第35期順位戦A級 第4節

 観戦記自戦記/愛澤 圭次星取表

第4節観戦記:五十嵐 毅(日本プロ麻雀協会)

 10月11、12日、順位戦A級第4節が行われた。全5節の第4節である。そろそろ成績の上下によって、上(名翔位争い)を見るか、下(降級逃れ)を見るかに分かれてくるところだ。
 ここで第3節までの成績のおさらいをしてみる。
 現在首位の愛澤圭次5昇は上を考えるだけ。2位の小川隆3昇も愛澤を追うだけである。
 降級ポジションから這い上がりたいのが村田光陽△6と田中実△3である。特に村田は重い。トップを取らない限り1戦ごとに首つりのロープが引っ張られる気分ではなかろうか。
 ここに比べれば田中は十分望みがある。現名翔位であるがゆえ、昇が並べば誰に対してもアドバンテージが利く。0昇に戻せれば文句無しだろうが、△1や△2でも他者のスコア次第では滑り込み残留が図れそうだ。
 高島努2昇は上を目指せるスコアではあるが、昇級したばかりで期首順位下位のため愛澤を上回ろうとするなら実質4昇差。ひとつ落とせば愛澤より田中のほうが近くなるのだ。そう考えると、上ばかりを見ていられない。平井淳1昇、西尾剛1昇も同様、この第4節の成績によって最終節の方針が決まるといっていいだろう。
 成岡明彦△1はさらに厳しい。第4節どころか、この初戦に田中に並ばれ降級ポジションになってしまう危険性もあるスコアである。


◆◆◆ 21回戦A卓 ◆◆◆

〈成岡△1・小川3昇・西尾1昇・高島2昇〉

 開局早々、西尾がタンヤオツモ、5・10。しかし、このとき小川の手が凄かった。
 南家でドラのがアンコ。ツモればサンアンコまで。ただし、は1枚場に出ていて成岡が使っており、は成岡、高島が1枚ずつ持っていて純カラ。
 対して、西尾のマチは5枚生き。まずは順当な立ち上がり。

 次局の成岡のリーチに目を瞠った【牌譜1】
 自分の目からはが2枚見え、の出具合、さらに西尾8巡目のツモ切りを加味すれば、このは山にいると判断できる。事実、リーチの時点で残り3枚全部生きていた。
 しかし、前局のオヤかぶりでラス目になっていてリーチ棒を投げやすいとはいえ、このリーチをかけられる者が何人いるだろうか? 筆者も手順の違いこそあれ(イッツーも睨んで残すドラが最後の手出し)、この最終形になる。しかしリーチはしない、できない。順位戦選手のほとんどがそうではなかろうか?
 成岡のヤマ読みに対する自信と踏み込みの良さを感じさせる一局である。

 東3局は南家・高島のポンテンと小川のポンテンの勝負となったが、値段が違った。小川はホンイチが付いていて、待ちも3メンチャンと極上だった。
 
 放銃は高島。小川がひとつでもピンズを余らせていれば止まったかもしれない。

 東4局から南2局までは流局。南3局にアガリが出る【牌譜2】
 高島がを引いてテンパイ直後に成岡のツモ切りが捕まった。高島の待ちはナシ、が放銃牌を含めて2枚残っているだけだった。対して、オヤで大物手を張っていた西尾のペンは純カラだが、成岡がを重ねれば出ていく牌(残り2枚、も残り2枚)。さらに、サンショク目のある引きならともかく引きテンパイなら西家だけにを打ってタンキに受けかねない。成岡のこの放銃は存外、ラッキーだったかも知れぬ。
 細かいところだが、トップ目の小川は西尾の10巡目打に、他2人がツモ切りなのを確認して同巡合わせ打っている。高島にはこの隙の無さが恨めしかっただろう。小川には、手にあるアンコのがもはやアガリ役ではなく安牌3枚としか映っていなかったはずだ。

 成岡とラス目・高島の間が24詰まっただけで4者の順位が変わらぬまま迎えた南4局、オヤの高島が、
 この形からポン、打と仕掛けたのには驚いた。確かにリャンシャンテンからイーシャンテンにはなるが、これは101のラス目の仕掛けではない。ドラの今局でこんな仕掛けを入れられたら誰もが何も打たなくなってしまう。
 どのみちマークされるラス目のラスオヤ、仕掛けて相手の足を止め、テンパイまでの自分の持ち時間を長くするというのはネットマージャンなどでも見られるいまふうの打ち方かもしれないが、それはノーテン罰符ありテンパイ連荘ルールで生きるのであって、いまふうのルールではない101にはそぐわない。結局、高島はイーシャンテンのままで終わった。
 鳴かなかった場合を牌譜で検証してもアガリはなかったようだが(と引き入れてカンテンパイからリャンメン変化まで)、それでも101でのラス目はいち鳴きテンパイまで弓を引き絞るべきだと思う。
(◎小川/●高島)


