
第34期順位戦A級 第3節
第3節観戦記:鈴木 聡一郎(最高位戦日本プロ麻雀協会)
ここに、マージャン101という「マージャン牌を使った競技」がある。私がその競技を知ったのは、今から15年ほど前、高校時代に読んだ近代麻雀のとある漫画であった。押川雲太朗著「頑固なペンチーピン」―私が最も面白いと思っている漫画の1つだ。その中でも、現101競技連盟理事長の愛澤圭次が描かれたシリーズは特に印象に残っている。失礼を承知で正直に申し上げるのであれば、「こんな地味なマージャンがよく漫画になったな。というより、そんな地味なマージャンを強いられる101って何なのだろうか?」というのが、千葉の片田舎に住む高校生の健全な感想だった。その高校生も、現在、最高位戦日本プロ麻雀協会に所属して10年目を迎えた。私は現在、マージャン関係の活動としては記事の執筆ぐらいしか行っていないが、今回そんな私になぜかお声掛けいただき、当記事を執筆している次第である。すなわち、愛澤で知った101について、今度は愛澤を描く番になったわけだ。何やら、感慨深いものがある。
ところで、今回私に執筆を依頼いただいた期待はほぼ1点だと思われる。「101をほとんど知らない他団体の若手が101のA級のマージャンをどのように解釈するのか」であろう。そのため、101についての見識は浅いながら、私の感じるままに描かせていただくこととする。101に精通した読者の方におかれては、その点ご容赦いただけると幸いである。
◆◆◆ 13回戦A卓 ◆◆◆
田中△2・愛澤2昇・成岡1昇・平井△1
A級は2卓開催であるため、観戦記者は必然的にどちらかの卓を選択して主として観戦することとなるが、1回戦では私は迷わずA卓を選択した。愛澤の卓であるとともに、実績的に最も注目すべき成岡がいたからである。2昇で先頭を行く愛澤と、ここまで±0と波に乗れない成岡に注目したいところ。
東1局【牌譜1】。南家愛澤は、下記配牌に第1ツモでドラ表示牌のを引くと、あっさりとそのまま河に置いた。















この手牌ではアガリが遠そうであるため、字牌を残して中張牌から打ち出し、チャンタやチートイツを見つつ、どこでオリるのかを第1優先に考える。また、オヤの田中が第1打をとしており、オヤにスピードで勝てない可能性が高いことも上記選択を後押しする格好となっている。それにしても、
辺りからではなくドラ表示牌からとは大胆である。よほどアガる気がないように見える。しかし、ここから端にかかる有効牌をごっそり捉え、9巡目に田中がツモ切りした
をポンして高めチャンタのテンパイ。













愛澤の河はこう。









チャンタ、トイトイ辺りが本線に見えるだろうか。
他家としては全てを警戒することはできないため、まずは打点が高くなりやすいトイトイを優先的にケアすべきであろう。が2枚切れであるためトイトイのシャンポンに当たらないということもあり、平井から直後に
が打たれて20。
愛澤はこの20で幸先の良いスタートを切ると、東2局のオヤ番を迎え、6巡目にはあっさりイーシャンテン【牌譜2】。















これをアガってしまうと早くもこの半荘が決まってしまうなと考えながら見ていたが、アガるには少々河が派手すぎた。






中張牌からの切り出しで、最後に出てきたのが1枚切れの。これはもうテンパイと見てもよいクラスの派手さである。実際に、もうこの時点で成岡・田中はオリに回り、唯一イーシャンテンだった平井も愛澤の次の手出しであるテンパイ打牌
を受けて危険牌を打ち出すのをやめている。そう、これがA級の間合い。結果だけ見れば、愛澤の下記大物手が流局により空振りしただけだ。













