第35期順位戦A級 第2節

 観戦記自戦記/田中 実自戦記/小川 隆星取表

第2節観戦記:鈴木 聡一郎(最高位戦日本プロ麻雀協会・1日目)・小宮山 勤(2日目)

【問題】下記手牌からを打つとき、強く意識する手役を3つ順に答えよ。


 言わずもがな、相対的な評価を競うのがマージャンである。
 局単位では相対的に最も早くアガった者にチョーマが与えられ、半荘単位では相対的順位を競う。しかし、通常のマージャンでは、順位という相対的な評価に加え、素点という絶対評価の雑音が混じる。素点を順位決めの道具としてのみ利用するマージャン101は、ある意味では相対評価の極みといえる。それゆえ、101選手は、相手との間合いに関する鋭さと、相手の手牌進行に関する想像力に特に長けているように感じる。

 その中でも最も優れた鋭さと想像力を持つ選手、それが名翔位である。
 現名翔位 田中実
 昨年、A級に姿を現すと、あっという間に名翔位まで登り詰めた。
 そして、その田中に名翔位を明け渡す格好となった前名翔位 成岡明彦
 実績からいくと、現選手の中ではミスター101といっても差支えないだろう。
 その2名が2節の初戦から合いまみえる。

※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※


◆◆◆ 9回戦A卓 ◆◆◆

成岡1昇・高島2昇・小川2昇・田中△2

 東1局が流局して迎えた東2局【牌譜1】、田中の配牌。
 西家田中はこの配牌から第1ツモのをそのまま河に置くと、次巡ツモで打。2巡で生牌の翻牌を連打する。
 1巡目のについては打つ選手も多いかもしれないが、2巡目のについてはどうであろうか。1打目にを打ったことからを打つのが一貫性というものかもしれないが、できたターツがペンチャンならばそのピンズのペンチャン、もしくは辺りを打って引き気味に構えることもありそうである。
 ところが、局面をいささか大胆に予想(ここではまだ予測の域には入らない)するなら、静かにペンチャンを落としてきた小川は字牌を抱えて受け気味に、を切ってきた成岡も手役を限定した手牌進行となるという想像をすることはできる。
 がかぶっただけのオヤ高島については、どのような進行を見せるのか予想が困難であるが、オヤだけマークすればよいのであれば、気を遣う字牌はだけでよい。
 それより、手牌進行の遅い可能性のある2人に対してこの手で戦えるとの判断の下、田中はを打ち出した。その後も真っ直ぐ進めて、7、8巡目にをトイツ落とししたところでテンパイ。
 これに対し、次巡の小川。
 
 ソウズのイッツーも見えるようになったが、田中のトイツ落としを見てどう決断するか。
 一般的に、トイツ落とし完了の瞬間はテンパイでない可能性が高いと言われている。ただ、仮にテンパイでないとしても、真っ直ぐ打ち進めている田中がトイツ落としを完了したのであるから、良形のイーシャンテンぐらいにはなっているだろう。とすると、イッツーなのかドラ受けなのか、ここで決めておかないと間に合わない。
 小川の選択はツモ切り。2手かかるイッツーより、1手でテンパイできるドラ受けを残し、田中にスピードを合わせた。しかし、これが田中に28の放銃となる。

 東3局【牌譜2】、ここでも真っ直ぐに進めていた田中だったが、4巡目に生牌のを引く。
 3巡目に同じく生牌のを手出ししている田中だったが、「東場のでは話が違う」とばかりにを手の内にしまいこみ、打とする。
 その背景には、オヤである小川の動向も関係している。この1巡の間に、「小川がわりとアガリにきている」と予想できる出来事があったのだ。小川の3巡目までの捨て牌は。その小川の4巡目、が手出しされたのである。これは、かなりアガリを意識した切り順といえるかもしれない。ポイントは1巡空けてのトイツ落とし。そして、その間に挟まれているのがのツモ切り。この2つで、少なくとも受け気味に打っている可能性は低そうといえる。なぜ1巡空けるのかといえば、少しでもトイツ落としであること(=攻撃しているのであれば手牌がそれなりに整っていること)の明示を避けるためであるし、仮に少しでも守備を意識すれば、を並べてトイツ落とししておき、より安全度の高いを抱えるはずである。そのため、この4巡目の手出しで、この局は小川を中心に攻防が展開されることになったといえるのである。したがって、その直後に引かされたなど、方向性の定まらない田中の手牌からでは切れるわけもないというわけだ。を使い切れるトイツ手やホンイチ、もしくはを切るのであれば最低でもアガれそうな早いタンヤオのテンパイ。その辺りを見据えて受け気味に進めるほかない。実際に、小川の手牌はドラトイツのリャンシャンテンであった。
 この空気を察知し、6巡目に田中が切ったを成岡がチーしてかわしにいく。
 
 これに対する田中、かわしにきた成岡に対してはチートイツのイーシャンテンで真っ直ぐ打ち進める。高島は早々に完全撤退。すると次巡、オヤの小川がついに生牌のを打ち、直後に田中がヤマに3枚残りのを引いてテンパイを果たす。
 