◆◆◆ 22回戦B卓 ◆◆◆

〈愛澤4昇・平井2昇・田中△3・西尾1昇〉

 流局した後の東2局、この局に関しては苦言を呈せねばならない【牌譜3】
 田中の仕掛けはバックとイッツーの2方向を見た仕掛け。中麻(国際公式ルール)経験のある田中らしい仕掛けだ。
 田中が普段から、全員平たいところからでもノミ手の仕掛けを入れるのかはわからないが、通常はこんな急いだ仕掛けにドラがないとは考えにくい。
 ここに放銃した西尾、行き過ぎではないか? テンパイして、ここまではわかる。しかし、このを鳴かれた以上、もう無スジは行けないだろう。
 「ここまで」として白旗を掲げるなら、と抜ける牌はいくらでもある。

 東3局、オヤを迎えた田中だが、40のアドバンテージが一瞬にして吹き飛ぶ。
 西尾がリーチ即ツモ。
  前局ラス目に落ちているためにリーチ棒が出しやすく、高目ツモでマンガンとなった。オカルトな言い方をすれば、今期不調のオヤ・田中がツモらせたということか。

 東4局は流局、南1局は平井がポンテンの3・6、南2局は流局し、迎えた南3局【牌譜4】
 オヤの田中が8巡目にリーチするも、どころか、リーチ後にソウズの手触りを味わうことすらなかった。
 リーチ時点では3枚持たれていたがは丸生き。それがすべて平井に流れた。特に13〜15巡目の3連続ツモ、ダイソンなみの吸引力である。
 ところで、この牌譜でまた苦言を呈さなければならない。
 西尾はなぜ17巡目に平井の切ったをポンして田中の最終ツモを飛ばさなかったのか? 理解に苦しむ。もしも18巡目にツモられていたらA級戦犯である。

 首位・愛澤がラス目で南4局となるが、前局のリーチ棒で3着目に落ちた田中のほうが寒かったかもしれない。気のせいか二人の表情は暗かった。それに対し、気合い満々となった者がいた。
 西尾45→平井05→田中13→愛澤という点差である。ラスオヤは西尾、供託棒も転がっている。7・14で良しとばかりに平井は座り直した。
 そしてソウズの濃い、おあつらえ向きの手が入った。
 7巡目、自風のを叩くと、10〜12巡目にと立て続けに有効牌を引き、13巡目にツモで仕上げた。
 
(◎平井/●愛澤)

 愛澤が首位から陥落した。その愛澤相手にトップラスを2回決めて並んだ平井。「鼻息が荒い」という言葉がこれほど似合う男はなかなかいない。狭い対局場なんだからもう少し静かにしましょうよ、この日は脇で八翔位戦の延長戦もやっていたことだし。

◆◆◆ 23回戦B卓 ◆◆◆

〈小川4昇・村田△5・平井3昇・田中△3〉

 愛澤の失速で首位に立った小川が東1局、メンゼンツモの6オール。その2は流局。東2局は村田6オール(ポンテン)と、トップ2人・ラスなしの形となる。水面下の村田は対抗馬ではないので、小川は村田と協力しながら「このまま」と思っていたことだろう。

 しかし、そんなぬるい展開は許さないとばかりに流局後の東3局、平井がメンゼンタンヤオ24を村田から直撃し村田に代わり同点トップ目に。

 次局その2は相手が平井だからなのか、小川が5巡目にトップ落ちのマチリーチ。リーチのみだが、高めのドラのツモで10・20。

 それほど高い手が出ているわけではないが、3者にこうツモられまくっては、田中は辛い。そして案の定というか、東4局のオヤ番では何もできない配牌とツモで流局を願うしかなかったが、流局間際の15巡目に平井に7・14をツモられオヤっかぶり。平井はまだ小川に25及ばないが、残りヤマが少なすぎた。テンパイがもう少し早ければリーチしていただろう。

 南1局は流局するのだが、田中の第1打が意外だった。
 ここにツモで打? まるでチートイツに決め打つかのような打牌だ。あるいはの重なりを先に見たトイトイ三色同刻?
 確かにシャンテン数ではチートイツが2シャンテンと一番近いが、中張牌だらけの手でシュンツ手の拒否はやり過ぎではないか。どうせラス目、を絞る必要などない。2巡目にドラの、3巡目にと、リャンメンができるツモに当たり、田中は何を思っていただろうか?
 もっとも、どうやっても残るメンツが引けていないのでどうせアガリはないのだが。
 南2局、長打が出る。もちろん田中ではない。
 オヤの村田、10巡目にこの形でテンパイし、ヤミテンにしていた。
 しかし14巡目にツモ。ドラ表をツモ切り、手出し、いずれにしろこの巡目に切るとなるれば、もはや出アガリは望めないということか、リーチと行った(村田は手出しを選択)。
 ムダヅモとはいえドラ表示牌のツモがリーチの契機になったとするならば、やって来たに感謝せねばなるまい。2巡後に26オールとなったのだから。

 南2局その2は田中の初アガリ。メンゼンツモのみ3・6。ドラも何もない手でカンチャンではリーチには行けない。たとえリーチしていてもラス逃れにはならない。

 南3局は田中のリーチは入るが流局。
 村田27→小川25→平井51→田中(供託10)の点差で迎えた南4局【牌譜5】、小川に願ってもない手が入った。
 配牌ドラドラ。そしてこの、村田はともかく田中も平井も止めないし、止まらないだろう。
 3巡目、平井が配牌からあったを手放す。当然のポンを入れた小川、迷う必要の全くないリャンメン・リャンメンの1シャンテン。決着もあっという間だった。
 いたたまれないのは村田である。まくられるにしてもこんな簡単にやられるのでは、何かが取り憑いているようだ。
 鼻息の荒かった平井だが、逆に小川に2つ差とされてしまった。しかも別卓では愛澤がトップで、結局3位に。
(◎小川/●田中)