しかし、101のA級には手なりの流局などほとんどなく、流局の多くには必ず上記のような水面下での攻防が存在するのである。その深海での攻防が彼らをA級選手として君臨させる。思うに、101とはこの深さを競う競技。ゆえに地味に映ることが多いが、彼らの戦う深海まで光を当てて見に行くことができるかどうか、観戦者の技量を試してくれる最良の教材であるようにも思えるのである。
東4局【牌譜3】。オヤから平井280、田中300、愛澤320、成岡300。オヤの平井が好配牌を受け取ると、2巡目には下記牌姿。















ここに、北家成岡からドラ表示牌のが打たれる。私の位置から成岡の手牌は見えなかったが、この2巡目の
1牌で察する。「タンピンかドラトイツ以上の好形が入っている」おそらく平井も成岡に手が入っていることは感じたはずで、ここでポンして安全牌の
を消費してしまうのは非常に恐い。とすると、ポンするかどうかは「成岡がアガる前に自分がアガリ切れるか」ただ1点になる。平井はポンして前に出ることを選択。確かに、この好形であれば間に合うことの方が多そうだ。
このときの成岡の手牌はというと















ドラトイツで上々の手牌。これが9巡目には、















のテンパイを果たすも、成岡より2巡早くテンパイを入れていた平井が成岡に1度もツモらせることなく6オールで目論見通りかわす。















南2局【牌譜4】、オヤから愛澤314、成岡274、平井298、田中314。ラスめの成岡が7巡目にをツモると、打
でリーチをかけた。

















この瞬間、私には安目の40で不満な理由がわからなかった。要は、成岡の深さまで到達できなかったのである。対局後、成岡に話を聞いた。成岡は下記のように答えてくれた。
1.まず、何よりもリーチという選択の根底にあるのは総合成績が1昇であるということ。1昇あるため、積極的に攻めてさらなる昇を取りにいったというのである。
2.さらに、・
はヤマにいると読んでのリーチであったということ。
実際に、この時点でヤマに3枚残っていた。ちなみに、もヤマにいると読んでいたらしく、
が入った場合にはカン
でリーチするつもりだったということである。なるほど。確かにトータルで昇を持っている間に積極的に昇を重ねにいくというのは有効な策なのかもしれない。ところが、ここには1つ予期せぬ落とし穴があった。ホワイトボードには確かに「成岡1昇」と記載されているのだが、実際には「±0」だったのである。
1半荘目が終了した時点で、成岡がそれに気付き、自ら確認しなかったことを悔いていた。また、成岡によれば、±0なのであればこの・
はリーチしないとのこと。やはり、トータルの昇数は打牌に大きく影響するのである。たとえ上下1昇であってもだ。今局は、成岡の待ちが王牌に固まっており、流局する。
南3局は、オヤ・成岡が11巡目にリーチ。なお、がフリテンになっている。
















このリーチより4巡ほど前にテンパイしていた田中が、













にを掴むと、現物の打
。次巡にさらに
を引くとあっという間にテンパイ復帰。すぐに
ツモの4・8で、田中がこの半荘のトップを決めた。
◆◆◆ 13回戦B卓 ◆◆◆
村田±0・小川3昇・堀川△1・安田1昇
ここでは村田が安田から120をアガり、そのまま決着。昇持ち者が入れ替わった。
◆◆◆ 14回戦A卓 ◆◆◆
堀川△1・小川3昇・愛澤2昇・成岡△1
厳しい戦いを強いられる成岡だが、厳しい展開は続く。全員原点で迎えた東4局、小川に4・8をツモられ、オヤカブリでラスめとなってしまう。

















南3局、オヤから愛澤296、成岡292、堀川296、小川316。誰もがアガりたい南3局、ここでドラアンコの配牌を手にした堀川が9巡目にテンパイ。















これに対し、9巡目に















となっていた成岡。11巡目にが入って追いつくと、次巡に
を引き寄せ、値千金の4・8でラス抜けを果たす。
南4局は、オヤから成岡308、堀川292、小川312、愛澤288。上下30以内の接戦となった。小川はセオリー通り早々にオリ。残る3人の戦いとなったが、成岡・愛澤がアガリ競争では不利なチートイツに向かわざるを得ない手牌なのに対し、1人タンピン形の手牌をもらった堀川があっという間にラス→トップの20・40を決める。















