第35期順位戦A級 第1節

 観戦記自戦記/高島 努自戦記/西尾 剛星取表

第1節観戦記:佐藤 文彦(初日)・堀川 隆司(2日目)


◆◆◆ 1回戦A卓 ◆◆◆

高島・村田・愛澤・平井

 東1局はお互いに警戒しつつ流局。迎えた村田がオヤの東2局【牌譜1】、11巡目にドラ表示牌をふくむ両面待ちのピンフテンパイとしたのだが、それに対し愛澤が14巡目に生牌のを切ってくる。愛澤がこのような牌を切るのだから当然テンパイなのだが、他家のケアが愛澤に向かっているのもあり、村田は前に進むと32を打ち上げてしまった。続く東3局その1【牌譜2】、オヤの愛澤が11巡目にドラのを苦笑いしながらツモ切る。これもあきらかにテンパイが入っている証拠。実際は前巡にテンパイしていた。三者は構えるが、特に村田はかなりの確率でチートイツと看破していたようだ。ところがツモは非情で現物があっという間になくなり、自身の読みから手の内で一番安全そうな牌を打ったところ、これが96の放銃となってしまう。次局流局後の東4局【牌譜3】村田は、タンピンドラ2高目サンショクをテンパっている愛澤からリーチピンフの20を打ち取るが、南1局【牌譜4】は逆に愛澤に32の放銃をしてしまう。点棒の壁が愛澤・村田の両者の雀風を変えてしまっているようだ。南2局愛澤はさらに13・26を加点する。オヤかぶりは村田だ。ここまで、愛澤205→平井・高島153→村田。
 南3局【牌譜5】平井・高島からのマンガン直撃よりもハネマンツモを念頭に置いた村田は、場況および自分の状態も考えてなのだろうか、タンヤオイーペイコードラ2のリーチをかけずにサンアンコへの手変わりを見ていると、あっさりとマンガンをツモってしまう。後ろで見ていても何ともちぐはぐに見える。といっても村田の考えと場況が一致していないだけで、村田の思考が悪いわけではない。それでも53の差をラス抜けできるのだろうか・・・と思ってていたが、南4局【牌譜6】は流局。村田は初戦から躓いてしまった。一方トップの愛澤は、日ごろの麻雀とは違い、かなり攻撃型に見えた。牌譜を見てもそれなりに手が入ってはいた。前に愛澤が名翔位を獲ったときに、某マンガで愛澤は自ら喧嘩をしにいかず、戦える時だけアガリを目指すように描かれていた。そして最後に、マンガの中の“愛澤さん”は「これがおれの麻雀だ。文句がある奴はかかってこい」と宣言していた。しかしこの日は、その漫画の中の“愛澤さん”とは違った愛澤が座っていた。
(◎愛澤/●村田)



◆◆◆ 1回戦B卓 ◆◆◆

田中・成岡・小川・西尾

 名翔位田中は、この起家をどのように感じているのだろうか? 長い35回戦のうちの1回とはいえ、大事な初戦をまえに、普段より固くなっているように見えるのは気のせいか?  その緊張を振り払うように東1局は8巡目から仕掛けていくが、だれも付き合わず流局。
 東2局も田中は前に出ていく姿勢をみせる。が小川に12放銃。
 東3局は小川が仕掛け、他家が警戒する中、流局。
 東4局は、苦節17年のA級初参戦の西尾が小川にピンフ12を放銃する。しかし、この放銃で逆に西尾の緊張がほぐれたように見受けられた。
 南場に入っても小川の勢いは衰えず、南1局は成岡から28を打ち取り、南2局の流局を挟んで南3局も田中の仕掛けをかわして8オールと、小さいながらも着実にトップに近づいていく。
 南3局その2は、西尾の中途半端な局の進め方を田中がとがめ28。結果的にはこの28の放銃が西尾にとっては、非常にもったいないものとなった。南4局を迎え小川64→田中44→成岡12→西尾という状況である。
 南4局その1、ドラ2枚を含んだ好配牌を西尾がもらう。田中はさらに良い配牌で、2巡目ですでにイーシャンテン。しかし、西尾の執念が勝り、26オールを引きラス抜けをする。前局の放銃がなければリーチもあったのではと思うと、ラス抜けができたと考えるよりも、1昇を逃したと見えてしまうのである。
 さらに南4局その2、気をよくしている西尾が
のテンパイを果たしヤミテンで押すも、小川が成岡から16をアガリ1回戦を終えることとなる。
(◎小川/●成岡)