◆◆◆ 24回戦A卓 ◆◆◆

〈高島±0・平井3昇・愛澤4昇・小川5昇〉

 東1局は高島がピンフツモ。東2局は平井がメンツモ、しかしドラ3でマンガン。
 4メンチャンとはいえ、実質しかないマチではさすがの平井もヤミテンが妥当か。

 しかし、次局【牌譜6】の愛澤の5メンチャンはどうだろう?
 タンヤオの消えるがドラのため、13・26または10・20は固そうだ。この手を出アガリ20で終わらせたのはもったいない気がする。しかし、これが愛澤の打ち方なのだろう。
 確かにこの手をリーチしてアガッてもトップ目には立たない。「101の打ち方」なる教科書があれば、これは「ヤミテンにするべき」と書いてあるだろう。
 このヤミテンは21回戦成岡のカンリーチと対極にあるような気がする。
 「鋭い」のが成岡であり、徹底して基本に忠実なのが愛澤なのである。そしてどちらも強い。強さの質が違うのである。

 南1局、オヤ番の愛澤8巡目。
 切りでシャンポンテンパイ。
 次巡、裏目のツモ。しかし冷静にリャンメンならツモアガリの可能性が増えるとばかりに切りでフリテン受け。もちろんノーリーチ。15巡目にツモアガッた。これなども101の教科書通りの手順だろう。

 ただし、まだ平井に04届かない。ということで次局【牌譜7】リーチ。3巡目という早さでメンタンピン。11巡目にツモ。
 この局の高島の打ち方が謎だった。
 第1打。ドラのトイツでチャンス手である。ここはオヤが切ったばかりのかオタ風の、どちらかだろう。もしかしたらホンイチチートイツといった大技を狙ったのかもしれないが、マンガンでトップに立てる点差で受けを狭めてまでハネマン以上を狙う必要はないだろう。
 普通はが手に残り、愛澤のリーチを受けた3巡目にドラをアンコにし、上家の小川が通ったをツモ切りした6巡目にこうなっている。
 これならをペンチャンでチー、カンチャン残りのイーシャンテンとはいえ打で勝負だろう。
 なぜか第1打とした高島は、6巡目にこうなっていたのだが、
 それでもチーだと思う。
 なにしろドラはこちらがアンコ、愛澤はリーチのみの24、あって42といったところだ。実際には60の手だったが、それでも放銃してもまだ同点3着、ラスにはならない。
 まあ、そうしたところでアガれていない。愛澤のアガリが早まるだけだが(平井の7巡目ツモのでツモ)、ここは絶好のチャンス、前に出て欲しかった。
 この日すでに2ラスを喰っている高島、まるでラスだけを怖がって座敷の隅に逃げたがるチワワのようなマージャンだ。メンツを壊してを抜いているが、愛澤のツモで終わらなかったら現物ゼロになったこの手から、次巡何を切る気だったのか?

 結局、この半荘はこの局がすべて。南4局は平井がオヤでタンヤオチートイツをアガるも、放銃が小川では大勢に影響なし。その2は平井に手が入らず、愛澤の逃げ切り。
(◎愛澤/●小川)

 これで初日が終了。2ラススタートの愛澤、体調が優れなかったこともあってどうなるかと思ったが2連勝で戻した。小川は最後のラスが後味悪いだろうが、差を1つ詰めたのだから悪くはない。
 村田はできれば23回戦トップで終えたかっただろう。1つ戻しただけでは不満か。しかし、高島と西尾が星を落として、もしやの位置に来たのは好条件か。なにしろ村田の成績では自力だけでは降級圏脱出は難しい。人の不幸を願わねばならないとは、村田殿、因果な商売よのう。

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 2日目、会場入りする前に朝食を採った。立ち喰いそばかコーヒーショップのモーニングでもと思っていたが、24時間営業の中華屋を見つけたのでそこに入った。
 しばらくすると村田が駆け込んできてラーメンを注文。先に注文したこちらより早く出てきて先に食べて「お先に」と出ていった。
 時間を考えれば調理時間が短いものにするべきで、村田のほうが正解。この男、今日は場がよく見えるかもしれない。

