
第39期順位戦A級 第1節
第1節観戦記:平井 淳
今年もまた、順位戦の戦いが始まった。一戦一戦は長い苦しい戦いであるが、1年間の戦い35回の半荘は短い。それゆえ、スタートダッシュが良ければうれしく、少なくとも無難なスタートができれば胸をなでおろすのである。選手は皆、「今年は1昇を上げることができるのか、否アガリを獲ることができるのか」と不安を持って卓につく。ましてや、A級初参戦の藤森は相当緊張したことであろう。彼の最初の半荘はノーホーラ、ノーホウジュウである。更にツモられることもなく彼のチョーマが動くことはなかった(その所は、藤森の自戦記を参照ください)。
もう一人の昇級者は山田である。2015年にA級を経験し、彼もまた日帰りを余儀なくされた一人となった。(日帰り=1年でB級への降級)その後1年間休会したが、2017年に復帰すると藤森と同昇の2位で昇級を果たした。第1節は帰ってきた男山田を中心に見ていくこととした。
◆◆◆ 1回戦A卓 ◆◆◆
〈(起家から以下同)成岡・亀井・山田・西尾〉
東1局(ドラ





















これでラスの心配がなくこの半荘を進めることができるであろう。
東2局には亀井16→西尾があり、東3局、東4局が流局した南1局(ドラ
















この半荘はこのまま終局するが、南3局(ドラ

















◆◆◆ 1回戦B卓 ◆◆◆
〈小川・田中・藤森・愛澤〉
田中が東2局の18(愛澤)と南2局の52(小川)でトップを決めた半荘であるが、藤森が最初のチャンスを逃している。
東1局(ドラ




















◆◆◆ 2回戦A卓 ◆◆◆
〈西尾△1・田中1昇・小川△1・成岡0〉
小川が田中からの30で一歩抜け出していた東3局その2に小川にドラ入りチートイツが入る。待ちは地獄マチの


◆◆◆ 2回戦B卓 ◆◆◆
〈亀井1昇・山田0・藤森0・愛澤0〉
東2局(ドラ
















南3局に山田がタンヤオでドラタンキをツモリ愛澤を一旦とらえるが、南4局その1で愛澤の6巡目の


南4局その2(ドラ

ここで山田にもチャンスはあった。13巡目に















◆◆◆ 3回戦A卓 ◆◆◆
〈小川0・愛澤1昇・亀井1昇・西尾△1〉
東3局その2(ドラ




僅差とはいえトップ目に立った。細かいやり取りがあったが黒棒1本のリードで南4局を迎え2連勝目前とした愛澤であったが、小川のピンフに交わされてしまう。この辺から愛澤の苦悩が始まった。
◆◆◆ 3回戦B卓 ◆◆◆
〈山田0・藤森△1・成岡△1・田中1昇〉
東3局(ドラ



















南3局(ドラ




















南4局を迎えて3着目藤森△49、ラス目田中△73の24差。オヤ・田中の入れたテンパイは

















◆◆◆ 4回戦A卓 ◆◆◆
〈山田0・藤森△1・小川1昇・西尾△2〉
昨年最終節を降級ポジションで迎えながら、底力をみせ残留した西尾であるが、今年のスタートは苦しいものとなった。その西尾の苦しさが滲み出た半荘となった。それとも△2が引き寄せる展開なのであろうか。
東3局(ドラ

















ラス目で迎えた南1局にはドラの






更に逆流が西尾を襲う。南2局に山田へ32をホウジュウしたラス目に落ちた小川が次局タンヤオポンテンの






南4局【牌譜4】、まぁアガれることは無かっただろうが、藤森のツモ直リーチに捕まってしまう。この点差でリーチを掛けられてしまうことが舐められてるというか、藤森が強気というかなんとも言えない。しかしこの点差、配牌で山田の第1打は

◆◆◆ 4回戦B卓 ◆◆◆
〈成岡0・亀井1昇・愛澤1昇・田中1昇〉
田中の好調さと成岡の空回りが顕わになる半荘であった。
東1局、成岡のピンフツモでスタートするが、その2で田中の8巡目ホンイチチーシャンテンで捲られてしまう(13・26)。
そのまま流局した南1局に成岡が5巡目にドラ入りリャンメンマチをリーチするも田中に危険牌を引かせられないまま再び13・26を引かれてしまう。リーチ棒の為とはいえ東1局に32のリードを得た者がラス目に落ちてしまった。
3着目亀井と32差で迎えた南4局の成岡5巡目に上家田中から




















◆◆◆ 5回戦A卓 ◆◆◆
〈小川1昇・成岡△1・亀井1昇・藤森△1〉
藤森への16でラス目に落ちていた小川が、南1局のオヤ番で14巡目に高めイーペイコウのリーチを放ち最終ツモで安め

















