第31期八翔位決定戦 戦前インタビュー

 

インタビュー:木村 由佳

 2014年八翔位戦(第31期)の決勝を戦う4人が、10月11日についに出そろいました。現八翔位・小川隆選手(おがわたかし・A級)、成岡明彦選手(なるおかあきひこ・A級)、堀井統之選手(ほりいもとゆき・一般)、奥田直裕選手(おくだなおひろ・一般)です。この4人に「八翔位決定戦」を戦うに当たっての意気込みなどを聞いてきました。

※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※
 まずは、10月12日に準決勝A卓の延長戦を制し、最後に決勝進出を決めた奥田直裕選手です。奥田選手には、勝ちあがり直後にインタビュする機会を得ました。

――――準決勝13回戦を戦って勝ちあがりを決めた今のお気持ちは?

奥田「八翔位戦の準決勝は5回目で、やっと決勝に勝ち上がることができたのでうれしいです。既に決まっているメンツが、小川さん・成岡さんという101の代表選手と、101アマチュアナンバーワンの堀井さんだったので、ぜひともこの人たちと決勝を戦いたいと思っていました。今年駄目だったらもうずっと駄目だろうと思って、死に物狂いでやりました」

――――勝ちあがりを決めた1局は?
奥田「最終戦のオーラスですね。自分と同様に決定権を持つ田村洸選手からリーチが入って、『ツモられたら負けだ』と思って前に出る決意をしました」

――――長考してを強打された時ですか?
奥田「行くかオリるか迷っていました。
に、ドラのを持ってきたときです。ツモの流れがよく、勝負の時だと思い押しました。次巡、更にを引いてダマで80のテンパイ。下家の坂井さんが切った、リーチの現物のを捕らえることができました。本当に紙一重でした。」
(筆者注:田村のリーチはのノベタン、星が△2の坂井さんはチートイツイーシャンテンでした)

――――決定戦を戦う3人についてお願いします。
奥田「小川さんと成岡さんは101の代表選手ですし、闘えるのは本当にうれしいです。また堀井さんは、マージャン101イン東京や麻将連合の対局などで打つ機会はありますが、このような大舞台で打つことは最初で最後かもしれないので、思い切り戦いたいです」

――――奥田さんと101の出会いは?
奥田「101マガジンはずっと愛読していました。麻雀マニアですから。しかし9年ほど前にある人に誘われて、日本橋の競技室に行ったのが最初です。」

――――決定戦までの準備はどのようになさいますか?
奥田「秋葉原の雀友倶楽部などで軽く打つくらいですね。今回勝ちあがった勝利の余韻を楽しみながら、11月の決定戦を迎えたいと思います」


 次にお話を伺ったのは、現・八翔位の小川隆さんです。小川さんには、A級4節初日終了後(つまり奥田さんと同じ日)にお話を伺いました。

――――対戦相手が先ほど出揃いましたので、それぞれの印象をお願いします。
小川「成岡さんにはいつも負けていますね。順位戦、八翔位決定戦(2009年)、翔龍戦(2012年)とこれまで圧倒的にやられっ放しです。今回は積年の負債を少しでも返済したいと思っています。奥田さんも堀井さんも101に大変熱心な方々で、特にこの八翔位戦については毎年相当な気合で参加されています。奥田さんとは、私の常宿と奥田さん宅の方向が同じなので、よくマージャンの話をしながら帰ったりしています。堀井さんは、一度決定戦(2007年)の経験があります。2人ともイン東京最強という評判通りです。じつは、奥田さん、堀井さんと八翔位戦準決勝を想定して練習をしました。その甲斐があったようです。ちなみにその時は決着がつかずに終わりました。」

――――昨年の決定戦のメンツ(井戸田耕二選手・田中実選手・田村洸選手)と比較してどうですか?
小川「去年は年齢が一回りも二回りも若い人たちでしたから、新鮮な感じを受けました。決定戦の大舞台と意気込むと硬くなる(緊張する)と思い、若手勉強会のようなつもりで気軽に臨みました。今年は海千山千の3人です。だからと言って私の戦い方が昨年と変わるわけではありません。とにかく1人が突っ走らないように、自分が普段通り打てるように心がけるだけです。」

――――八翔位戦と順位戦の違いはなんですか?
小川「八翔位戦の方が、基本的にアガリが出やすいかな。八翔位戦は、自分が負けていても、延長戦で粘ることができますが、順位戦は対局回数が定まっています。八翔位戦は誰かが勝ちあがりそうになったら他のみんなが協力して助け合う展開が如実に現れます。」

