第34期順位戦A級 第4節

 観戦記自戦記その1/平井 淳自戦記その2/村田 光陽成績表

第4節観戦記:内田 慶(麻将連合)

 順位戦を離れた元選手がA級観戦記を書くために対局室を再び訪れたときのことを「故郷に帰る」なんていわれていたけど、内田の場合は、「元カノに会いに行く」といったほうが近いかもしれない。元気だったか。最近はなにやっていんの?彼氏はできた?もっといい男と付き合ったほうがいいよ。自分のことは棚に上げて説教たれたりして。んで、うんざりされた表情を見て、ああ、こいつも良いやつだったなぁなんて考えたりして。
 絶対元鞘なんかにはならないことなんてわかっているのに。


 10月19・20日に順位戦A級の第4節が行われた。
 私が注目をしていたのは、田中選手。公私とも仲良くさせていただいており、実は家も比較的近い。飲みにいくこともしばしば。選手になる前から知っている実君がA級だと。まあ、実君も「なかなかやる」(←自分を棚上げ)からいい闘いするんじゃないかな。ふむふむ、現昇は0か。じゃあ、上を見るか、下を見るかは今節の戦い方次第なんだ。それでは見届けねば。そんな気持ちで御徒町へと向かった。(以下、敬称略)


※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※

◆◆◆ 17回戦A卓 ◆◆◆

〈安田△1・田中0・村田2昇・成岡△1〉

 そんな緒戦は、村田の役無しをツモった5・10をオヤカブリして、追いかける形の田中。3巡めに門風牌のをポン。最低でもイーシャンテンかと対面から見ていると、トップめ村田がタンヤオのみで追いつくも、ドラのを引かされてダウン。
 後は田中の一人旅かと見ていると、終盤安全そうなと手出しする。ああ、オリたのかな。それともよさげなピンズマチからワンズのホンイチへ移行かと考えていると、最終手番に田中が手を開く。

 
 衝撃である。魔法のようなアガリだと思った。カンテンパイからドラかを引かされて、一旦アガリ逃しをするも、再度マンガンの当選。前夜の夕べはステーキか焼肉か。
 また、印象的だったのは、成岡と村田。田中90→村田05→成岡・安田と下が寒い南2局に、成岡が好配牌をまとめ上げて4巡目にテンパイ。
 7巡目にドラをツモ切ってテンパイが露呈したかに見えたが、村田が怪しいところをブン!こっそり覗いたら国士無双のイーシャンテン。しかもヤマに残ってそうな。そこへ成岡がを入れ替える。村田は成岡への安全牌を切らずにツモ切り御用となった。

 過日成岡に聞いてみたところ、一手、攻め手を見せることによっての相手の応手を見たかったとのこと。 村田も同様に、[成岡が大体入っているのだけども、ここで一手見せることによって簡単に成岡に簡単にはアガらせない]という気持ちを持っていたそうだ。
 長年A級で戦っている二人しか感られない部分を覗いた気がした。たぶん感じているんだ。頭でもカラダでも。二人に理解できる言語。こういうのを見たり聞いたり出来ると、ここに来て良かったなぁと強く思った。

  その後はラス目村田がピンフ高めサンショクの手をリーチして安目ツモでラス抜け。成岡がホンイチをポンが無いからヤマに生きているとの鋭い読みで80を安田から召し取り、一旦トップ目に立つも、オーラス好配牌の田中が16を村田からアガり、再逆転に成功。田中の好スタートとなった。
(◎田中/●安田)


◆◆◆ 18回戦B卓 ◆◆◆

〈堀川2昇・田中1昇・愛澤2昇・安田△2〉

 田中が吠えたのが東四局【牌譜1】だった。
 先にチートイツのイーシャンテンとなったのは愛澤だったが、追いつき、追い越したのは田中。愛澤の着手にも他の二人が手が悪そうだし、=「情報が素直に河に出ていない」=そうそうチートイツ(必ずタンキマチ)がツモれないでしょ。といった読みもあったのだろう。こういうところでひるまず押し進むところに田中の良さがあるんだろうな。田中のアガるの大好きっぷりが譜に出ている。
 その後、手なりで5・10を田中が引き、オヤカブリの安田がオヤの南4局【牌譜2】を迎える。
17回戦にも田中にトップラスを決められて、何とか思う気持ちもあったのだろう。4巡目にをポンした安田。捨て牌がとポンテンでもおかしくない捨て牌で、ラス目の仕掛けと言うこともあり全員が受けに回り、残念ながらイーシャンテンまでとなってしまった。

