
第35期順位戦A級 第4節
第4節観戦記:五十嵐 毅(日本プロ麻雀協会)
10月11、12日、順位戦A級第4節が行われた。全5節の第4節である。そろそろ成績の上下によって、上(名翔位争い)を見るか、下(降級逃れ)を見るかに分かれてくるところだ。
ここで第3節までの成績のおさらいをしてみる。
現在首位の愛澤圭次5昇は上を考えるだけ。2位の小川隆3昇も愛澤を追うだけである。
降級ポジションから這い上がりたいのが村田光陽△6と田中実△3である。特に村田は重い。トップを取らない限り1戦ごとに首つりのロープが引っ張られる気分ではなかろうか。
ここに比べれば田中は十分望みがある。現名翔位であるがゆえ、昇が並べば誰に対してもアドバンテージが利く。0昇に戻せれば文句無しだろうが、△1や△2でも他者のスコア次第では滑り込み残留が図れそうだ。
高島努2昇は上を目指せるスコアではあるが、昇級したばかりで期首順位下位のため愛澤を上回ろうとするなら実質4昇差。ひとつ落とせば愛澤より田中のほうが近くなるのだ。そう考えると、上ばかりを見ていられない。平井淳1昇、西尾剛1昇も同様、この第4節の成績によって最終節の方針が決まるといっていいだろう。
成岡明彦△1はさらに厳しい。第4節どころか、この初戦に田中に並ばれ降級ポジションになってしまう危険性もあるスコアである。
◆◆◆ 21回戦A卓 ◆◆◆
〈成岡△1・小川3昇・西尾1昇・高島2昇〉
開局早々、西尾がタンヤオツモ、5・10。しかし、このとき小川の手が凄かった。


















対して、西尾の


次局の成岡のリーチに目を瞠った【牌譜1】。
自分の目からは




しかし、前局のオヤかぶりでラス目になっていてリーチ棒を投げやすいとはいえ、このリーチをかけられる者が何人いるだろうか? 筆者も手順の違いこそあれ(イッツーも睨んで残すドラ

成岡のヤマ読みに対する自信と踏み込みの良さを感じさせる一局である。
東3局は南家・高島の




















東4局から南2局までは流局。南3局にアガリが出る【牌譜2】。
高島が













細かいところだが、トップ目の小川は西尾の10巡目


成岡とラス目・高島の間が24詰まっただけで4者の順位が変わらぬまま迎えた南4局、オヤの高島が、


















どのみちマークされるラス目のラスオヤ、仕掛けて相手の足を止め、テンパイまでの自分の持ち時間を長くするというのはネットマージャンなどでも見られるいまふうの打ち方かもしれないが、それはノーテン罰符ありテンパイ連荘ルールで生きるのであって、いまふうのルールではない101にはそぐわない。結局、高島はイーシャンテンのままで終わった。
鳴かなかった場合を牌譜で検証してもアガリはなかったようだが(





◆◆◆ 22回戦B卓 ◆◆◆
〈愛澤4昇・平井2昇・田中△3・西尾1昇〉
流局した後の東2局、この局に関しては苦言を呈せねばならない【牌譜3】。
田中の仕掛けは

田中が普段から、全員平たいところからでもノミ手の仕掛けを入れるのかはわからないが、通常はこんな急いだ仕掛けにドラがないとは考えにくい。
ここに放銃した西尾、行き過ぎではないか? テンパイして


「ここまで」として白旗を掲げるなら、




東3局、オヤを迎えた田中だが、40のアドバンテージが一瞬にして吹き飛ぶ。
西尾がリーチ即ツモ。


















東4局は流局、南1局は平井がポンテンの3・6、南2局は流局し、迎えた南3局【牌譜4】。
オヤの田中が8巡目にリーチするも、


リーチ時点で


ところで、この牌譜でまた苦言を呈さなければならない。
西尾はなぜ17巡目に平井の切った

首位・愛澤がラス目で南4局となるが、前局のリーチ棒で3着目に落ちた田中のほうが寒かったかもしれない。気のせいか二人の表情は暗かった。それに対し、気合い満々となった者がいた。
西尾45→平井05→田中13→愛澤という点差である。ラスオヤは西尾、供託棒も転がっている。7・14で良しとばかりに平井は座り直した。
そしてソウズの濃い、おあつらえ向きの手が入った。
7巡目、自風の






