◆◆◆ 2回戦A卓 ◆◆◆

小川1昇・高島0・田中0・平井0

 この卓は、点棒移動の激しい卓であった。
 まず、東1局【牌譜7】に田中が10・20をツモリあげると、東2局【牌譜8】は平井が小川から16を打ち取る。東3局【牌譜9】は高島が平井から12をアガリ、東4局【牌譜10】は小川が田中から52をアガる。しかし、この東4局の振り込みはどうだろう。田中は自分の待ちに自信があるときはまっすぐ押していくきらいがある。がこの局はどうなのだったのであろうか・・・。日を改めてインタビューできたが、歯を食いしばってを切るべきであったとのことであった。
 さらに、南1局【牌譜11】は小川が平井に28の放銃。南2局その1【牌譜12】は田中が高島に18を放銃と目を離す暇がない。その2はこの半荘初めての流局となったが、ここまで5つの放銃があったが、軽い放銃はなかっただろうか? ここまで平井02→高島32→小川18→田中。
 南3局【牌譜13】は、小川の11巡目のドラ2リーチを三者が受けたが、小川がツモリあげ20・40。南4局【牌譜14】は平井が意地で20オールをツモり、一旦小川にまくられたトップの座を14差とするが、南4局その2【牌譜15】、小川が田中から16をアガリ、再逆転トップとなる。しかし、この田中の牌譜をみると、平井が可哀そうに思えてしまうのは私だけであろうか・・・。
(◎小川/●田中)



◆◆◆ 2回戦B卓 ◆◆◆

愛澤1昇・西尾0・村田△1・成岡△1

 1回戦に続き、村田の不調が続く。
 東1局はある程度手になってはいたが、さらに早い成岡に12の放銃。東2局から東4局までは、配牌にドラ3枚の手牌をもらう局もあったものの、テンパイすらできず。ただ、ドラが3枚あった局は、成岡の仕掛けと捨て牌から前に出してもらえなかったきらいが強い。成岡の、自身の手にならないときの局の進め方には、目を見張るものがある。
 南1局は5巡目にドラのを放った成岡が、9巡目に4・8ツモ。成岡のテンパイ打牌は私にはまるでわからない。
 南2局は愛澤が西尾から16をあがるも、南3局は成岡が村田から16、南4局は流局。村田南3局の4メンチャン、南4局の3メンチャンもものにできず、泥沼の2連敗。
(◎成岡/●村田)



◆◆◆ 3回戦A卓 ◆◆◆

高島0・西尾0・村田△2・小川2昇

 本日は西尾の調子が良い。この半荘も東1局6巡目に5・10を引くと、続く東2局その2も高島のドラアンコの両面待ちをかいくぐり、8オール。
 東2局その2は、やっと不調の村田に手が入る。5巡目に
とすると次巡ドラをツモり、素直にテンパイを取る。あまりに早いテンパイに、他3者は村田のテンパイに気付いていないようだ。村田にとってはこれが逆に悪い方向に動く。次巡をツモってきていたのだが、小川・高島はまっすぐ手を作り、西尾は手にならない。小川があっさり高島に12を放銃して決着がついてしまうのだが、レバタラは禁物ではあるが、村田が四暗刻のみを目指しのシャンポン待ちにしていたら、安全牌としてを抱えていた西尾はどのような着手をしただろうか? 終盤を楽にしたいがため、ある程度の巡目でを切っているような気がする。このようなところにも西尾の調子の良さがうかがえる。
 東3局流局後、東4局も西尾が5・10ツモ。さらに南1局・2局の流局を挟み、南3局も西尾が12を上乗せする。南4局も流局に終わり、西尾に待望の1昇がついた。
(◎西尾/●小川)



