第42期順位戦A級 第1節

 初日観戦記/平井 淳2日目観戦記/松井 秀成|自戦記|星取表

第1節初日観戦記:平井 淳

 昨年の順位戦は波乱の幕開けであった。コロナ禍で開幕が遅れ8月の単日開催が第1節となり、その4戦を成岡が4連勝で飾った。そして成岡はそのまま1年を走り切り3度目の名翔位を勝ち取った。さて今年はどんな開幕になるのだろうか。


◆◆◆ 1回戦A卓 ◆◆◆

〈藤森・古川・小川・亀井〉

 A卓では小川が好調を感じさせるスタートを切った【牌譜1】
 東1局では、ドラでネックとなるカンがチートイツをテンパイしている上家・古川から切り出され、これを鳴けると次巡古川はドラを引き、当然のマチカエで小川はもポンでき(テンパイ)、最後も古川が仕上げてくれた(28)。

 次局も小川は5巡目に役なしのノベタン待ちをテンパイし、7巡目にドラのを引かされるが8巡目にもが積まれておりビックリの10・20でリードを広げた。

 東3局は、亀井がドラ入りチートイツをテンパイするが、3者が丁寧に対応し流局する。

 東4局、ラス目・古川にチャンスが訪れる。10巡目に、
のテンパイを入れる。同点2着目まで38差でトップ目小川まで116差である。高目一撃を期待してリーチの選択もあったかと思えたが、古川の選択はダマテンで次巡安目のをツモアガった(13・26)。小川は開けられた手牌を見て胸をなでおろしたであろう。

 南1局は、亀井が8巡目にホンイチのチーテンを入れる。
 
 これに対し、既にテンパイしていた小川は、
ワンズも字牌も引かず、ハイテイでを引き寄せその好調さを見せしめた(7・14)。

 一方亀井の不調を象徴するのが南3局であろう。亀井の配牌は打してイーシャンテン。
 今局こそはと思っただろうが、3着目藤森も打してイーシャンテンであった。
 その藤森の第2ツモがで早くもテンパイする。そして亀井のツモはで一度は手に止められた藤森のロン牌は5巡目にして河に置かれた(16)。

 南4局は、当然のように亀井にテンパイが入るが、
必然のように流局した。
(◎小川/●亀井)



◆◆◆ 1回戦B卓 ◆◆◆

〈愛澤・成岡・西尾・田中〉

 B卓の開局は、西尾が10巡目テンパイのピンフドラ1を最終ツモでロン牌を引き寄せた(7・14)。これによりいきなりラス目に落とされた愛澤であるが、次局7巡目に、
で上家から切られたに反応しテンパイを取った。テンパイ打牌はでこの選択は正しくをツモってあっさりとラス抜けを果たした(3・6)。これに手応えを感じたのか愛澤が東3局の一押しを入れてアガリをものにした【牌譜2】
 テンパイは田中、西尾、愛澤の順であるが、愛澤の11巡目、
ここは、イッツーを諦め通っている打とするが次巡が切れると14巡目にテンパイを果たす。が、16巡目のツモがでは撤退やむなしかと見ていると愛澤は少考を入れこれを押し、次巡これをツモアガった(7・14)。愛澤は、東4局もサンショクが崩れる安目を引くとカンチャンを外してピンフをツモアガる。なんとも愛澤らしく盤石の流れに思えた。

 南1局は、愛澤の4・8で01差のラス目に落とされた田中が8巡目にリーチとする。
愛澤が現物のを切ると成岡が長考に入った。
 意を決した成岡が「チー」と発声すると田中のツモがで成岡がこの局を制した(12+供託10)。なおは1枚も切られていない。

 この放銃が次局の田中の決断を簡単にした。田中のテンパイは7巡目、
何の迷いもなくリーチを打つ。ただしアガれる気はしていなかっただろう。しかしは上山に並べて置かれており前局の成岡の必死のリーチ蹴っ飛ばしは簡単に蹴っ飛ばし返された(10・20)。

 流局で迎えた南4局は、全員がアガリに向かった【牌譜3】。愛澤は早いピンフのイーシャンテンであり、西尾はが4枚使いで如何様にでもオリれる。これが田中の手牌と合致し田中が2局でトップ目へ躍り出た(60)。