愛澤が首位から陥落した。その愛澤相手にトップラスを2回決めて並んだ平井。「鼻息が荒い」という言葉がこれほど似合う男はなかなかいない。狭い対局場なんだからもう少し静かにしましょうよ、この日は脇で八翔位戦の延長戦もやっていたことだし。
◆◆◆ 23回戦B卓 ◆◆◆
〈小川4昇・村田△5・平井3昇・田中△3〉
愛澤の失速で首位に立った小川が東1局、メンゼンツモの6オール。その2は流局。東2局は村田6オール(

しかし、そんなぬるい展開は許さないとばかりに流局後の東3局、平井がメンゼンタンヤオ24を村田から直撃し村田に代わり同点トップ目に。
次局その2は相手が平井だからなのか、小川が5巡目にトップ落ちの



それほど高い手が出ているわけではないが、3者にこうツモられまくっては、田中は辛い。そして案の定というか、東4局のオヤ番では何もできない配牌とツモで流局を願うしかなかったが、流局間際の15巡目に平井に7・14をツモられオヤっかぶり。平井はまだ小川に25及ばないが、残りヤマが少なすぎた。テンパイがもう少し早ければリーチしていただろう。
南1局は流局するのだが、田中の第1打が意外だった。


















確かにシャンテン数ではチートイツが2シャンテンと一番近いが、中張牌だらけの手でシュンツ手の拒否はやり過ぎではないか。どうせラス目、



もっとも、どうやっても残る


南2局、長打が出る。もちろん田中ではない。
オヤの村田、10巡目にこの形でテンパイし、ヤミテンにしていた。
















ムダヅモとはいえドラ表示牌のツモがリーチの契機になったとするならば、やって来た

南2局その2は田中の初アガリ。メンゼンツモのみ3・6。ドラも何もない手でカンチャンではリーチには行けない。たとえリーチしていてもラス逃れにはならない。
南3局は田中のリーチは入るが流局。
村田27→小川25→平井51→田中(供託10)の点差で迎えた南4局【牌譜5】、小川に願ってもない手が入った。
配牌ドラドラ。そしてこの

3巡目、平井が配牌からあった

いたたまれないのは村田である。まくられるにしてもこんな簡単にやられるのでは、何かが取り憑いているようだ。
鼻息の荒かった平井だが、逆に小川に2つ差とされてしまった。しかも別卓では愛澤がトップで、結局3位に。
◆◆◆ 24回戦A卓 ◆◆◆
〈高島±0・平井3昇・愛澤4昇・小川5昇〉
東1局は高島がピンフツモ。東2局は平井がメンツモ、しかしドラ3でマンガン。



















しかし、次局【牌譜6】の愛澤の5メンチャンはどうだろう?
タンヤオの消える

確かにこの手をリーチしてアガッてもトップ目には立たない。「101の打ち方」なる教科書があれば、これは「ヤミテンにするべき」と書いてあるだろう。
このヤミテンは21回戦成岡のカン

「鋭い」のが成岡であり、徹底して基本に忠実なのが愛澤なのである。そしてどちらも強い。強さの質が違うのである。
南1局、オヤ番の愛澤8巡目。

















次巡、裏目の


ただし、まだ平井に04届かない。ということで次局【牌譜7】リーチ。3巡目という早さでメンタンピン。11巡目にツモ。
この局の高島の打ち方が謎だった。
第1打




普通は



















なぜか第1打

















なにしろドラはこちらがアンコ、愛澤はリーチのみの24、あって42といったところだ。実際には60の手だったが、それでも放銃してもまだ同点3着、ラスにはならない。
まあ、そうしたところでアガれていない。愛澤のアガリが早まるだけだが(平井の7巡目ツモの