 この待ちに、をトイツで持っていた高島が万全のトイツ落としと思われたで打ち上げ16。
 ここまでは、抜群の押引きで現名翔位田中が場を制圧してきた。しかし、前名翔位成岡も黙っていない。
 田中44→成岡16→高島12→小川で迎えた東4局【牌譜3】、終わってみれば誰もテンパイすることのないただの流局譜なのだが、道中の成岡がすごい。
 3巡目にをツモった成岡。
 対局後、成岡は言った。
「あの見てました?あのはよく打てたと思います」
 そう、そのというのがこのである。ここからアンコを崩す打
 成岡が言うには、このには様々な意味が込められている。成岡は、まず誤情報流しを挙げた。要は、を持っていないように見せるという「他家がアガリに向かうことに対する障害作り」と、「手牌の進行速度が早いように見せて相手に受け身を取らせるための虚像作り」であると思われる。
 それに加えて純粋に手牌の都合という観点からも、は非常に優秀な選択に見える。この手牌で他家より早いアガリが取れるならチートイツであり、すると3枚あるのうち1枚は明確な不要牌。
 さらに、そのようなアガリが取れる可能性は極めて低く、捨て牌2段目に入ってからはオリを強いられることを想定しておかねばならないため、守備の面から牌種を増やしておきたい。
 確かに上記理屈はわかるのだが、「わかる」と「打てる」は全く別。
 を打ったことに加えて成岡は、このを皮切りに丁寧に捨て牌を作っていき、早い順子手にもチートイツにも見える絶妙な作品を作り上げていく。そして、9巡目に場に2枚目となるが切られ、それに併せるようにを手出ししたところで、「はいウソでした!」とばかりに完全撤退を開始。この直後、好形であった小川がイーシャンテンにこぎつけており、ハッタリをやめるタイミングとしては適切であったように思われる。これをされると長く同じメンツで打つ選手達としては厳しいな、と背筋が凍る。

 続く南1局では、オヤで10巡目に下記カンのテンパイが入るも、をポンした後両面ターツを落としてテンパイ気配のある高島に対してを打たずに安全牌の打
 ドラは高島に併せる形で田中が打った計2枚が見えており、成岡のカンも良くはないが悪くはなさそうという印象であったが、成岡はスッとを抜いてを抱えた。高島はホンイチではなさそうであるため、高打点ならトイトイか字牌を使った手牌ということになり、いずれにしても字牌を打つことはできない。
 その高島のテンパイ形がこう。
 
 言わずもがな、を引いてのテンパイである。対局生放送時代の現代では、こういうときに入り目をしっかり打っていける打ち手が強いというような趣旨のコメントなどを見かけるが、確かにそういう強さもあるだろう。例えば、筆者の好きな打ち手に鈴木たろうという打ち手がいるが、彼などがその手のタイプである。
 ただ、本当の強さとは、こういう地味な強さの積み重ねだと思う筆者にとっては、たろうの目立つところだけを取り上げて強いという風潮が嫌いであるし、そのような部分を切り取って強さを表現せざるを得ない現代のトップ至上マージャンや、ノーテン罰符を過度に重視しなければならないマージャンがあまり好きではない。
 違うだろう、真の強さとは、芯を持った強さとは、芯からにじみ出る繊細さが毛細血管まで行き渡った成岡のような打ち手が表現する強さではないのか。また、それを表現できる101という土俵ではないのか。
 101を打つ成岡を観ていると、自然にそう思わされるから不思議である。

 南3局(田中25→高島26→成岡21→小川)。そして、冒頭の打。成岡は第1ツモでを引くと、打とする。
 確かに筆者もは打牌候補には入る。ただ、を打つときに意識する手役が成岡と違いすぎた。
 筆者がを打つとき、見る手役はホンイチ、チートイツ、翻牌+ドラ辺りであろうか。
 他方、成岡は「この手牌で一番最初に考えるのは国士」と言う。筆者のホンイチは見ないのかとの質問に対し、成岡はさらにこう続けた。
「見ますよ。だけど、一番は国士ですね。この手牌、4人の中でスピードで一番じゃないことが多いでしょう。追い抜けるとしたら、最速は国士だと思うんですよ。国士なら1段目でテンパイすることあるでしょ」
 成岡の武器はなんといっても相対的な速度読みと、それに合わせた手組みであろう。
 しかしながら、その相対的な速度読みが非常に立体的で興味深い。筆者には、今までの打ち手とは別の次元からマージャンにアプローチすることに挑んでいる研究者のように見える。
 その成岡が、ここで2番手に挙げた手役がチートイツ。そこに至る過程が実に興味深い。
「他家をスピードで抜けるとすると、国士に次ぐ2番手はチートイツで、おそらくドラそばのが自分のところに固まったときなんじゃないかなと思っています。なので、をこの段階では両方残します」
このアプローチの本質は、結局のところ「統計的見地から分析した『経験』」であるため、一朝一夕で真似できるものではないのだが、こういうアプローチがあることだけでも若手のみなさんには学んでおいてほしい。
 そして、成岡が3番手として挙げたホンイチ。成岡は保険ぐらいの位置づけで挙げたのだが、今局ではソウズに寄り、6巡目に2枚目のをポンしてこうなった。
 