 その2は、【牌譜4】でお楽しみください。終局後成岡はタンキが本筋であると悔やんでいたがヤミならタンキは当然としてリーチの場合は観戦子にはわかりません。ただ、135差がこのリーチを誘い、マチ選択が天国と地獄を分け、今日の成岡の苦戦を予想させた。
(◎田中/●成岡)



◆◆◆ 2回戦A卓 ◆◆◆

〈古川0・愛澤0・亀井△1・田中1昇〉

 亀井は1回戦の不調を重く捉えたのだろうか。流局で迎えた東2局【牌譜5】、4巡目テンパイで10巡目にドラ跨ぎのが押せずにを抜くと、
次のツモがタラレバのである。更に前局の今半荘最初のアガリ(古川3・6)で迎えた南3局【牌譜6】、8巡目、
マチではアガれないと判断したのだろうか、打としこの半荘2回目のアガリ逃しをする。その結果は残酷で、古川の20・40をオヤカブリしてしまう。

 南4局はこんな美味しい半荘はありませんと第一ツモでテンパった古川があっさりタンキマチを引きアガり、亀井の2連続ラスが確定した(3・6)。不調だからこうなるのか、それともこんなことが重なるから不調になるのか、亀井の悩みは底が深そうである。
(◎古川/●亀井)



◆◆◆ 2回戦B卓 ◆◆◆

〈藤森0・小川1昇・西尾0・成岡△1〉

 小川の好調が続いているようだ。開局小川の配牌は、
 第一ツモでを持ってくると打とする。後は(9巡目)、(13巡目)と引いてハイテイ牌ので仕上げた(20・40)。

 東2局は流局するが、東3局は西尾の早いピンフに成岡が捕まる(18)。ラス目は東1局にオヤカブリをした藤森で、未だ成岡は3着目に留まっている。

 しかしその2ではトイツ、ドラトイツのイーシャンテン維持で手の中に「」があり、を打ち出すと藤森のタンピン(20)に捕まってしまう。決して安牌と思って切っているのではないだろうが感触の悪さを感じるであろう。これでラス目へ降着である。

 それでも流局を挟んだ南1局。123のサンショクに纏めた成岡は役なしテンパイの西尾の打牌を捕らえて西尾と同点の3着目になった(28)。

 南2局は藤森が6巡目に、
をテンパイすると、次巡成岡の手出しを見てツモ切りリーチとした。オヤ・小川の第1打がでヤマにある感触を得たのであろう。ツモれれば小川と同点トップ目である。しかもリーチ棒を出しても西尾、成岡と並んで△30の同点2着目である。しかしながらこのは西尾の配牌にアンコで、あと1枚は王牌に眠っていた。

 次局同点2着目の3者は小川と110差であり、供託のリーチ棒の行方が気になる。その11巡目、成岡が場に1枚切れのをアンコにして打とするとオヤ・西尾からロンの発声が(48)。
 成岡は少し首を傾げたようであった。

 その2で成岡は15巡目高目タンピンドラ1のテンパイを入れ、17巡目にサンショクへ手変わりを果たすとラスオヤでもありリーチとするが当然の流局。さて南4局に手が入るのだろうか。その成岡の配牌は、
でも引ければ夢が広がる配牌である。成岡のツモはと6巡目にはイーシャンテンとなった。タンピンドラ1を理想形としていれば幾分不満も残るが贅沢は言えない。その後のツモはで一躍リーチである。
そして第1ツモが。致し方ない。とにかくロン牌を引くだけだ。17巡目漸くを引き当てた(26オール)。

 これでラス目藤森との点差は56となった【牌譜7】。注目は成岡の第1打と藤森の第1ツモである。村上流の第1打なのか2巡目以降であれば藤森はドラとを天秤にかけ動いたのであろうか。正確なところは分からないがそれではアガリは無かったようである。藤森の8巡目、
充分形とする。10巡目、サンショクの崩れるテンパイであるが無問題。リーチである。16巡目藤森はを引き寄せ、成岡の憂いも亀井に並ぶものとなった(13・26)。
(◎小川/●成岡)