この日すでに2ラスを喰っている高島、まるでラスだけを怖がって座敷の隅に逃げたがるチワワのようなマージャンだ。メンツを壊して

結局、この半荘はこの局がすべて。南4局は平井がオヤでタンヤオチートイツをアガるも、放銃が小川では大勢に影響なし。その2は平井に手が入らず、愛澤の逃げ切り。
これで初日が終了。2ラススタートの愛澤、体調が優れなかったこともあってどうなるかと思ったが2連勝で戻した。小川は最後のラスが後味悪いだろうが、差を1つ詰めたのだから悪くはない。
村田はできれば23回戦トップで終えたかっただろう。1つ戻しただけでは不満か。しかし、高島と西尾が星を落として、もしやの位置に来たのは好条件か。なにしろ村田の成績では自力だけでは降級圏脱出は難しい。人の不幸を願わねばならないとは、村田殿、因果な商売よのう。
2日目、会場入りする前に朝食を採った。立ち喰いそばかコーヒーショップのモーニングでもと思っていたが、24時間営業の中華屋を見つけたのでそこに入った。
しばらくすると村田が駆け込んできてラーメンを注文。先に注文したこちらより早く出てきて先に食べて「お先に」と出ていった。
時間を考えれば調理時間が短いものにするべきで、村田のほうが正解。この男、今日は場がよく見えるかもしれない。
◆◆◆ 25回戦A卓 ◆◆◆
高島±0・愛澤5昇・村田△5・田中△4
東2局、愛澤42(放銃・村田)。その2、田中4・8。
東3局、村田8オール。その2流局。
東4局、村田13・26。
南1局、流局。
という経過で、譜のような点差で迎えた南2局【牌譜8】。
田中、4・8のツモアガリだが、ツモッてもまだラス目。なぜリーチしなかったのだろう?
もう1役付けてリーチツモならばトップまで抜けるが……2巡目ツモ切りの





南3局は愛澤が3・6ツモ。
ますます僅差になって迎えた南4局の攻防がおもしろかった【牌譜9】。
僅差でラス目のラス親の田中、この


ここにピンフテンパイを入れた愛澤がしれっとドラ

村田はご覧の通りアガリに向かっていない、というかとてもアガリは拾えそうにない手だ。ようは牽制の鳴きなのだ。
牽制したのはドラを切ってきた愛澤? いや、そこよりも高島だろう。「20を打ったら君はラスになるでしょ」と、ドラメンツを晒したのだ。
ラス目の田中と、20を打ってもラスにはならない愛澤には効果は期待できないが、村田にしてみればアガリに来る人間を1人でも減らしたい、流局になる可能性を1パーセントでも増やしたいところなのだ。なによりこの手では、それぐらいしかやることがない。
結果は愛澤が高島に放銃。この

高島に20を打ってもラスには落ちないのは折り込み済み、長引いて田中にアガられて面倒なことになるよりはずっとマシなのだ。
「高島君どうぞ」「愛澤さんありがとう」の関係が成立したわけで、そうした点棒状況でトップ目のまま南4局を迎え、かつどうにもならない手で戦わなければならない村田、やはり今期は何か引きずっているのか、何か肩に載っているのか? 高島にトップを取られ、別卓でも西尾にトップを取られ、ラスを喰った田中ともども中位陣に離されてしまう。
◆◆◆ 26回戦B卓 ◆◆◆
村田△5・田中△5・愛澤5昇・小川3昇


















「安定した形」というのは、トップが守りやすいということだ。この考えは前世紀の『近代麻雀』に「オヤマンより大きい26オール」という題で掲載されたものだが、101は単なる点差ではなく4者の点差バランスで戦い方が変わるというもの。
点差バランスを山に例えるならば、頂上はトップ目、ラス目は麓で、2着、3着が8合目や9合目にいたのではトップは守り辛い。一番安定しているのは26オールなどを引いて3者を麓に置いた状態である。オヤマン120の出アガリは点数としては大きいが、2人を5合目に置いたままなので後々波乱の展開が予想される。
この田中のケース、散家でのマンガンツモなので親の村田が単独ラスになってはいるが、点差のバランスで4者を山におけば、愛澤、小川はせいぜい2合目。麓に転げ落ちる危険のほうが高く、お気楽に頂上ばかりを見ていられない。だから東1局のマンガンツモというのは、101では相当安定したトップ目なのだ。
しかし、いまの田中はこの安定したトップ目が1局ともたない【牌譜10】。

愛澤のテンパイは10巡目。この時の打牌は




そんなに高い手だとは思わなかったという言い訳は通用しない。オヤに向かってラス落ちの危険がある牌を勝負する以上、見返りとして(高目安目の条件があるにせよ)トップが望める手だろう。なにしろ相手は教科書・愛澤であり、スコアからいってもリスク・リターンが釣り合わない勝負をする必要がないのだから。
田中はおそらく、前年度はこんなマージャンを打っていなかっただろう。せっかくトップ目に立ちながら心理面では追い込まれているような印象を受けた。
東4局、村田がイッツーのペン

