
第31期八翔位決定戦
観戦記 | インタビュー | 自戦記 | 成績表 | システム
観戦記:伊澤 興(マージャン101東京支部)
101マガジン読者の皆様、元大阪支部、現在は転勤で東京支部所属の伊澤と申します。今回決着するまで現場の臨場感が皆様に伝わるよう劇筆していきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。各選手の意気込み等は木村さんが事前インタビューで盛り上げていただいているので私感による4人のプロフィールを。
【小川八翔位】
私が20数年前、マージャン101大阪支部を任せられた時、頻繁に名古屋から大阪まで通って大阪支部を盛り上げていただいた大恩人。今現在でも大阪支部・東京支部と遠征し会員と101を打って、時間があれば会員と杯を交わしている。(ノンアルコールでです(笑))
彼のイメージは愚直。(国語辞典:正直なばかりで臨機応変の行動をとれないこと。また、そのさま。ばか正直)輝かしい成績を残しているにもかかわらず決して他からは「天才」・「ミスター101」など呼ばれない所が大好きです。
【成岡選手】
小川八翔位が陰なら、この人はまさしく陽の人。彼独特の世界があり、またユーザー視点に立った読みやすい文章から101マガジンでの執筆量もトップクラス。最近では、スリアロチャンネルの人気番組「麻雀の鉄人」で勝ち抜き、「新鉄人」の称号も得ました。実績・知名度ともに現役選手ではbP。馬券発売したら間違いなく1番人気。
【堀井選手】
私が参加している私的研究会(通称:ガハ研)のメンバー。私のイメージは「強靭な粘り腰」。今回の予選でもシバ差でのラス抜けや僅差のトップを幾度となくやってのけての決定戦進出である。決定戦進出も2回目で予選同様に地に足が着いたマージャンを打てれば十分に勝機があると思います。
【奥田選手】
彼もガハ研のメンバー。私のイメージは「熱く打つ」。昔の金子選手みたく牌に心がこもってる時は、真っ直ぐ強打し気持ちをそのまま出す人。特に準決勝の死闘13回戦(3日間)は田村氏が決着権を持つこと6回に対して奥田氏は半分の3回、一時は延長のためラスを自ら引き受けることも。そして苦しみながらも13回戦南4局ラス目状態からマンガンをもぎ取って最後の切符を手に入れることができたのも熱い気持ちに牌が応えてくれたからだと思います。
例年ならここで八翔位決定戦のシステムや戦法を語るのですが、昨年成岡選手の観戦記中に書かれた以上の物が書けるわけもなく、詳しく&わかりやすいのでそちらをご参照ください(笑)。
2014年11月1日AM11:53。「第31期八翔位決定戦」開始の号令が立会人の愛澤代表から発せられ洗牌が始まりました。
※ここからは敬称略でやらしていただきます。
起家より 小川・堀井・奥田・成岡
オヤ・堀井が、





























東3局にまたしても両者の手がぶつかり合う。まず北家・堀井にオバケ配牌が入る。


































その後、奥田がさらに14オールと加点し東4局成岡のオヤ(奥田+11.2 小川・成岡△3.5 堀井△4.2)。堀井(西家)4巡目テンパイ、



















南1局(奥田+11.2 堀井△2.2 小川△3.5・成岡△5.5)、成岡がらしくフリテン牌をひき戻してのチートイツテンパイ。これを堀井からアガり16。ただ前局の失点が40だったら、また違った展開になってたかもしれない。
南2局(奥田+11.2 小川△3.5 堀井△3.8 成岡△3.9)、首の皮1枚で踏ん張っている注目の堀井がオヤ番。
































南4局(奥田+15.2 小川△3.5 成岡△3.9 堀井△7.8)、堀井ラス抜けリーチ入るも誰も相手せずに流局。
小川(0)・堀井(△1)・奥田(1昇)・成岡(0)
東4局(堀井+1.0 成岡+0.8 小川△0.7 奥田△1.1)、北家・奥田が、



