◆◆◆ 3回戦A卓 ◆◆◆

〈藤森0・愛澤0・西尾0・古川1昇〉

 東1局の藤森8オール、30(古川)、西尾5・10だけで迎えた南1局、古川の8巡目。
で古川の判断はのアンカン。リンシャン牌がで打とした。次巡のツモがで当然の打だが、更にがやってくる。藤森32→西尾25→愛澤30→古川。場にはが1枚が2枚でからはドラ表示と古川が切ったが2枚である。大人しくツモでトップ目まで抜ける打もあったが古川は打とした。これが直前にのノベタンからを引いてピンフに変化していた愛澤にストライクとなり愛澤がトップ目へ抜けた(80)。その後古川がリーチツモドラ3で追いかけるが、4者の着順は変わらなかった。
(◎愛澤/●古川)



◆◆◆ 3回戦B卓 ◆◆◆

〈成岡△2・亀井△2・田中1昇・小川2昇〉

 連続ラスの2人が同卓となった。これでどちらかの連敗は止まることになる。それが気休めになったかどうかは分からないが、起家の成岡にテンパイが入り、
 ツモアガリで今期初のリードを果たした(10オール)。

 しかし次局連勝スタートの小川の好判断がみられた。小川の4巡目、
ツモ切りも一手であろうが小川は打とチートイツに決めた。ドラがであることも理由であろう。すぐにをツモってテンパイするとその後を連続してツモりトップ目に出た(8・16)。

 次局も小川は7巡目にテンパイする。
11巡目にを引き既にを切っていたため打とすると次のツモがでツモ切り。更にを引くと河にを切っていることから打とマチを変えた。これに捕まったのが亀井で28の放銃となった。小川の手牌を見てなんと思ったのか、せめてオヤカブリの方がショックが少なかったのでは。いずれにせよ小川にはアガリが押し寄せているようだ。

 そんな亀井に今期初のチャンス手が来た。東3局の配牌が、
 これが9巡目には、
となり、10巡めの田中のにポンテンを掛けると即で田中からが打ち出された(120)。今度は田中が「勘弁してよ」の気分であろう。24差であるがこれで亀井がトップ目である。

 その後は南2局の田中のリーチはあったが、いずれも流局し南4局となった【牌譜8】。60差を捲くらなければいけない成岡は5巡目にシュンツからをツモ切ってドラそばのを残すが結局リーチのマチはを選んだ。シャンポンマチの選択もあるが28の出アガリに意味がないので、そこはヤマ読みの結果であろう。これが幸いしたのが小川である。田中のリーチが入れば(17巡目)さすがに成岡も小川のにロンを掛けねばならない。結果は腹をくくった小川の勝利であった(16+供託20)。亀井は本半荘2度目の「勘弁してよ」だろう。
(◎小川/●田中)



◆◆◆ 4回戦A卓 ◆◆◆

〈小川3昇・愛澤1昇・成岡△2・古川0〉

 東3局までは空気も重たく流局するが、東4局3巡目、その空気がいきなり破られる。破ったのはまたも小川である。
不幸を背負ったのはオヤ・古川であった(40)。

 その後も流局が続き南3局は愛澤が一手変わりサンショクのタンヤオをツモっただけ(5・10)で南4局を迎えた【牌譜9】。最初にテンパイを入れたのは小川でしっかりと役が付く方を引いている。次に成岡にテンパイが入るがトップ目小川との点差が45でツモっても変わらない。ラス目古川との差が35ではさすがにリーチもかけられないのでヤミにする。
 次にテンパイが入るのはラス目古川。マチに自信があればリーチで抑えに行くこともあるが高目120が期待できるだけにこれもヤミにする(ノベタンでは高目78)。そして最後に16で捲くれる愛澤にテンパイが入る。ラスが怖くもあるが1昇を持っていることや小川のトップが許せないこともあったのだろうリーチ棒が飛んだ。これに対し、成岡は地獄マチなら小川からの出アガリも期待できるからか追いかけリーチとした。こちらは△2を背負うからであろう。結果は道中待ちを変えた小川が逃げ切った(10・20+供託20)。ただ、直前に置かれた古川のを古川自身はどう思っているのだろうか。高目の枚数は見えているだけで言うとノベタンなら2枚ピンフなら1枚である。
(◎小川/●古川)



