しになるところだったが、ここから田村が反撃。13・26、3・6、18とアガリを重ねて、自らラス抜けを果たした。
 3回戦は、東場に明村がホンイチの64を牧野からせしめると、その後も明村がアガり続け、南4局を迎えて点差は、明村85→田村41→安田35→牧野。安田としては、このまま終わると自力での勝ち上がりがなくなってしまうが、20・40でもトップに届かない一方で、もし牧野に捲られてラスを押し付けられると今後がさらに厳しくなる。そんな事情もあって、渋々ながらピンフのみを出アガり、このままの並びで3回戦を終わらせた。

 規定の4回戦、スコアは起家から、明村1昇・牧野△1・田村1昇・安田△1。
 東1局に明村が牧野から60。マイナス組にとってはかなり厳しくなったが、ここから安田が噴いた。二度の7・14に田村から42、さらには40オールとアガリを重ねて突き抜ける。そして、あとは牧野がラス抜けを果たせるかどうかが焦点となった。
 南1局、3着めの田村まで18差の牧野が2巡目にリーチ。すると、なんと1巡目にテンパイしていた田村が、安田からの差し込みを恐れてツモ切りリーチを敢行する(ドラ)。

 軍配は牧野に上がった。をひきアガり、7・14でラス抜け。牧野は次局のオヤ番でも田村から60を直撃し、延長戦突入を自力で手繰り寄せる。
 この時点でトップめ安田と2着め明村の点差が139差のため、田村は南3局と南4局にリーチ棒を投げて明村の20・40に望みを託す。南4局、その明村の手牌はチンイチのイーシャンテンまで育つが、安田がタンヤオの24をアガってそのままフィニッシュとなった。

 延長5回戦(牧野△1・明村1昇・田村0・安田0)東1局、安田の打牌に田村が手を開けた。
 着順勝負の相手にいきなり高目での80を放銃してしまった安田。安田は東3局にも明村に20を放銃し、いよいよ苦しくなってきた。東4局には牧野がリーチ。安田はこれに差し込みにいく選択肢もあったが、これを拒否して流局。南1局から3局連続で牧野が仕掛けるが、これにも安田はアシストしなかった。南4局の自身のオヤ番に全てを賭けるという意思表示である。
 その南4局、2巡目に田村がをポン。上家の明村はこれにすぐさま反応、さらに2つ鳴かせてテンパイを入れさせる。最後は安田がロン牌を掴んでゲームセット。こうして明村・田村の勝ち上がりとなった。

D卓:実らぬリーチ
D卓
1 2 3 4
終了
石川 稔也 B級
1昇
山本 裕司 推薦
1昇
稲毛千佳子 東京
△2 
古川 正和 東京
±0

 1回戦は東2局にハイテイでトイトイ・サンアンコの40オールをアガった山本が逃げ切りそのままトップ。ラスは、東3局に20、南2局に28を振り込んだ古川。

 2回戦、東3局に石川が珍しい70符の24オールをツモると、その2では山本16(←石川)、東4局は古川10・20、南1局稲毛60(←山本)とアガリが続き、上位陣は混戦となる。石川20→稲毛10→古川104→山本の点差で迎えた南1局その2(ドラ)。山本の2フーロ仕掛けに対して石川が無スジのを放ち真っ向勝負。この勝負の軍配は石川に上がった。王牌からをひき寄せて20・40。

  

さらに石川は、南3局にもダメ押しの10・20でトップを決めた。

 3回戦、南3局を迎えて点差は、古川64→石川28→稲毛・山本。まず古川が、フリテンを巧くひき当てて26オールでトップを確定させると、その2では山本が4・8でラスめを稲毛に押し付け、結局このままで終了。

 4回戦を迎えてのスコアは、起家から山本±0・石川1昇・稲毛△1・古川±0。東1局に古川が7・14で先制するも、次局山本に手痛い40の放銃。東3局も山本が10・20で一歩リードし、東4局を迎えて点差は、山本83→石川05→古川05→稲毛、このまま山本がトップで終わってはまずい古川が11巡目にラス落ちリーチを決行した。