◆◆◆ 25回戦A卓 ◆◆◆

高島±0・愛澤5昇・村田△5・田中△4

 東1局、高島10オール。その2流局。
 東2局、愛澤42(放銃・村田)。その2、田中4・8。
 東3局、村田8オール。その2流局。
 東4局、村田13・26。
 南1局、流局。
 という経過で、譜のような点差で迎えた南2局【牌譜8】
 田中、4・8のツモアガリだが、ツモッてもまだラス目。なぜリーチしなかったのだろう?
 もう1役付けてリーチツモならばトップまで抜けるが……2巡目ツモ切りのがサンショク逃がしとなっているが、たとえを引き戻しても高目安目が存在する。手っ取り早いのはツモ切りリーチだが、8巡目にはなくなる。だから、即リーチしないまでも、8巡目で「もはやこれまで」とリーチする手はあったと思う。
 南3局は愛澤が3・6ツモ。
 ますます僅差になって迎えた南4局の攻防がおもしろかった【牌譜9】
 僅差でラス目のラス親の田中、このは当然の仕掛け。メンゼンで頑張ってなど引いたらもう動けなくなる。すでに仕掛けている高島にスピードを合わせるためにもチーの一手。
 ここにピンフテンパイを入れた愛澤がしれっとドラを手放す。これに反応したのが村田。
 村田はご覧の通りアガリに向かっていない、というかとてもアガリは拾えそうにない手だ。ようは牽制の鳴きなのだ。
 牽制したのはドラを切ってきた愛澤? いや、そこよりも高島だろう。「20を打ったら君はラスになるでしょ」と、ドラメンツを晒したのだ。
 ラス目の田中と、20を打ってもラスにはならない愛澤には効果は期待できないが、村田にしてみればアガリに来る人間を1人でも減らしたい、流局になる可能性を1パーセントでも増やしたいところなのだ。なによりこの手では、それぐらいしかやることがない。
 結果は愛澤が高島に放銃。このは愛澤、アタるだろうと読んでいたはず。高島はトップになるには20が必要。ドラまたぎにほぼ決まりだからだ。
 高島に20を打ってもラスには落ちないのは折り込み済み、長引いて田中にアガられて面倒なことになるよりはずっとマシなのだ。
 「高島君どうぞ」「愛澤さんありがとう」の関係が成立したわけで、そうした点棒状況でトップ目のまま南4局を迎え、かつどうにもならない手で戦わなければならない村田、やはり今期は何か引きずっているのか、何か肩に載っているのか? 高島にトップを取られ、別卓でも西尾にトップを取られ、ラスを喰った田中ともども中位陣に離されてしまう。
(◎高島/●田中)



◆◆◆ 26回戦B卓 ◆◆◆

村田△5・田中△5・愛澤5昇・小川3昇

 東1局、7巡目に田中がリーチ、9巡目にツモ。
 安目だが、それでもマンガン。久しぶりにリードらしいリードをもらった。それも安定した形で。
 「安定した形」というのは、トップが守りやすいということだ。この考えは前世紀の『近代麻雀』に「オヤマンより大きい26オール」という題で掲載されたものだが、101は単なる点差ではなく4者の点差バランスで戦い方が変わるというもの。
 点差バランスを山に例えるならば、頂上はトップ目、ラス目は麓で、2着、3着が8合目や9合目にいたのではトップは守り辛い。一番安定しているのは26オールなどを引いて3者を麓に置いた状態である。オヤマン120の出アガリは点数としては大きいが、2人を5合目に置いたままなので後々波乱の展開が予想される。
 この田中のケース、散家でのマンガンツモなので親の村田が単独ラスになってはいるが、点差のバランスで4者を山におけば、愛澤、小川はせいぜい2合目。麓に転げ落ちる危険のほうが高く、お気楽に頂上ばかりを見ていられない。だから東1局のマンガンツモというのは、101では相当安定したトップ目なのだ。

  しかし、いまの田中はこの安定したトップ目が1局ともたない【牌譜10】
 のポンテンを入れた田中、それこそ26オールが望める手。さらに頂を高くしたかったのだろうが、逆に頂上から転げ落ちる結果となった。
 愛澤のテンパイは10巡目。この時の打牌はと、さほど目立たないが、次巡のはただならぬツモ切りである。仕掛けてツモ切りを続けている親に対して通っていないドラまたぎを切ってきたのだから、今度は田中が身構えなければならない。15巡目ということを考えても、もうこのは握り潰してを3枚並べるべきではなかったか。
 そんなに高い手だとは思わなかったという言い訳は通用しない。オヤに向かってラス落ちの危険がある牌を勝負する以上、見返りとして(高目安目の条件があるにせよ)トップが望める手だろう。なにしろ相手は教科書・愛澤であり、スコアからいってもリスク・リターンが釣り合わない勝負をする必要がないのだから。
 田中はおそらく、前年度はこんなマージャンを打っていなかっただろう。せっかくトップ目に立ちながら心理面では追い込まれているような印象を受けた。

  東4局、村田がイッツーのペンを小川から討ち取り、ラス抜けを果たす。

  南1局は流局し、再び迎えた田中のオヤ番。持ち点はそれぞれ、愛澤36000、田中30000、村田29800、小川24200。
 ドラがで、愛澤の捨て牌がと異様。
 ツモ切りはだけで、4巡目に早くもドラソバが手出し。この後、5巡目にはドラまでがツモ切られた。
 この緊急事態に田中は焦っただろう。だが、次巡テンパイを果たす。
 一刻も早く愛澤の足を止めねばならない。そうでなくても、ヤミでは頂上に届かない。60で同点トップ、26オールなら単独登頂。ヤミにする理由がひとつもない。
 しかし、リーチ棒を出した直後に愛澤が「ロン」と言ってツモ牌を引き寄せた。チートイツ仮テンのマチだった。
 なるほど、これではドラはツモ切るしかない。
  はヤマに6枚も残っていたが、2枚残りののほうが早かった。
 リーチ棒を出した瞬間にオヤかぶりした田中、気のせいか顔が蒼ざめたように見えた。気のせいではなかったかもしれない。頂上は200差の高みに昇り、麓が28差のすぐそこに見える3着目に落ちたのだから。