 この後、周りをけん制しながら終盤に下記テンパイを組むが、流局。
 
 選択がそれほど特異なものではないのにもかかわらず、その裏にある思考がこれほど興味深い局があるのだろうか。
 断言しよう。
 成岡は、多くの者とは違う切り口でマージャンを考察している。若手競技選手は成岡のマージャンを見て、成岡に話を聞くべきである。間違いなく成長の一歩目が隠れている。

 南4局(田中25→高島26→成岡21→小川)。オーラスには成岡がこの14巡目リーチ。
 ヤマにいるのはだと思ったが、をツモってしまったときのために念のためリーチしておいたとのこと。14巡目ということも加味すれば、ラス回避という意味合いでリーチをかけないという選択肢もあると思うのだが、平然とリーチをかけていった成岡が印象的であった。
 結果は流局で、結局前半にリードを奪った田中がトップを守り切り、成岡との新旧名翔位対決を制したのだが、田中も成岡も非常に興味深い譜を残してくれた。
(◎田中/●小川)


◆◆◆ 9回戦B卓 ◆◆◆

村田△3・平井±0・西尾△1・愛澤1昇

 東4局(愛澤04→村田24→西尾04→平井)。ここまで小場で進んでいたが、ここでオヤの愛澤が大きく狙いにいく。配牌から一直線にワンズに向かうと、9巡目にはイーシャンテンとなる。
 ここにワンズを2枚引き込んでテンパイすると、次巡にツモって60オール。この半荘のトップを決めた。
 ここから展開で貧乏くじを引いたのは村田。まずは南1局で愛澤に16を放銃してチョーマを減らすと、続く南2局ではまたしても愛澤の早いサンショクにつかまり、52の放銃でラス目に落ちてしまう。
 南3局にもツモるとラス抜けのチートイツをリーチするが、村田に放銃してオーラスのオヤを迎えられるなら御の字の愛澤が無筋を2つ押して10・20でかわす。
 このアガリ形を見せられては、村田としてはため息を抑えるのが精いっぱいというところ。
 かくしてトータル△3の村田がさらにマイナスを重ねる結果となった。
(◎愛澤/●村田)


◆◆◆ 10回戦A卓 ◆◆◆

西尾△1・愛澤2昇・田中△1・高島2昇

 東1局(ドラ)、前回トップの田中が7巡目にをポンして80のテンパイを果たすと、その3巡後に4枚目のを引き、加カン。
 
 すると、その3巡の間にテンパイしていた西尾がロン。チャンカンがついて60の放銃となる。
 ここから田中は攻め続けるが、その攻撃がことごとく空を切る。この半荘の、田中の空回りにこそ田中の特徴を見た気がした。
 田中は、ラス目になってからリーチを多用していく印象がある。それは101競技をする者すべてに共通の傾向であろうが、田中はその傾向が特に強いのではないかと感じる。
 言うなれば、ラス抜けに明確に照準を合わせるのではなく、あわよくばその先にあるトップまで見ている。そんな型であるような気がした。
 リスクは高い。ただ、この型はピタリとはまると強い。

 例えばこんな局面があった。
 南1局【牌譜4】、高島11→西尾83→愛澤57→田中。西家田中は8巡目にテンパイを果たす。
 ドラ表示牌が絡む5枚待ちとあって、田中もさすがにヤミテンを選択する。しかし、ツモ切りを続けた11巡目、田中は突如ツモ切りリーチを敢行する。
 これは強い。
 実はこの3巡の間に、トップ目の高島はテンパイにたどり着き、高島とトップ争いしているオヤの西尾は両面3つ含みの良形リャンシャンテンまで進めていた。
 この進行度と、手変わりを待つ巡目の限界点が、田中の中ではここだったということだろう。
 このリーチにより、高島・西尾がともにオリを強いられる結果となる。
 これも成岡の選択と同様に理屈は「わかる」。ただ、「わかる」と「打てる」は別。
 1度リーチを拒否したドラ表示牌が絡む5枚待ちをリーチにいける感覚を持っている競技選手は、多くないはずである。
 最初からリーチ、もしくは最後までダマテン。それが大多数。
 田中にはこれを途中でリーチにいける大胆さがありつつ、トップ目に立ってしまえば冷徹な守備とかわし手で相手を抑え込む。
 この2つの面から、トップを「強奪」「堅守」することができる打ち手、それが現名翔位田中実のトップ数を支えているのだろう。
 なお、この半荘については、その田中があっさりラスを引くパターンの回。
(◎高島/●田中)


◆◆◆ 10回戦B卓 ◆◆◆

村田△4・小川1昇・平井±0・成岡2昇

 東場は平井→村田16のみで大きく動いたのは南1局。ラス目平井が積極的に仕掛けてチャンタのテンパイ。
 
 平井は終盤にを掴むと、一瞬止まりはしたものの、そのままツモ切り。
 すると成岡からロンの声。
 この80で平井のラスが濃厚となる。確かに平井の待ちは良さそうだったが、残り2〜3巡という巡目を考慮すれば、先に掴んだ方がオリるのがスタンダードなやり取りだろう。おそらくこれは平井の失投ということになりそうである。
 南3局(成岡64→村田16→小川96→平井)。村田がをポンしてワンズへ。そこへ村田の上家であるトップ目の成岡がと切り出していく。これは明らかにかわし手のテンパイが入っている。
 実際にはこのテンパイ。
 ここからチー打テンパイ。この後、も出来メンツからチーして単騎のテンパイへ移行。
 その直後の村田。
 