 
 A級選手の汗を流した着手に注文つける気は全く無いが、愛澤だったらチートイツにしていただろうか。興味が出る着手であった。
 しかし、安田は苦しい!もっと図太い安田も見てみたい!頑張れ!
(◎田中/●安田)


◆◆◆ 19回戦B卓 ◆◆◆

〈田中2昇・平井△2・村田1昇・小川2昇〉

 東1局【牌譜3】の田中の配牌がすさまじい。じぇじぇじぇ。
 村田と小川のを見てを残すのは難しくないと思うのだがどうだろうか。
 村田や成岡ならきっと四暗刻になっていただろう。
 田中って、こんな手なりに打っていたっけなぁと首をかしげる一局であった。
 アガリが出た後、平井がじっと田中の手牌を見つめていたのが印象的だった。しきりと「うーん、うーん。」と声を上げている。よっぽど理解できないのか。はたまた、田中へのボディーブローか。
 その後、早いチーテンで小川から60をアガるも、平井の20・40でオヤカブリ。その平井の放銃で同点トップになり、田中7・14で再逆転に成功するも、南2局の平井のオヤがブレイクタイム。
 その1は

の8オール。
 その2はリーチで
 
で再逆転に成功。
 オヤが落ちた後の村田の連荘を蹴散らすように田中から、20を召し取る。
 さて、オーラス一仕事だと思ったかどうかは解らないが、ここに一波乱待っていたのであった【牌譜4】
 小川の打ち方は優等生の打ち方。対して村田の打ち込みはどうだろうか。3枚切れのカンチャン待ちのテンパイ。田中の二度の手出しで、最後のが田中の手中に入っていると思っていたのだろうか。はたまた、小川の手をそこまでの打点と思っていなかったのかもしれない。なにしろ小川の河は強かった。
 こういうのは、良くも悪くも村田のマージャンなのだろう。ベタオリは簡単だけど、簡単には諦めない。A級選手の確固たる意思を感じ取ることができた一局であった。
(◎平井/●村田)


◆◆◆ 20回戦A卓 ◆◆◆

〈平井△1・成岡△1・堀川1昇・田中2昇〉

 先制したのは堀川。東二局に平井のホンイチイーシャンテンの仕掛けを尻目にチートイツを引きあがり、先制。気分上々も、次局に成岡に16とふりだしへ戻ってしまう。その成岡、テンパイ打牌で長考があったのは、リーチも選択にあったか。確かにスコア的にはトップを取りたいスコアではあるのだが。
 次局は平井の早いテンパイに成岡がつかまるも、成岡スペシャルが炸裂した【牌譜5】
 この譜は是非皆さんに並べてもらうとわかると思うのだが、私にはちょっとは重ねられないと思う。対局後に成岡は「田中は字牌の扱いが甘い。小川さんは上手やで。」といっていたが、余り牌の扱い方は成岡の右に出るものはいないかもしれないなと感じる一局であった。
 次局に成岡のダメ押しがはいる。

 
 振り込んだ平井も
からのソーズの上が良いとの判断で、打であっただけに、後悔も残ったか。
 その影響があるかどうかは定かではないが、田中にラス抜けリーチを成就された後、劣勢を跳ね返すパワーは感じられなかった。
(◎成岡/●平井)