――――私のように、101をあまりわかってないファンにも一言お願いします。
小川「トップを取る。ラスを引かない。基本的にこの2点が命題です。さらに条件が加われば、意図的にトップを取らせたり、ラスを引き受けたりすることもあります。今回も配信されると思います。詳しい戦況はツイッターで発信されますから、ぜひ注目してほしいです。それで物足りないと思ったら対局室で見学も可能かと思います。事前の連絡と忍耐が必要ですが、10人くらいは入れるかな?」


 準決勝B卓で8回戦目に勝ちあがりを決めた堀井統之さんには、平日の夜に横浜でお話を伺いました。

――――決定戦のメンツが出揃いましたが、どのような印象をお持ちですか?
堀井「とてもいいメンバーで打てるので本当にうれしいです。まず成岡さんは、初めて対戦してみて『この人は強い。この人には勝てない』と感じたただ1人の人です。私が101を始める前のことで、王座戦のトーナメントでした。9月21日に勝ちあがりを決めて成岡さんと打てるのがわかって以来、ずっと楽しみにしていますよ。小川さんは、近年、名翔位(2010年)、八翔位(2013年)と取っているので強いに決まっています。小川さんは名古屋からしょっちゅう東京に来てくれて、年に数回セットもしているので親しいですし、強さもよくわかっています。奥田さんは、他の誰と比べても、101に限らず一番多く対戦している相手です。強さも含めて、誰よりも知り尽くしている相手だと言えます。今回の決定戦は自分にとって最高の3人と戦えると思います」

――――堀井さんが101を始めたきっかけは?
堀井「2006年の春、日本橋競技室でミューカップの予選に出た後のことです。隣で101の対局をやっていたので参加してみたら、ハマってしまいました。点棒のマージャンではなく、1戦で閉じて着順を取るというシステムが好きです」

――――八翔位決定戦に進出されるのは2回目ですよね?
堀井「101を始めた翌年の2007年の八翔位戦に参加し、決定戦まで進みました。麻将連合の明村諭さんが八翔位になった年です。その年の準決勝で私は、成岡さんと忍田幸夫さん(麻将連合)と当たってたまたま勝ちあがりましたが、あの対局が自分の中ではベストバウトだったと思います。その経験が、101に夢中になってしまった理由かもしれませんね。今の自分は当時よりもいいマージャンを打てる自信がありますので、今回はさらに楽しみです」

――――決定戦はどのように戦いますか?
堀井「普通に戦いますが、しいて言えば成岡さんをマークすることになると思います。小川さん、奥田さんとはしょっちゅう打っていますが、成岡さんと打ったのは王座戦、八翔位戦、イン東京含めて数えるほどしかありません。もちろん、成岡さんの牌譜は見ていますが、肌で感じている部分が少ないので、まずは成岡さんを見ながら打つことになるでしょう」

――――改めて意気込みをお願いします。
堀井「本当はね、もう誰も勝たなくてもいいから、百回でも千回でもやりたいですよ。就位パーティーの日が来てもまだ決まってないくらい、ずっとこのメンツで決定戦をやっていたいと、そう思うほど素晴らしい大舞台です。でもそうはいかないので、最後は自分が勝つつもりでがんばります」


 最後に、101A級の成岡明彦選手です。成岡さんは、9月にスリアロチャンネルの「麻雀の鉄人 鉄人再誕」で新しい鉄人になり、これをきっかけに、成岡さんのファンはもちろん、101のツイッターのフォロワーも増えました。今、101の選手でもっとも有名な成岡さんの戦い方は、注目を集めています。

――――決定戦のメンツが出揃いましたが、どのような印象ですか?
成岡「トップ取るやつしかおらへんやん、しんどいな、というのが正直なところです。このメンツでは1人が走る展開にはなりにくく、ロースコアの決着になると予想されます。逆に、1人が不調で△がいっぱいになるというパターンはありうるのでその1人にはなりたくないです。普通は上を叩きにいくんですが、今回はまず、下の1人を決めたいです」

――――普段打っておられる順位戦と八翔位戦の違いはありますか?
成岡「一緒ですよ。特にこのメンツでは、1人がひどい目にあう状況になりやすいと思いますから、降級のかかった順位戦みたいなものです。八翔位戦では経験の浅い人ほど、それこそ1回戦からとか早くから勝負駆けする人が多いですが、それが得策とは思いません」