 村田が少考に入る。おそらく、成岡のタンヤオに対する万が一の放銃を考え、打を検討しているのだろう。少考後、村田は結局最高打点を見てを打ち抜き、次巡にをツモって20・40。
 この少考について、対局後に成岡と村田が話していた。
 成岡が言うには、「あそこで迷いが生じること自体が不調な証拠。あそこはノータイムでの1択でしょう」とのこと。
 村田もそれを素直に認め、どこか調子が上がらない今期を振り返っているようであった。
 この半荘はというと、オーラスのオヤで成岡が平井の差し込みにより首差で村田を再度まくり、村田が昇を逃す形となった。
(◎成岡/●平井)


◆◆◆ 11回戦A卓 ◆◆◆

愛澤2昇・小川1昇・村田△4・高島3昇

 前半荘でも未だ片目が開かないは惜しくも昇を逃した村田だったが、今回も南3局を迎えてラス目。引き続き苦戦を強いられていた。
 南3局(ドラ)小川32→愛澤12→高島08→村田。村田のオヤ番であり、普通の神経ならばここで勝負をかけたくなるところ。
 しかし、村田は、小川にのピンフテンパイが入った直後のここから、小川の現物を抜き、オーラスに勝負を託した。
 こういう強さもある。これは、ノーテン罰符のあるマージャンではまずお目にかかれない強さである。また、この後の小川の対応も的確で、が出ないと見るや、あっさりオリていく。そして、最も終局に近いところまでテンパイしていたのは誰かといえば、孤立のドラを抱えて苦しかった愛澤。愛澤は、孤立牌のを抱え、がもう1枚来たときだけ前に出られるような手組みをしていた。
 すると思惑通りが重なり、下記のテンパイで流局となる。
 そう、この水面下の呼吸が101のA級。
 普通の人間には見えてこない、いわば共通認識のエラ呼吸、それが101の最高峰なのである。
 筆者は今局3者が奏でた水面下のハーモニーを見られただけで本日の観戦を爽快な気分で終わることができることに、幸せをかみしめた。

 さて、この半荘に話を戻すと、村田の我慢が実り、オーラスでは高島のテンパイにトップを視野に入れた愛澤が飛び込み30の放銃でラス目となって迎えた南4局その2(小川14→高島38→村田10→愛澤)。
 村田は好配牌をもらうと、一直線にアガリを目指し、11巡目にテンパイ。
 ここでリーチをかけて流局した場合、ラスなしとなってトータル昇持ちである愛澤の昇を削れないのは不満だが、それより現在自分が抱えている△4の負債を減らすことができる可能性の方を重視すべきとばかりに、村田は高目ツモ条件のリーチをかけた。しかし、今期の村田をそして愛澤をも象徴しているかのように、結果は流局となる。
(◎小川/●なし)


◆◆◆ 11回戦B卓 ◆◆◆

田中△2・平井△1・西尾△1・成岡2昇

 開始早々、いきなり田中が2連続のアガリ。
 東2局、
 東3局、
 いずれも10・20で、あっという間に離れたトップ目に立つと、続く東4局ではダメ押しとばかりに20・40。
 
 あとはラスを決めるゲームだが、不運にも選ばれたのは西尾。
 オーラスにラス抜けを目指す成岡とメンホンスーアンコウイーシャンテンでトップを狙う平井に挟まれ田中への20放銃でラス落ちとなった。逆に成岡はラス回避。
(◎田中/●西尾)


◆◆◆ 12回戦A卓 ◆◆◆

成岡2昇・高島3昇・村田△4・西尾△2

 東3局(高島06→成岡07→村田・西尾)。オヤの村田が第1打から入っており、ドラを固めて早そうな捨て牌。また、高島も早そうで、オヤの村田に対して上家でかぶせていく。
 この2人の動きを見て、成岡は5巡目から慎重に併せ打ちを開始。巡目が浅かろうと、早い手には最大限に気を遣う。成岡に言わせれば普通なのだろうが、それを続けることはなかなかできることではない。
 村田は序盤ですでに下記イーシャンテン。
 これに対し、高島がを切り飛ばす。普通に考えれば、高島に先にテンパイが入っている。しかし、今期A級に上がってきたばかりの高島の打牌を信頼し切れていなかった村田は、このに対する判断を誤ってしまう。
 チーして打。これが高島につかまり、28。
 そう、新加入とはいえ高島とてA級選手なのである。村田の高島に対する評価が改められた。

 高島22→成岡31→西尾16→村田で迎えた南1局は、
 西尾がここから間違えずにを打ち、ツモアガリで10・20。これで村田が1人沈んでいる状態となる。
 南2局、村田がをポンしてテンパイを組む。
 