成岡は再度のオヤカブリで愛澤と同点ラス。勝負処の南3局を制してトップまであと一歩までいったものの、勝敗つかず。愛澤にとっては、アガリがない苦しい半荘であったが、最後はラスめから展開で勝敗つかず。悪い結果ではないものとなった。
◆◆◆ 14回戦B卓 ◆◆◆
村田1昇・平井△1・田中△1・安田±0
低打点のアガリが飛び交い、供託10で南3局を迎える。オヤから田中302、安田325、村田265、平井298。供託も考慮すると、もしアガリが出るとすれば、ここでアガった者がトップになるケースが多いであろう。誰もがアガリたい局面で早い手牌進行を見せたのはオヤの田中。5巡目テンパイが入る。
















7巡目にはツモ。ここで
・
待ちではなく、田中は
を打って
待ちの継続を選択する。
・
は待ちとしては並程度であったため、
待ちから変えるかと思われたが、これは次の変化に備えてのものだそうだ。
・
には最終形としては不満がある。いったん
・
に受けてしまうと、後に手変わりしたときに危険度が上がって
・
が切り出せなくなっている可能性が高い。そのため、いったん
に受けておいた一手。実際には次巡にすぐ
をツモり、
にかかる待ちならばと
・
に待ち変え。直後に
ツモの14オールで田中がトップを決めた。
南4局、オヤから安田311、村田239、平井296、田中354。こうなってしまうと9割方ラスは村田のままであるのがマージャンというものだが、ラスめになってからの粘り強さが今期の村田を支えているように思える。ここも下記の7巡目リーチ(田中からののみ出アガリ不可)をあっさりツモり、13・26でラス抜けを果たした。


















成岡△1・愛澤2昇・田中±0・小川3昇
東1局【牌譜5】、オヤ・成岡が5巡目にをツモって3メンツ目が完成のテンパイ。
















ここから成岡はノータイムでを打ち出してテンパイとらず。特に情報のない
・
だが、101の東1局ではリーチをかけて自らラスに落ちることは悪。リーチをかけないのであれば、両面ではあるが役ナシを継続する
のターツにはあまり意味がなく、5巡目という早い巡目であれば、
かイッツーを狙っていく方が良さそうである。この構想通り、成岡は11巡目に
を引き、
待ちのテンパイを組む。1枚切れの
は待ちとしては優秀で、ヤマに2枚残っている。そのため、次巡に引いた
が場に高いピンズで、かつ誰の現物でもない危険牌であったが、成岡はこれをツモ切りしている。
ここまでは良い。問題は次。この成岡のテンパイ宣言ともいえるに対し、成岡がソウズを1枚も切っていない状況で、西家田中が
を手出ししてきたのである。この
から受け取るメッセージは、成岡の
と同様に「テンパイですよ。それなりに押しますよ」である。さらに次巡の13巡目には、田中がさらに成岡に無筋の
をツモ切りしてくる。これは明らかに手が入っている。そのような状況で成岡が最終手番1つ前で再度引いた
。これはもう切ってはいけない。17巡目ということもあり、脇2人はオリ。相手の田中についても、次が最終手番であるため危険牌を引いたらオリるのだから、この
待ちで押すメリットは次の最終手番に自分が
を引くということただ一点になる。それに対して、この
を勝負するリスクは見合うのであろうか。私には明らかに見合わないように見える。成岡も当然手を崩すのだと思い、卓から目を離すと、数秒後に田中の「ロン」の声。最終手番で田中がツモったのかと思って再度卓に目を戻せば、なんと成岡の河に
が置かれているから驚いた。80の放銃である。