◆◆◆ 21回戦A卓 ◆◆◆

〈愛澤4昇・村田0・成岡0・堀川1昇〉

 村田の原点リーチから始まる。

 一旦テンパイ取らずしてからの最終形で待ちも良し。ただ、その宣言牌のを西家成岡が仕掛け返す。
   
 スコア上トップ取りに比重がかかっている為の仕掛けか。はたまた村田の一人旅にさせない為に、ギリギリまで攻めるということか。上家のリーチはチーがしやすくなるとかも考えているかもしれない。
 結果は、成岡がも仕掛けて真っ向勝負を挑むも、村田のツモアガリとなった。少し不満そうにしていたのは気のせいだろうか。読み通りは3枚ヤマに眠っていたのだけども。
 その後、村田は堀川からも80を召し取り唯我独尊状態へ。
 折り返しの南一局の成岡の手順がちょっと真似出来ない【牌譜6】
 ドラきりのタイミングもさることながら、こうなったらタテへの変化一点とする切りもなかなかできないと思う。
 上下大きく離れた点差というのがこの着手を選ばせたのかもしれないが、こういった打ち方を取り入れたら四暗刻など出易くなるなぁと勝手に感心した。
 次局に愛澤がポンテンのホンイチをツモアガり、20・40と村田に肉薄。
 成岡が30アガって連荘も、タラレバの40オール逃しをしたと後悔した次局に愛澤がテンパイ即で村田から28のデバサイ。
 村田はドラが対子のリャンシャンテンも、愛澤の河はとオール手出し。テンパイしていてもおかしくない捨て牌だっただけに、もったいなく感じた。
 村田が名翔位を逃したら後悔の一局になるのだろうか。
(◎愛澤/●堀川)


◆◆◆ 24回戦A卓 ◆◆◆

〈安田△3・田中1昇・成岡0・愛澤6昇〉

トップが欲しい安田が10・20で先行。

 田中が7・14で追いかけるも、愛澤がチートイツ狙いに絞った成岡から28のアガリ。
 成岡が切ったはアンコから外してチートイツに決め打ったものだが、こんなカリテンがアガれてしまう。
 愛澤は今節、恵まれもあったが、大いに安定感のあるマージャンを打っていた。愛澤は振り込まずに良くアガっていた。手牌の見切りも一流。昔は連敗癖があるなんて見た気がするが、微塵も感じさせない堂々とした戦いぶりであった。名翔位候補筆頭である。
 その後、田中が愛澤から30をアガり、微差のトップ目に立つ。
 こうなると、トップ争いもさることながら、3着争いも熾烈に。田中のレンチャンのその2(田中05→安田59→愛澤19→成岡)で成岡が10巡目テンパイ。
 田中からのを見逃して上まで狙うも、を引いたのは最終手番で流局。
 成岡の最後の牙城であるオヤ番で、一旦フカして、雀頭が出来てからを仕掛け、テンパイ。
  
 そこへ愛澤が安全牌を切りながら追いつき、手替わりあって、マンガンへ。
 次巡に成岡の手元にやってきたのはとラス目によくある話。どうするのかと見ていると、(てか、ピンズ全部通ってないし、ツモ切っちゃうか切るかな。どうかな。)成岡はブンっと切り。ん?切り?ビタ止め?
 これはすごい。何度もになるが、ピンズは全く通っていない。もっというと、愛澤がノーテンの可能性もある。(これは薄いか)自身はアガれそうな3メンマチ。
ツモ切ったりオリたりする理由はあっても、切る理由はなかなか見つけづらい。ほんとうに、確信がないと切りづらい。その後、と無筋を連打し、逆に愛澤はで降ろされている。
 対局終了後にすごいですねと話すと、あんなもん当然やん。の一言。曰く、9割当たる牌で振り込むより、ひどいフリコミにはなるが、1割ぐらいしか当たらないでフリコんだほうがまだマシとのこと。
 この半荘は成岡はラスに甘んじたが、きっと最後まで上を見ながら戦っていくことだろう。そして、レースを面白くしてくれるに違いないと確信した半荘であった。
(◎田中/●成岡)
※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※

 この観戦記の話を妻にしたとき、「なんか元カノというより、別れた愛人と密会するみたいね。μと結婚していて、一夫多妻は認められないから別れたんでしょ。」と言われた。
 満面の笑みで。
 なんかしたり顔の妻がやたら小憎らしく、やさしくケリをいれた。