南1局は流局し、再び迎えた田中のオヤ番。持ち点はそれぞれ、愛澤36000、田中30000、村田29800、小川24200。
ドラが





ツモ切りは



この緊急事態に田中は焦っただろう。だが、次巡テンパイを果たす。














しかし、リーチ棒を出した直後に愛澤が「ロン」と言ってツモ牌を引き寄せた。チートイツ仮テンの




















リーチ棒を出した瞬間にオヤかぶりした田中、気のせいか顔が蒼ざめたように見えた。気のせいではなかったかもしれない。頂上は200差の高みに昇り、麓が28差のすぐそこに見える3着目に落ちたのだから。
しかし、気のせいだったのだろう。というのも、田中は次局、気落ちせずに素晴らしいファイトを見せるからだ。


















そして南4局、これがこの日、最大の話題になった局である【牌譜11】。8巡目に

































しかし、田中は次巡















ホンイチに向かった? なぜ? 20で同点トップなのに……。
例えば、これが平井のポジションならわかる。3昇で並びの小川がラス目。ついでに逆転単独トップを取れれば、愛澤との2昇差をひとつ詰めることができ、一石二鳥だ。
(平井ならそう打つというわけではない。むしろ20のテンパイを急ぎ、ツモッた場合のみ単独トップという堅実策をとるだろう。あくまでも「そのポジションならそう打った」としても、狙いがわかるという話である)
しかし、田中のポジションでは愛澤がターゲットというわけではない。同点トップを嫌う必要はまったくない。
しかも最後は腰くだけのようにオリに回っている。クエスチョンマークを1ダースくらい抱えながらこのオーラスを見ていた。
半荘終了後、喫煙者たちは外に出る。灰皿を囲みながら、採譜者たちも「あの田中の打ち方は何だったんだ?」と疑問符を飛ばしていた。そしてあれこれ推理したが、謎を解ける者は1人もいなかった。
このまま永遠の謎にしてしまっては観戦記者失格である。なので、対局後の飲みの席に観戦記者の仕事として付き合った。いや、どのみち飲むのだが。
以下はその場で語られた田中の思考である。題して、『本格ミステリー・私は刺されたかった』
「巡目が深くなって小川さんが連荘は無理となったとき、差し込んでもらうためにホンイチにしたんです。20の手では小川さんは差し込んでくれない」
これを聞いて、筆者を含む喫煙場所で首をひねっていた連中がハッとした表情になった。
そして小川も頷いた。
「同点で愛澤さんがトップのままでは、僕には差し込む意味ないもんね。28以上で愛澤さんの邪魔をできるなら差しに行くよ」
テンパイ後ヤマまかせになるよりは、差し込んでもらったほうがアガリ率が格段に高くなるのは自明の理。しかもホンイチなら色は明確、差し込むほうも牌を選びやすい。 ここまで読んでのホンイチ移行、筆者には思いつかなかった。さすが「現名称位」というべきか。戦略には長けている。
しかし、それならばもっと徹底してもらいたかった。12巡目に掴んだ

同巡、





小川が678サンショクを付けた60まで狙っていたとしたら、
















しかし、疑問手である。
仮に





















だが、田中はそうせず、いやそうできず、



もしかしたら、13巡目の

「これ持ってきてテンパネするなら、ドラターツ嫌う必要なかったのに!」
この動揺が

田中が読みや戦略に長けているのは認めよう。しかしメンタルに関しては、やるべきことだけをマシンのようにこなし、着々と昇を上乗せしていく愛澤とは雲泥の差があると言わざるを得ない。
◆◆◆ 27回戦B卓 ◆◆◆
愛澤6昇・成岡±0・村田△5・平井3昇




そうでなくても101で東1局に原点リーチはかけ辛い。まあ、ヤミが普通である。
それをツモ切りリーチに踏み切らせたのは、成岡の2フーロ目だろう。成岡の足止めをしたい、もちろんそれもあるが、残り2枚の

成岡は3巡目に






ならば、2枚見えとはいえ、ワンズの上の出具合から悪くはないマチである。そこでツモ切りリーチといったのだろう。
しかし残り2枚ではなく、平井の手にあって残り1枚だった。しかも、イッツー片アガリの成岡はすぐにダウンしたが、愛澤のほうがヤバかった。ドラ表示牌の


