第42期順位戦A級 第4節

 観戦記||自戦記/愛澤・田中・古川・小川星取表

第4節自戦記(25回戦B卓)

【愛澤 圭次】
No.1【東1局】
 小川が5昇ということで、仮に今回ラスを引くことになっても、小川のトップだけは阻止したい、そんな気持ちで卓に着いた。たぶん田中も同じだろう。
 さて起家となり、ドラの受け入れもあるまずまずの配牌。
 古川がという切り出しでやる気を見せている。そこに7巡目小川がの手出し。これで皆の注目は小川に移った。その直後に私はこの手牌、

 まずは切りで様子を見るが、小川の次巡の手出しはさすがにテンパイと見なくてはならない。なのにをツモ切り、さらにをアンコにしてのマタギスジのも行ってしまった。オヤだからかな。


No.2【東2局】
 ラスめ。05差とは言え早く抜けだしたい。3巡目に、
となった。自力で仕上げる気は無いので両面が残っても仕掛ける気でいた。あとは字牌の出が少ないので、仕掛けには慎重に対応してくれると思えた。
 は王牌に3枚か。


No.3【東3局】
 この局も字牌の出が少ない。田中、古川は序盤から役牌を放ってくるタイプなのに。3巡目にが重なり、
 またドラが浮いている状況だが、前局同様切り飛ばす気でいた。
 次巡を引きイーシャンテン。そして小川からのを叩いてテンパイ。小川も当然テンパイと思われる。
 は押したが、次のでは考えた上、ソウズを外した。結果的には次のが小川のロン牌だったが、小川も回ったのがみえたので、再度テンパイを組んだ。しかしあえなく連続の仕掛け倒れ。


No.4【東4局】
 2局続けて早々にオリを強いられ、田中、古川にストレスが溜まっているかな、と思ったら田中からリーチ。
 ラス落ちしてくれたのだが、ドラ表示牌を含むカンチャン2つを引き入れてしまったため、田中のさらに下に落ちるリーチをしてしまった。
 は5枚見えているが、その後小川、古川から出てこなかったので、まだヤマにあると踏んだ。残るには残っていたが田中のマチの方が強かった。


No.5【南1局】
 さて3着目との差を拡げてしまって迎えたオヤ番。最初のツモで4トイツとなりチートイツを本線に決めた。するとトップ目に立った田中から仕掛けが入った。鳴かせた古川も押してきており、もう無理とあきらめた。ここでさらに潜ると取り返しがつかなくなる。
 それにしてもこの2人どこまで押すのだ、と見ていたら・・・


No.6【南2局】
 01差。あんなリーチ棒を出さなければ、と言っても前局の田中も80放銃してもラス目にならないことが押しの理由かもしれない。
 2メンツができているというここまでで最も良い配牌。そして第1ツモで3メンツ完成。8巡目にイーシャンテン。
第一希望はドラのだったが、でも文句は言えない。


No.7【南3局】
 残り2局、大人しくします。早々にチートイツも見切ります。中盤以降は端牌字牌のオンパレード。久々に楽にオリられた局だった。


No.8【南4局】
 この局はオヤの小川も強めに来ることが予想されるのでそちらにも気を遣わねばならない。
 田中からは仕掛けも入らず淡々と進んでいったが、最後にリーチが飛んできた。たった1巡とはいえイヤなものだ。
小川は手出しが少なく進行具合が分からなかったが、こんな手になっていたとは。
 何とかバーを拾えた1戦だった。



【田中 実】
No.1【東1局】
 アガるつもりで手は進めてみたものの、なんともならない感じ。7巡目小川の打に加え、8巡目にドラをツモってきたあたりで店じまい。3枚あるが打てるようになったところで小川がツモアガリ。愛澤にもう一度手出しがあると最後までしのげるか微妙なところなので、ホッと一安心。
No.2【東2局】
 順調にコクシへ向かっている振りをしつつ、愛澤が仕掛けたあとは平和に流局するのを願うのみ。
No.3【東3局】
 またも1巡目、アガリはないなと悟る。前局に続きラス目の仕掛けで流局まっしぐら。幸いにもの処理が間に合っているのだからチートイツでもう少し頑張るほうが良いだろうか。
No.4【東4局】
 今度は、1巡目のツモでアガリがはっきり見えたので、できればリーチをかけられる形を目指したい。分岐点は3巡目のツモのところ。嵌マチではリーチをかけたくない、またリャンメンに変化してのリーチも対応されやすい、 ということでワンズ外しも頭をよぎったが、がすぐ入れば嵌のリーチに踏み切るつもりで打とした。13・26もありえたなと思いながらリーチ。28の出アガリでトップ目には立ったが、僅かなリードが次局の焦りを生んだのだろうか。