南1局(奥田+4.1 堀井△0.3 成岡△1.8 小川△2.0)【牌譜1】、ここまでじっと身を潜め名前すら出てこなかった小川。ラス目で迎えた最後のオヤ番。ここが勝負処と本人も認識済み。祈るようにとった配牌は、



































南1局その2(小川+4.0 奥田+2.1 堀井△2.3 成岡△3.8)、小川一気呵成にと思ったのも束の間、好調奥田が7巡目テンパイ、次順簡単にこの手をツモアガり10・20。

















南2局(奥田+6.1 小川+2.0 堀井△3.3 成岡△4.8)、堀井が下記手順から痛恨の16の打ち込みでラス目へ。
11巡目、北家・小川が、
































南3局流局のあと、いよいよ南4局(奥田+6.1 小川+3.6 成岡△4.8 堀井△4.9)【牌譜2】。西家・堀井は、3メンツある絶好の配牌。



































































奥田(2昇)・成岡(0)・小川(0)・堀井(△2)
















































東3局、小川オヤ番で10オール、14オールとアガり、迎えたその3【牌譜4】(小川+16.2 堀井+3.6 奥田△6.4 成岡△13.4)。オヤ・小川は、


















堀井(△2)・奥田(1昇)・成岡(0)・小川(1昇)


















































その後南2局に堀井が3・6をアガる。
南3局、オヤ成岡配牌とツモがマッチして7巡目一直線にリーチ。
















成岡(0)・堀井(△2)・奥田(0)・小川(2昇)
東1局【牌譜6】、オヤ・成岡の6巡目役アリ先制リーチを受けて、子方3人はペタジーニ(べた死に)。










































































東3局 成岡テンパイしてる所から小川のアガれるほうの16放銃。
東4局(奥田+10.7 堀井+0.2 小川△2.7 成岡△9.2)、手は入っている成岡が9巡目に64のテンパイ。


















堀井も危険は承知でこの形から放銃。














南2局小川7・14のツモアガり。
南3局(奥田+10.0 小川+0.1 成岡△0.9 堀井△9.2)【牌譜7】、オヤ番もない堀井はどうしても高打点が欲しい。


















このリーチに成岡が向かってきた!













南4局(奥田+10.0 小川+0.1 堀井△1.2 成岡△8.9)、ラス目に落ちた成岡。意地のタンピンドラ1をリーチするがここまで。
奥田(1昇)・成岡(△1)・堀井(△2)・小川(2昇)
東1局、好配牌とツモに恵まれたのが南家・成岡。3巡目に、












































もちろん、前局の東初リーチの空振りとスコア△1がこのようにさせたと思うが。オヤの成岡が動くことにより、相手にプレッシャーがかかるのは間違いなく、堀井・奥田は2つ目鳴かれた瞬間、すぐ撤退(これも成岡の思惑の通り)。
8巡目に成岡がテンパイ、




































東3局、小川はいとも簡単にピンフツモの4・8で成岡のリーチ棒をいただき。本人も自分の体制の良さを感じているだろうし、まだ6回戦の途中とはいえ2昇持ちの小川のこのアガリは周りの空気を変えるものがあった。
東4局(小川+2.6 奥田△0.4 堀井△0.8 成岡△1.4)【牌譜9】、その絶好調の小川が落とし穴にはまった。南家・奥田の配牌、





























続く南1局も奥田に連続放銃の24を打ち上げて、10分前の顔色と明らかに変わった。
南1局その2(奥田+8.4 堀井△0.8 成岡△1.4 小川△6.2)【牌譜10】、小川が点数作りのため遠いところから仕掛ける。




























さらに次局は成岡がリーチツモの10オール。
南2局その2は成岡が下記配牌から1打目に






























南3局(奥田+7.4 成岡+1.6 堀井△1.8 小川△8.2 供託+1.0)、奥田9巡目下記牌姿から小川の

















南4局は淡々と流れて終了。
成岡(△1)・堀井(△2)・奥田(2昇)・小川(1昇)
開局早々好調奥田が8巡目小川から28。































東3局、成岡8巡目テンパイ即リーチ。巡目的にも引けそうと思えたがあえなく流局。
















東4局、成岡冷静に5・10を引き前局のリーチ棒も回収。
南1局(奥田+2.3 成岡+2.0 堀井△1.0 小川△3.3)【牌譜11】、成岡7巡目絶好のドラドラチートイツテンパイ。マチ取りも、申し分なし!












