なにはともあれ、村田には貴重な先制である。101の東1局・マンガンツモは安定したトップ目と書いたが、愛澤がオヤかぶりしたため、愛澤のラスを欲する平井や成岡は並びを崩したくない。ますます村田には有利である。
しかし、東2局その2(その1は平井が成岡に18放銃)に不幸が訪れる【牌譜13】。
4巡目にしてホンイチ52に放銃。交通事故としか言いようがない。それもダンプにぶつかったぐらいの衝撃である。
村田の意図は明確。こんな配牌をもらって無邪気に手を進めるトップ目はいない。将来の安全牌を溜め込むための中張牌バラ切りである。村田の師匠が言うところの「穴熊」だ。
いくら早いといっても、平井の3巡目のドラ



それでも、平井と06差でまだトップ目。だが次局にはまくられる。まくった相手は平井ではない。
















そして、さらにトップ目は動く。南2局、成岡の9巡目、
















その2は平井が仕掛けて3・6。南3局は流局で南4局に【牌譜14】。
村田は思ったことだろう。「マンガンツモでスタートしたはずなのに、なぜ僕はラス目でオーラスを迎えているのだろう」と。
しかし、目の前の現実と向き合わねばならない。そうして3着目平井との点差を確認すると61差。この01差が実に邪魔である。リーヅモ+1翻では01足りない。テンパネかピンフが必要なのだ。
配牌を取った村田は顔色が曇った。ドラは

第1打を切るのに相当な時間を要した。その後も唸りながらの撲打が続く。対面から見ていても難解な問題を突きつけられているのがわかった。
それにしても、よく正解を引き出したと思う。
第1打

さらに難解だったのは5巡目。


















最後の形では8巡目に打った






















村田、薄氷のラス抜けで踏みとどまった。A卓は西尾トップのラスなし。
◆◆◆ 28回戦B卓 ◆◆◆
成岡1昇・西尾1昇・小川2昇・愛澤6昇

















東2局は勝負手がぶつかりあった【牌譜15】。
西尾の11巡目の

しかしそれはポイントマージャンの考え方で、役満打ってでかいラスを引こうが、01差でラスを引こうが101では△1に変わりはない。役満もオヤのハネマン(この













ラスに落ちた西尾はドラ1の手で次局リーチ。これをツモッて10・20。まだラス目であるが、上から下まで28差の僅差になる。
東4局、15巡目というド終盤に成岡がドラ





























南1局は流局、2局は小川の3・6(オヤ・西尾)、3局は流局となって迎えた南4局、オヤは愛澤である【牌譜16】。
ドラ






しかし西尾はまだ1シャンテンだった。むしろ敵は小川だった。小川はこのときタンヤオの





16巡目、愛澤は






小川はロンをかけなかった。3メンチャンである。もう2回あるツモにかけてみたい。
しかし、次に愛澤が切ったら、今度はロンをかけるだろうと思った。自分のトップがベストだが、首位を行く愛澤のラスもベターなのだ。
そして次巡の

終局後、「最後は

いま牌譜を見ても致し方ないかなと思う。愛澤の立場で考えてみよう。
ツモ1回残して





筆者は観戦時、西尾も小川の手も見ていた。だから小川のゲンブツの





終了後、成岡が、「やっと愛ちゃんの背中が見えてきた」と言っていた。背中は見えたかもしれない。だが、だいぶ距離があるように思える。最終戦のオーラスは御不幸だったが、それほど愛澤が充実して見えた。
もしも愛澤が戴冠できなかったとしたら、最終戦の小川の判断が物をいうような気がする。いずれにしろ、上は僅差の勝負になるだろう。
降級のほうは村田、田中にほぼ決まりかけている。もう最終節は、なりふり構わず戦う姿に期待したい。
最後に観戦子としてひとこと。
101は面白い。見ていても面白い。しかし、書くのは疲れる。打ち手の思惑や戦略が如実にあらわれるマージャンなので、そこまで踏み込まないとダメだからなぁ。みんなアガリたがってリーチして、めくり勝負するマージャンならこんな1万5千字も書かなくて済むのに……。
思い起こせば101の観戦記は初めてだ。順位戦選手時代にも書いた覚えがない。おかげで気楽に引き受けて後悔しました(T T)
つたない部分もあったと思いますが、またご依頼があれば頑張ります。
第4節自戦記(24回戦A卓:愛澤 圭次)
No.1【東1局】
本日の出だしで連敗し、小川に逆転された。23回戦に1つ戻し4昇としたが、小川もトップで差は詰まらず。そこで迎えた直接対決である。起家で配牌も良い。字牌から飛ばしてやる気満々だったが、4巡めにドラのを引いてちょっと困った。次巡この形になる。













