 ツモればトップめに立ち有利になるが、結果は流局。
 南1局は石川がピンフドラ2を高目のタンヤオの方でツモって20・40。古川にとっては、石川がトップならラス抜けさえしておけば延長の可能性も出てきた。そしてその思惑通り、南2局に古川が果敢に3フーロして10・20、ラス抜けに成功する。一方の稲毛にとっては、このままラスで延長戦に突入しても、△2のスコアでは現実的にはほとんど意味がないためここはトップを獲りにいくしかなく、次局のオヤ番で10巡目に渾身のリーチ。
 ツモれば一気にトップめに立てるが、結果は無念の流局。
 南4局を迎えて点差は、石川37→山本28→古川55→稲毛(供託1本)。9巡目、山本はこの形。

 石川からの差し込みを期待したいところだが、すでに場に2枚出のを石川は持っていそうもないと見たか、少考の末の山本の選択は打のテンパイ取らず。そして、次巡ツモで打のリーチ。やや時間はかかったものの何とか石川がを差し込み、終戦となった。


E卓:最終局、16巡目の明暗 
E卓
1 2 3 4 5 6
終了
山内 啓介 翔龍
±0
忍田 幸夫 推薦
1昇
近内 亮太 東京
△1
猪俣 裕之 東京
2昇

 E卓は、先月に平井・堀川との激戦を制し、第9期翔龍位を獲得した山内啓介、麻将連合代表で現BIG1、さらにこの日の1週間前のミューカップイン大阪でも優勝するなど絶好調の忍田幸夫、麻将連合トーナメントツアー選手で、昨年の八翔位戦準決勝に進出した近内亮太、麻将連合の1dayトーナメントにて決勝の常連で、トーナメント戦を得意としている猪俣裕之という組み合わせとなった。

 初戦は、忍田が東2局に2役ホンイチの20・40。さらに、東4局の親で山内から放たれた2枚目のを捕らえ、トイトイ・サンアンコの120とトップを確定させた(◎忍田/●山内)。

 2回戦は、全10局中8局もアガリが出るという半荘となったが、南3局時の点差は、忍田20→猪俣57→山内06→近内。この局、近内・山内のテンパイに挟まれ、終盤に手詰まった忍田。ここで忍田の選択は、山内に20までならいいという。これが、忍田の読み通りタンピンの20。この一打が功を奏し、忍田・猪俣の2人トップで黄金スコアとなった(◎忍田・猪俣/●近内)。

 続く3回戦は、東1局、山内が7・14で並びを作る。しかし、もう後がない近内も当然のごとく攻め、東2局5巡目に高めピンフイッツーの待ちリーチをするが流局。次局はオヤでドラ雀頭のリャンメンでリーチをかけるも、数巡後に猪俣のチートイツに捕まってしまう。
 このまま南2局を迎え、点差は山内06→猪俣39→忍田26→近内。このままオーラスを迎えると、忍田が猪俣に20まで差し込めるため、3回戦コールドの可能性もある。この土俵際で、近内が起死回生の20・40が出た(◎近内/●忍田)。

 4回戦は、小場の展開ながらも、山内・近内が終始浮きのまま進め、東4局に忍田からタンピンの20をアガった山内がそのまま逃げ切り、3人並びの延長となった(◎山内/●忍田)。

 ここで一旦スコアを整理すると、猪俣1昇、忍田・山内・近内は±0。迎えた延長5回戦は、起家の忍田が早々にアンコのテンパイを入れて意気揚々とツモ切りを続けていたが、その忍田から放たれたに、猪俣からロンの声が掛かった。
 このまま南入し、このままでは終われない忍田の猛攻が始まった。南1局・南2局はリーチ、南3局もチーテンと攻めるが流局。そして、南4局も忍田が7巡目にリーチ。
 このリーチもツモ切りが続き、流局かと思われたハイテイ。終始攻め続けた忍田にようやく女神が微笑み、ラス抜けに成功した(◎猪俣/●近内)。
 再度延長となった6回戦、南3局を迎えた時点での点差は、忍田26→猪俣03→山内07→近内。ここで、忍田と同じくトップ条件の山内が、ピンズ1メンツを捨てながら、流局間際にワンズのメンゼンホンイチを成就させた。
 これで、南4局開始前の点差は、山内22→忍田35→猪俣・近内。山内がオヤのため、忍田はツモアガリで4・8以上で決着。近内も10・20でトップとなり延長へ持ち込める状況。
 その南4局、早々にドラのを放った忍田から、11巡目にリーチが掛かる。
 忍田がヤマに手を伸ばす度に、手に汗握る瞬間が訪れる。このまま流局すれば、山内の勝ち上がり、ツモれば忍田の勝ち上がりである。そして、その静寂を破ったのは、16巡目、忍田の手元にが手繰り寄せられた瞬間であった(◎忍田/ラスなし)。