 すると、次巡に村田がツモるはずであったが高島に食い上がり、高島がこんな20オール。
 南3局も高島。2巡目には、
 ここから打でトイツ手一本に絞る。すると、ノーミスで牌を重ね、5巡目にテンパイ。
 次巡に村田から打ち取り64。これで高島のトップと村田のラスが決まった。
(◎高島/●村田)


◆◆◆ 12回戦B卓 ◆◆◆

平井△1・愛澤2昇・小川2昇・田中△1

 東4局、愛澤が8巡目にテンパイすると、次巡に平井が放ったにロン。
 この40で愛澤が一歩抜け出す。こうなってしまうと、愛澤はなかなか崩れない。
 南2局、愛澤42→小川14→田中06→平井。抜け出した愛澤に対し、下位3者のラス争いが熾烈になっていく。ラス目の北家平井が、11巡目に田中が切ったを両面でチーしてテンパイ気配。
その平井の仕掛けに対し、15巡目にテンパイが入った田中。
 残り巡目も少なく、待ちもドラ。また、は平井に通っていない。ここは現物を抜いていく局面である。
 しかし、田中はここから打。なんとテンパイを組み、危険牌のを打ったのである。
 
 打点は12と高くないが、問題は打点ではない。ここは打点がいくつであってもとにかく打ってはいけない局面。これは明らかに田中のミス。田中は対局後、次のように反省の弁を述べた。
「この半荘の展開的にアガリがないままラスを回避できるとは思っていなかったので、その結果、よりラスになりやすいことをしてしまう典型的ラスの形でした」
 なるほど、こういう崩れ方があるのか。抜け目のない強さという印象を田中に抱いていたため、やや人間的で意外であった。

 南3局その2、愛澤10→小川40→平井18→田中。ミスのあった田中だが、半荘が終わるまで諦めるわけにはいかない。そんな田中に勝負手が入る。8巡目にこのテンパイ。
 でアガれば一気にトップまで突き抜けるチャンスだったが、も脇に流れて流局すると、オーラスのオヤ番でもテンパイできずにラスを押し付けられた。
(◎愛澤/●田中)

 ここからの注目選手は、やはり田中になるだろう。
 実は昨年も、12回戦終了時には同じ△2でなんと最下位トータルラス目だったのだ。ここからの巻き返しに期待したい。
 また、やはり暫定首位と降級ポジションには注目がいくところ。新A級選手でいきなり4昇トップ目に立った高島はこの後どのような戦い方を見せるのだろうか。他方、早くも△5となってしまったラス目村田は、きっと飄々と巻き返してくれるはずである。

※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※

 A級戦の第2節の2日目である。注目はやはり新A級の高島か。高島は快進撃が止まらず今節の初日も2−0とし遂に4昇までスコアを伸ばしてきた。がここからは他の選手からの締め付けも当然厳しくなるはず、そう簡単には走らせては貰えないだろう。その高島が緒戦の13回戦A卓でつまづいた。いやつまづかされた、と言った方が正確か。


◆◆◆ 13回戦A卓 ◆◆◆

田中△2・高島4昇・平井△1・愛澤3昇

 東1局から平井が大物手をツモリあげる。
 
 10巡目のポンテンに12巡目の引きアガリという仕上がり。仕掛けを入れさせた高島も役無しながら8巡目にカンのテンパイを組んでいただけにやむなし、と言ったところか。(とはいえ田中はさぞゲッソリしたことであろう)その高島に東2局大きなチャンスが訪れる【牌譜5】。ドラドラの好配牌がはや3巡目でこの形。
 そして4巡目にホンイチ狙いの田中からが打ち出された。当然高島はノータイで仕掛けるのが問題はその後。10巡目にを手拍子でツモ切ったのだがここはヌルかった様に見受けられた。受け入れの枚数が増えるし上家の田中の打牌も期待ができる。結果だけ見れば傷にはならずにすんでいるのだがそういう問題ではあるまい。言っておくが次のツモがだったからではない。ましてや平井のマチがでは結果論では済まされまい。とにもかくにもこの40の放銃で高島はラス目へ。
 その後戦いは膠着状態になり流局が続き、局面が動いたのは南2局のこと。9巡目に高島まで10差の田中がを打ち出すとと愛澤から声がかかった。
 この放銃は正直田中にとって悔いの残るものではなかったか。と言うのも前巡田中は
を引き初牌のを打ち出している。そして愛澤は今テン。ここでを切らずにピンズに手を掛ける、と言う選択肢もあっただけに精神的に堪えたのではなかろうか。しかし愛澤の振りかわりの高めの牌はヤマに3枚生きだっただけに外野の利害関係のない野次馬から見ればもったいなくも見えた。最もとうの愛澤はでラスオヤだけにホッと一息、と言ったところだったかも知れないのだが。

 そして戦いは南4局へ。その1は愛澤が6オールとしその2を迎えた【牌譜6】。田中が苦しい牌姿ながら何とか愛澤、平井の援護を得てラス抜けを果たした。このスコアとこの点差なら平井のアガラズは当然であろう。ここでの高島の行き方も自分には不満に思えてならない。ガッチリガードを上げて流局狙いと言うことなのだろうがやはりそれでは相手にプレッシャーをかけることはできないだろう。自爆覚悟で突っ込んでいくぐらいの意地を見せて欲しかった。結局高島はこの後3連敗を喫し”A級の洗礼”を受けたかたちとなった。B卓は(◎西尾/●村田)。
 