◆◆◆ 3回戦B卓 ◆◆◆

成岡0・愛澤1昇・田中△1・平井0

 こちらの卓では愛澤が好調を維持している。東1局【牌譜16】にオヤの成岡が切ったに「ロン」の声が愛澤から。成岡は少し小首を傾げたように見え、自らを納得させるように16を支払う。続く東2局【牌譜17】は、オヤの愛澤に対して成岡は、第1打にをぶつけていったように見えた。すると愛澤はポン。さらに成岡はをかぶせる。これはスルーされたが、割を食ったのは名翔位田中。2巡目にを切っていればここでの放銃はなかったのだが、3巡目の打が愛澤の78にささってしまった。続くその2は流局の後、東3局はオヤの田中のの仕掛けをかわし、平井が4・8ツモ。
 東4局【牌譜18】は、オヤを自力で持ってきた平井が畳み掛けようとする。9巡目に役有りテンパイを果たすが、謎の1巡回しで打リーチ。これに南家成岡は
 ここからチー。次巡の平井のでチー。さらに次巡をツモってアガリをさらってしまった。
 続く南1局【牌譜19】、成岡のミラクルプレーが炸裂する。成岡からしたら普通のプレーかもしれないが・・・。4巡目に、
 ここから打。次巡のはツモ切り。8巡目に
となると、切り。次巡切りとソウズの両面を外す。それほどが良い待ちだったのか、局後尋ねると、「待ちよりよっぽど良い。」理由は「そんなんばっかり、いつも考えてるからね。」結果は、ツモの来方と他者の行き方を捉え、愛澤から42の出アガリ。愛澤の勢いまで奪ったような感じさえした。愛澤放銃までの軌跡も、みなさん検討してみてください。こんなアガリがでたら、この半荘は成岡のものだろうと思っていると成岡に待ったをかける男がいた。平井である。
 南1局その2【牌譜20】、平井は愛澤から52をアガると、南2局【牌譜21】は田中が13・26。そして南3局【牌譜22】に事件が起こる。
 配牌の軽い平井は4巡目に次の牌姿となる。
 サンショクを見てを切る。3巡後をツモって切りテンパイ。うしろで見ていて「おやっ」と思った。ここまで成岡と34差。高目がうすい待ちを選択するのかと・・・。しかし、平井は理牌していないため、テンパイ形を勘違いしていた。
 このように思い込んでいたのである。2巡後にオヤの田中から放たれたにロンをかけ、理牌していると、平井の顔がみるみる青ざめる。理牌の最中に「間違えました」と申告し、アガリ放棄となってしまう。このようなミスを周りが見逃すはずもなく、最も状態の悪かった田中が、アガれるはずのなかった40オールを引き上げてしまう。
 思い込みでの間違いは、私はあまり批判したくない。しかし、次の局はひどかった。心の揺れをそのままに、愛澤に40を打ち上げラスにまで落ちるのだが、ここはいったん気持ちを引き止めないと・・・。どのような手段でも平静の心持で闘牌して欲しかった。
 南4局は流局となり、田中の手に今季初トップが転がり込んできた。
(◎田中/●平井)



◆◆◆ 4回戦A卓 ◆◆◆

村田△2・高島0・成岡0・田中0

 東1局流局後の東2局、成岡が6巡目にドラ3リーチを打つ。オヤの高島は、何とか押し返そうとするも成岡があっさりツモって20・40。東3局は田中が成岡からまずを鳴く。成岡はこの鳴きを気にせず手を進め、も鳴かせると田中はあっさり10・20をツモる。東4局は高島が4巡目にドラ2リーチ。9巡目にをツモり、20・40。村田だけがおいて行かれている。ここまで成岡10→高島50→田中30→村田。
 南1局はオヤの村田が何とか局に乗ろうとし、チーテンをとるがこれが逆に仇をなし、成岡に16の放銃。南2局はその村田がやっと一矢をむくい、高島から32。役はリーチチートイツ。好調な高島は、この放銃が本日初めてではないかしら。放銃は初めてであったが、チートイツに対しての対応が今一つのような気がした。
 続く南3局は、高島が自風のを鳴いたドラ2をカンでテンパイをとると、上家村田は待ちを合わせる。田中の放ったに対し、大きな声で「ロン」と吠えた高島に対し、村田はか細い声での発声であった。少し遠い位置にいた私は、頭ハネしていないはずはないと思い卓に目を移すと高島が何と悔しそうな顔をしていることか。村田のアガリ点は16であった。
 南4局も高島は攻める姿勢を変えない。というかよくここまで手が入るものだ。
のタンヤオイーペイコードラ2をテンパイすると、最後は田中が3枚切れのカンをきらい、を放ったところに声がかかってしまった。
 高島にとっては、本当にうれしい1昇が手元に転がり込んできた。
(◎高島/●田中)



◆◆◆ 4回戦B卓 ◆◆◆

愛澤1昇・西尾1昇・平井△1・小川1昇

 東1局【牌譜23】、小川が2巡目にドラのを切るとオヤの愛澤がポン。これは4トイツからの鳴きでアガリが拾えたら儲けもの、くらいの気持ちであろう。が小川はかかり気味か・・・。結果は流局。続く東2局【牌譜24】は、その小川が積極的に仕掛け、愛澤から40をもぎとる。無理やり流れを引き寄せに行った小川は、さらに東3局【牌譜25】も前に出る。しかしここは平井がうまく立ち回った。10巡目、
から、ドラを切る。小川のトイトイの仕掛けに対しても冷静に対応し、最終ツモで60オールに仕上げた。このアガリは、前の半荘に乱れてしまった平井の精神にもゆとりを与えたことであろう。東3局その2【牌譜26】、平井は体勢を崩したくがないため、まっすぐ行って愛澤に40の放銃をする。前の半荘の愛澤への40の放銃とは天と地の差がある放銃である。
 東4局・南1局と流局が続き、南2局【牌譜27】は、小川がトップへの執念を見せる13・26ツモ。しかし、南2局その1【牌譜28】、平井はなんともかんたんな14オールを引きあがり、優位に立つ。さらにその2【牌譜29】では、ラス抜けを目指す西尾の猛攻をかわし26オールをアガり、追撃をたってしまった。南3局その2を流局とすると、南4局もあっさりとツモアガリでこの半荘の決着をつけた。
(◎平井/●西尾)