F卓:四者が我に返る時〜石川由人自戦記
F卓
終了
愛澤 圭次 A級
±0
須藤  浩 推薦
△1
藤森 弘希 東京
△1
石川 由人 東京
2昇

 6月22日、梅雨の合間、広がる青空。電線に止まってるスズメがやけに規則正しく整列している朝。136の物語。 愛澤・須藤・藤森・石川の座順で始まったF卓1回戦。初出場の藤森が初陣を飾った。決め手となったのは東3局、愛澤から、

 ダブで120。
 そして、南4局で4局粘った石川に一度はリードを許すものの、最後は出アガリの効かないツモリサンアンコをヤミテンで静かにひきアガリり、20・40で再逆転。
 願ってもない好スタートの藤森に対し、いいところなくラスをひいた愛澤と、静かに状況を見守っていた須藤のベテラン2人は2回戦以降、どのような戦いを見せるのだろうか。
 2回戦、石川±0・藤森1昇・愛澤△1・須藤石川±0。東場でアガリが3回、順に、東2局須藤5・10、東3局石川7・14、東4局愛澤5・10。1翻高かった分だけ石川のトップめ(+18)、3回ツモられた藤森のラスめ(△22)で南場へ。
 南2局、藤森から石川へピンフ・イーペイコーの20。これが決め手となり、石川が片目を開け、藤森は昇を失った。
 休憩を挟んだ3回戦(藤森±0・石川1昇・須藤±0・愛澤△1)は石川の3局連続失点で始まった。まず東1局、オヤの藤森に24、その2で愛澤に12、東2局のオヤ番は藤森の4・8。南1局にタンヤオの三メンチャンのリーチをかけるものの、一度もツモれず愛澤が5・10。
 マージャンはしばし、人生に例えられることがある。
 2回戦まで順調な戦いに思えた直後の連続失点。
 30分の休憩で人生が変わることなどめったにない。マージャンでは結構あるぞ。
 トップをとりたい訳ではない、ラスになりたくないだけなんだ。そんな願いが次局早くも叶った。タンヤオ・ピンフをツモって14オール。
 今日の俺ってイケてるのか?
 そして南4局、愛澤08→藤森33→石川06→須藤。
 早々とポンで仕掛けたラスオヤの愛澤、手の中はアンコのの24。
 9巡目、須藤からのを見送った。二番手藤森の進行を見ながら、あわよくば下家・藤森からの直撃も狙っている。結果は2巡後、須藤がもう一度を掴み打ち込みとなるのだが、一人マイナススコアを抱えた状態でのこの冷静な判断力は見事と言うほかない。
 愛澤が昇を振り出しに戻す一方、痛い1敗を喫した須藤が苦しくなった。
 4回戦、愛澤±0・石川1昇・須藤△1・藤森±0。
 ほぼトップ条件の須藤、前に出たい愛澤と藤森、4戦決着を狙う石川。それぞれの思惑が交差する開局、14巡目にオヤの愛澤がひき寄せた
 開けられた手牌に並ぶ3枚のドラは須藤に、藤森にどう映ったのだろう。
 そして愛澤が天上人となれば、次に狙われるのは自分だ。
 先に動いたのは藤森だった。愛澤のオヤを5・10で落とすと、東4局自身のオヤ番で6巡目リーチ。
 藤森の仕草や表情から十分形であることは推測できた。ヤマとの勝負となったが、残り12枚のツモ牌でロン牌がめくられることはなかった。
 愛澤140→藤森15→須藤・石川(供託10)で迎えた南1局5巡目の石川、
 愛澤の1巡目に、須藤の4巡目にがある。決着の並びを作るチャンス、サンショクよりもソウズの上で戦うことだ。を切った。次巡をひきテンパイ。
 ところが、藤森にも早いテンパイが入っていた。手順で待ちのチートイツ、3巡後に持ち変え、痛い80の打ち込みになってしまう。勢いに乗り、石川は次局オヤ番でも須藤から18。
 終局へ向け着々と進んでいるように思えた、南2局その2。14巡目にリーチをかけた須藤。その捨て牌にあるを最終巡目で北家・愛澤が打ち、オヤの石川もを合わせた。
 ハイテイ牌をツモった須藤が手元にひき寄せたのは、間違いなく136枚目の
 穏やかで実直な性格で知られる須藤、常に笑顔を絶やさない優しい男。その須藤が珍しく牌を荒々しく卓に叩きつけ、大きな声で「ロン」と叫んだ。
 山内雀吉なら間違いなくこう記すであろう。 “こんな須藤浩、めったに見られないぞ”
 ハイテイ役はないが、紛うことなき20・40。
 これでまた分からなくなった。
 愛澤67→石川06→須藤147→藤森で迎えた南3局。前局の須藤の気迫に押されたからか、13巡目こんなポンテンを取ってしまう。
 