◆◆◆ 4回戦B卓 ◆◆◆

〈西尾0・藤森0・亀井△2・田中0〉

 東1局、田中の西尾へのイーペイコー(タンキマチ)の放銃(24)で始まった。西尾は次局にもピンフをツモり(8オール)リードを広げる。その3は、ラス目田中が1回戦の再来を期しドラのペンチャンマチリーチを掛けるが今回は流局した。

 東3局、その田中はドラを2枚持ち仕掛けるが、
 
これが既にテンパイしていた藤森に捕まってしまう(28)。

 そんな田中のドタバタに見たためか、次局亀井がこんな手でリーチをかけた。
 西尾18→藤森38→亀井62→田中の点差を考えると?しか湧かない。オヤの田中を牽制し、主導権を取られたくなかったのだろうか。このリーチにより藤森のアガリが阻止されたようであるが亀井の手元にはは訪れなかった。

 リーチ棒が残された南1局【牌譜10】。小四喜まで望める藤森はドラを引いたラス目田中からWを鳴けた。しかしこの動きで亀井にテンパイが入る。
 さすがにこのツモには手応えを感じたであろう。河も程よくできている。そのため2枚目のが止まる訳もない。は藤森の2枚目打もあり押したようだが次もはどうなんだろう(80)。ポンの手出しはである。ここ数年の亀井はこんなテンパイでもは切らなかった。それだけ今日のスタート2連敗は亀井にフラストレーションを与えていたようだ。この2局の亀井には不安しか覚えない。

 田中とは28差となった亀井だが次局は下家・田中に第1打のをポンされる。田中がソウズに寄せたためワンズターツを落とさざる得ずアガリを逃す。

 オヤ番の南3局は、2巡目にイーシャンテンとなるが、テンパイは12巡目。他三者の足止めもありリーチとするが流局。

 南4局【牌譜11】も辛いものがある。亀井6巡目、
亀井はを選んだがたとえ何を切ってテンパイ止まりであったようだ。

 亀井の憂いが深まっていく。
(◎藤森/●亀井)


 第1節初日が終了した。昨年は成岡の4連勝。今年はその成岡が連敗スタートで小川が4連勝を果たした。昨年はコロナ禍の影響で単日開催であったため成岡のスタートダッシュが際立ったが今年は明日があるためまだわからない。ただ亀井が心配だ。


第1節2日目観戦記:松井 秀成

 2021年6月6日(日)、第42期順位戦A級第1節2日目。去年は選手として戦った順位戦A級、降級した身分となり卓外から見ることになった。今の自分の考え方・捉え方など確認しつつ今年のA級戦の闘牌を伝えいきたいと思う。
 今回の観戦記は、首位者のマージャンを見ようと、この依頼を貰ったときに思った。第1節1日目を終了して、小川選手の4連勝スタートとなった。今回の観戦記は、よっぽどのことがなければ小川選手を追っかけることになるだろう。小川選手を中心に名翔位レースを見ていきたいと思う(文中敬称略)。


◆◆◆ 5回戦B卓 ◆◆◆

〈小川4昇・古川△1・西尾±0・田中±0〉

 東1局(ドラ)8巡目に小川が原点リーチとする。
 好調者の小川が力強いリーチである。を4枚使いとしたリャンメン待ち。入り目がなのだが観戦子はイーシャンテン時に原点リーチするならツモだけかと思っていただけに積極的な小川の選択には良い意味で裏切られた。「これは結果がついてくるでしょう」と心の中で思っていたけど、観戦子の位置から十分にあるは小川のツモ牌に現れることはなく流局した。 