  しかし、気のせいだったのだろう。というのも、田中は次局、気落ちせずに素晴らしいファイトを見せるからだ。
 13巡目にリーチ。相当度胸がいると思う。16巡目にツモ。愛澤との点差を180詰めたが、まだ20届かない。嗚呼、前局のリーチ棒……。

  そして南4局、これがこの日、最大の話題になった局である【牌譜11】。8巡目にをポンして打とした田中、以下の手牌。
 
 次巡、チー、打
  
 愛澤とは20差である。ドラ1、出アガリで同点、ツモなら単独トップ。誰もが当然の仕掛けと見ていた。
 しかし、田中は次巡をツモると、なんとドラを切り出したのである。
  
 筆者には訳がわからなかった。
 ホンイチに向かった? なぜ? 20で同点トップなのに……。
 例えば、これが平井のポジションならわかる。3昇で並びの小川がラス目。ついでに逆転単独トップを取れれば、愛澤との2昇差をひとつ詰めることができ、一石二鳥だ。
(平井ならそう打つというわけではない。むしろ20のテンパイを急ぎ、ツモッた場合のみ単独トップという堅実策をとるだろう。あくまでも「そのポジションならそう打った」としても、狙いがわかるという話である)
 しかし、田中のポジションでは愛澤がターゲットというわけではない。同点トップを嫌う必要はまったくない。
 しかも最後は腰くだけのようにオリに回っている。クエスチョンマークを1ダースくらい抱えながらこのオーラスを見ていた。
 半荘終了後、喫煙者たちは外に出る。灰皿を囲みながら、採譜者たちも「あの田中の打ち方は何だったんだ?」と疑問符を飛ばしていた。そしてあれこれ推理したが、謎を解ける者は1人もいなかった。

 このまま永遠の謎にしてしまっては観戦記者失格である。なので、対局後の飲みの席に観戦記者の仕事として付き合った。いや、どのみち飲むのだが。
 以下はその場で語られた田中の思考である。題して、『本格ミステリー・私は刺されたかった』
「巡目が深くなって小川さんが連荘は無理となったとき、差し込んでもらうためにホンイチにしたんです。20の手では小川さんは差し込んでくれない」
これを聞いて、筆者を含む喫煙場所で首をひねっていた連中がハッとした表情になった。
 そして小川も頷いた。
「同点で愛澤さんがトップのままでは、僕には差し込む意味ないもんね。28以上で愛澤さんの邪魔をできるなら差しに行くよ」
 テンパイ後ヤマまかせになるよりは、差し込んでもらったほうがアガリ率が格段に高くなるのは自明の理。しかもホンイチなら色は明確、差し込むほうも牌を選びやすい。 ここまで読んでのホンイチ移行、筆者には思いつかなかった。さすが「現名称位」というべきか。戦略には長けている。
 しかし、それならばもっと徹底してもらいたかった。12巡目に掴んだがそんなに打ち切れなかったのか?
 同巡、をポンしていた小川がドラメンツをさらして2フーロ、テンパイ気配となった(実際には1シャンテン)。打牌は。もしリャンメンのならここまでを引っ張るだろうか? 
 小川が678サンショクを付けた60まで狙っていたとしたら、から入った場合のみサンショクを狙う、
  
からの打があり得る。おそらく田中はそう読んだのだろう。
 しかし、疑問手である。
 仮にをブンッと行き、のまま頑張っていてくれていれば……いや、たとえそうでなくても、今局のの形からでも、小川の16巡目にポンテンをかけてくれれば2巡後ツモマチに変化する。これなら残り2巡で小川がと抜いてくれただろう。そして、そうなれば我々も疑問を抱かずに「なるほど、さすが田中」となっていたはずだ。
 だが、田中はそうせず、いやそうできず、も河に並べた。これでは我々も田中の思考を理解できようはずがない。仮にで打ったとしても30。まだラスの心配はないのだから、もう1局打って52を作りにいけばいい。前局ラス目と28差から13巡目にリーチ棒を投げた闘争心があるのなら、そうすべきだと思う。
 もしかしたら、13巡目のが精神的に作用したのだろうか。
「これ持ってきてテンパネするなら、ドラターツ嫌う必要なかったのに!」
 この動揺がにポンテンをかける気力を奪ったのかもしれない。
 田中が読みや戦略に長けているのは認めよう。しかしメンタルに関しては、やるべきことだけをマシンのようにこなし、着々と昇を上乗せしていく愛澤とは雲泥の差があると言わざるを得ない。
(◎愛澤/●小川)