 フリー雀荘でもお金がなくなっちゃうような酷い仕掛け、こんなんじゃブラックバスだって釣れやしないさ。
「ポン」と言った瞬間、オヤの須藤からリーチ。
 それ見ろ言わんこっちゃない。この局面、須藤にだけは絶対に打ってはいけないのだ。よーく見てみろ、安全牌の「あ」の字もないじゃないか。
 2巡ほどツモ切りした後、親指のザラっとした感触は…「ウソだろーが」のワンズのヨン様。20・40。
 南4局、石川43→愛澤103→須藤117→藤森。30・60が条件の須藤、そしてラス抜けしたい藤森が9巡目にオヤマンのイーシャンテンに漕ぎ着けたところで、愛澤からテンパイ宣言そのもののドラが飛び出す。
 僕は、その時のために温存しておいたを9巡目の河に置いた。
 愛澤の「ロン」の声に藤森の「ア〜」と言う声が重なった。終局を感じ取り、思わず出てしまった言葉。
 対局者全員がふと、我に返った瞬間だった。



H卓:我が八翔位戦奮闘記 第1章
H卓
終了
小宮山 勤 B級
△1
亀井 敬史 B級
△1
大川戸 浩 東京
1昇
星賀 一彦 東京
1昇

 2年ぶりの八翔位戦。過去の戦績は、最初に傷を負いそのままスコアを戻せず敗退。または先行者についていって何とか勝ち上がりという記憶しか残っていない。ただただ苦しかった。今年も楽にさせてくれるわけもなく、緒戦でつまずかないことを願いながら着席した。

 1回戦、起家から大川戸・亀井・星賀・小宮山。東2局、大川戸がドラのを手元にひき寄せる。チートイツ・ドラ2の20・40。変則手を臭わせる大川戸に対し、私は2枚切れの字牌さえ打ちきれずに苦しんでいた。が、ラスオヤが小宮山なので実質単独2着めとここはポジティブに考えた。
 東4局は私が大川戸から16。そして南1局、上家のラスめ亀井からリーチ。その時の私の手牌は、

のイーシャンテン。は亀井の河を含めて4枚切れ。は亀井が1枚、は小宮山が1枚切っている。はション牌。(を打って迂回だな)と考えていたところにツモ待ちはあるのか? ここで片アガリのシャンポンリーチはないか…)。そっと河にを置く。無事通過。
 私のロン牌はあと2枚。実はイーシャンテン取りの時、私はション牌のを手に残して打とした。もしを打っていれば、このツモでカン待ちとなっていたはずで、これも2枚残り。そして、このあと安全牌を2巡ツモ切ったところに、トイメンの大川戸からが出た。“タラレバ”の牌を打たれた以上、次に危険牌をひかされれば即撤退と自分に言い聞かせるが、幸いすぐにツモ。この20・40で私がトップめに浮上した。
 南2局も私が大川戸から20。続く私のオヤ番は流局し、南4局を迎えて2着めと102差のマンツモ圏外となったが、ラスめの亀井からリーチ棒が出る可能性を考えると気は抜けない。結果は小宮山から仕掛けが入って、大川戸がツモ・チートイツモの8・16で、並びは変わらず。大事な初戦で1昇を手にすることができた。