トップ目に立った堀井、続く南2局のオヤでも積極的に動いていって迎えた10巡目、






























こうなれば残り3局は小川対3人の戦いになり、そのままで終局。
堀井待望の初トップ、小川初日の好調さが嘘のような連敗で貯金なしに。成岡勝負所全て競り負けてトップ逃し。奥田初のバー(笑)。
成岡(△1)・小川(0)・堀井(△1)・奥田(2昇)
奥田以外の3人の考えてる事は、
A:自身がトップを取る。
B:序盤に自身が大きな加点をしていれば、他者をサポートし奥田にラスを押し付けたい。
C:終盤奥田とトップ争いをすれば他の2人からのサポートがあるので最低でもその位置には居たい。
D:奥田がラス目になってる終盤なら自身のアガリを捨てでも押さえつけないといけない。
E:最悪ラスを引き受けてでも奥田のトップは防ぎたい。
仮にこの8・9回戦奥田が連勝するとコールドになってしまうし、8回戦トップを取られると、残り2戦でどちらかで「奥田をラスにする」条件が追加されるからである。
ただ序盤から1対3の構図になるかと言うとそうでもない。まずAが何よりも第一優先で、残りB〜Eの考え方はそのような展開になった終盤に考えるもの。
東1局、7回戦のトップで気を良くしている堀井だが奥田も好調をキープ。
奥田の配牌は、

















東2局、奥田が小川に16を放銃。
東2局その2、堀井が奥田から12をアガって先ほどのお返し。
東3局、今度は成岡対奥田。9巡目の成岡、





























東4局(ドラ


南1局(成岡+3.2 小川+2.4 堀井△2.0 奥田△3.6)【牌譜12】、成岡5巡目、トップ落ちリーチを敢行。























































このアガリ逃しが命取りになり成岡の高めツモの26オール。
ここから南1局その2、南2局ととても長い時間を費やし流局が続く。
南3局(成岡+11.0 小川△0.2 堀井△4.6 奥田△6.2)、オヤ番の無い小川、奥田と16しか差がない堀井は奥田のテンパイ気配が見えた瞬間に「D」に。しかし、堀井9巡目、ここから



















南3局その2(堀井+13.4 成岡+5.0 小川△6.2 奥田△12.2)、ラスオヤが残ってる奥田だがピンフツモを拒否しフリテンリーチへ。

















堀井連勝で借金返済。小川無理せず。成岡悲痛。奥田想定内なので大きなダメージ無し。
小川(0)・成岡(△1)・堀井(0)・奥田(1昇)
しかし8回戦奥田がラスになった事によって、奥田の締め付けより自らのトップに比重が高くなる。喫煙休憩中に成岡は「どうやったらトップとれんねん!」とぼやいていたが、この9回戦にかける意気込みは相当なものがあった。
東1局【牌譜13】、成岡受け入れ狭くしてまでこだわったワンズを引き込み最高の形でハネツモリーチ、















































続く東2局、好調奥田がメンゼンタンヤオをツモって10・20。
東3局は堀井が10オール。
東3局その2(奥田+4.0 堀井+2.0 小川△2.0 成岡△4.0)、成岡の4巡目手なりリーチのみに堀井が飛び込んで16。
東4局は流局し南1局(奥田+4.0 堀井+0.4 小川△2.0 成岡△2.4)、小川自風を鳴いて真っ直ぐテンパイに向かう。高目をツモって10オール。
南1局その2(奥田+3.0 小川+1.0 堀井△0.6 成岡△3.4)、































南2局・南3局は熱い攻防があったが流局。
迎えた南4局(奥田+4.2 小川+1.0 堀井△1.8 成岡△3.4)【牌譜14】、成岡5巡目大長考に入る(オヤの奥田との差は76)。


