No.5【南1局】
 順位戦の牌譜でここまで酷いのは、後にも先にもないでしょう。
 放銃については言うまでもないが、そもそも12のポンテン目指して手を作っていることじたいがはなはだあやしい。マチが良いといっても、こっそり早いテンパイが入ればというだけで、受けられたら簡単に出るわけはないのだが、テンパイを壊す理由もないまま引っ込みがつかなくなってしまった。せめて終盤のツモのところで打とでもしておけば、内容はともかく惨事だけは免れたのだが。

No.6【南2局】
 まだ100点上だが、この局でラス目に落ちたら助からないだろうという思いが棒攻めにつながり自滅した。

No.7【南3局】
 酷いことをやらかした人間をラスにする、という暗黙の了解が取り交わされているため、誰にも相手にされず一人虚しく絵を合わせようとするのみ。

No.8【南4局】
 私がラスにふさわしいのは間違いないが、本人までがそれを認めて諦めてしまうわけにはいかないので必死にラス抜けを目指す。残りツモ1回でリーチをかけるが、当然の流局。



【古川 大樹】
 卓上の空気が急変したのは【東4局】のことだった。7巡目、愛澤とわずか05差の田中がラス落ちリーチを打つと、9巡目に追いついた愛澤が再びラス目に転落するリーチで応戦。1局にラス落ちリーチ2つは順位戦で初めて見た。
 首位小川がトップ目で迎えた親番に、追撃する2人が猛然と襲いかかったのだ。これには否応なく目を醒まさせられた。慎重に打つ時間は終わった。この中を傍観者でいたら手数の差で取り残されるだろう。
 壮絶なめくり合いは田中に軍配が上がった。愛澤ので28を討ち取り、小川からトップ目奪取に成功した。

 突如ヒートアップした雰囲気のまま、【南1局】も田中が4巡目ポンで先行する。ここで初めて勝負に値する手が来た(7巡目)。
 ワンズを1枚も切っていない田中に対しドラそばのを押すと、すぐ次巡にを引き入れた。このツモでもうどこまでも押して行くと決めた。前局の殴り合いで沸き立った熱気の渦に、自分も飛び込んで行かなければ浮上はない。打。ノータイムでツモ切りを続ける田中に、無筋も生牌も全部押す。リーチこそしていないが、お互いに1巡2回の抽選を受ける時間が続いた。
 ついに田中からが打ち出されたとき、ヤマの残りはわずか3枚。最終手番でも立ち止まることなく押し切って来たのだった。

 【南4局】、小川の親番を迎えた(古川55→小川52→愛澤31→田中)。
 アガれば逃げ切りとはいえ、8巡目あたりから小川のツモ切りペースが明らかに速くなってテンパイ気配が濃厚に漂い、撤退を余儀なくされた。あとは、唯一立ち向かっていく田中が小川に捕まらないことをただ祈るだけだ。勝つには傍観者ではいられないと知っていてもそれしかできない無力感。田中が16巡目にやっとリーチ、対する小川も宣言牌の隣を躊躇わずにツモ切った。
 長い長い忍耐の時間がようやく終わって流局となり、今節の初トップを守りきれた。しかし勝ち取ったという感じがまったくしない。
 後日、この局の小川の最終形を牌譜で見たとき改めて思った。楽に勝たせてくれる人なんてA級には1人もいないのだと。
が1枚、王牌に眠っていた。



【小川 隆】
No.1【東1局】
 古川が第1打から積極的にファンパイを打ち出してきた。順調な様子の古川の出方を観るべく、7巡目にションパイのを打つ。
 こんな手ハイでは、競り合っているオヤの愛澤を警戒して慎重に取り扱うべきかと思うが、鳴かれる感じがしなかった。
 次巡、役なしドラなしのナシナシテンパイからドラといれかえ、ションパイのをツモ切ってテンパイを強く主張。田中と古川を抑え込んだようだが、愛澤が粘って忍び寄る。
 こちらはドラが1枚あるだけの役なしの虚勢の手ハイ。どこまで押し通せよう。引き際を探りながら動向をうかがっていると、最後のアガリハイが残っていた。

No.2【東2局】
 字パイが異様に高い状況の中、ラス目の愛澤から仕掛けが入る。自らのアガリを見切り、下家を押さえつけなければならないはずが、の切り出しから前巡の田中のに合わせて打ったため、さらに鳴かれ、テンパイを入れさせてしまった。
 その後はきっちりと打ち継ぐも16巡目に窮する。も現れておらず、大三元の存在を否定できないいま、中盤に処理できていたはずのを打つ気にはなれなかった。
 1枚もソウズを捨てていないオヤに対して不気味ではあるが、2つ仕掛けているラス目への対応が最優先。現物のを抜き、何とか流局に。