 2回戦は起家から、亀井・星賀・小宮山・大川戸。東2局に小宮山が長考、河にはソウズが1枚もなく、打牌は。(ホンイチ、いやチンイチまで?)。ほどなく小宮山がひきアガると、がアンコでのいわゆる三面タンキのホンイチ。このオヤカブリ焦った私は、次局鳴いてイーシャンテンのソウズのチンイチへ向かうが、放ったドラのが小宮山にササり30。を仕掛けた大川戸をポンテンではないと見てのドラ打ちだが、そのを鳴かせたオヤの方を見ていないという暴走仕掛けで、都合△70のラスめ。
 東4局は大川戸が10オール、その2は流局。南1局は亀井のオヤ番、ここで何とかしなくてはと気合いを入れると、早い巡目でピンフ・ドラ1のテンパイ。ラス抜けにはリーチが必要だが、タンヤオへの手変わりをみてヤミテンに構えたところ、手変わりする前にロン牌をひき7・14。これで3着めの亀井との点差は08に詰まった。が、南2局の私のオヤ番でまたも小宮山が20・40。私は2度目のマンガンのオヤカブリを食らい、これで亀井との点差はまた広がり、28差に。
 南3局は流局し、迎えた南4局、点差は小宮山190→大川戸47→亀井28→星賀。
 私の配牌は、
 ここから、1巡目ツモ、2巡目ツモ、3巡目もツモ。さらにその2巡後にツモとして、手牌がこうなった。
 ソウズなら何をひいてもテンパイである。(イーペイコーの確定しないツモはありがたくないな)と考えていると、ここにツモ。亀井の河にはがあり、私はここで打を選択。すると、大川戸が少し首をひねって打、そして次巡のを捕らえて52。これで大川戸が亀井と05差のラスにまで落ちた。
 ところでこの手、いうまでもなくツモでサンアンコである。なのに、私は配牌にあったドラ入りのイーペイコーに舞い上がってしまい、せっかくのアンコをただの1メンツとしか見えていなかった。もし実戦とは異なるソウズをひいた場合、を1枚外すこともできるし、タンキのマチ変えも可能だった。もし実際にをひいていたら、さすがにサンアンコに気付いていたとは思うが、対局中は打とすると、まさかの4枚目のはともかくは単なる出アガリの効かないシャンポン待ちとしか認識していなかった。後日、ある方に「星賀、これサンアンコになるよ」と指摘されとても恥ずかしい思いをした。

 3回戦、起家から、大川戸・小宮山・亀井・星賀。私はラスオヤとなってしまった。
 東1局、大川戸が26オール。その2・東2局と流局し、東3局は星賀が亀井から12、東4局は小宮山が同じく亀井から12と譲らず。マイナスしている大川戸が飛び出したこのゲーム、昇を持った2人とも、とにかくラスはひきたくない。
 南1局は、私が大川戸に18。大川戸にすれば、このまま亀井がラスでは、1昇・1昇・0・△2で4回戦を迎えることになるが、私か小宮山のいずれかをラスに封じ込めれば、1昇・0・0・△1となりって格段に戦いやすくなる。すると、その2で亀井の打リーチに対して大川戸がを放つと、これがイッツーのペンにストライクで52。
 これで昇持ちの2人が3・4着めとなって迎えた南2局のオヤ番は小宮山。私は(まだ3着めの小宮山とは18差。オヤだけに小宮山のアガリ阻止が第一)と考え、基本合わせ打ちで前に出ないでいたところ、偶然にも打てない牌が重なり、望外の5・10でラス抜けに成功。これで並びは、大川戸42→亀井09→星賀12→小宮山となった。
 続く南3局、私の配牌にはがアンコにがそれぞれ2枚ずつ。2巡目に下家の大川戸からをポン。鳴いてイーシャンテンだが、小宮山、亀井のツモを1回飛ばせるならと積極策に出た。このあと亀井に仕掛け返されるが、すぐテンパイし、をツモって8・16。
 南4局を迎えて点差は、大川戸11→星賀39→亀井13→小宮山。点差が点差だけに、無理にトップを狙ってラスに落ちることだけは回避せねばならない。このまま終れば1昇・±0・±0・△1となって私1人だけが昇持ち。小宮山がラス抜けすると、1昇・1昇・0・△2、また小宮山がアタマまで突き抜ければ、2昇・1昇・△1・△2のいわゆる「死のシフト完成」が完成する。
 結果は、トップめの大川戸が亀井から12を出アガり、小宮山が01差のラスで終了。2回戦の裏返しとなった。