自戦記(17回戦B卓:平井 淳) 

 A級自戦記は3度目となるが、過去2度はいずれも降級の憂き目にあっている(まぁ実力通りといってもよいが)。3度目のA級となったここ2年は何とかA級に残留することができたが、101マガジンが休刊となり自戦記を書くことはなかった。今年からウェブ版で101マガジンを復刊させ、A級選手には各1回の自戦記をお願いすることにしたのだが、このジンクスのことは失念していた。その上、自戦記当番が回ってくる時に最下位になっていることなど想定外であった。
と、いうようなことを思いつつ4節を迎えたわけであるが、勿論降級するつもりは毫もなく、最終的には▲1にすれば大丈夫だろうと高をくくっている。このため今節の目標を1昇とし、無理をしないことを肝に銘じ卓に座った。面子は愛澤3昇、小川2昇、堀川1昇。この三人は元より出かけていくタイプではないことから、展開は自分を軸になると予想する。


No.1【東1局】
 配牌をもらうが、この手ではお出かけをする気にはならない。ドラも考えチャンタを意識した打牌となった。字牌の出も遅く、5巡目の小川のが初出で、9巡目の堀川のでは赤信号が灯った。の引きアガリにドラ絡みも予想したが、素直なピンフの形で、無難なスタートとなった。

No.2【東2局】
 決して良いとは言えない配牌であるが、3巡目に胆ともいえるを引き入れ展望が開けると、6巡目にはとアガる気満々である。岐路は9巡目のの扱いであるが、これはドラ色の打ち出しを嫌ったもの。この辺は本日のテーマ「無理をしない」に従ったものであり、通常バージョンであれば、ドラ色を切りオヤの威を通すところである。その後は誰が打っても同じでしょう(多分ドラでもおりません)。一方子方の愛澤であるが、8巡目に

から打とし、次巡ので再び打としている。これは小川の打を引き戻したためと思われるが、一般には打からのチートイツをテンパイし、その後は「ん〜」で振り込みそう。

No.3【東3局】
 前局のような手を空振ると私の場合は結構引きずって前屈みになるので、そのことを念頭に配牌を取ります。のトイツだけでドラも見えずそれほど前屈みにならずに済む手です。ただ、3巡目のカン引きで少しやる気が出ます。9巡目にはをアンコにし打と前に出るが、これは誰も来ていないこととテンパイチャンスを広げるもの。本日のテーマからいけばからいくほうがよいように思われる。7枚目のはもちろんテンパイにとるのですが、「ん〜」アガレない。しかし皆さん手が入らんですな〜。

No.4【東4局】
 あまりいい気分でなくトンラスを迎えます。配牌は良好ですが、如何せんテンパイの形は・・・・・よっぽどツモ切ろうかと思ったのですが、順位戦選手はなかなかこれができない。なんせ、役アリの手変わりアリですから。ただ、が3枚切れですから手変わりしても決してアガリ易い形とは言えない。結果は僥倖に近いものを感じてました。愛澤さん不幸と。

No.5【南1局】
 毎局これぐらい楽だといいのですが。いやこれにドラが1枚絡むくらいが。なお、よりが早いのは立て引きの役アリを望んだものです。

No.6【南2局】
 安い手の速攻で来たので、ここらで一発爆弾をと思っているとこの配牌。出来る〜とガッツポーズだったのですが、しょぼん。まぁ前局のようなことがあれば今局のようなこともありでしょう。それより、小川も5巡目のイーシャンテンがどうにもならないとはちょっと不幸な。

No.7【南3局その1】
 配牌をもらい、ドラを見れば後はチートイツへ一直線である。3巡目から3枚続けてトイツにし見下していると、結果は・・・放銃である。余程のことがないと引く気はないので、やむなしか。しかし、3巡目の堀川