◆◆◆ 14回戦B卓 ◆◆◆

田中△2・愛澤3昇・成岡1昇・村田△6

 東1局から、田中の大物手が炸裂する【牌譜7】。配牌がこれ。
 これにと引き4巡目にしてはやテンパイ。
 この時田中はを切るのにかなり時間を使っている。これだけ出来すぎた手ではあるがマチがあまりよくない。値段が値段だけに失敗したくなかったのであろう。結果は成岡から即が打ち出され成岡が大きなビハインドを背負うこととなってしまった。

 戦いはその後激しい乱打戦になる。東場は全局アガリが出る、という101では非常に珍しい展開となった。
 東1局その2   成岡→愛澤20+供託10
 東2局その1   成岡→村田28
 東3局その1   村田 20・40
 東4局その1   成岡→村田30
 放銃は全て成岡なのだがいずれもテンパイから。

 東1局その2、
 東2局その1、
 東4局その1、
 こうなるとラスは成岡で決まり。後は村田と田中の争いか、と思われたがその2で愛澤が20・40(タンヤオサンショク)を引き、三つ巴の争いで南入した。決定打がでたのは南2局【牌譜8】。配牌こそパッとしなかった愛澤が4巡目に早くもイーシャンテンに。
 ここに田中が6巡目にを引き入れこの形。
 打としたところだが何とも悩ましい感もある。愛澤の方はを引き入れる前にが4枚見えてしまったがこれで逆に迷いがなくなったか。そして田中がイッツー確定のテンパイを組みリーチと牌を横に向けたところで愛澤から声がかかった。田中も愛澤が前に出てきていたのは十分解っていただろうがこの形ではやむ無し、と言ったところだったか。この後は打って変わって静かな展開となり(◎愛澤/●成岡)となった。A卓は(◎西尾/●高島)。


◆◆◆ 16回戦B卓 ◆◆◆

小川3昇・平井0・田中△3・成岡1昇

 15回戦B卓の方は小川の自戦記に委ねるとして最終戦の16回戦B卓。立ち上がりはまずオヤの小川が軽く10オール。
 
 がフリテンだったが問題なく引きアガった。その2は今度は平井が3巡目に牌を横に向けた。
 3巡後にを引き寄せ13・26とする。次は田中。
 8巡目にテンパイをすると同点3着目から躊躇なくリーチとした。11巡目に役無しテンパイが入った成岡に追いかけリーチをかけられるが13巡目にを引き10・20とした。その後成岡8オール、小川3・6と細かいジャブの応酬があり戦いは南入した。
 点差は田中05→平井13→小川23→成岡という状況。激しい点棒のやり取りがあったが混戦模様で抜け出した選手はまだいない。ここで田中がトップ目から勝負を決めるべくリーチを宣言。
 決め手になるには十分なマチと値段であったが宣言牌のに小川から「ロン」の声が掛かった。
 これで小川がトップ目、そして田中はシバ差の3着目へとなった。しかしこれで怯んだりしないところが田中の長所であろう。次局もノータイムで牌を横にむけた【牌譜9】。ラス目の成岡との点差を考慮するとリーチをしない、と言う選択肢を選ぶ打ち手もいそうだがこれが田中の持ち味であろう。そしてここはキッチリと結果を出した。
 その後南3局のオヤ番でトドメとも言うべき26オールを田中はアガる。
 その後成岡が最後のオヤで粘るもラス抜けまでは届かず(◎田中/●成岡)で今節を終えた。

 第2節を終え首位は愛澤の4昇、小川3昇と続く。下は村田が△6とかなり苦しくなってしまった。早めに星を戻さないとズルズルいくことが多いのが順位戦のA級での多くの選手が苦しんできたパターンである。それだけ下になった選手への締め付けが厳しい、と言う証なのだろうが。とは言えまだまだ先は長い。各選手が持ち味を十分に発揮し活躍することを期待したい。

(文中敬称略)

第2節自戦記(10回戦A卓:田中 実) 

No.1【東1局その1】
 9回戦でトップをとりスコアを△1に戻して迎えた10回戦。このまま一気に借金返済!と意気込んでもいいことがないので慎重に行くぞと思っていたのに結果はチャンカンで60の出費となる。
 なぜこんなことになったのか?まず、のポンテンについては待ちがイマイチなので見送る手もあるが、私はとっちゃうタイプなのでそれはよしとしよう。問題は、西尾がテンパイしているとは露ほども考えていなかったことで、打をカンせずが選択肢に上らなかった。心のどこかにマンガンあがって連勝だという気持ちがあったのでしょうね。

No.2【東1局その2】
 さて、懲りずにホンイチ一直線です。ワンズを3枚並べてもテンパイしない辺りで観念してもよさそうなものだが、このときは終盤にアガれる気しかしていなかったのだなあ。やはり連勝しようと思って前のめりになっていたのだと、あとになってからようやく気づく。
 12巡目ので傷口が広がっていてもおかしくないが、高島のアガリを見てもマンガンつぶされたよ、としか思わなかった。(テンパってないけど)うーん、心を入れ替える必要あり!