◆◆◆ 27回戦B卓 ◆◆◆

愛澤6昇・成岡±0・村田△5・平井3昇

 東1局、村田がマンガンツモ【牌譜12】。ドラが2枚あってテンパイまでは手なりであるが、きわどかったように思う。
 ツモでイーペーコー、ならさらにタンヤオまで。ツモでピンフ、リャンメンテンパイになる。これだけ手変わりがある上に、ヤミの間に2枚目のを打たれて嫌なムードだ。
 そうでなくても101で東1局に原点リーチはかけ辛い。まあ、ヤミが普通である。
 それをツモ切りリーチに踏み切らせたのは、成岡の2フーロ目だろう。成岡の足止めをしたい、もちろんそれもあるが、残り2枚のの行方である。
 成岡は3巡目にを切っていて可能性は薄いが、ワンズのホンイチもなくはない。しかし11巡目のチーで翻牌(のどれか)頼みか、ワンズのイッツーに確定。もうが手にないことがわかった。
 ならば、2枚見えとはいえ、ワンズの上の出具合から悪くはないマチである。そこでツモ切りリーチといったのだろう。
 しかし残り2枚ではなく、平井の手にあって残り1枚だった。しかも、イッツー片アガリの成岡はすぐにダウンしたが、愛澤のほうがヤバかった。ドラ表示牌のも残り1枚とはいえ出アガリ78である。しかもダブは2枚生きている。愛澤はポンしてまでマチカエはしないだろうが、アンコになれば話は別だ。
 なにはともあれ、村田には貴重な先制である。101の東1局・マンガンツモは安定したトップ目と書いたが、愛澤がオヤかぶりしたため、愛澤のラスを欲する平井や成岡は並びを崩したくない。ますます村田には有利である。

  しかし、東2局その2(その1は平井が成岡に18放銃)に不幸が訪れる【牌譜13】
 4巡目にしてホンイチ52に放銃。交通事故としか言いようがない。それもダンプにぶつかったぐらいの衝撃である。
 村田の意図は明確。こんな配牌をもらって無邪気に手を進めるトップ目はいない。将来の安全牌を溜め込むための中張牌バラ切りである。村田の師匠が言うところの「穴熊」だ。
 いくら早いといっても、平井の3巡目のドラ切りを甘く見ていたのではないかと思う方もいるかもしれない。しかし、場の煮詰まった中盤以降に生牌のドラを打ってきたのならともかく、3巡目に字牌ドラを切ってきた者が出アガリのきくテンパイをしていたとしても、たいがいは12か16である。村田にしてみれば、オヤの成岡が手出し。ウラスジのなど早く処理したい。その過程で平井に16くらい打っても進局料のつもりだっただろう。それが予期せぬ大事故である。
 それでも、平井と06差でまだトップ目。だが次局にはまくられる。まくった相手は平井ではない。
 
 9巡目にツモッた愛澤の手、これでがドラである。村田はオヤかぶりで3着にまで落ちる。東1局・マンガンツモ有利説はもう取り下げたほうがいいだろうか?

  そして、さらにトップ目は動く。南2局、成岡の9巡目、
 現在ラス目のオヤ番。リーチ棒を出すことになんら支障はない。当然のリーチで3巡後ツモ。40オールでごぼう抜きトップ目に。

 その2は平井が仕掛けて3・6。南3局は流局で南4局に【牌譜14】
 村田は思ったことだろう。「マンガンツモでスタートしたはずなのに、なぜ僕はラス目でオーラスを迎えているのだろう」と。
 しかし、目の前の現実と向き合わねばならない。そうして3着目平井との点差を確認すると61差。この01差が実に邪魔である。リーヅモ+1翻では01足りない。テンパネかピンフが必要なのだ。
 配牌を取った村田は顔色が曇った。ドラはで1枚もないし、来ても使えそうにない。
 第1打を切るのに相当な時間を要した。その後も唸りながらの撲打が続く。対面から見ていても難解な問題を突きつけられているのがわかった。
 それにしても、よく正解を引き出したと思う。
 第1打でいきないカンチャンターツを払っているが、これはワンズのイッツーと345サンショクの可能性を残すため。どのみちツモ条件でフリテンを怖がる必要がないのでこう打ったと思われる。
 さらに難解だったのは5巡目。
 手拍子で切りとしそうだが、イッツー、345サンショクどちらにしろ高目安目が存在するし、ともに引きが前提となるので、それならばタンピン移行もあり得る。なによりタンピンなら高目安目を気にせずリーチが打てる。ということで2シャンテンに戻す切り。次巡これに応えるようにツモで雀頭が振り替わった。
 最後の形では8巡目に打ったと手にあるが入れかわっていれば345サンショクまで付いて成岡を07差まくってトップにまで昇りつめるが、その8巡目の段階では、
という牌姿であり、ダイレクトなツモでのイーペーコーを逃すわけにはいかないので、ここからは切れない。やはり打が妥当だろう。ましてやとツモ牌にトリプル条件が付くサンショクは無理がありすぎる。
 村田、薄氷のラス抜けで踏みとどまった。A卓は西尾トップのラスなし。
(◎成岡/●平井)



◆◆◆ 28回戦B卓 ◆◆◆

成岡1昇・西尾1昇・小川2昇・愛澤6昇

 東1局は小川が愛澤に16放銃。そのときの小川の手は、
 タンヤオドラ2をテンパイしているところに持ってきた、自分で1枚つかっているドラ表示牌をマチにはできないとばかりにツモ切ると、愛澤のイーペーコー、カンマチに刺さった。