しかし、流局を挟んだ南3局に藤森が欲を出す。12巡目に




















◆◆◆ 5回戦B卓 ◆◆◆
〈山田1昇・西尾△3・愛澤1昇・田中2昇〉
西尾の苦悩は続く。東2局のオヤ番でドラ3リーチをツモるが好調田中が追ってくる。
南4局を迎えて、西尾36→田中100→山田02→愛澤。その西尾に第1ツモでイーシャンテンが入る。


















南4局その2【牌譜5】、山田の切り出しに注目願いたい。自力決着を目指したのだろう。僅か02の差であり、愛澤の上家はラスの心配がなくひたすらハネツモを目指す西尾である。仕方がないとするのか、迎えた結果を反省するのか。ただ、4回戦南4局の第1打

兎に角ここでは愛澤が山田に助けられた。
◆◆◆ 6回戦A卓 ◆◆◆
〈愛澤1昇・成岡△1・小川1昇・山田1昇〉
東1局、山田への16ホウジュウで躓いた小川ではあるが、次局6巡目のドラ1リーチをツモあがりトップ目に立つ。
流局で迎えた東4局(ドラ

先ずは成岡の3巡目が注目で、ドラそばの








山田の4・8、小川の10オール、成岡の20(小川)、山田の6オールとチョーマは動くが、愛澤のラス目が動かずオーラスその2となる。
南4局その2(ドラ

























山田、針の穴のトップを死守した。
◆◆◆ 6回戦B卓 ◆◆◆
〈藤森△2・西尾△3・田中3昇・亀井2昇〉
小場で動いた半荘で、南3局を迎え、西尾13→田中18→藤森25→亀井。初日が欲しい西尾であったが、中盤に打った

◆◆◆ 7回戦A卓 ◆◆◆
〈亀井1昇・山田1昇・小川1昇・田中3昇〉
東3局に7巡目に筋を頼りに




































結果ツモアガリで三者並びとなるが、最後は小川が20オールで決めた。
◆◆◆ 7回戦B卓 ◆◆◆
〈愛澤0・西尾△4・藤森△1・成岡△1〉
この半荘は愛澤が積極的に前に出た。トンパツタンヤオのテンパイでドラ




















次局西尾に8巡目にテンパイが入る。
















これに廻った愛澤にテンパイが入りハイテイでツモリアガった(10オール)。西尾のリーチがなければアガれたのだろうか。愛澤にすればついてるのかついていないのかよく分からない展開であろう。
という流れの中、その2で藤森にテンパイが入る。

















その藤森が南3局のオヤ番でも40オールを決め、昇を0に戻した。
◆◆◆ 8回戦A卓 ◆◆◆
〈田中3昇・愛澤0・亀井0・山田1昇〉
東3局に亀井が田中の早いドラ入りチートイツに捕まった後の東4局に山田にチャンス手が来た。7巡目に




















そのまま迎えた南3局その1で愛澤は5巡目

南3局その2【牌譜8】、10巡目に亀井に

















この動きで亀井が








どうも田中には聞こえないようで、僅差で迎えた南4局にさも当然のように特急券

◆◆◆ 8回戦B卓 ◆◆◆
〈成岡△1・西尾△4・藤森0・小川2昇〉
トンパツに西尾は

その後も西尾はテンパイを入れるが漸くアガれたのは南1局。ピンフドラ3が入った小川からやっとロン牌がこぼれた。
アガリ2回で迎えたオーラス。ラス目小川に5巡目テンパイが入りヤミテンに構える。


