――――対戦相手1人1人についてもう少し詳しくお願いします。
成岡「小川さんは、101で今一番強い人です。それをどうこうできるものではありません。
現時点ではそれで充分やと思います。堀井さんは一言でいえば『マージャン好きのおっさん』、それに尽きますが、強いな、という印象があります。10年くらい前に順位戦入っていてもよかったと思います。奥田さんの準決勝の卓は、僕は途中で『田村さんに決まったかな』と思っていたんです。ところが皆の協力を得ながら何とかして、抜け出しに成功したのはすごいと思います。基本的に、八翔位戦の決勝に出てくるのはそういうことができる人なので、ここに来るべくして来たと思いますね。
堀井さん、奥田さんとはマージャン自体は数えるほどしか打ったことがないのですが、酒の席ではよく麻雀の話をします。2人ともアマチュアですが基本的に強い人で、打牌も信頼できます。ただ、たまに僕から見たら『そこまでいったらあかん』というラインを踏み込んだ牌を打つので、そこに付け込んでラスを引いてもらいます。もっとも、そういう牌を打てるから奥田さん、堀井さんがトップ取るということもあるんですけど」

――――今回、決定戦の配信があれば成岡さんのファンもたくさんご覧になると思います。観戦のポイントとして、成岡さんの戦略をひとつ伺ってもいいですか?
成岡「このメンツでは、こちらの手が悪い時にどう打つかが大事です。つまり、自分の手が悪い時に流す情報が変わってきて、山に残っている牌を誤認させるように打つことになるともいます。そうなると、僕は自然とチートイツが多くなるんじゃないかと思います。メンツ手に比べてチートイツは誤情報を流しやすいですからね。ただ手詰まりになりやすいとも言えます」

――――11月初めの決定戦に向けてどのように過ごされますか?
成岡「とりあえず昼の仕事を頑張っておきます。普段、マージャンはほとんど打ててないですけど、ここ数年は自分でミスが減っていると思うんです。年を取ってからミスをしていてはあかんから、ちゃんと戦うためには昼の仕事を頑張って、体調も整えて、その日にいい状態で打てるようにしておきますよ」

※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※
 お忙しい中、対面でのインタビュに応じてくださった選手の皆さん、ありがとうございました。
 八翔位決定戦は11月1日(土)12時、御徒町の対局室で始まります。詳細は101競技連盟のサイトやツイッタでご確認ください。
(了)

第31期八翔位戦 システム

【出場資格】
・麻将連合推薦、オープン参加選手及び連盟所属選手
・ オープン参加選手は、昨年度のマージャン101における打荘数が24ある者から各支部内で選抜。
【1次予選】
・各卓4戦(1日)を戦う。
・規定回終了時のスコア上位2名を勝ち上がりとする。
・4回戦終了時に上位2名が確定しない場合は、これが確定するまで延長戦を実施する。
【2次予選】
・2次予選シードの連盟所属選手及び1次予選通過者により行う。
・各卓6戦(2日)を戦う。
・規定回終了時のスコア上位2名を勝ち上がりとする。
・6回戦終了時に上位2名が確定しない場合は、これが確定するまで延長戦を実施する。
【準決勝】
・2次予選通過者により行う。
・各卓6戦(2日)を戦う。
・6回戦終了時に単独で2昇以上の首位者が決定戦の出場資格を得る。
・6回戦終了時に単独で2昇以上の首位者が発生しなかった場合は延長戦を実施し、7回戦以降はその回の開始時の首位者のスコア+1昇に単独で到達する者が発生するまで延長戦を実施する。
・「初めて、4者同スコアで決着権がある状態」となった場合は、その一戦の終了時の単独首位では決着としない。
  ただし「再度、4者同スコアの状態」となった場合は、同戦終了時の単独首位で決着とする。
【決定戦】
・八翔位及び準決勝通過者により行う。
・10戦(1日4戦)を戦う。
・10回戦終了時に単独で3昇以上の首位者を優勝とする。
・10回戦終了時に単独で3昇以上の首位者が発生しなかった場合は延長戦を実施し、11回戦以降はその回の開始時の首位者のスコア+1昇に単独で到達する者が発生するまで延長戦を実施する。
・「初めて、4者同スコアで決着権がある状態」となった場合は、その一戦の終了時の単独首位では決着としない。
  ただし「再度、4者同スコアの状態」となった場合は、同戦終了時の単独首位で決着とする。