 小川が、昨日の調子をそのままにいくかと思われたが。この後、古川→西尾→田中の順番でアガリを決めていくことになる。

 東4局【牌譜12】、ラス目となった小川に9巡目にピンフのテンパイが入る。
 小川のテンパイ打牌を古川に喰われてしまう。喰いタンのような古川。古川の第1打がなので掴めばロン牌が出てくる可能性が高そうな小川の手。12巡目に小川が耐え切れずリーチとアピールをする。ここで観戦子としては、このリーチに先ほどとは逆に悪い意味で裏切られた思いなる。小川には、堂々と対峙して欲しかった。むしろこの状況(古川が前に出てくる)は好都合なはずなのに棒にふる行為かと思った。案の定に、そこまで来ていた魚が逃げていくかのように古川は後退し、ツモ牌にかけたけどアガリをものにすることはできなかった。

 南2局、先ほどの小川がリリースしたリーチ棒の争奪戦がおきる。2巡目以内で古川・田中が役牌を喰ってスプリント戦の幕開け。6巡目に喰った西尾が、見るからにして喰いタンですよっていう12を田中からアガって供託をめぐったスプリント戦は西尾に軍配。結果として、このアガリが、決定打となった。

 南4局【牌譜13】、並びが西尾25→古川14→田中33→小川である。小川と親の田中を逆転するには2ハン役なら点パネが必要だがあっさりと条件をクリアするテンパイを9巡目に入れる。
 
 ワンズのリャンカン形どちらを選択しようとも間違いなんかあるわけがない。ただ、全体の捨て牌(テンパイ時)にワンズはが1枚・が2枚だけでほぼ情報がない。柔軟に構えるならカン待ちで良いと思っていたが小川の選択はカンだった。微差でトップを狙う古川からこぼれることも期待してか。次巡のツモはであったけど、こんなことはよくあること。フリテンのテンパイも選択できるが、このままでの続行に。そして、ツモにくるは必然なのか。対局後、小川に最終局のことをそれとなく聞いてみると、「最初の待ち形はしかたないとして次のには待ち変えしないとね。むしろ、あまりにも直後だったので手拍子で捨ててしまったのは失敗」と。ただ、その表情には余裕があるように思えた。
(◎西尾/●小川)



◆◆◆ 6回戦A卓 ◆◆◆

〈亀井△3・愛澤2昇・小川3昇・西尾1昇〉

 東4局と南1局、連続でアガり、トップ目の小川だが、まだ微差のトップ目といったところで迎えた南2局【牌譜14】
この牌姿が4巡目に入るのだから今節の小川は手が入っている。ほどなくしてツモ、不満があるというと贅沢だが。ドラ表示牌待ちのカンチャンでは最悪な形と後ろにいながら思う。だが、贅沢は敵というわけではないけれど取るに決まっている。この状況で、対抗したのが愛澤。
 小川の最終打牌に打でテンパイ取りは、非常に力強い。手は役ナシだが親であるのでテンパイ取りとした。だが、このあとに引いたツモで手を崩した。ギリギリに攻めたい観戦子としては、小川のテンパイ後にを亀井が捨てていること、捨てた手前、愚形を考慮するけれどツモ切りそうである。愛澤は、ここでは見合いがとれないと降参し撤退した。どちらにしても、流局の結果には変わらないけど瀬戸際のバランスを感じた。

 南3局(ドラ)、並びは小川32→亀井12→愛澤08→西尾。
 小川5巡目にテンパイ。なら決まり手、でも文句は言わない。ただ、は少し考えそうだと思った。ロンされて亀井・愛澤がラス目になることは歓迎しそうだろう。トップ目からはラス親が4着目ほど面倒と思うことはないだろう。何ふり構わずくるのが親だと自身の立場も怪しくなるだろう。それが、微差の4着目からホームラン級なアガリはとても嫌な気分になりそうなので西尾からは…と考えている間に、亀井からをロンした。勝手な取り越し苦労であった。

 南3局その2【牌譜15】
  
 愛澤、6巡目のテンパイである。カンは、河に1枚と小川の手牌に2枚が観戦子から見えているので、このままでは愛澤のアガリが苦しいと思った。だが、をツモってきたことによりのタンキへ待ち変え。同巡内に亀井の打ちを見てか待ち変更は、アガリの期待が増すように思えた。実際、直後に小川が山越のには、ハラハラした。これって、大惨事になるかと思ったけど後は上手いこと三者が対応した。ただ、愛澤は最終ツモ前にツモってくる。待ち変えでハネマンのテンパイにもなるけど、ここは初志貫徹した。最終ツモで2枚同じ牌が並んでしまう結果。こういう時って、座っている感触というものが大切だろう。牌譜上、どちらもあと1枚あるが、非常に勿体無い結末であった。