トップ目成岡の風前のともし火は10巡を耐えたとさ。
田中のスタートダッシュ、西尾の逆走に目がとらわれるが、愛澤の苦悩、藤森のリカバリー、成岡の迷走と結構な物語が第1節にはあった。長くて短い、否短くて短い戦いは後27戦である。
(文中敬称略)
第1節自戦記(3回戦B卓:山田 史佳)
久しぶりに戻ってきたA級。前に上がった時は何もできぬままあっという間に降級ポジションに押し込められ、日帰りとなってしまった。今期は何としてもそれだけは避けなくては、必死に食らいついてこの環境に身を置いて吸収し続けなくてはと思い対局室へと向かった。
自分の中で色々思い入れるものがあった第3回戦を自戦記として書きたいと思う。
No.1【東1局】
とはいえ意気込みくらいでアガれたら苦労はしない。親番ではあるものの自分以外の3人のやる気がすごい。田中の3巡目切りに合わせて
を切りやる気があるように見せかけるのが精一杯。いきなりどでかいのを親被らなくて良かったなとホッと一息。
No.2【東2局】
成岡の捨て牌からはやる気がムンムンの気配、こんな手牌じゃドラがトイツなりアンコなりならなきゃやる気になれんと思い場にめちゃ高なピンズのカンチャンを払っていくとなんとドラがトイツに。
これでちょっとはやる気が出たが藤森成岡が追いついてきた頃にまだイーシャンテンでダウン。
No.3【東3局】
8巡目、ピンズの形がや
なら迷わずテンパイに取ったが、その後自分の中でアガリが期待できそうだと思ったピンズのタメンチャンを目指してテンパイ取らず。
10巡目に待望のを引き入れ大興奮。のはずが、成岡がドラをアンカンしちょっとビビる。
しかしすぐにをたぐりよせ13・26。結果はアガリになったとはいえテンパイとらずは悠長すぎただろうか。
No.4【東4局】
チョーマも稼いだことだし、さて後は守備を固めて敗因を作らないようにしようとコソコソ。
ドラがトイツになったり手が進んだりするのはもちろん嬉しいのだが、こういう時にうまく他家を制したりアガリを取れるようになりたい。他家に利さないようにを切らずオリているのだが、その理由はチョーマを持っているトップ目だからという理由だけ。○○に
がトイツであるから、とか、○○にこの牌はこういう理由で切れないからとか、そういう明確な理由をもう少し持てるように打ちたいと思った1局。この手牌、ラス目だったらきっともう少し無理して親の字牌に合わせ打って10・20引いてるんじゃなかろうか。少しのリスクであれトップ目からわざわざ勝負を仕掛けていく理由は全くないのだが、ギリギリまで相手と肉薄していなくては今後の上達は望めないのかもしれないと思った1局だった。
No.5【南1局】
藤森、こちらから見ればポンテンのマンズのソバテンだと思った。を落として回れば決着は遅くなりこちらにもアガリ目が回ってくるだろうと思いつつ、
にくっついた時に飛び出すのは1枚も切られていないソーズの無筋。
2年前、河底牌で成岡に打った地獄のマチ120を思い出す。そして言われた「無筋で放銃するのがカッコ悪いと思ってへんか?安全そうだって理由で
切って120放銃するのはカッコ悪くないんか?」という言葉。
まだまだ、2年前からそんなに成長できてないみたいです。でもいつかは落として
を涼しい顔して叩きつけてやれるようになります。
No.6【南2局】
ファンパイのドラを切ってくる人がいて更にそれを叩き返す人がいたんじゃこれはもう勝負にならない。大人しく撤退。
No.7【南3局その1】
手が重い&とうていスピードで敵わないと見越してチートイツ一本に絞る。が、思った以上にスピードも打点も適わなかった。あっさりと40オールでクラクラ。
No.8【南3局その2】
せめてオーラスにマンツモ圏内におさめておきたいとは思いつつもそう上手くはいかないもの。藤森からの16で渋々アガルが、この16のせいで次局田中に活路を見出させてしまう。
No.9【南4局その1】
対局が終わったあとに田中に聞いた。「8オールにしておいてくれれば田中さんか藤森さんどっちかをラスにできたじゃないですか〜!」
田中「そうしたらラス目はゴリゴリ来ちゃうしラス引く可能性余計あがるでしょ、頑張って同点になるように打ったの」
おっしゃるとおり・・・。見事な調整。
No.10【南4局その2】
とかなんとか言っておいてちゃっかり60のテンパイいれて虎視眈々と上を目指す田中。恐ろしい男。注文通り周りに何もさせずキッチリ流局。さすが名翔位。
見返すと、ほんの少しだけ、違った視点でマージャンを見られるようになったのかな・・・と思った。反省点はまだまだ多いが、相手に食らいつきあらゆるものを自分の力にできるように精進していきたい。
(文中敬称略)
第39期順位戦A級 第1節 星取表 (4月28・29日/東京)
選手名
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開始前
|
1回戦
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2回戦
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3回戦
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4回戦
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5回戦
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6回戦
|
7回戦
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8回戦
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終了時
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順位
|
田中 実
|
S-0 | B ◎ | A − | B − | B ◎ | B ◎ | B − | A − | A ◎ | 4昇 | 1 |
愛澤 圭次
|
S-0 | B − | B ◎ | A − | B − | B − | A ● | B − | A ● | △1 | 7 |
成岡 明彦
|
S-0 | A − | A ● | B ◎ | B ● | A − | A − | B − | B ◎ | ±0 | 4 |
亀井 敬史
|
S-0 | A ◎ | B − | A − | B − | A ◎ | B ● | A ● | A − | ±0 | 5 |
西尾 剛
|
S-0 | A ● | A − | A ● | A ● | B − | B − | B ● | B − | △4 | 8 |
小川 隆
|
S-0 | B ● | A ◎ | A ◎ | A − | A − | A − | A ◎ | B ● | 1昇 | 2 |
藤森 弘希
|
S-0 | B − | B ● | B − | A − | A ● | B ◎ | B ◎ | B − | ±0 | 6 |
山田 史佳
|
S-0 | A − | B − | B − | A ◎ | B ● | A ◎ | A − | A − | 1昇 | 3 |