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 ズバリ、筆者の見どころは次の3点であった。
@新名翔位田中の強さの秘密は?
A新A級高島・西尾はどんなマージャンを打つのか?
B初日に躓いた村田は立て直せるか?

◆◆◆ 5回戦A卓 ◆◆◆

成岡0・高島1昇・田中△1・西尾0

 東1局、成岡10オールの後のその2が【牌譜30】
 田中が2巡目にチートイツのテンパイを果たすのだが、マチをにこだわった理由は何だろう?初牌のやマチ頃のにマチカエしていれば早めに決着していたと思われるが、随分と長引いてしまった。一方の高島・西尾は成岡のロン牌をきっちりと手中に収めている。うん、戦えている。

 次局、オヤ高島に30を打ち、ラスめに落ちてしまった成岡だったが、東4局に得意のチートイツをリーチでひき、一気にトップめへと突き抜ける。

 流局が続いた後の南3局が【牌譜31】。西尾が7巡目にチートイツのテンパイを入れるのだが、初牌のと打ち出し、2枚切れのタンキに構える。西尾が即リーチの場合、高島の仕掛けは入らないだろうから、マチにしていれば、どちらにしてもひきあがっている。本譜に戻って8巡目、西尾が1枚切れのタンキへとマチカエした直後、高島がチーテンを取り、これを見た西尾がツモ切りリーチと出た。これを受けての高島、1枚くらいは押してほしかったなというのが現場で観ていた筆者の感想。結末は譜の通り。

 次局、ラスオヤの西尾が9巡目に、
 こんなイーシャンテンからをツモ切ると、成岡からロンの声。
 32までなら打てる西尾だったが、まさかの40でラスへと転落。一方、田中は命拾い。

(◎成岡/●西尾)



◆◆◆ 6回戦A卓 ◆◆◆

平井0・愛澤1昇・西尾△1・高島1昇

 起家・平井が10オール、42(放銃高島)とアガった後のその3が【牌譜32】。愛澤にしては珍しい油断の一打だが、随分と高くついてしまった。多少ラフに攻める平井のフォームがこういう所で得をしているのかもしれない。

 東2局に愛澤が18(放銃高島)をあがり、流局を挟んで東3局が【牌譜33】。この高島のリーチを読者はどう思われるだろうか。
高島「これをひきあがれば愛澤のマンツモ圏外へと行けるから」
 気持ちはよくわかる。だが、長い目で見て損をすることが多いように筆者は思うのだが、いかがだろう。

 さて、平井の楽勝ゲームかと思われたのだが、西尾が反撃の狼煙を上げたのが【牌譜34】。11巡目のマチ取り、筆者ならノータイムでタンキにしてしまう。そうすると、平井にアンコで空テン。西尾の感性が光った一局となった。

 次局が【牌譜35】。この愛澤のリーチも愛澤らしくないと思うのだが、どうだろう。愛澤自身も1巡の迷いがあった。結果は同じだったかもしれないが、愛澤にはヤミテンに構えてほしかった。

 サンドバックとなってしまった愛澤、次局オヤの西尾へと放銃。
 ついに平井を捲ってしまった。が、次局平井が愛澤から20を出あがり、西尾との点差を28とすると南4局、豪快に捲り返した。

(◎平井/●愛澤)



◆◆◆ 7回戦B卓 ◆◆◆

西尾△1・村田△3・平井1昇・田中△1

 静かな流局の後の東2局が【牌譜36】。まず5巡目の田中。出来メンツを壊す打
 ドラがトイツとなり、仕掛けを前提に、ということか?が、次巡をひくとを続け打った。このあたりの感覚は田中らしい。
 役なしテンパイの入った村田からドラが鳴けたのだが、その後の村田の対応が素晴らしい。
 一方、放銃となった西尾は村田の手出しをどう見たのか?
 ドラポンの際の打からダブルメンツは否定されるので、ここは打ではなかったか?
 それにしても田中、のひき戻しでようやく打とし、テンパイにこぎつけている。このあたりの手順は筆者の理解の範疇を超えている。