からの打は最高形をタンピンイーペイコーとし、ドラ引きにもチートイツで対応する当然の一打であろうが、打のイッツーなどは夢想してくれないのだろうか。さすれば、7巡目の小川ので・・・・。
2着めキープで、あと2局ある。まだまだいけると思うことにする。

No.8【南3局その2】
 さてヤミテンの判断はいかがだったのか。出アガリはもちろんツモってもトップ目には立てない。かといってが振り替わったらさすがにヤミテンとする。しかしを引いたのだからここは一番リーチとすべきだったのではと思いながら1巡を待つとなんとツモは。いやいや、しかしを2枚見せられて、愛澤のスクランブルぽい捨牌をでは本日のテーマ「無理をしない」で良しとするのか。

No.9【南4局】
 と思いながら配牌を取り、ドラをチェックするとなんとなく後悔がわいてくる。さすがにお出かけしてアガれる気はしないのだから。それでもラスめ愛澤の6巡目ドラ切りを受けて、次のリャンシャンテンでアクセルが踏み込まれた。

が、しかし行き過ぎだすね。さすがに3枚目のは当たるかもと思いながら打ちましたが、基本は愛澤のリーチまではいくつもりでした。

 これだけついててトップが取れない、否ラスにならないだけ充分ついてるということで、目標通りの−(バー)獲得です。第4節の結果はご存じのバタバタですが、残り2節で1昇を確保しに行きます。

(文中敬称略)

自戦記(21回戦A卓:村田 光陽) 

 前日の今節開始時は2昇と、優勝を目指していきたいスコアだったが、それを意識しすぎてしまったがための0−2とボロボロ。
 明けて2日目は「夢よ、もう一度」。
 そのためには是が非でもトップが欲しいところ。前日から昇を伸ばしている愛澤をラスにできれば、昨日とは違う一日が待っているかもしれない。


No.1【東1局】

 3巡めにを持ってきたところで、この形。

最高でのハネマンツモを思い描いているのは楽天的すぎるかもしれないが、トップを目指しながら、できればラスも選びたいので、この時点で開局リーチを打つ気が膨らんでいる。
 5・10を取りにいくつもりはない贅沢気分なので、5巡めはテンパイトラズ。
 成岡の追撃も受けながらも、嬉しさも中くらいかな、13・26。

No.2【東2局】

 並びができたところで、ここで14オールでもアガれれば、ラスを選びやすいパターンが増えるかな、などと考えながら取ったハイパイは好感触。
 7,8巡ほどゆっくりツモらせてもらえたら、などと夢見るも下家・成岡の好カットを食らう。

 早い巡目、親のツモをとばす、緊急避難もできそうな手組み、とポンの条件はそろいすぎているが、他家の対応と打点をかんがみて、5巡めから『早く仕掛けて、遅くアガる』への方向転換。
 私は9巡めまでに、成岡に併せながらの

までの形作りだったが、を持ってきてダウン。成岡の注文が通った1局となった。

No.3【東3局】

 加点はありがたいが、縦長のゲームになるよりも流局が続いてくれたほうがありがたいのでは、などと思っているのは昨日の不調の後遺症か?
アガリへの材料はそろってきたが、他家の動向がわかりやすくなるように、自ら字牌を打ち出していって、表面上の主導権をとりにいかない選択をした。
 12巡め、「ぽいっ」とばかりにを投げてくるところが、好調・愛澤の怖いところ。膠着がつづくのなら、深い巡目までめくりにいきますよ、との意思表示だ。

No.4【東4局】

3巡したところで、前局との違いがわかるだろうか。
場に出てくる数牌の種類が少ないということは、それだけ隠された手牌のメンツ構成がしっかりとできあがっていることが多い。

しかしこちらも押し込んでいきたい手牌。
7・14に仕上がれば2着めになる成岡との点差は100、下位陣がアガリ勝負になってくれるのは、好みの並びだ。
12巡めに堀川が打ったでターゲット確定だが、こちらがバックを踏みたくなるのはの、ふた筋。
ならば「で捕まっちゃえ」と逆説的に念じながら山に手を伸ばした。