 4回戦、起家から小宮山・星賀・大川戸・亀井。東1局、小宮山が8オールで先制。その2は流局。東2局は亀井の客風牌からの仕掛けに小宮山がで放銃、のシャンポンマチのホンイチ・ドラ1の40。私はも1枚ずつ抱えて手仕舞いしていたが、もし小宮山が打たなかった場合はオヤカブリさせられていた可能性もあっただけに、ここは助かった。
 すると次局で大川戸が40オール、これで点差は大川戸120→亀井40→星賀08→小宮山となった。南1局に大川戸が5・10をひいて私と小宮山の差は13となるが、南2局は亀井の7・14で、また06差に差が詰まる。
 南3局は流局し、迎えた南4局、小宮山が私を捲れば、大川戸1昇・小宮山±0・星賀±0・亀井△1となって延長戦突入。亀井は、自身のトップを目指しつつ、小宮山のアガリ(=私のラス)に協力できる。一方の大川戸は、流局あるいは私のアガリを望むはずだが、我々はトイメン同士で座順がよくない。(ここは大川戸の上家の私がキー牌を下ろす方が早いか?)。序盤はファン牌は誰も打たないし、打てないはず。私の配牌に入った字牌はのみ。すると2巡目に大川戸がドラの打ち出してきた。亀井の大きなアガリをまず阻止しようという意図か。私のほうは3巡目にが重なりを打つ。大川戸の門風牌は後々のために抱えておきたいが、ここは手牌進行優先。この後、亀井の現物をつなぎながらワンズがの好形となったところに小宮山からが出てチーテンにも取れたが、限定の片アガリであることが危惧され、ここはスルー。そしてヤマに手を伸ばすと、ひいてきたのはから打とあえてシャンポンマチに取り、亀井のを捕らえることができた。
 こうして、4戦の南4局のアガリを2回ずつ分け合った大川戸と私の2次予選進出となった。

(星賀 一彦)


I卓:師弟、そろって討ち死に
I卓
終了
高島  努 B級
△2
涌田  悟 大阪
△2
山舗  徹 大阪
1昇
中川 裕樹 仙台
3昇

 高島・涌田の「師弟対決」となった大阪対局。1回戦は、ミクロの戦いとなった。まず高島が東3局に3・6で先制すると、東4局には中川が5・10を、南1局には涌田が3・6をツモアガる。1人離された山舗だったが、南3局に涌田から28を出アガリしてラス抜けに成功。南4局は高島の打牌を中川が咎めて、息苦しい初戦を制した。
 迎えた2回戦、東1局に高島の60テンパイをかいくぐって、涌田が4・8を引きアガり、「師匠」の格を見せつける。だがこの日、涌田の鋭い攻撃が垣間見られることは少なく、元気よく「ロン」の発声を連呼するのは、中川と山舗の両名。いずれも肝心の勝負処でしっかりとアガリをものにし、前半戦を優位なスコアで終えた。
 3回戦、座順は、中川・涌田・山舗・高島。3回戦終了時に「2昇・1昇・△1・△2」のスコアになる、いわゆる「死のシフト」が脳裏にちらつく負債師弟は、自らのトップよりも山舗をラスにすることで、規定の4回戦での逆転勝利をもぎ取りたいところ。
 東場のアガリは東3局中川の3・6のみ。迎えた南1局、涌田の勝負打牌が中川に痛恨の30放銃となる。それでも、中川がトップならまだ希望があるかと、前向きに捉えられるか。
 次局、高島にこんなチャンス手が入る。

 ところが、この明らかなテンパイがわかっていたはずの山鋪から、17巡目に強烈なが放たれた。そしてハイテイ手番でその山鋪が力強くをひき寄せる。
 それでも、次局にまたもサンショク出来合いのピンフ手で今度はリーチを敢行した高島だったが、あえなく流局。南4局は、涌田・高島いずれも勝負にならず、「死のシフト」の完成となった。
 高島・山舗・中川・涌田の座順となった4回戦は「◎高島−●山舗」が唯一の延長条件。高島は、涌田からの出アガリはほとんど不可能だが、アシストだけはしてもらえるということから、ヤマ越しでの山鋪直撃を狙うが、当の山鋪も「狙われているのは分かっている」と言わんばかりの徹底マーク。そして、東3局には中川が涌田からトドメを刺す96を直撃。この後も奇跡が起こることはなく、中川・山舗が勝ち上がりを決めた。