ツモっても出アガってもラス抜けだけでトップは奥田に。
・


ツモってトップ。
出アガリでラス抜けできるが奥田がトップになってしまうしリーチをかけるからには出アガリを拒否しツモ専か。
・

ツモってトップ。
奥田以外からの出アガリはトップでない。
・

どこから出上がってもトップ。
最終手番で堀井からの差し込みがあるかも!?
成岡は大長考の中で(勝手に推測)、
→小川の5巡目の


→リーチかけなくても


→堀井は自分がラスになってでも差し込んでくれるんか?まだ9回戦目やで?
→自分がラスになってまでも差し込みに来ないやろうなー。
→しゃーないツモ専なら


もちろん、上記以外にもリーチ棒を出すことによる奥田以外の2人のトップ条件の緩和なども考えのうち。
しかし12巡目最悪の

堀井は差すつもりは無く完全撤退。
小川もトップ取りにいかず撤退。しかし次順手詰まりから

【参考】リーチの時点で





奥田(2昇)・小川(0)・成岡(△2)・堀井(0)
東1局、後がない成岡、またもや原点リーチを打つが流局。
東2局【牌譜15】、12巡目、目一杯で構えているが中々テンパイが入らない成岡。



































続く東3局、テンパイ1番乗りは10巡目の成岡。高めならオヤマンのリーチ。










































東4局にも奥田は7・14をツモって南場に入る(奥田+19.6 堀井△5.1 成岡△7.1 小川△7.4)。昨年小川が八翔位を獲得した時の最大差は同じく南1局で224。今回奥田はそれを上回る247の差をつけた。
南1局、奥田のオヤ番で大きくたたきたい連合軍だが、手が進まずアガれそうもない成岡はチョーマを1人に集めるためにノーテンリーチ。小川は5巡前から役なしペン7でテンパッていたので追いかけリーチ。堀井ドラ打ちで援護するためチョーマは投げないで流局。
さあ、奥田無傷で自分のオヤが流れ残り3人のオヤ番をクリアすれば八翔位!
南2局(奥田+19.6 堀井△5.1 成岡△8.1 小川△8.4 供託2.0)【牌譜16】、小川絶好の配牌から6巡目には下記の手牌、
















南2局その2(奥田+15.6 小川+5.6 堀井△9.1 成岡△12.1)【牌譜17】、今度は成岡に絶好の配牌。ツモも噛み合い大きな声で5巡目に



















南3局(奥田+7.6 小川+5.6 成岡△4.1 堀井△9.1)【牌譜18】、成岡はトップにならないと前局の意味がないとがむしゃらに仕掛ける。6巡目に、




























ここから13巡目、を引き入れテンパイ。さらに次巡に
を引き入れ180のテンパイ(2枚切れ)。堀井・小川からは絶対に出てくる180。この
がどこまでヤマ深いかが焦点と思いきやピンズが滅法安いところで堀井にテンパイが入る。

















南4局(小川+5.6 奥田△0.4 堀井△1.1 成岡△4.1)【牌譜19】、奥田の条件は13・26のツモか小川から32以上の直撃。成岡もマンガンツモ条件になるがリーチ棒を出すわけにはいかず序盤で方針を決めるはず。堀井はオヤ番だけども安手での連荘は逆にチャンスを多く与えるようなもの、慎重に構える。小川はよっぽど手が早くない限り、奥田の現物牌集めになる。
その奥田だが、7巡目に、














































その後




奥田の

決着は2週間後に延長。
小川(1昇)・堀井(0)・奥田(2昇)・成岡(△3)
ただ堀井・成岡は自身トップでラスを小川か奥田を選択できる局面が来たとしたら次戦を2対2とするリスクがあるにせよ奥田のラスを選択すると思う。自分が優勝するためには、ボーダーラインを下げた方が得策だから。
東1局、オヤ・小川の6巡目、




















