
第42期順位戦A級 第1節
初日観戦記/平井 淳|2日目観戦記/松井 秀成|自戦記|星取表
第1節初日観戦記:平井 淳
昨年の順位戦は波乱の幕開けであった。コロナ禍で開幕が遅れ8月の単日開催が第1節となり、その4戦を成岡が4連勝で飾った。そして成岡はそのまま1年を走り切り3度目の名翔位を勝ち取った。さて今年はどんな開幕になるのだろうか。
◆◆◆ 1回戦A卓 ◆◆◆
〈藤森・古川・小川・亀井〉
A卓では小川が好調を感じさせるスタートを切った【牌譜1】。
東1局では、ドラ



次局も小川は5巡目に役なしのノベタン待ちをテンパイし、7巡目にドラの


東3局は、亀井がドラ入りチートイツをテンパイするが、3者が丁寧に対応し流局する。
東4局、ラス目・古川にチャンスが訪れる。10巡目に、
















南1局は、亀井が8巡目にホンイチのチーテンを入れる。






























一方亀井の不調を象徴するのが南3局であろう。亀井の配牌は打してイーシャンテン。

































南4局は、当然のように亀井にテンパイが入るが、
















(◎小川/●亀井)
◆◆◆ 1回戦B卓 ◆◆◆
〈愛澤・成岡・西尾・田中〉
B卓の開局は、西尾が10巡目テンパイのピンフドラ1を最終ツモでロン牌を引き寄せた(7・14)。これによりいきなりラス目に落とされた愛澤であるが、次局7巡目に、


















テンパイは田中、西尾、愛澤の順であるが、愛澤の11巡目、



















南1局は、愛澤の4・8で01差のラス目に落とされた田中が8巡目にリーチとする。

































この放銃が次局の田中の決断を簡単にした。田中のテンパイは7巡目、

















流局で迎えた南4局は、全員がアガリに向かった【牌譜3】。愛澤は早いピンフのイーシャンテンであり、西尾は

その2は、【牌譜4】でお楽しみください。終局後成岡は


(◎田中/●成岡)
◆◆◆ 2回戦A卓 ◆◆◆
〈古川0・愛澤0・亀井△1・田中1昇〉
亀井は1回戦の不調を重く捉えたのだろうか。流局で迎えた東2局【牌譜5】、4巡目テンパイで10巡目にドラ跨ぎの





































南4局はこんな美味しい半荘はありませんと第一ツモでテンパった古川があっさりタンキマチを引きアガり、亀井の2連続ラスが確定した(3・6)。不調だからこうなるのか、それともこんなことが重なるから不調になるのか、亀井の悩みは底が深そうである。
(◎古川/●亀井)
◆◆◆ 2回戦B卓 ◆◆◆
〈藤森0・小川1昇・西尾0・成岡△1〉
小川の好調が続いているようだ。開局小川の配牌は、




















東2局は流局するが、東3局は西尾の早いピンフに成岡が捕まる(18)。ラス目は東1局にオヤカブリをした藤森で、未だ成岡は3着目に留まっている。
しかしその2では







それでも流局を挟んだ南1局。123のサンショクに纏めた成岡は役なしテンパイの西尾の打牌を捕らえて西尾と同点の3着目になった(28)。
南2局は藤森が6巡目に、


















次局同点2着目の3者は小川と110差であり、供託のリーチ棒の行方が気になる。その11巡目、成岡が場に1枚切れの



















その2で成岡は15巡目高目タンピンドラ1のテンパイを入れ、17巡目にサンショクへ手変わりを果たすとラスオヤでもありリーチとするが当然の流局。さて南4局に手が入るのだろうか。その成岡の配牌は、








































これでラス目藤森との点差は56となった【牌譜7】。注目は成岡の第1打と藤森の第1ツモである。村上流の第1打なのか2巡目以降であれば藤森はドラと


















(◎小川/●成岡)
◆◆◆ 3回戦A卓 ◆◆◆
〈藤森0・愛澤0・西尾0・古川1昇〉
東1局の藤森8オール、30(古川)、西尾5・10だけで迎えた南1局、古川の8巡目。
































(◎愛澤/●古川)
◆◆◆ 3回戦B卓 ◆◆◆
〈成岡△2・亀井△2・田中1昇・小川2昇〉
連続ラスの2人が同卓となった。これでどちらかの連敗は止まることになる。それが気休めになったかどうかは分からないが、起家の成岡にテンパイが入り、