出場選手一覧

1次予選 2次予選 準決勝 決定戦
選手名 選手名 選手名 選手名
                  井戸田耕二
      成岡 明彦 成岡 明彦    
      小川  隆 小川  隆 小川  隆
      平井  淳 平井  淳    
      村田 光陽           
      堀川 隆司          
       田中  実 田中  実 田中  実
安田健次郎                   
愛澤 圭次 愛澤 圭次          
石川 稔也 石川 稔也 石川 稔也    
山内 啓介                
安居 嘉康 安居 嘉康 安居 嘉康    
岩沢 和利                
大貝 博美                
小宮山 勤                
亀井 敬史                
西尾  剛                
高島  努                
山田 史佳  → 山田 史佳           
忍田 幸夫 忍田 幸夫           
小林  剛 小林  剛          
山本 裕司 山本 裕司 山本 裕司    
須藤  浩                  
明村  諭 明村  諭            
OP 中川 裕樹 中川 裕樹 中川 裕樹    
OP 湯村 浩章                
OP 石川 由人 石川 由人 石川 由人    
OP 稲毛千佳子                
OP 猪俣 裕之 猪俣 裕之 猪俣 裕之    
OP 大川戸 浩 大川戸 浩 大川戸 浩    
OP 奥田 直裕 奥田 直裕          
OP 佐藤 文彦 佐藤 文彦          
OP 関根 秀介                
OP 近内 亮太                
OP 中村ゆたか 中村ゆたか          
OP 藤森 弘希                
OP 古川 正和                
OP 星賀 一彦 星賀 一彦          
OP 堀井 統之                
OP 牧野 卓人                
OP 田村  洸 田村  洸 田村  洸 田村  洸
OP 山舗  徹 山舗  徹          
OP 涌田  悟                 
【凡例】選手名左の記号は今期順位戦の所属クラス。
    八:八翔位・龍:翔龍・前龍:前期翔龍。
    推:麻将連合推薦枠出場・OP:オープン出場、アルファベットは卓番。

第30期八翔位戦 システム

【出場資格】
・麻将連合推薦、オープン参加選手及び連盟所属選手。
・オープン参加選手は、マージャン101各支部内より選抜。
【1次予選】
・各卓4戦(1日)を戦う。
・規定回終了時のスコア上位2名を勝ち上がりとする。
・4回戦終了時に上位2名が確定しない場合は、これが確定するまで延長戦を実施する。
【2次予選】
・2次予選シードの連盟所属選手及び1次予選通過者により行う。
・各卓6戦(2日)を戦う。
・規定回終了時のスコア上位2名を勝ち上がりとする。
・6回戦終了時に上位2名が確定しない場合は、これが確定するまで延長戦を実施する。
【準決勝】
・2次予選通過者により行う。
・各卓6戦(2日)を戦う。
・6回戦終了時に単独で2昇以上の首位者が決定戦の出場資格を得る。
・6回戦終了時に単独で2昇以上の首位者が発生しなかった場合は延長戦を実施し、7回戦以降はその回の開始時の首位者のスコア+1昇に単独で到達する者が発生するまで延長戦を実施する。
・「初めて、四者同スコアで決着権がある状態」となった場合は、その一戦の終了時の単独首位では決着としない。
  ただし「再度、四者同スコアの状態」となった場合は、同戦終了時の単独首位で決着とする。
【決定戦】
・八翔位及び準決勝通過者により行う。
・10戦(1日4戦)を戦う。
・10回戦終了時に単独で3昇以上の首位者を優勝とする。
・10回戦終了時に単独で3昇以上の首位者が発生しなかった場合は延長戦を実施し、11回戦以降はその回の開始時の首位者のスコア+1昇に単独で到達する者が発生するまで延長戦を実施する。
・「初めて、四者同スコアで決着権がある状態」となった場合は、その一戦の終了時の単独首位では決着としない。
  ただし「再度、四者同スコアの状態」となった場合は、同戦終了時の単独首位で決着とする。