東2局、成岡がアクロバッチなツモを捕まえてテンパイ、












































東3局【牌譜20】、成岡6巡目ドラマチのテンパイトラズ。

















リーチの時点でオヤ・奥田は、



















東4局(成岡+2.0 小川・堀井±0.0 奥田△2.0)、南家の小川が1打目にダブ


















南1局【牌譜21】、東場のオヤは小川らしくない、ちぐはぐ打牌で流局。迎えた南場のオヤ番、西家・奥田の7巡目、































南2局(奥田+3.2 成岡+0.7 堀井△1.3 小川△2.6)、終盤成岡ツモのみをアガって4・8。
南3局(奥田+2.8 成岡+2.3 堀井△2.1 小川△3.0)、奥田のオヤ番、小川・堀井はオーラス成岡がオヤなので最低でも7・14以上のツモが必要になってくる。小川の配牌は、































南4局(小川+2.2 成岡+1.0 奥田+0.2 堀井△3.4)、奥田の優勝条件は4・8のツモか20の出アガリ。小川は受けに回るだろうと思っていたが5巡目小考の上、リーチを敢行。
















堀井(△1)・成岡(△3)・奥田(2昇)・小川(2昇)
奥田は決着権を持って3戦目、小川が追いついて連合軍が手薄くなりここが勝負所。
座順は西家・奥田、北家・小川という、成岡・堀井にとっては最悪と言っていい座順(点棒を集めにくい)。私のメモには「この回で決着する可能性大」と記してあった。
東1局【牌譜22】、小川がドラ雀頭の役無しをツモって10・20の先制。成岡5巡目、ここから



































































































南2局(小川+16.0 奥田+3.0 堀井△8.8 成岡△10.2)【牌譜23】、連合軍の最後のオヤ番。しかし奥田が4巡目リーチ。













































南3局(小川+14.0 奥田+11.0 堀井△10.8 成岡△14.2)【牌譜24】、奥田連続マンガンで一気に差を縮めて来た。オヤ番の無い成岡・堀井は役満のアガリか「奇跡」の同点トップを狙うしかなくなった。成岡最終ツモを残してノーテンリーチ。ここでリーチ棒を出す意味は、南4局、奥田に20の出アガリを期待してのこと(同点トップ)。しかし同巡奥田も最終ツモを残してテンパイ。


















南3局その2(奥田+198 小川+114 堀井△134 成岡△178)【牌譜25】、成岡は同点トップを作るべく奥田からの64直撃を目指して進める(次局20直撃で延長)。成岡の7巡目、
















南4局(奥田+198 小川+114 堀井△134 成岡△178)【牌譜26】、小川が祈りながら配牌を取る・・・・まあまあの好形だ。









































南4局その2(奥田+198 小川+174 堀井△134 成岡△238)【牌譜27】、まだまだと再度小川が祈りながら配牌を取る・・・・さらに好形だ!





























南4局その3(小川+204 奥田+198 堀井△134 成岡△268)【牌譜28】、ついに小川が再逆転に成功。成岡は奥田がリーチをかけた時のみ小川から16をアガれるのでそのように手作り。堀井は役マンツモ狙い。小川は流局狙いで奥田の現物集め。
奥田が9巡目に自風の

