しかし次局連勝スタートの小川の好判断がみられた。小川の4巡目、




















次局も小川は7巡目にテンパイする。






















そんな亀井に今期初のチャンス手が来た。東3局の配牌が、






























その後は南2局の田中のリーチはあったが、いずれも流局し南4局となった【牌譜8】。60差を捲くらなければいけない成岡は5巡目にシュンツから





(◎小川/●田中)
◆◆◆ 4回戦A卓 ◆◆◆
〈小川3昇・愛澤1昇・成岡△2・古川0〉
東3局までは空気も重たく流局するが、東4局3巡目、その空気がいきなり破られる。破ったのはまたも小川である。















その後も流局が続き南3局は愛澤が一手変わりサンショクのタンヤオをツモっただけ(5・10)で南4局を迎えた【牌譜9】。最初にテンパイを入れたのは小川でしっかりと役が付く方を引いている。次に成岡にテンパイが入るがトップ目小川との点差が45でツモっても変わらない。ラス目古川との差が35ではさすがにリーチもかけられないのでヤミにする。
次にテンパイが入るのはラス目古川。マチに自信があればリーチで抑えに行くこともあるが高目120が期待できるだけにこれもヤミにする(ノベタンでは高目78)。そして最後に16で捲くれる愛澤にテンパイが入る。ラスが怖くもあるが1昇を持っていることや小川のトップが許せないこともあったのだろうリーチ棒が飛んだ。これに対し、成岡は地獄マチなら小川からの出アガリも期待できるからか追いかけリーチとした。こちらは△2を背負うからであろう。結果は道中待ちを変えた小川が逃げ切った(10・20+供託20)。ただ、直前に置かれた古川の

(◎小川/●古川)
◆◆◆ 4回戦B卓 ◆◆◆
〈西尾0・藤森0・亀井△2・田中0〉
東1局、田中の西尾へのイーペイコー(タンキマチ)の放銃(24)で始まった。西尾は次局にもピンフをツモり(8オール)リードを広げる。その3は、ラス目田中が1回戦の再来を期しドラ

東3局、その田中はドラ




























そんな田中のドタバタに見たためか、次局亀井がこんな手でリーチをかけた。


















リーチ棒が残された南1局【牌譜10】。小四喜まで望める藤森はドラを引いたラス目田中からW
























田中とは28差となった亀井だが次局は下家・田中に第1打の

オヤ番の南3局は、2巡目にイーシャンテンとなるが、テンパイは12巡目。他三者の足止めもありリーチとするが流局。
南4局【牌譜11】も辛いものがある。亀井6巡目、

















亀井の憂いが深まっていく。
(◎藤森/●亀井)
第1節初日が終了した。昨年は成岡の4連勝。今年はその成岡が連敗スタートで小川が4連勝を果たした。昨年はコロナ禍の影響で単日開催であったため成岡のスタートダッシュが際立ったが今年は明日があるためまだわからない。ただ亀井が心配だ。
第1節2日目観戦記:松井 秀成
2021年6月6日(日)、第42期順位戦A級第1節2日目。去年は選手として戦った順位戦A級、降級した身分となり卓外から見ることになった。今の自分の考え方・捉え方など確認しつつ今年のA級戦の闘牌を伝えいきたいと思う。
今回の観戦記は、首位者のマージャンを見ようと、この依頼を貰ったときに思った。第1節1日目を終了して、小川選手の4連勝スタートとなった。今回の観戦記は、よっぽどのことがなければ小川選手を追っかけることになるだろう。小川選手を中心に名翔位レースを見ていきたいと思う(文中敬称略)。
◆◆◆ 5回戦B卓 ◆◆◆
〈小川4昇・古川△1・西尾±0・田中±0〉
東1局(ドラ




















小川が、昨日の調子をそのままにいくかと思われたが。この後、古川→西尾→田中の順番でアガリを決めていくことになる。
東4局【牌譜12】、ラス目となった小川に9巡目にピンフのテンパイが入る。














南2局、先ほどの小川がリリースしたリーチ棒の争奪戦がおきる。2巡目以内で古川・田中が役牌を喰ってスプリント戦の幕開け。6巡目に喰った西尾が、見るからにして喰いタンですよっていう12を田中からアガって供託をめぐったスプリント戦は西尾に軍配。結果として、このアガリが、決定打となった。
南4局【牌譜13】、並びが西尾25→古川14→田中33→小川である。小川と親の田中を逆転するには2ハン役なら点パネが必要だがあっさりと条件をクリアするテンパイを9巡目に入れる。





















(◎西尾/●小川)
◆◆◆ 6回戦A卓 ◆◆◆
〈亀井△3・愛澤2昇・小川3昇・西尾1昇〉
東4局と南1局、連続でアガり、トップ目の小川だが、まだ微差のトップ目といったところで迎えた南2局【牌譜14】、
