 東2局は勝負手がぶつかりあった【牌譜15】
 西尾の11巡目のはいわゆるパオ牌である。やりすぎだろうか?
 しかしそれはポイントマージャンの考え方で、役満打ってでかいラスを引こうが、01差でラスを引こうが101では△1に変わりはない。役満もオヤのハネマン(このはもう誰も打たない。アガるときは60オールである)もどちらも決定打と思えば損得は見あっている。ここでを打たずにを落として回るというのなら、そもそも切りのときに切りとすべきだろう。
 で張っていた小川、を引いて52になると、タンキにマチカエ。これは西尾の序盤の切りからはないと見てのものだろう。ホンイチに渡るための仮テンだったと思うが、これが3枚丸生きの絶テンだった。
 ラスに落ちた西尾はドラ1の手で次局リーチ。これをツモッて10・20。まだラス目であるが、上から下まで28差の僅差になる。

  東4局、15巡目というド終盤に成岡がドラを叩き切ってリーチ。
 このドラをポンしたオヤの愛澤がテンパイ。
 
 マチが多い上に放銃の心配がない成岡が当然のようにを引きアガッた。自身がトップ目に立つと同時に、オヤかぶりの愛澤をラスまで05差と追い込んだ。

  南1局は流局、2局は小川の3・6(オヤ・西尾)、3局は流局となって迎えた南4局、オヤは愛澤である【牌譜16】
 ドラを1枚抱えたままの愛澤、それほど行く気はなかっただろうが、ラス目の西尾が11巡目にをツモ切りしてくれたことによって光明が差した。15巡目というド終盤にを引いてタンピンのマチ。テンパイ打牌のは西尾に放銃覚悟だったかもしれない。
 しかし西尾はまだ1シャンテンだった。むしろ敵は小川だった。小川はこのときタンヤオのノベタンからにマチカエ、ツモれば成岡を01かわしてトップである。
 16巡目、愛澤はをカラ切り。これは西尾にはスジ。あとから出てきたがあやしいが、翻牌は出切り(は1枚しか見えていないが、トップ目の成岡の切りなので、アンコ落としと読める)、捨て牌から789のサンショクはなさそう。タンヤオのカンなら、手変わり前のペンテンパイでもリーチだろう。ということで、は西尾には打ちやすい。
 小川はロンをかけなかった。3メンチャンである。もう2回あるツモにかけてみたい。
 しかし、次に愛澤が切ったら、今度はロンをかけるだろうと思った。自分のトップがベストだが、首位を行く愛澤のラスもベターなのだ。
 そして次巡の、小川も決めていたのだろう、ノータイムで「ロン」の声が出た。
 終局後、「最後は以外打つ牌なかったの?」と訊くと、愛澤は「う〜ん…」と唸っただけで返答はなかった。
 いま牌譜を見ても致し方ないかなと思う。愛澤の立場で考えてみよう。
 ツモ1回残して。テンパイ維持ならがフリテンで3枚出なのでツモ切りだろうが、このは西尾に危険スジ。を勝負した後にまた無スジを切り飛ばすのは無謀だろう。では、オリるとして、何を切ればいいのか。西尾のゲンブツはひとつもないのである。
 筆者は観戦時、西尾も小川の手も見ていた。だから小川のゲンブツのあたりを抜けばいいのにと思っていたが、両者を警戒して打牌を選ぶとなると難解なのだ。強いて挙げればを通した後だけにかなとは思うが、西尾に対して絶対ではない。南4局に、愛澤が一番警戒しなければならないのはラス目の西尾なのだ。やはり通ったばかりのか。
(◎成岡/●愛澤)

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 終了後、成岡が、「やっと愛ちゃんの背中が見えてきた」と言っていた。背中は見えたかもしれない。だが、だいぶ距離があるように思える。最終戦のオーラスは御不幸だったが、それほど愛澤が充実して見えた。
 もしも愛澤が戴冠できなかったとしたら、最終戦の小川の判断が物をいうような気がする。いずれにしろ、上は僅差の勝負になるだろう。
 降級のほうは村田、田中にほぼ決まりかけている。もう最終節は、なりふり構わず戦う姿に期待したい。
 最後に観戦子としてひとこと。
 101は面白い。見ていても面白い。しかし、書くのは疲れる。打ち手の思惑や戦略が如実にあらわれるマージャンなので、そこまで踏み込まないとダメだからなぁ。みんなアガリたがってリーチして、めくり勝負するマージャンならこんな1万5千字も書かなくて済むのに……。
 思い起こせば101の観戦記は初めてだ。順位戦選手時代にも書いた覚えがない。おかげで気楽に引き受けて後悔しました(T T)
 つたない部分もあったと思いますが、またご依頼があれば頑張ります。

第4節自戦記(24回戦A卓:愛澤 圭次) 

No.1【東1局】
 本日の出だしで連敗し、小川に逆転された。23回戦に1つ戻し4昇としたが、小川もトップで差は詰まらず。そこで迎えた直接対決である。起家で配牌も良い。字牌から飛ばしてやる気満々だったが、4巡めにドラのを引いてちょっと困った。次巡この形になる。

 理想は、
 こんなのだろうが、まあ現実的にピンズを外した。するとツモ
 引きならドラ切りも考えて切り。を入れ替えた後にドラにくっつきテンパイ。キビシイ形だがオヤなので押してみる。
 結果はすーっと押し返してきた高島が軽くツモアガリ。まあ、ドラでなくて良かったか。