奥田の最終ツモ番。まだヤマに

小川八翔位連覇おめでとうございます。
また最後まで自身の優勝のためにあきらめなかった対戦者の3人にも敬意を表します。
最後まで駄文にお付き合いくださった読者の皆様ありがとうございました。
インタビュー:木村 由佳(マージャン101東京支部)
去る11月15日、第31期八翔位決定戦が決着し、順位戦A級の小川隆選手が八翔位を連覇しました。小川さんは別途自戦記を書いておられますが、改めて全12回戦を振り返り、ポイントとなった局について語っていただきました。
私(木村)は12回戦中10戦を現場で観戦しましたが、優勝者の小川さんに1対1でインタビューするのは若干荷が重いので、決定戦対局者の成岡明彦選手(A級)と、牌譜にすべて目を通した山内啓介選手(B級)にも同席していただきました。
―――まずは、八翔位連覇おめでとうございます。今のお気持ちを聞かせてください。
小川「とにかくうれしいです。でもマージャンの内容自体は、奥田直裕さん(一般)のほうがよかったと思っています。八翔位戦のシステムに助けられて勝てた面もありましたね」
―――決定戦の直前は、どのように調子を整えられましたか?
小川「対局前の過ごし方はふだん通りです。順位戦の時もそうですが、金曜日の夕方に名古屋から東京に来て、研究会で2〜3回打ちます。研究会がない時は、池袋でノーレートを打っていました。それで土日に向けて調子を整えるというスタイルをずっと続けています」
―――今回は、ポイントとなった局面について掘り下げて伺いたいと思います。まず、前半の山場はどこだったのでしょう?
小川「初日は特にないですね。初め、奥田さんに同じ座順で2連勝されて、3回戦の場決めをしても座順が変わらなかったけど、まあそんなこともあるかなと思って打ったら3・4回戦は奥田さんとのトップ・ラスになりました。八翔位戦では何があっても『このままでは終わらない』と思って打っています」
―――そして2日目の6・7回戦で連敗ですが。
小川「じつは、3日くらい前から少し風邪気味でして、金曜日の夜は葛根湯とちょっと高目の滋養強壮剤を飲んで眠ったんですよ。そしたら土曜日に2勝できたんですが、土曜日の夜にそれを飲まなかったら連敗スタートになってしまいましたね。転落の始まりは6回戦の東4局【牌譜1】、要注意の奥田さんにホンイチチートイツを放銃したときでしょうか」
成岡「僕が3巡目にチートイツに決めた局ですね。それにひきずられてみんなチートイツみたいになったのかな。まあ、奥田さんはホンイチがたまたまチートイツの形のテンパイになったみたいなもんですけど」
(成岡が7巡目に切ったで、小川が11巡目に奥田に放銃)
成岡「早めにチートイツやってる人がいたら字牌は先に切らなあかんのですよ」
山内「それ、よくある。順位戦の牌譜を見ていても、誰かのチートイツのロン牌の字牌を成岡が先に切ってました、というのは実際によく目にするよ」
成岡「でしょ? 参考にしてください」
小川「まあ、このはツモ切りだったけど、テンパイしたら
を切ろうと思っていました。しかしあの放銃で動揺したのが転落の始まりで、連敗してしまいました」
―――2日目の後半、9回戦についてもお話を伺いたいのでお願いします。
小川「9回戦は成岡に助けられてラスにならずに済んだという感覚ですが、どうなのかな。難しいな」
―――9回戦南4局【牌譜2】については成岡さんの思うところを聞かせてくださいますか。観戦していて、つい腰を浮かせてしまった私とTさんが、注意されてしまいました。(101の一般観戦者は座ってすることになっています)。名翔位がうろうろ動き回るからつられて……。
―――時間を計ったわけではありませんが、成岡さんは5巡目にリーチかけるとき2分くらい長考されましたね。
成岡「師匠(僧根幸男さん)の影響で、ドラと心中というのがあまり好きではないんです。でも今考え直してみて、やはりドラタンキのリーチを打つべきやったかなと思っています。仮にリーチしなくでも、ツモか奥田さんから出たらトップ、ワキから出てラス抜けでもよかったのかなと思います」