 流局を挟んで東4局、ラスめ西尾が4巡目テンパイ、
テンパイ打はドラ。3巡後再びドラをひいたところで「この野郎」とばかりにツモ切りリーチ。ほどなくをひきあがり、トップめへと立った。

 次局、オヤカブリでラスめに落ちた平井が、似たような牌姿から4巡目リーチ。
が、こちらは流局。

 迎えた南2局が【牌譜37】。田中、この放銃は回避できなかったか。村田の仕掛けはが雀頭のピンズの下マチに見えなくもない。かと言ってが通る保証もないわけで、ここは丁寧にドラ表示牌のを抜いてほしかった。ともあれ、不調の村田にとっては天恵とも言える60の収入。このトップめはきっちり守って復調への足掛かりとしたいところだろう。

 流局を挟んで南3局、ラスめ田中が11巡目リーチ、
 同巡、西尾も追いかける。
 これがなんと流局。うん、トップめが逃げ切れるパターンだ。そう思ったのだが…。

 南4局が【牌譜38】。村田、第1打がやんちゃだが、ともあれ局面を抑え込みにかかった。ポンテンの西尾が次巡をツモ切る。「これがワンチャンスだったのか」と思ったのも束の間、西尾が最終ツモでを引き寄せた。
 トップが遠い村田、今節を象徴するかのような展開にため息も出なかった。

(◎西尾/●田中)



◆◆◆ 8回戦B卓 ◆◆◆

成岡1昇・田中△2・愛澤0・西尾0

 田中・成岡の仕掛け合戦が流局に終わった後の東2局が【牌譜39】。田中のツモ切りリーチは成岡の手出しに反応してのものか? ともあれ、田中の待ち焦がれるは成岡の手の内にアンコ。ドラ2テンパイの成岡も「渡りに船」とばかりに追いかけたが、結果はご覧の通り。
 次局、愛澤が成岡からの18でおいしくリーチ棒を回収した次局その2が【牌譜40】。田中、さすがにこのリーチはやりすぎなんじゃ…?

 その3は愛澤が成岡から30を出アガり、その4は田中が5・10のひきアガり。

 東4局、ラスめ成岡の12巡目リーチは流局。
 迎えた南1局が【牌譜41】。成岡、よくぞに反応出来たものである。師匠の僧根を思い出させるような軽快な仕掛けである。が、その2は名翔位が底力を発揮。
 再びラスめとなった成岡だが、南3局に力強くラス抜け。
 南4局は田中が6巡目テンパイ、
 トップめ愛澤との点差は80。ほらね、むやみにリーチ棒出すから困るでしょ。すぐにをひくが、当然アガラズで打。結局はひけないまま愛澤のロン牌を掴んでジエンド。

(◎愛澤/●西尾)

※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※

筆者「西尾選手、最終戦の敗因は何だと思います?」
西尾「…」
 思えば最終戦B卓は、先輩選手3人が個性を存分に発揮する中、いわゆる展開ラスとなった西尾。こういう展開が多いようだと高島・西尾にとってはつらいなあ。
 ところで、こんなにリーチ棒が飛び交うゲームだっけか。いい悪いは別にして、なんだか少し寂しいような気がした。


第1節自戦記(2回戦A卓:高島 努) 

 ついに順位戦A級デビュー当日を迎えることになった。言いようのない緊張感が全身を覆っていた。粗相をすることの多い私が、全節無事に対局をこなせるのだろうかなど、言い出せばキリがないところである。
 101競技連盟に入会して4年、常に「私が一番マージャンの技量・所作が下手」だと認識し続け対局に臨んでいる。今期も諸先輩方に迷惑をかけることがなく、「リスペクト」の精神で臨む所存である。
 そして、1回戦は愛澤の猛攻に耐えるのみで、何もできずノーホウラ、ノーホウジュウバーで終えた。迎えた2回戦は、小川・田中・平井と「手数も多くなおかつ勝負強い」3選手を相手にしての対局となった。前期に大逆転で名翔位に輝いた田中とは2011年度と2012年度の順位戦で対局し、大きく負け越している。過去のことは、あまり振り返らずというのは理想論であるが、「チャレンジャー」のツモリで胸を借りる気持ちを持って、対局への緊張感を少しでも払拭することを心がけた。