No.3【東3局】
愛澤の打ったを見送ったのは、ドラの行方が不明によるもの。トップ目が、
 イーファン手のカンチャンマチでは頼りなく、反撃されると受けづらい。すると、次巡にカンチャンが埋まって片アガリのマチのテンパイに。早い巡目であれば、アガリが期待できるところに、次巡、ションパイのを引かされる。落胆しつつツモ切ると、愛澤が鳴いて、ドラのを打ち出してきた。
 踏み込んで3枚は押してみたものの、12巡目のツモにはを打ってテンパイを崩す。直ぐに愛澤の手の内からもが打たれ、巧妙な対処を認識させられては、もう自分の出番はなかった。

No.4【東4局】
 田中が少考して自らラス目となるリーチを敢行。2巡後には愛澤も少考して再びラス目となるリーチを決行。非常に珍しいラス落ちリーチ合戦である。2人とも急所のカンを引いてのテンパイに感触が良かったのだろう。
 しかしながら、この時点で愛澤自身のアガリハイが残り3枚というのが明々白々であり、交戦ではなく静観もあっただろう。田中との共闘を図り、トップ目のオヤ小川を引きずり下ろす好機、勝負どころととらえたか。
 2人リーチに厳しく攻められはしたが、当事者同士の決着により、オヤ番で失点しなかったのは大きかった。

No.5【南1局】
 が田中に叩かれると、が流れてきた。巡目も早く、全くの不要ハイで何気なくツモ切ってしまいそうであったが、トップ目の仕掛け、ターツの切り出しからテンパイ濃厚であり、古川のに合わせておく。次巡のツモでは撤退の方向へ。
 第一打から思い切りよくファンパイを打ち出してきている古川は田中の仕掛けに対しても激しく攻め立てている。ドラを複数枚支配しているに違いなく、断然に高そう(アガリ点)である。
 10巡目に田中の現物のを打つが、これは相当危なかった。すでに古川にテンパイが入っており、アガリハイとなっていることも十分にあり得た。8巡目の手変わりがあるのだから、しっかり感知すべきであった。
 2人ともツモ切りが続き、一歩も引かない意地の張り合い。ついには最終手番で田中がまさかまさかの飛び込み、全員が驚嘆。トップ目がイーファン手で突き通すこともなかろうに。

No.6【南2局】
 ハイパイにドラ入りのシュンツ、何だか行けそうな気がするも実際はツモが効かず、もたついている間にラス目の愛澤がリーチ。
 温存していた のトイツ落としでピンフ手に向かう。愛澤の現物待ちのテンパイを組むことができれば、押し返すこともできよう。
 現物を使い果たした田中が沈んだ。オヤであるがために手を広げ、手詰まりとなった。愛澤がツモアガリした場合でも200点しか変わらないと考えれば、痛手も少ないか。ただ、前局のこともあり、精神的には辛いかな。

No.7【南3局】
 南場のを率先して打ち、伸び伸びと突き進むトップ目のオヤに怯えて、チートイツのイーシャンテンに3枚目のドラ筋を引いてからは最前線から消えていく。ドラが皆無では、抵抗もできない。
 10巡目、田中のドラ表示ハイの打ちに皆が反応。一斉に防御を固める。主導権を握った田中ではあるが、テンパイが入らぬまま流局。

No.8【南4局】
 イッキツウカンを確定させてのイーシャンテンとしたのが、3巡目。速攻を目論む。
が、ピンズが障害となりそうである。
 引いてきたのは、期待外れの。ドラ表示ハイののカンチャンマチでは、アガリは望めない。ラス目が余らせない限り、非常に険しい。けれども、オヤ番での高打点は魅力的。流局覚悟でテンパイを取る。
 古川と愛澤はイーシャンテンまでで、中盤以降は引き下がって行く。3着目との点差が31のラス目田中が最後の1巡を残してリーチ。52までの放銃ならば、ラスに落ちることはない。高めハネ満を目指し、無筋をツモ切って勝負を挑むが、やはり流局。


第42期順位戦A級 第4節 星取表 (11月20・21日/東京)

選手名
開始前
21
22
23
24
25
26
27
28
終了時
順位
成岡 明彦
△2 A  B  B  A  A  A  B  B  ±0 5
愛澤 圭次
4昇 B  B  A  A  B  B  A  B  3昇 3
亀井 敬史
△8 A  A  B  B  A  B  A  B  △8 8
小川  隆
4昇 A  A  B  A  B  B  B  A  7昇 1
藤森 弘希
△5 B  B  B  B  A  B  A  A  △5 7
古川 大樹
±0 B  A  A  B  B  A  B  B  △2 6
田中  実
3昇 B  A  A  A  B  A  A  A  2昇 4
西尾  剛
4昇 A  B  A  B  A  A  B  A  4昇 2
立会人:山内 啓介