―――あの場で待ちでリーチをかけたのはなぜでしょう?
成岡「4巡目にを重ねた時点で
ポン、あるいは
チーのドラタンキテンパイは考えていました。ところがそこに
を引いてきてしまい、選択肢が生まれてしまって、
待ちがよさそうに見えたのです(この時点で
はヤマに5枚、うち王牌に2枚)。」
―――ところが11巡目にドラのを引きましたね。12巡目の小川さんの
でアガらなかったのはなぜですか?
成岡「持ってきてブチッ!いやいや小川さんの
であがらなかったのは、まだ
がヤマにいると思ったからです。もしも自分が
を引く前に小川さんから
が出ていたら、『ロン』と言ったかもしれませんね」
小川「そういうところが、9回戦は成岡に助けられたかなと思ったのですが」
成岡「いやちょっと待ってください。小川さん、ここはまっすぐ行っていたら自分が5・10あがってトップになってるんじゃないですか? 奥田さんを2昇にさせないためには、自分がラスに落ちても僕のリーチに打つというのはアリだったかなと思います。相手がトップで自分がバーよりも、相手がバーで自分がラスのほうがよいという、八翔位戦ならではの考え方ですね。次がもう10回戦なんですから」
小川「これで10回戦、奥田さんに決着権を与えてしまいましたね。成岡の意図を感じ取って、まっすぐ打てばよかったのかなあ」
成岡「八翔位戦はみんなが協力して決着権のある者にあがらせないようにする、というのは毎年のことです。しかし毎年、最後は決まってるんです。それがいつ来るかわからないから、決着権を持たせないようにしたほうがよかったかもしれませんね」
山内「それぞれ思うところはあるでしょうが、この9回戦と続く10回戦の成岡の連敗で、4人全員が10回戦までに連敗を経験するという事態になりました。調べてみたのですが、これは1996年に八翔位戦が今のシステム(10戦3勝勝ち切り方式)になって以来、初めてのことです」
―――そして戦いは2週間後の延長戦になります。11回戦は奥田さんだけが決着権を持っていました。小川さんはどのように臨まれましたか?
小川「前の晩に、初戦のときと同じように滋養強壮剤を飲んで寝ましたよ。しかし、11回戦で私はミスをしてしまいました。まずは東1局のあがりのがしで、東場はチョーマがまったく動きませんでした。南1局はのどちらを切ってもテンパイで
を切って、奥田さんにポンテンされてアガられたりね。しかし南3局は1巡目からしかけてトイトイをあがり、トップ目で迎えた南4局【牌譜3】で、自分としては思いきってリーチをかけました。」
成岡「あのリーチはよかったですね。トップ目の役ありリーチ」
山内「さすがに、テンパイしたときは『うーん』ってうなってましたね」
小川「奥田さんをラスにできる機会だったので決めに行こうと思いました。奥田さんから出た場合、星を同昇ではなく、1昇差にして12回戦を迎えられるからです。ツモアガリで、お互いに2昇で決着権を持った状態で12回戦になりましたが」
成岡「うまいこと打てば自分もあがれたかもしれませんが、だめでした」
―――そしていよいよ12回戦です。南2局【牌譜4】に奥田さんがリーチしましたね。
小川「オリる牌がなければまっすぐ行っていました。オヤの成岡が通したが雀頭で、自分がトップ目だったのでオリました。勝負をかけるところだとは思ったのですが・・・」
成岡「あそこは小川さん、チーテン取ったらよかったと思います。それは体が知ってるでしょう」
―――そして奥田さんが小川さんまで30差に迫った南3局です。その1で奥田さんは26オールをツモってトップ目に立ちました。その差は84です。
小川「南3局その2【牌譜5】は、後で成岡の牌譜を見て驚きましたね。ホンイチに向かっていたら40・80で自分がトップになってるじゃないですか」
成岡「同点トップになってもらって延長戦、というのを意識していたので、奥田さんと小川さんの84差のことばかり考えていました。堀井さんはコクシに向かっているので、それはそっちにまかせて、自分はまず64の手を作ることしか考えられませんでした。まさか、

