本日の成岡は、攻めを意識しすぎてバランスを崩しているように見えた。対局後に本人にも聞いたのだが、やはり全く打てていなかったという感想とともに、特にあのはないよなあとコメントしていた。成岡といえども、手牌がぶつかって負け続けると、バランスを崩してしまうということなのであろうか。
南2局【牌譜6】。この後も田中がアガリを重ね、オヤから愛澤283、田中475、小川287、成岡175という状況で南2局を迎えた。ここでもやはり成岡の本手がオヤ愛澤の手とぶつかる。
まずは、6巡目にドラが重なった成岡が、10巡目にさらにドラを引き入れてテンパイを果たす。
















このときイーシャンテンだったオヤの愛澤が14巡目にテンパイ。














同巡、愛澤のを見て、すかさず成岡が
と
を入れ替えてリーチをかける。














成岡がこのリーチに至るまでには、愛澤のについて、下記のような思考があったと想像できる。第一に、この愛澤の
にテンパイ気配があるため、ここから先、オヤである愛澤に対する危険牌は打たれないと踏み、「どうせ出ないなら、ひいたときにハネ満になるように」という理由が最も大きいだろう。
さらに、こので愛澤のソウズについて形が決まったように見え、愛澤からの出アガリもあまり期待できないように見える。そこで成岡はリーチという決断に至ったものと思われる。確かにその読みは正しかったのだが、無情にも直後に
を引き寄せたのは愛澤。愛澤はこの40オールでトップが狙える位置まで急浮上する。















成岡の「おいおい、今日はどんだけツイてへんねん」という表情が印象的であり、これには思わず同情の意にかられた。
南4局【牌譜7】。さきほどの40オールで愛澤がダントツだった田中に追いすがる形で迎えたオーラス。オヤから小川240、成岡153、愛澤379、田中428。オヤ・小川が、7巡目にをポンしてトイトイに向かう。















この仕掛けを受けて愛澤が丁寧な打ち回しで14巡目にドラを引き入れ、ツモないしは直撃でトップとなるテンパイ。














成岡も次巡にテンパイを組む。を小川から出アガリするかツモるかすればラスを回避できる。













真っ先に仕掛けた小川は、成岡テンパイの次巡16巡目にようやくテンパイ。













ここから、愛澤が同巡にツモ切りしたに対し、小川がダイミンカン。なんとサンアンコの目を消すカンである。これをノータイムでカンできる辺り、日頃の稽古の充実ぶりがうかがえる。この
をカンした場合、ツモ番は3回。他方、カンしない場合にはツモ番は2回となるのである。この巡目まで来てしまえば、「アガって初めて付加される」サンアンコなどという手役よりも「アガリそのもの」の価値が高まっている。これらの判断をあらかじめ準備しておき、一瞬の迷いもなく「カン」の発声をできる小川に感心した。
三者の手がぶつかった今局は、カンの直後に愛澤がをツモアガリして13・26でトップという結末を迎えた。愛澤はトータルを3昇として先頭を行く小川に昇数で並ぶ。他方、成岡は本日2ラス目でトータル△2となる。
◆◆◆ 15回戦B卓 ◆◆◆
安田±0・堀川±0・村田1昇・平井△1
東3局にドラアンコの両面をヤミテンにして20・40とした堀川がトップとなった。

















堀川はこれでトータルプラスへ突入。
◆◆◆ 16回戦A卓 ◆◆◆
平井△2・小川3昇・成岡△2・安田△1
東1局、ここでトップを取り返しておきたい西家成岡に好配牌。2巡目にはツモでホンイチが見え、成長が楽しみな手牌である。















しかし、なかなかうまくいかないのが今日の成岡。同巡、南家小川が北家安田のをポン。この直後、成岡が
をツモ切ると、なんと小川からロンの声がかかる。















失点の大きさもさることながら、自らの手牌がつぶされたことも堪える。本日何度目かわからない成岡の「おいおいまたかよ」という苦悶の表情。しかし、この半荘では、成岡の本手がようやく実る。オヤで迎えた南3局(成岡246、安田342、平井286、小川340)、ついに成岡が反撃開始。8巡目にリーチ。