結果はすーっと押し返してきた高島が軽くツモアガリ。まあ、ドラでなくて良かったか。
No.2【東2局】
オヤカブリでラス目になった。先は長いが、のんびりもしていられない。配牌はいつもの配牌…チャンタとチートイツを見て進める。4巡目に平井が不審な動作。ちょっとだけ警戒したが、あっさりツモられ20・40。まあ、ラス抜けだしいいか。
No.3【東3局】
早そうな手が来た。こんな時は自分だけでは無いことが多いので、周りにも注意が必要。
とは言え1巡目でイーシャンテン。トップを考えるとイッツーが欲しいが、ここは足場を固める方が大事と考えた。現状のスコアを考えると、このメンバー相手にラスは引きたくない。
タンヤオの仮テンから5メンチャンに変化。リーチもあるが、ヤミでどこから出ても嬉しい状況になるので当初の思惑どおりアガリを優先した。
No.4【東4局】
出アガリが出たところで局面が落ち着いたのか、また、トップ目の平井がコクシか一色手か、という雰囲気を出し、皆が強く出なかったため流局。
私もこの配牌に2巡目が

No.5【南1局その1】
トップを狙うには、このオヤ番で何とかしておきたい。そんな気持ちで配牌を取ったが…。ドラを重ねるかピンズのイッツー位しか楽しみが無い。ということでペンチャン落としから入ってみた。
4巡目にこの形、
















7巡目高島が仕掛けたところでドラが重なりテンパった。














平井が


No.6【南1局その2】
トップ目平井と04差に追い上げた。前局について、リーチをかけないのか?と質問を受けたが、まあ、高島とめくりっこでこちらは出アガリできない状態なので、リーチはしませんなぁ。
さて今局、配牌はとても良い。ツモ2回でタンヤオも付いてテンパイ。さすがにこれはリーチに行きます。結構長いツモ切りを経て、無事アガリ。
No.7【南1局その3】


No.8【南2局】


無事流局でほっと一息。
No.9【南3局その1】
ひと様のリーチ棒を回収すべく、そうそうに仕掛けてみた。















No.10【南3局その2】
ワンズに寄せてみましたが、本気でアガる気も無いので、早々に撤収。アガリの形はあるが、中盤は手詰まり防止に集中した。
高島も手は整っていたが、配牌からの




No.11【南4局その1】
第1ツモで形が見えたので、


No.12【南4局その2】
点差は62。序盤での構想は、ピンフもしくは

平井の手変わりが入った12巡目以降は手仕舞い。小川も当然まっすぐだったが、こちらもまとまってきた気配はなく、苦しそう。もちろん、ラス抜けが目的だが、私をトップから引きずり落ろす策も考えているはず。
しかし、平井・小川の両者ともテンパイは入れられず、無事流局となった。
第35期順位戦A級 第4節 星取表 (10月11・12日/東京)
選手名
|
開始前
|
21回戦
|
22回戦
|
23回戦
|
24回戦
|
25回戦
|
26回戦
|
27回戦
|
28回戦
|
終了時
|
順位
|
田中 実
|
△3
|
B −
|
B −
|
B ●
|
B −
|
A ●
|
B −
|
A −
|
A ◎
|
△4
|
7
|
小川 隆
|
3昇
|
A ◎
|
A −
|
B ◎
|
A ●
|
B ●
|
B ●
|
A −
|
B −
|
2昇
|
2
|
村田 光陽
|
△6
|
B −
|
A ◎
|
B −
|
B −
|
A −
|
B −
|
B −
|
A −
|
△5
|
8
|
愛澤 圭次
|
5昇
|
B ●
|
B ●
|
A ◎
|
A ◎
|
A −
|
B ◎
|
B −
|
B ●
|
5昇
|
1
|
成岡 明彦
|
△1
|
A −
|
A ●
|
A −
|
B ◎
|
B −
|
A ◎
|
B ◎
|
B ◎
|
2昇
|
3
|
平井 淳
|
1昇
|
B ◎
|
B ◎
|
B −
|
A −
|
B −
|
A −
|
B ●
|
A −
|
2昇
|
4
|
高島 努
|
2昇
|
A ●
|
A −
|
A ●
|
A −
|
A ◎
|
A −
|
A −
|
A ●
|
±0
|
6
|
西尾 剛
|
1昇
|
A −
|
B −
|
A −
|
B ●
|
B ◎
|
A ●
|
A ◎
|
A −
|
1昇
|
5
|