No.1【東1局】
 さて迎えた開口一番、2枚のドラが手元に訪れて気分上々。目指すは、ピンフからタンヤオドラ2である。
 ところが、「手数の多い」3選手の気迫がそれを許さない感じが漂っていた。2巡目の打としている小川もいかにも早そう。さらには北家・平井が2枚目のをポンし、こちらも「宣戦布告」モードといったところか。
 結果は、三者がもたついている間に田中があっさりとテンパイ即ツモで好スタートを切った。
 さて、私の5巡目のは、ドラが出ていかないための先打ちのみならず、既に終盤になりかけの局面をできるだけ長期戦に持ち込みたいのも狙いの一つであった。役ナシの可能性が高いが枯れそうになったのでが出たらポンし、両門待ちのテンパイを組む構想でいたが、などにありつくことができず、下手すれば田中に放銃していたのかもしれない。

No.2【東2局】
 456のサンショクを夢見る手格好だが、ドラがだけに「誰にドラが固まっているのか」を中心に考えていた。チートイツへの警戒が一層高まる場面である。
 しかしながら、東1局とは異なり、字牌が素直に押し出される感じでテンパイを入れることができた。
 ただ、この局も田中以外の3人がアガリに向かっている状況下、どこで引き下がろうか常に考えていた(オリるなら打の予定)。
 小川が、イーシャンテントラズで放銃しているが、平井・高島に対し、手牌全ての牌が通る保障のないという状況で最もマシな牌を選んだのだろうか。おそらく私もに手がかかりそうだと思う。

No.3【東3局】
 記念すべき順位戦A級初アガリとなった東3局。迷う場面がほとんどなく、早い巡目にテンパイを入れることができた。が3枚切れという懸念材料も、あっさりとアガリを拾うことができた。今度は、ドラのに救われる格好となった。

No.4【東4局】
 A級になって初めて浮いたチョーマを卓上に置くすることができた東4局であったが、今度のドラはヤオチュー牌というのもあり、翻牌を切る気が完璧に失せていた。とにかく他家に翻牌をポンさせて、ドラを楽に使わせないよう十分配慮した。逆にドラを切ってくる状況となれば、完全マークする心構えであった。静かに流局してもらうことを切望していたが、譜の通り、今度は私を除いて3者のぶつかり合いが始まることに。
 トップ目田中の2つのポンは、ドラが絡んだトイトイと私は考えており、生牌(特にヤオチュー牌)は絶対に切らないと固く決めた。
 譜を見れば、平井の7巡目のテンパイトラズはがフリテンになっているのもあるが、首尾よくなどがひけてのサンショク狙いなのであろうか。
 小川のリーチは、ドラの絡んだ変則的なマチじゃないかなと感じていた。には絶対に摘んではいけないと思い、ひたすらオリに徹した。
 田中→小川への52移動となったが、堂々とリーチに勝負できる田中の姿がかっこいいと思った自分がいた。

No.5【南1局】
 3巡目の平井のポンは正しく警戒信号。をかぶせてきては、よほどの応戦できる手恰好と値段でなければ、反撃はできないといったところ。
 「北家の鳴きは親孝行」という格言があるが、その北家が鳴いて強くアピールしてきているのである。
 平井6巡めの打は、カンチャンからリャンメンへのスライドかと考えていたら、次巡にドラが出てきたのでかなり困惑していたが、アガった手牌を見れば「なるほど」と納得できた。

No.6【南2局その1】
 1巡めに切ったのがだったのが幸いした。カンよりも重なったをかわいがることに重点を置いた。あとは、字牌が出やすい状況になりのポンテンを場が煮詰まる前にかけられるかだけである。すると、私が構想を立てた通りの結末となった。
 ただ、を切ってきた田中へのマークはもう少しすべきだったのかなと譜を見て反省はしているところである。

No.7【南2局その2】
 私の一人旅で当然のように流局した。テンパイ打牌にドラのを切る選択肢は心の中にはあったが、相手を楽にさせてのオヤカブリを喰らうのも嫌だということもあり、最後はドラを重ねる作業に徹した。確かにアガれたらラッキーというのはあるが、アガれなくても流局すれば、あと2局で一アガリすればいいと気持ちで過ごしていた。

No.8【南3局】
 この局は耐える番となっていた。ラスめの田中も当然マークだが、寒い3着めの小川の気配が強く伝わってきたからである。これでは、南2局と同じようにもしが他家から出てきてもポンせずに安全牌として使おうかなという気持ちでいた。
 8巡めにがアンコになり、イーシャンテンだが、生牌のなど勝負に行けるはずもなく、撤退の構えを取った。
 そして、11巡めに小川からのリーチが入った。魂が伝わってくるリーチに誰も立ち向かえることなく最終手番に待望のロン牌を引き寄せられた。このリーチだが、私がもしこの場面に遭遇していたら、怖くてリーチをかけられないと思う。を引き入れるまで待つことを考えたかもしれない。