この河で手牌は、














の切りが早く、もし安全牌に困れば
も拾えそうなリーチを2巡後にツモって26オール。
これでトップめに立つと、南3局その2でいったんは安田にかわされるものの、南4局ではオヤでピンフテンパイを入れていた小川からホンイチの20をアガって僅差の勝負を制し、トップに返り咲いた。

















成岡は苦難の1日をなんとか△1でまとめきった。逆に平井は本日△2でトータルを△3とし、最下位となってしまう。
◆◆◆ 16回戦B卓 ◆◆◆
愛澤3昇・堀川1昇・村田1昇・田中±0
チョーマが飛び交う展開で、堀川以外の3人にアガリが出て迎えた南2局。オヤから堀川276、村田298、田中340、愛澤306オヤの堀川に思い切った決断が求められる「メンツのあるチートイツイーシャンテン」が入る。















しかし、メンツ手かトイツ手かのどちらかに決める前にと引き、16オール。これでトップ目の田中に並んだ。
このアガリもそうなのだが、堀川のアガリだけを見ると、本日は恵まれたものが多かった。しかし、このような恵まれたアガリを活かすために、それまでの丁寧な守備で失点を抑えている点が光る。守備ということであればやはり愛澤という印象があるが、最もバランス良く重厚に守備をしている印象があるのは実は堀川で、最も崩すのが難しい印象を抱いた。
南2局その2、その守備の印象が強い愛澤に、ここで大物手のテンパイが入る。12巡目にスーアンコテンパイ。















しかし、なんとが序盤に切られており、フリテン。これだけ見ると「なんてマヌケな」と思われる方も多いと思うが、このスーアンコがフリテンになるからこそ防げている失点が多くあるという点に注目すべきだと思うのである。逆に
を先打ちしてスーアンコになることの方がレアケースで、その夢という邪念を振り払ってリアルを見るからこそ、愛澤は現実的な失点が多く防げるのではなかろうか。そう考えると、このフリテンスーアンコは、愛澤のリアルが詰め込まれた輝かしい建造物のように思えてならないのである。なお、この砂城は当然流局という現実に飲み込まれて消えていった。
南3局。オヤから村田282、田中324、愛澤290、堀川324。ここは田中が4巡目にダブをポンしてすぐにツモアガリ。5・10で単独トップ目に立つ。

















正直、B級から新たに勝ち上がってきた若手が、10年以上A級選手を張っている101の猛者と対等に戦えるのか疑問であった。しかし、田中には何年もA級を張っている者のオーラと安定感を感じた。打点は平均してそれほど高くないが、的確な仕掛けで鋭いアガリを拾っていき、気づくとトップ争いをしているのである。ただ、「勝負を決める」ということに関してはやはりベテラン勢に劣る部分があるように感じてしまう。勝負を決め切るということをA級順位戦の中で体得していけば、おそらく101を代表する選手になるのではないかと感じた。
南4局。オヤから田中344、愛澤285、堀川319、村田272。
村田にとっては、本日2回目のラス目で迎えるオーラスとなった。ひとまず愛澤をかわすためには16を作ることが必要。何度も言わせていただくが、オーラスのラス抜けなど、9割方は成功しないものである。それでも、村田はソウズと字牌が多い手牌を受け取ると、徐々にソウズに寄せていき、5巡目にをポン。6巡目には他のマンズ・ピンズの処理が終わってイーシャンテン。