No.5【南1局】

 堀川が凹んだおかげで、愛澤、成岡の攻め手がきつくなるのは、このマージャンの常識。ここを乗り越えることができれば、優勝。できなければ、単なるトップ曳き。
 堀川に攻めっ気を見せてもらいながら局面が遅くなるのが、理想の展開と望むも、成岡の5巡めで、あっさりと『序盤終了』
 12、16までなら悪い放銃にはならないだろうか、と粘るつもりも愛澤の10巡めにシビれる。苦悶の堀川を横目に見たら、の実に自然な進行であった。

No.6【南2局】

 典型的な『今のうち』の失敗例。「堀川がポンテンかけてくれたら、だいぶ楽になるなあ」、などと手前勝手な逃げ腰モード。
 愛澤の河、2、3巡めの持つ意味は額面どおりに重たかった。

No.7【南3局その1】

 前局の『イッパツツモ』にぶれたハートは惰性の打牌を呼んでしまう。
 2着め・愛澤との38差を50以上にしたいという欲、平べったい手牌のスピード感と不安定な防御力に追いやられるように打。内に伸びたへの理屈にならない違和感も体が止まらなかった。


No.8【南3局その2】

 焦りがひどいつまずきを呼び込んだかのよう。
 後日、成岡との感想戦では、「あのは(手が)入ったサインだよね」と、捨て牌に対する認識は共通していたのだが、私の手に薄いソウズを内側から全部払いきるつもりが、間に合わなかった。

 「ロン」と声をかけられたときには反射的に「1200点であってくれ」との思いも、愛澤の張りのある発声を反芻し、「まさかね」と理牌を待った。

 続けざまの『今のうち』のつもりが、こうも悪い結果を呼ぶとは、今後も『今のうち』には制約をかけて打牌するべきである。
 今のうち制約。

No.9【南4局】

 再逆転のチャンスは、ほぼこの1局だけか。
 シャンテン数なら一番乗りであろうこの牌形、5巡めのツモでの『何切る』は

愛澤、成岡の河からピンズの下は使っていないですよ、と読み取って打が自然な受け入れのようだが、堀川との相対スピードを妄想したときには、私のリーチのあとにを打たれるのが最悪の不完全燃焼。出アガリ28をもとめて確定しやすいのは、ツモでここはメンツ作りにも気持ちが良い。

 字牌連打の堀川から、まっさきにピンズの上筋が余ってくることがあれば、の周りを集めに行くのも、アガリには良さそうとの着手。

 結果的には8巡めのツモが『正解』だったわけだが、この時点での情報量でソウズを見切って、ピンズと心中するのは私にはできそうにない。

 アガリ逃しの時点で、すぐにフリテンリーチといかないのは、最後まで堀川のレンチャンの芽をつみにくくするため。のトイツ落としを見ての見切りリーチだが、まだ2枚もアガリ牌が山に伏せられていたとは牌譜で確認しての、がっかりリフレインであった。

 いらぬ畏れと焦りが作ってしまった一戦を繰り返さないためには、どっしりと安定したメンタルが必要であろう。

(文中敬称略)

第34期順位戦A級 第4節 星取表 (10月19・20日/東京)


選手名
開始前
17回戦
18回戦
19回戦
20回戦
21回戦
22回戦
23回戦
24回戦
終了時
順位
成岡 明彦
△1
A 
A 
A 
A 
A 
A 
A 
A 
△1 4
小川  隆
3昇
B 
A 
B 
B 
B 
A 
B 
B 
3昇 2
平井  淳
△3
B 
A 
B 
A 
B 
B 
A 
B 
△2 7
村田 光陽
2昇
A 
A 
B 
B 
A 
B 
B 
B 
△1 5
堀川 隆司
1昇
B 
B 
A 
A 
A 
A 
A 
B 
△1 6
田中  実
±0
A 
B 
B 
A 
B 
A 
B 
A 
2昇 3
安田健次郎
△1
A 
B 
A 
B 
B 
B 
A 
A 
△3 8
愛澤 圭次
2昇
B 
B 
A 
B 
A 
B 
B 
A 
6昇 1