No.9【南4局その1】
 トップめ・小川との点差は68。ヤマ越しのしづらい座順にいる以上、目指すはマンガンを視野に手牌の構想を立てた。ただし、田中には放銃できないのでそれだけは最重点課題として臨んだ。
 678のサンショクをあっさりと見切ったが、7巡めの引きにかすかながら希望を抱いた。あとはイッツーを完成させるだけと思い、9巡めにイーシャンテン戻しの打。よもやの後々平井のロン牌になっては嫌かなと思ったのと、イッツーにはは2枚もいらないというのが切った理由。
 そして12巡めに待望のを切ってテンパイしたが、リーチをかけるのは、田中の動向次第で残り2巡でがヤマに残っているときに限ると決めて即リーチは怖さもありかけることを自重した。
 14巡めのを切らなかったのは、最後のが田中に使われているかもしれないと警戒してのもの。次巡の打は、まだ最後のに未練があってのものだが、これは問題外。を続けて切るべきであった。
 そして、平井が、大きな20オールを成就しトップめに躍り出た。

No.10【南4局その2】
 平井との82差を捲ればトップと言いたいところだが、その1と大きく違うのは、田中に「マンガン成就」されるとラスは私になることである。
 しかも、ドラはである。あっさりと「リーチ・ツモ・ドラ2」と言われたらおしまいである。
 しかも、与えられた配牌はアガリへは無謀を要するものであり、助かる道の一つとしては小川にアガってもらうことも考えていた。
 そして8巡めに田中がを手出ししてきた。懸念材料の一つである「リーチ・ツモ・ドラ2」や「ドラアンコ」はなくなった。この時、「リーチ」の発声もなかったので条件を満たしているテンパイではないのだろうと考えていた。「サンショク(あるとしたら123から567まで)」ならば、タンヤオが絡んでいなければリーチが必要だし、タンピンイーペイコウでもリーチがもれなく必要だからである。あとは、田中が条件を満たせずにひたすら流局か小川のアガリを待つのみと考えていたが、手詰まりを起してしまった。14巡めにを拝み打ちし、何とか2巡凌ごうと思っていたら、田中→小川の横移動によりバーで凌ぐことができた。

 2日間、A級で対局して「中途半端な打牌」や「字牌の扱い方」や「腹の括り方がおかしい」など反省材料はたくさんあると改めて感じた。少しでも改善できることは修正していき、常に「リスペクト」の気持ちで残り4節を戦っていきたい。

 

(文中敬称略)

第1節自戦記(7回戦B卓:西尾 剛) 