南3局(ドラ


















南3局その2【牌譜15】、





















南4局、去年は最後にラス抜けの手をあっさり成功させていた亀井でも、今年は元気なく何も起こらず4敗目となる。対象的に小川は、5回戦のラスをすぐに取り戻して4昇に星を戻した。
(◎小川/●亀井)
◆◆◆ 7回戦B卓 ◆◆◆
〈古川△1・西尾1昇・亀井△4・小川4昇〉
南2局【牌譜16】、古川4巡目にドラを早々に切る。その後に客風牌と中張牌を手出しされてはいつテンパイでもおかしくない。その中、亀井の7巡目。

















古川5巡目までの捨て牌が、





5巡目の













上手く、亀井がホンイチを先に完成させていれば、トップ目の古川からデバサイ(下記想定牌姿)で直撃できていたかもしれない。















ここまで、何とかトップ目を守ってきた古川の南4局【牌譜17】
















































南4局その2【牌譜18】、古川の7巡目、





















終盤にここまで潜めていた西尾から「ロン」が響き渡る。亀井から80をアガリ古川・小川を捲ってトップとなった。前局の暗示ではないけれど不思議なくらい、西尾に追い風が吹いたなと思った。
逆転された古川に、終了後「もったいなかったね」と。古川「ドラは切れないなぁ」と。同期として、去年まで同じリーグ遍歴できたけれど、今年は別のリーグで戦う古川の順位戦A級に期待している。
(◎西尾/●亀井)
◆◆◆ 8回戦B卓 ◆◆◆
〈愛澤1昇・小川4昇・西尾2昇・藤森0〉
東2局その2【牌譜19】、並びが小川42→西尾・愛澤42→藤森。ラス目の藤森が4巡目に勢いよくポンの声。
藤森の捨て牌が、




観戦子は、藤森の対面で見ていたが、この捨て牌を見せられたら、ポンテンもしくはポンイーシャンテン(好形ばかり)と想像してしまう。ここから4回手出しが入る、1回目の手出しがテンパイ打と仮定したらそのあとはスライドだろうかと妄想していると。4回目の手出しが手牌構成から考えにくそうな
















話はこの局の終盤に変わり、小川が詰まってしまう。

















東3局その2【牌譜20】、西尾の6巡目、


















東3局その3【牌譜21】、藤森が7巡目にドラの




































南1局その2、並びが西尾102→小川04→愛澤126→藤森。小川が攻勢にでたが、藤森のリーチに放銃してしまう。ただ、結果として藤森3着目が現実感のあるところにきたので動きを制限されたか。この後の藤森は、もう少し思い切って攻めても良さそうだったが、変わらない並びのまま決着となった。
(◎西尾/●藤森)
小川とは、普段から研究会などで良く知った関係である。今回の小川は普段より非常に大胆な読みと攻めの強い印象を持った。攻勢がかけられる展開が多かったかもしれないがテンパイを普段より積極的に組んでいる印象。また、同一メンツのリーグ戦ならではの打牌選択。私が、わからない選択肢でも、安全圏の使いわけが印象的だった。
1節目を終了してスコアは、小川4昇・西尾3昇・田中2昇・愛澤1昇という上位陣となった。一日目に小川の4連勝、二日目は、西尾が3昇と2人がやや目立つスコアである。
名翔位の成岡も△2(1―3)と最後に1つスコアを戻して挽回してくるに間違いない。上位陣が4者とも名翔位経験者でこれを成岡現名翔位が追いかける模様であり、第2節目以降も楽しみである。
第42期順位戦A級 第1節 星取表 (6月5・6日/東京)
選手名 |
開始前 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
終了時 |
順位 |
成岡 明彦 |
S-0 |
B ● | B ● | B − | A − | A ● | B − | A − | A ◎ | △2 | 6 |
愛澤 圭次 |
S-0 |
B − | A − | A ◎ | A − | A ◎ | A − | A ● | B − | 1昇 | 4 |
亀井 敬史 |
S-0 |
A ● | A ● | B − | B ● | A − | A ● | B ● | A − | △5 | 8 |
小川 隆 |
S-0 |
A ◎ | B ◎ | B ◎ | A ◎ | B ● | A ◎ | B − | B − | 4昇 | 1 |
藤森 弘希 |
S-0 |
A − | B − | A − | B ◎ | A − | B ● | A − | B ● | △1 | 5 |
古川 大樹 |
S-0 |
A − | A ◎ | A ● | A ● | B − | B − | B − | A ● | △2 | 7 |
田中 実 |
S-0 |
B ◎ | A − | B ● | B − | B − | B ◎ | A ◎ | A − | 2昇 | 3 |
西尾 剛 |
S-0 |
B − | B − | A − | B − | B ◎ | A − | B ◎ | B ◎ | 3昇 | 2 |
立会人:山内 啓介