No.3【東2局】
 配牌を見ると、またかと思うがドラがあったので自然にチートイツへ向かうことができ今度こそと思った矢先にまた高島が役なしをツモ。なんか毎回同じ牌4枚持ってるぞ、この人。

No.4【東3局】
 高島が連続してアガったので上2人の点差が接近、そしてわたしは10・20ではラス抜けできず。このまま局が消化されていくと、相当厳しいのでこのオヤ番でなんとかしたいのだが配牌は・・・ダメですね。変な話ですが、ターツがもう1つ少なければまだいけそうな気がするんだよね。

No.5【東4局その1】
 ツモがときていきなりカンチャンターツ払っていくことになるのだが、順位戦でホンイチなんてアガった記憶がない。少なくとも昨年と今年は一度もアガってない。それでも一色手を匂わすだけでも効果があるときもあるので、アガれないから意味がないとは一概には言えない。しかし、この牌姿で上家が愛澤ではなんともならない・・・

No.6【東4局その2】
 まず打とすると、すぐにが重なってチャンタ丸見えとなったがチャンタもアガれない役上位にランクされているので、ついついこの局のような進行で、ピンズの代わりにを持っているような形へ向かってしまう。
 それにしても、ツモは良しとしても、ツモでの打はあんまりだ。仕掛けて16なんて望んでないのだから打としておくだけで、終盤のターツ選択もちがうものになり、とはずしてペン引いて3者を嫌な気持ちにさせられたかも。結果は、アガリ逃したはずの西尾に「どれでもアガれたよ」というのを見せつけられて、逆に嫌な気持ちに。

No.7【南1局】
 そろそろ1回アガりたいところへ、この潤沢な材料を得て流局・・・
 はたして、こういうのがアガれるようになる日がくるのでしょうか。
 4巡目のツモに手をかけるというのもあるか?それは難しいとしてもツモでテンパイとらずは十分あるなとは思った。待ちならと思って手を進めてたわけだから。
 さて、実際は待ちのテンパイをとってしまったので、あとはリーチをかけたほうがよい局面があった場合に逃さないように意識を向けなければいけない。このあたりの考え方は見合いの数理だかナンパの法則だかと似たような感じですね。ここでは相手のアガリをつぶす効果が大きいのはいつなのかが判断材料の大半を占めるので、西尾の、愛澤のツモ切りでここかなと決断したが、どんなもんでしょう。

No.8【南2局】
 前局1000点出したので、ラス抜けターゲットの愛澤とは67差に。それでも高島か西尾がツモってくれれば、愛澤のオヤカブリで13・26圏内になるのでそれでもよし。そうそう都合の良いことは起こらず、流局。

No.9【南3局】
 ひけば一気にアタマまで突き抜けるドラタンキリーチ。もちろん、アガる気満々、だったわけではないがなにかの間違いでツモったときの保険。もう1本リーチ棒出すデメリットもほとんどないし・・・

No.10【南4局その1】
 あっという間の高島のアガリで、供託はかっさらわれた。これでツモは16・32条件になってしまったが、放銃してるとマンツモ圏外になってたので、まあよしとしよう。なんでも前向きに。

No.11【南4局その2】
 毎度毎度、芸がないけれどソウズに寄せていきます。ツモ切りが続きさすがにこの局で終わりかな、と思っていると西尾がテンパイとらずで高島に放銃。思わぬところで効果が表れた。とりあえず、もう1局延命できた。

No.12【南4局その3】
 のチーテンをとりました。牌譜を見ると、チーしたせいでマンガンツモを逃しているようで。牌姿だけなら、チーしないところだが、トップめの高島がわたしには120まで放銃しても大丈夫なリードなのでチーしてみるかと。この点差でドラがならかなり差し込みやすい状況なので、高島が2昇の愛澤にラスを食わせようとするなら露骨にできると期待してのチーテンだったが、を3枚並べられては観念するしかなかった。実際はも持っていなかったので、差し込む気がなかったのかどうかよくわからないが、とりあえずのまたぎぐらいは打ってみてもいいような気がするので、マイナスしてるラスめを助けるつもりはないってことだったのかな。


 これでまた△2に逆戻りとなってしまった。早く負債を返したいが、焦ってもいいことないというのがこの半荘に如実に表れている。これ以上傷口を広げないことが大事だが、この局の高島の選択から成績が縦に長くなっていくような気がする。そうならば、このポジションはすでに相当寒いのではないか。これがさらなる焦りを生んで泥沼に・・・とならないように戒めよう。

(文中敬称略)



第2節自戦記(15回戦B卓:小川 隆) 

No.1【東1局】
 愛澤が早々にドラアンコのテンパイ。のん気なオヤは堂々とロンパイを2度も打っての猪突猛進。
 久々の愛澤の手出しにやっと注意を向けると、静かにしていた西尾がその後を打ち出し、参戦を表明。未練ある手ハイでもなく、裏目のを引いたところで2人に委ねた。