 ここまでの成績は△1、まだ第1節とはいえ、期首順位最下位では水面に顔を出しておかないと、すぐさま残留争いに巻き込まれてしまう。

No.1【東1局】
 開局早々は四者ともに慎重に構え、通常でもアガリが出にくいのに、ドラが字牌ではオヤ番を1回損した気分である。
 それでも、手牌に字牌が少ないのをいいことに、まっすぐ手を進め、8巡目にはピンフのイーシャンテンとなる。しかし、テンパイしないまま、ドラの、初牌のと引かされては流石に手仕舞い。
No.2【東2局その1】
 このフリコミは完全に失着である。序盤からオヤの村田と田中が行く気を見せ、手牌の整わない私としては早くも流局狙い。さらに、田中のドラポンの後は両者に通る牌を打ち繋いでのベタオリ状態。
 そんなところからのフリコミなのだからヒドイものである。もちろん、村田のテンパイ復活に気づかなかった訳ではない。両者に安全に打ち切れる牌が無いと思い込んでいたのである。値段が高いのが確実な田中に打つ訳にも行かず、仕方なくに手をかけたのだが、牌譜を冷静に眺めてみると、安全牌があるじゃないか。を先打ちした田中にの二度受けがあるはずもなく、明らかな見落としである。
 もっとも、対局中は失着に気づかず、安くてよかったなどと思い、精神的なダメージは無かったのだが…
 村田のテンパイは三面張ではあるが、ヤマに一牌も残っておらず、私の失着がなければアガリはない。一方、田中のはこの巡目にもかかわらず5枚も残っており、ツモアガリの可能性も高い。もしかして結果オーライ?
No.3【東2局その2】
 ラス目に落ちたわけだが、まだ傷は浅い。配牌は中のアンコこそ心強いが、後はヒドイ形でツモを見ながらの進行となる。しかし、ツモが効かない上、田中の攻勢にオリ気味に行かざるを得ない。結局、田中の打ちを見ては(焦るな、まだ先は長い)と、頭の中でつぶやきながら完全撤退。
No.4【東3局】
 4巡目テンパイをリーチでツモって小差ながらトップ目に立った一局、アガリ形にはなんの工夫もない。なぜ即リーチしないの?こう考える人も多いだろう。私もそう思う。(笑)
 (焦るな、まだ先は長い)と、呪文のように唱え続けたせいで瞬間的に「リーチ」の声が出なかったというのが真相。テンパイ打牌がドラでは、目立つことこの上なくヤミテンメリットもあまりない。いまさらツモ切りリーチも迷いを見せるようでイヤだし、と困っていたら、2枚目のドラで理由ができたとばかりにリーチに踏み切った次第。
No.5【東4局】
 平井の早いリーチを受けてバタバタの一局である。配牌がそこそこ良かったのも一因だが、平井の手牌進行の早さにまるで気づいていなかった。(平井の鼻息は感じなかったのだが…)
 全局を反省して少し積極的に行こうと手牌を目一杯に広げたのも判断ミス。いつもなら、のかわりにが手元に残っていたところ。最後は完全な手詰まりで、流局したのはただのラッキーだろう。
No.6【南1局】
 供託リーチ棒があり、オヤ番のここは少し強く出たいところである。しかし、6巡目に村田がドラのを放ち、田中がそれに突っ張るのでは、私の出番はない。
 後は流局を願うのみだったが、2番手から3番手への点棒移動は私にとって次善の結果だった。
No.7【南2局その1】
またしても村田と田中がファン牌先行で行く気を見せる。私も4巡目のを仕掛ければイーシャンテンであるが、トップ目でこんな中途半端な形ではと見送り。
 のトイツは2枚の安全牌として抱えたまま、手配を広げず手を進める。既に攻めっ気を見せた2人がいるので、流局を視野にいれながら、うまくいった時だけアガリを拾う構え。
No.8【南2局その2】
 2番手に落ちたが、ラス目との点差は若干ながら開き攻めやすい展開である。しかし、ドラが字牌で手牌もぱっとしない。結局、ダメ元のチートイツ狙いで手詰まりしないよう、序盤から中張牌を並べていく。
 6巡目の平井のドラ切り、田中のツッパリを見てこの局は当初予定の流局で良しとする。
No.9【南3局】
 序盤からオヤの平井の鼻息が荒い。しかし、私もかなり整った配牌でトップ目奪回に目一杯に構える。田中のリーチに一瞬ヒヤリとしたが、場に3枚切れのを引いて高めサンショクのテンパイでは降りる気なし。ここが勝負と追いかけリーチを打った。田中のツモ番の度に念を送ったが、残念ながら流局。
No.10【南4局】
 前局はあがれなかったが、供託リーチ棒があるので5・10でもトップである。手牌はなかなか進まないが、村田と平井の動向は無視して一直線にあがりに向かう。
 10巡目にやっとシュンツ手のイーシャンテンとなり、ドラを1枚外してチートイツを見切る。分岐点は12巡目、

 私の選択は打である。サンショクを見るなら切りであろうが、よりの方がヤマに残っていそうである。そのため、田中13巡目のを仕掛けられなかった。
 予定通りをポンしてのテンパイも16巡目の引きには参った。サンショクなら大威張り、そうでなくてもここでトップになっていたわけで、一瞬固まってしまった。それだけに最終ツモでのあがりはうれしかった。

 こうやって譜を眺めてみると失敗の連続でトップを取れたのはただの幸運にも思える。しかし、水面に顔を出せたのも事実。なんとか足掻きながらも水面を泳いで行きたいと思う。

(文中敬称略)

第35期順位戦A級 第1節 星取表 (5月10・11日/東京)

選手名
開始前
1回戦
2回戦
3回戦
4回戦
5回戦
6回戦
7回戦
8回戦
終了時
順位
田中  実
S-0
B 
A 
B 
A 
A 
B 
B 
B 
△2
7
小川  隆
S-0
B 
A 
A 
B 
B 
B 
A 
A 
2昇
1
村田 光陽
S-0
A 
B 
A 
A 
B 
B 
B 
A 
△3
8
愛澤 圭次
S-0
A 
B 
B 
B 
B 
A 
A 
B 
1昇
3
成岡 明彦
S-0
B 
B 
B 
A 
A 
B 
A 
B 
1昇
4
平井  淳
S-0
A 
A 
B 
B 
B 
A 
B 
A 
±0
5
高島  努
S-0
A 
A 
A 
A 
A 
A 
A 
A 
2昇
2
西尾  剛
S-0
B 
B 
A 
B 
A 
A 
B 
B 
△1
6
立会人:堀川 隆司/安田健次郎