 南4局、去年は最後にラス抜けの手をあっさり成功させていた亀井でも、今年は元気なく何も起こらず4敗目となる。対象的に小川は、5回戦のラスをすぐに取り戻して4昇に星を戻した。
(◎小川/●亀井)



◆◆◆ 7回戦B卓 ◆◆◆

〈古川△1・西尾1昇・亀井△4・小川4昇〉

 南2局【牌譜16】、古川4巡目にドラを早々に切る。その後に客風牌と中張牌を手出しされてはいつテンパイでもおかしくない。その中、亀井の7巡目。
 亀井の選択は、ドラを内包しチャンタ志向としている。ただ、ここでの亀井の選択は古川に危険である。なら、ここはドラ含みのペンチャン外しで一色役志向が安全性の観点からも有効な選択肢にも入ってくる。ドラのは古川の現物だし、は古川にほぼ安全そうである。
 古川5巡目までの捨て牌が、。  
 5巡目のの手出しがあるので、そこまでに捨てられた牌は不要牌だろう。のような中ぶくれ形があるようなら切りが否定しているように思える。の形は、ドラなのでこれも可能性が低いと思える。簡単な考察だが、あるとしたらの形からドラを捨てたのでないかと推測できそう。
 上手く、亀井がホンイチを先に完成させていれば、トップ目の古川からデバサイ(下記想定牌姿)で直撃できていたかもしれない。
 

 ここまで、何とかトップ目を守ってきた古川の南4局【牌譜17】
 3巡目の手順が面白い。リャンカンの形から打ちに。チートイツとするには疑問もある牌姿であるがこの感性がものいうのかと思ったけど。5巡目に予想に反してのトイツに手をかけてしまう。案の定か知らないけれど、あそこでを選択できる人なら寄り道なしで行けそうなチートイツを取りこぼしてしまう。待ち取りは千差万別だろけど待ち(想定A)になりそうなので、被害者が西尾になる。
 また、牌譜を見直してみると先にチートイツになる(想定B)もある。
 この局の結果は、ラス抜けのテンパイを入れていた亀井が、小川に18をロンされてしまう。連荘となる洗牌の中、古川のトップは危うそうかな…西尾が助かった局だと映った。

 南4局その2【牌譜18】、古川の7巡目、
 リャンメン形3つから何切るである。ドラがであり、5連続形のピンズと比較してしまうとリャンメンターツ崩しの選択がフツーだ。実際、気持ちとして凄くわかるし選択しづらいかもしれない。ここは、ゲーム的にもドラを選んで欲しかった。ドラをみせることで西尾からも支援が貰えるかもしれない。アガリ率が一番高い選択がここでは正着ではないだろうか。すぐにツモでテンパイ後、直後に打たれる(西尾から)…あとに残るのは、一生完成しそうもないリャンメン形の
 終盤にここまで潜めていた西尾から「ロン」が響き渡る。亀井から80をアガリ古川・小川を捲ってトップとなった。前局の暗示ではないけれど不思議なくらい、西尾に追い風が吹いたなと思った。

 逆転された古川に、終了後「もったいなかったね」と。古川「ドラは切れないなぁ」と。同期として、去年まで同じリーグ遍歴できたけれど、今年は別のリーグで戦う古川の順位戦A級に期待している。
(◎西尾/●亀井)



◆◆◆ 8回戦B卓 ◆◆◆

〈愛澤1昇・小川4昇・西尾2昇・藤森0〉

 東2局その2【牌譜19】、並びが小川42→西尾・愛澤42→藤森。ラス目の藤森が4巡目に勢いよくポンの声。
 藤森の捨て牌が、である。
 観戦子は、藤森の対面で見ていたが、この捨て牌を見せられたら、ポンテンもしくはポンイーシャンテン(好形ばかり)と想像してしまう。ここから4回手出しが入る、1回目の手出しがテンパイ打と仮定したらそのあとはスライドだろうかと妄想していると。4回目の手出しが手牌構成から考えにくそうなが出てきてパニック。恐る恐る、12巡めの藤森の手牌をのぞき込む…
 