14巡目にドラトイツでトップを目指す堀川からをチーしてテンパイすると、次巡にドラツモで20・40。















なんと村田、本日2度目のオーラスでのラス抜けは、ラス→トップ。対局後、村田がすぐに私のところにやってきて「気持ちいい〜♪ やっぱこのルールのこれ(ラス→トップ)は気持ちいいよね〜」と言っていた。そうだよな、完全に同意である。トップとラスの両方に一緒に絡む。これほど101を堪能できる瞬間は存在しないのだから。
もし、15年前の千葉の片田舎に行けるとして、近代麻雀を持った15歳の高校生に会ったらこう言ってやろうと思っている。「おまえ、101の面白さ、少しはわかるようになるよ。そんで、拙いながら、それ(頑固なペンチーピン)と同じような感じで愛澤さんとか成岡さんとかのマージャン書くことになるからね。大学受験はほどほどに、マージャンもちゃんと勉強しとけよ」高校生「そんな夢みたいなことあるわけないだろ、おれはちゃんと現実を見るよ」
自戦記(14回戦A卓:小川 隆)
去年、一昨年のこの時期は負債を抱えて最下位近辺で彷徨っていたが、今年は現時点でわずかながらも一応まだ首位にいる。何よりも昇を減らさないことを安全第一とし、対局に臨む。
オヤの4巡目までの様子と自分の手牌の進行を見て、早々に手仕舞いに向かう。11巡目に堀川に役なしのテンパイが入るが、ドラのを打たねばならず、ここは自重する。四者とも無難な打ち回しで流局となる。 この組み合わせになると、荒れた展開にはなりにくく、出アガリなど望めないものである。よって、必然的に流局または、ツモアガリで帰結することが多くなるだろう。
配牌を受け取り、意欲が高まるが、第1打は控えめにとする。本当は、打
としたいところだが、目立ちたくないので、思いっきり我慢した( 第一打については、成岡選手の第2節自戦記の東1局その1を参考にしてね)。
しかし、3巡目には自然な流れで打つことになる。を打つ選択もあるが、イッツーへの変化もあり、広く構える。成岡がチートイツの2シャンテンからその
をポン、そして
を呼び込み、さらにションパイ牌の
をポン出来てしまう。 手が入っている時か、あるいは手詰まっている時かでないと、このような局面で、ションパイ牌牌など通常愛澤から出るはずはない。と、私は常日頃から勝手に信じ込んでいる。
これは、成岡にテンパイを入れさせて現在首位者のオヤを懲らしめる算段をも含んでの着手に違いない。 愛澤の狙い通り、南家の本局のお役目は完了した。後は、ツモアガってもらって、オヤがラス目に陥るのを期待に胸をふくらませて待つだけ。
成岡のドラ打ちに三者が一斉に合わせる。次巡、私は最後の一枚のアガリ牌を求めてこっそりとテンパイを入れてみたが、愛澤にがっちりと防がれる。そして成岡のアガリ牌はすべて他家の手牌に収まっていた。
No.3【東3局】
堀川が6巡目にツモりサンアンコのテンパイ。8巡目にドラをツモ切り、緊迫感が訪れる。 下家の私は対抗すべく、をポン。「ピンズのホンイチです。」とはっきりと主張しているつもりだが、何のためらいもなく、押されまくる。 ホンイチを崩し、一時テンパイするも、次巡にションパイの
を引く。通りそうではあるが、堀川の気迫に屈してしまい、前局同様にテンパイを崩す。最終ツモの
が恨めしい。 さて、本局、成岡にアガリが生じていたように見えるが、6巡目がその岐路。
