―――南3局その2は流局して84差で奥田さんリードのまま南4局、小川さんのオヤ番です。南4局【牌譜6】は成岡さんが小川さんに60を差し込みました。
成岡「ドラと何かのシャンポンで、ドラをツモられたら終わってしまいますから、ドラじゃない方で60を差し込むしかないんです」
小川「さすが、ちゃんと差し込んだね」
成岡「いや、1巡遅かったと思ってます。あの1巡でドラをツモられたら終わりでしょ。ノータイムでツモ切りできないあたりが、自分、あかんかったんやなと思うところです」
―――そして奥田さんと小川さんの差が24に縮まっての南4局その2も、成岡さんの差し込みで小川さんがアガりました。5巡目のリーチに6巡目にすぐ差し込まれましたね。
成岡「24なら同点になるからいいと思っていましたがピンフで30でした」
―――南4局その3、小川さんが6差リードしていますからこれを同点にするにはあまりパターンがないですね。
成岡「6・12(70符3翻のツモアガリ)なんてまず現実的ではないので、奥田さんがリーチ棒を出してから、僕が小川さんから16をアガるという想定で16のテンパイに向かいましたが、11巡目に切った

―――奥田さんは自風の

小川「奥田さんのロン牌の



山内「しかし、八翔位決定戦前のインタビューで成岡が言っていた通り、1人ひどい目にあう人がいましたね。成岡、今回はあかんかったね」
―――成岡さんが12戦トップなしというのは珍しいです。敗因はなんでしょう?
成岡「着て行く服を間違えたんです。カッターシャツの下に着るTシャツ、初日に『ATフィールド』を着て、2日目『逃げちゃだめだ』にしないといけなかったのに、初日に『逃げちゃだめだ』を着てしまいました」
山内「なんや、それ」
成岡「細かい打牌なんか、みんなが言うほどマージャンに影響しない! 僕はシャツを間違えたから負けたんです!」
小川「じゃあ、私は滋養強壮剤を飲んでよかったです」
成岡「いやそれは、体調が悪い時にドリンク剤飲んで体調よくなるのは、ほんまに効果があったんやから。そういうのはゲンかつぎって言いませんからね!」
―――シャープなツッコミが入りましたが、やっぱり締めは小川さんにお願いします。今後、何を目標にされますか?
小川「ここで話していて、新たな課題が見えてきた気がします。成岡に指摘された点などよく考えて、よりよいマージャンを打てるようにますます精進していきます。これからもふだんどおりのスタイルを大事にしていきたいと思います」
―――みなさん、ありがとうございました。
第31期八翔位決定戦 成績表
11月1・2・15日(東京対局室)
選手名 |
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終了 |
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小川 隆 | 八翔位 | − | − | ◎ | ◎ | − | ● | ● | − | − | ◎ | ◎ | ◎ | 3昇 |
成岡 明彦 | A級 | − | − | − | − | ● | − | − | − | ● | ● | − | ● | △4 |
奥田 直裕 | 東京 | ◎ | ◎ | ● | ● | ◎ | ◎ | − | ● | ◎ | − | − | − | 2昇 |
堀井 統之 | 東京 | ● | ● | − | − | − | − | ◎ | ◎ | − | − | ● | − | △1 |
第31期八翔位戦 システム
【出場資格】
・麻将連合推薦、オープン参加選手及び連盟所属選手
・ オープン参加選手は、昨年度のマージャン101における打荘数が24ある者から各支部内で選抜。
【1次予選】
・各卓4戦(1日)を戦う。
・規定回終了時のスコア上位2名を勝ち上がりとする。
・4回戦終了時に上位2名が確定しない場合は、これが確定するまで延長戦を実施する。
【2次予選】
・2次予選シードの連盟所属選手及び1次予選通過者により行う。
・各卓6戦(2日)を戦う。
・規定回終了時のスコア上位2名を勝ち上がりとする。
・6回戦終了時に上位2名が確定しない場合は、これが確定するまで延長戦を実施する。
【準決勝】
・2次予選通過者により行う。
・各卓6戦(2日)を戦う。
・6回戦終了時に単独で2昇以上の首位者が決定戦の出場資格を得る。
・6回戦終了時に単独で2昇以上の首位者が発生しなかった場合は延長戦を実施し、7回戦以降はその回の開始時の首位者のスコア+1昇に単独で到達する者が発生するまで延長戦を実施する。
・「初めて、4者同スコアで決着権がある状態」となった場合は、その一戦の終了時の単独首位では決着としない。
ただし「再度、4者同スコアの状態」となった場合は、同戦終了時の単独首位で決着とする。
【決定戦】
・八翔位及び準決勝通過者により行う。
・10戦(1日4戦)を戦う。
・10回戦終了時に単独で3昇以上の首位者を優勝とする。
・10回戦終了時に単独で3昇以上の首位者が発生しなかった場合は延長戦を実施し、11回戦以降はその回の開始時の首位者のスコア+1昇に単独で到達する者が発生するまで延長戦を実施する。
・「初めて、4者同スコアで決着権がある状態」となった場合は、その一戦の終了時の単独首位では決着としない。
ただし「再度、4者同スコアの状態」となった場合は、同戦終了時の単独首位で決着とする。