No.2 【東2局その1】
 オヤが原点リーチ。これ自体は驚くことではないが、首位街道を突き進んでいる愛澤となれば、只事ではない。  12巡めにテンパイが入ってしまう。のトイツ落しの選択もあったが、マンガン級の手ハイ、アガリハイがオヤの現物にわくわくしてしまい、ふらりとを打ち出して御用となる。
 せっかく「リーチ」とテンパイを宣言している相手に対し、危険を察知してテンパイ直前に止めたハイを差し出すとは。止めずにツモ切っての放銃のほうがどんなに痛手が少ないであろうか。

No.3 【東2局その2】
 4巡めにチートイツのイーシャンテン。が、ここからが遅い。この日快走(連勝)している西尾に追い抜かれ、好調者らしく最後の高めをツモアガって同点トップに立つ。
 ちなみに西尾は14回戦までに4回のトップ。そして小川との対戦は5回あり、そのうち3回がトップである。くわばら、くわばら。

No.4 【東3局その1】
 ピンフのイーシャンテンからドラのを重ね、高得点が期待できると、容易には引き下がれなくなる。
 12巡め、ラスめの立場を利用して際どいをオヤの西尾にこっそり押してみる。すると、愛澤が合わせ打つ。次巡、テンパイとらずで田中がを合わせ打つ。さらに次巡もテンパイとらずで、西尾に放銃。
 最安値の1,800点ではあるが、3着めと差が縮まり、なおかつ局数が増えて不満なし。

No.5 【東3局その2】
 愛澤、タンヤオドラ1のカンが3メンチャンに変化。ここでは「リーチ」を選択しない。じっと構えてトップめの西尾から直撃する。テンパイ気配がなく、自分もロンパイを即ツモ切ってしまうだろう。危うく、想像を絶する世界に引き込まれるところだった。

No.6 【東4局】
愛澤62→西尾46→田中42→小川。
 2巡め、ドラをツモって少考。すでに1枚切れているペンをすっぱりと見限り、ドラを浮かして構える。
がアンコになったところで、最終形はドラのタンキ待ちを予期したが、先に引いてのシャンポン待ちでリーチを決行。
 3着めのオヤとの点差、そして手変わりの可能性をみて、ヤミテンの選択もあったのかもしれない。
結果は、ロンパイをうまくとらえてラスめ脱出。

No.7 【南1局その1】
 アガって迎えたオヤ番、田中のドラのツモ切りに動揺することもなく、調子に乗って真っ直ぐに手を進める。その甲斐あってか、誰も向かって来れず、一人打ち状態。最終ツモで最後のロンパイを引き当てた。

No.8 【南1局その2】
 小川30→愛澤 62→西尾66→田中。
 トップめに立ち、さらなる追加点を目指すが、西尾の仕掛けに受けざるを得なくなる。田中がションパイのをぶつけるが、イーシャテンから進まず。小川・愛澤はさっさと完全撤退。

No.9 【南2局】
 不届き者に理不尽なラスめを押しつけられた田中がツモ切りリーチとやってきた。変則的な切り出しに、チートイツが本線。現物以外は打ちづらく、その現物が前巡に品切れる。リーチ直前に西尾が打ったを頼りに合わせ、その後はツモ山に恵まれて窮地を逃れた。

No.10【南3局】
 愛澤が来た。終盤にドラのが打ち出され、赤い衝撃が走る。西尾が当然のようにポンテン。
 その西尾の9巡め、

 ここでそのままをツモ切っていると、3巡後にがアンコになって逸早くテンパイし、アガリがあるかのように見えるが、この時の手出しが。この場合、愛澤はを押すことはないだろう。本譜のツモ切りとは危険度が異なるから。
 一旦、イーシャンテンに戻した愛澤はすぐにタンキ待ちのテンパイに組み直し、西尾のをとらえた。

No.11 【南4局】
 小川04→愛澤104→西尾60→田中という僅差で迎えた南4局、自力決着のつもりでハイパイをとるが、厳しい。ツモに期待するが、愛澤のドラの打ち出しに戦意喪失。仕掛けられないようにハイを絞りたいところだが、恐くて安全ハイしか抜けなくなる。
 田中も愛澤も6組めのトイツを捕まえることができず、チートイツのイーシャンテンのまま流局した。

 

(文中敬称略)



第35期順位戦A級 第2節 星取表 (6月28・29日/東京)

選手名
開始前
9回戦
10回戦
11回戦
12回戦
13回戦
14回戦
15回戦
16回戦
終了時
順位
田中  実
△2
A 
A 
B 
B 
A 
B 
B 
B 
△2
7
小川  隆
2昇
A 
B 
A 
B 
B 
A 
B 
B 
3昇
2
村田 光陽
△3
B 
B 
A 
A 
B 
B 
A 
A 
△6
8
愛澤 圭次
1昇
B 
A 
A 
B 
A 
B 
B 
A 
4昇
1
成岡 明彦
1昇
A 
B 
B 
A 
B 
B 
A 
B 
±0
4
平井  淳
±0
B 
B 
B 
B 
A 
A 
A 
B 
±0
5
高島  努
2昇
A 
A 
A 
A 
A 
A 
A 
A 
2昇
3
西尾  剛
△1
B 
A 
B 
A 
B 
A 
B 
A 
±0
6
立会人:堀川 隆司/安田健次郎