ドラがだけに悩ましいが、ここで打
とする手もあるだろう。おそらく、私がピンズを要していることを察し、将来、ピンズ待ちよりもソーズ待ちとなったほうが勝算あると判断したようだ。まさか、満貫級以上のアガリを主眼にしていたのではあるまい。
6巡目、が重なり、イッツーとお別れ。直ぐに アンコとなり、2枚見えている
を見て
を打つ。リャンメンが先に入れば、タンキ待ちの仮テンからソーズの多面張への構想。すんなりと、カン
が埋まり、あっさりとツモアガる。
2巡目、トイツが4組となり、チートイツに決め打ち。それにもかかわらず5巡目の打は、緩手になりかねない。幸いなことにオヤの堀川が声をかけなかったから良かったものの。ここで鳴く打ち手も少なくはない。やれやれである。
No.6【南2局】
このオヤ番、何としてでも失点を免れたい。アガリに向かっている姿勢を子方にしっかりと見せつけ、抵抗は無意味であることを知らしめたいところ。 イッツーのイーシャンテンで右往左往していると、10巡目に孤立したドラのを引き、うろたえる。同巡、成岡がドラ入りの両面仕掛けでテンパイ度は100%。 その後、続々と危うい牌をつかまされ、意気消沈。ドラを含めた3枚を狂ったように押せば、14巡目のツモ
でアガリがあったみたいね。 唯一の救いは、成岡のアガリ牌がヤマに2枚しか残っていなかったことか。東3局同様、価値ある流局。
No.7【南3局】
愛澤の仕掛けに怯むことなく、真っ直ぐに手を進め、ションパイの、そして図々しくもトイツの
を落していく。それに対し、愛澤は十分型ではない牌姿のためか、2枚目も見送る。 オヤ番だけに1枚目から
を鳴き、2フーロを見せつければ、子方とって脅威となり、主導権を握ることが出来ると思うのだが、先行きを考えての安全牌化か。 配牌でドラが3枚入った堀川は9巡目にテンパイ。続いて成岡がテンパイし、その直後に堀川に入り目をツモ切りされる。しかも高目になる
を。心中如何に。 でも、次巡、しっかりとツモアガってラス抜けを果たす。
痺れる点差で大詰めの南4局を迎える。全員がトップを狙える位置にあり、四者ともアガリに向かって全速前進。 イーシャンテンの10巡目、をツモって少考。全体的にワンズが打ち辛い。特に堀川に対しては。 よって、今捨てられたばかりの
の筋を頼りに
を外す。直後、愛澤から
が打ち出され、思わず目を見張る。 次巡、見切ったペン
を引き、終にアガリを断念し、堀川の
に合わせ打ち、完全撤退。 本来ならば、もう1枚の
に手をかけたいところではあるが、オヤの成岡に手出しがあり、容易には打てなくなった。警戒し過ぎかもしれないが。 と、局中は思っていたら、ラス目の愛澤がちょうど待ち替えしてこの
をちゃっかり仕留めようと心待ちにしているではないか。これでチートイツとは。ジョジョジョ!! 次の手番、状況によっては、手詰まりを引き起こしそう。すべての河をじっと見つめるが、妙案は思い浮かばない。
確実なことは、堀川の手は高い。だから、絶対に打ちたくない。河に一面子をさらしているが、全く揺らぐことのない所作動作。放銃すれば、間違いなく、高いで他界。ラスになる雰囲気ありあり。しかし、そんな不安も束の間、大きな危機を迎える寸前に堀川がアガリを宣告。申告点は2000・4000。
ほらほら、でしょ、でしょ。でっ、ラスは・・・。三着同点ラスなしでした。立会人が成績を確認する(トップ者とラス者を声高らかに明らかにすること)と、別卓の方向から落胆の声が聞こえたような、聞こえなかったような。
(文中敬称略)
第34期順位戦A級 第3節 星取表 (9月1日/東京)
選手名
|
開始前
|
13回戦
|
14回戦
|
15回戦
|
16回戦
|
終了時
|
順位
|
成岡 明彦
|
±0
|
A ●
|
A −
|
A ●
|
A ◎
|
△1
|
6
|
小川 隆
|
3昇
|
B −
|
A −
|
A −
|
A −
|
3昇
|
1
|
平井 淳
|
△1
|
A −
|
B ●
|
B −
|
A ●
|
△3
|
8
|
村田 光陽
|
±0
|
B ◎
|
B −
|
B −
|
B ◎
|
2昇
|
2
|
堀川 隆司
|
△1
|
B −
|
A ◎
|
B ◎
|
B −
|
1昇
|
4
|
田中 実
|
△2
|
A ◎
|
B ◎
|
A −
|
B −
|
±0
|
5
|
安田健次郎
|
1昇
|
B ●
|
B −
|
B ●
|
A −
|
△1
|
7
|
愛澤 圭次
|
2昇
|
A −
|
A −
|
A ◎
|
B ●
|
2昇
|
3
|