No.2【東2局】
 オヤカブリでラス目になった。先は長いが、のんびりもしていられない。配牌はいつもの配牌…チャンタとチートイツを見て進める。4巡目に平井が不審な動作。ちょっとだけ警戒したが、あっさりツモられ20・40。まあ、ラス抜けだしいいか。


No.3【東3局】
 早そうな手が来た。こんな時は自分だけでは無いことが多いので、周りにも注意が必要。
 とは言え1巡目でイーシャンテン。トップを考えるとイッツーが欲しいが、ここは足場を固める方が大事と考えた。現状のスコアを考えると、このメンバー相手にラスは引きたくない。
 タンヤオの仮テンから5メンチャンに変化。リーチもあるが、ヤミでどこから出ても嬉しい状況になるので当初の思惑どおりアガリを優先した。


No.4【東4局】
 出アガリが出たところで局面が落ち着いたのか、また、トップ目の平井がコクシか一色手か、という雰囲気を出し、皆が強く出なかったため流局。
 私もこの配牌に2巡目がでは、まるで行く気なし。


No.5【南1局その1】
 トップを狙うには、このオヤ番で何とかしておきたい。そんな気持ちで配牌を取ったが…。ドラを重ねるかピンズのイッツー位しか楽しみが無い。ということでペンチャン落としから入ってみた。
 4巡目にこの形、
 他も前に出ている気配があまりしないので、切り。そして2巡後に引きでイーシャンテン。
 7巡目高島が仕掛けたところでドラが重なりテンパった。
 さあ、マチ取りだが3秒位悩んでシャンポンに受けた。即ウラメ。気を取り直して、フリテンに受けた。高島に怖いところもあったが、目をつぶって切る。
 平井がをツモ切った次にがいた。


No.6【南1局その2】
 トップ目平井と04差に追い上げた。前局について、リーチをかけないのか?と質問を受けたが、まあ、高島とめくりっこでこちらは出アガリできない状態なので、リーチはしませんなぁ。
 さて今局、配牌はとても良い。ツモ2回でタンヤオも付いてテンパイ。さすがにこれはリーチに行きます。結構長いツモ切りを経て、無事アガリ。


No.7【南1局その3】
 はトイツの配牌、だが他が…。点差も1万点あるので、ここは流局で満足、ということで中張牌をばらまきに行く。もちろんチートイツの目は残しながらですよ。


No.8【南2局】
 を平井に合わせず、間を置いて放したら小川からポンの声。やってしましったか、という思いが頭をよぎる。高島のも叩かれ、危険な雰囲気。そこへ平井のリーチまで。こうなれば2人でやってくれ、というところか。幸い中のアンコもあり、なんとか手詰まりをせずに済んだ。
 無事流局でほっと一息。


No.9【南3局その1】
 ひと様のリーチ棒を回収すべく、そうそうに仕掛けてみた。
 
 ホンイチでのテンパイなら途中で引いたドラも飛ばすつもりだったが、まとまらず。そのうちにオヤの高島が不穏な手出し。ヤメテ、という祈りも通じず、10オール+供託10。


No.10【南3局その2】
 ワンズに寄せてみましたが、本気でアガる気も無いので、早々に撤収。アガリの形はあるが、中盤は手詰まり防止に集中した。
 高島も手は整っていたが、配牌からのが埋まらないようでは、厳しいか。


No.11【南4局その1】
 第1ツモで形が見えたので、を叩きアガリを目指す、その気持ちでから選んだ。しかし、あっさりと48のアガリ。これ掴んだら打ちますね。直撃でなくて良かった。


No.12【南4局その2】
 点差は62。序盤での構想は、ピンフもしくは引きからのイーペイコーだったが、5巡目〜10巡目まで、ツモがかすりもしない。また、その間の平井のツモ切りに、いつリーチが来るかと身構えていた。
 平井の手変わりが入った12巡目以降は手仕舞い。小川も当然まっすぐだったが、こちらもまとまってきた気配はなく、苦しそう。もちろん、ラス抜けが目的だが、私をトップから引きずり落ろす策も考えているはず。
 しかし、平井・小川の両者ともテンパイは入れられず、無事流局となった。
 
(文中敬称略)


第35期順位戦A級 第4節 星取表 (10月11・12日/東京)

選手名
開始前
21回戦
22回戦
23回戦
24回戦
25回戦
26回戦
27回戦
28回戦
終了時
順位
田中  実
△3
B 
B 
B 
B 
A 
B 
A 
A 
△4
7
小川  隆
3昇
A 
A 
B 
A 
B 
B 
A 
B 
2昇
2
村田 光陽
△6
B 
A 
B 
B 
A 
B 
B 
A 
△5
8
愛澤 圭次
5昇
B 
B 
A 
A 
A 
B 
B 
B 
5昇
1
成岡 明彦
△1
A 
A 
A 
B 
B 
A 
B 
B 
2昇
3
平井  淳
1昇
B 
B 
B 
A 
B 
A 
B 
A 
2昇
4
高島  努
2昇
A 
A 
A 
A 
A 
A 
A 
A 
±0
6
西尾  剛
1昇
A 
B 
A 
B 
B 
A 
A 
A 
1昇
5
立会人:堀川 隆司/安田健次郎