 藤森の捨て牌にあると見比べて、「これって、テンパイしてませんか」と思う。アガリそうもない小三元やドラをトイツにしないと触手が動かないのか。また、高打点志向なら2巡目のはと聞きたいことが山積み。
 話はこの局の終盤に変わり、小川が詰まってしまう。と選択したが、危険すぎはしないか。藤森が最初から一色手志向なら、こんなテンパイが入っていたかもしれない。
 
 でも、この場合は2巡目のがないので、さすがに小川はを捨てるだろう。ただ、藤森のツモ捨ての間に間違ってが帰郷していたらと思うとゾッとする。

 東3局その2【牌譜20】、西尾の6巡目、
 
 前局に60のアガリをしてトップ目となっていた西尾、ここで加点できれば駄目押しとなるチャンスである。ただ、のリャンメンターツはフリテン。あえて、残した形だが小川の6巡目のは喰えるはずはない。ただ、次のは喜んで喰いをいれる。ブクブクとしていた愛澤、小川の捨て牌をスルーしている状況でもあり放銃となってしまった。これで、西尾120浮きのリードと広げる。

 東3局その3【牌譜21】、藤森が7巡目にドラのをアンカンするが、いかがだろう。
 ここから何を切るである。相当迷うだろう、今牌譜を眺めるとカンの選択肢もなくはないだろう。ただ、この局面で藤森は場風牌を捨てた後なので次の手出しは慎重になりたいところ。また、は浮かせておいても機能性は良いので他を選択したいところ。消去法で、ワンズとソーズは選択したくないのでピンズのから。正解というわけではないが、タンヤオ志向のにしておくと以下のアガリ想定がありそうであるが、超難問だろう。
 
 この局の12巡目小川がのツモ切りをする。観戦している最中は、何が見えているか理解できなかった。対局後にすぐに聞いてみると、「藤森がテンパイしていない」と言う。尖張牌をアンカンして手出しが入っているラス目がテンパイしていないと言う小川。固定メンツで行うリーグ戦においての人読みというものだろうか。

 南1局その2、並びが西尾102→小川04→愛澤126→藤森。小川が攻勢にでたが、藤森のリーチに放銃してしまう。ただ、結果として藤森3着目が現実感のあるところにきたので動きを制限されたか。この後の藤森は、もう少し思い切って攻めても良さそうだったが、変わらない並びのまま決着となった。
(◎西尾/●藤森)


 小川とは、普段から研究会などで良く知った関係である。今回の小川は普段より非常に大胆な読みと攻めの強い印象を持った。攻勢がかけられる展開が多かったかもしれないがテンパイを普段より積極的に組んでいる印象。また、同一メンツのリーグ戦ならではの打牌選択。私が、わからない選択肢でも、安全圏の使いわけが印象的だった。
1節目を終了してスコアは、小川4昇・西尾3昇・田中2昇・愛澤1昇という上位陣となった。一日目に小川の4連勝、二日目は、西尾が3昇と2人がやや目立つスコアである。
 名翔位の成岡も△2(1―3)と最後に1つスコアを戻して挽回してくるに間違いない。上位陣が4者とも名翔位経験者でこれを成岡現名翔位が追いかける模様であり、第2節目以降も楽しみである。

第42期順位戦A級 第1節 星取表 (6月5・6日/東京)


選手名
開始前
終了時
順位
成岡 明彦
S-0
B  B  B  A  A  B  A  A  △2 6
愛澤 圭次
S-0
B  A  A  A  A  A  A  B  1昇 4
亀井 敬史
S-0
A  A  B  B  A  A  B  A  △5 8
小川  隆
S-0
A  B  B  A  B  A  B  B  4昇 1
藤森 弘希
S-0
A  B  A  B  A  B  A  B  △1 5
古川 大樹
S-0
A  A  A  A  B  B  B  A  △2 7
田中  実
S-0
B  A  B  B  B  B  A  A  2昇 3
西尾  剛
S-0
B  B  A  B  B  A  B  B  3昇 2
立会人:山内 啓介