第36期順位戦 予想座談会

司会:木村 由佳(マージャン101東京支部)

 まもなく、日本麻雀101競技連盟の順位戦が始まります。そこで今回、A級とB級の順位予想を、座談会形式で行いました。参加者は、A級、B級の順位戦選手、101フリークのアマチュア選手数名です。
 皆さんに自由に発言していただくために、ここでは全員匿名にします。いやむしろ「匿名で書きますから自由に発言してください」と私が言う前に、「え、そこまで言うの?」というレベルの発言が飛び交ったので、Aさんが誰、Bさんが誰という形で個人を特定することもできないように書きました。まあ、ある程度はわかると思いますけど、飲みながら話を聞いているうちに、誰が何を言ったのかわからなくなってしまった、という感じになっています。それが101の集まりのいいところだと思いますので。誰が誰のことをどう言っているかということを明確にしないために、文中の選手は敬称略で、発言はすべて敬体の文にしています。


―――ではまず、B級です。今年の選手は10名で、期首順位順に以下の通りです。
田中 実(第24期名翔位)
村田 光陽
山内 啓介(第9期翔龍)
小宮山 勤
大貝 博美
安田 健次郎
亀井 敬史
坂井 準司(新人・元選手の涌田悟推薦)
藤森 弘希(新人・愛澤圭次選手推薦)
大川戸 浩(新人・平井淳選手推薦)
(休場)
岩沢 和弘
安居 嘉康

―――今期終了時、B級からは上位2名がA級に昇級します。その昇級者の候補をあげてみてください。
A「田中。坂井が本命と対抗ですね。穴が安田、次が村田」

―――田中と坂井に注目する理由は?
A「田中と坂井はタイプが似ていると思うんです。今年のB級では、あがる回数が多いほうが得だと思います。2人ともよくあがりますよね。ただ、この2人がぶつかったときに、どちらかがダメになる可能性もあるのですが」
B「私の見方は違いますね。昇級の候補は、田中・坂井のうちいずれか一方と、山内・村田のうちいずれか一方、と予想しています。同じタイプが2人昇級することはないと思います」
C「実績から言うと、山内と村田が昇級しなくてはいけないでしょう。しかし私はオールドルーキーの坂井にも注目しています。ただ村田はB級では強いですからね。坂井と村田が互角に戦ったときに、坂井の期首順位が低いことが不利に働くかもしれません」

―――101では、最終的に昇の数が並んだ時、期首順位が上の人が上位になりますね。新人3人の期首順位は、戦って決めたのですか?
D「新人3人に、山田史佳選手(A級)を加えた4人で、半荘1回の期首順位決定戦を行いました」
C「横で見ていましたが、坂井が圧倒的に『格上』の雰囲気でしたね。A級に昇級した山田よりも」
D「山田はまだ20代で若いですしね。40代3人を相手にすると、ぎこちなく見えるかもしれません。今回の新人は3人とも、101の経験は豊富です。ちなみに、期首順位決定戦の成績は上から、坂井・山田・藤森・大川戸でした」

―――新人の3選手について、簡単に紹介していただけますか?
D「坂井準司選手は昨年の八翔位戦でオープン参加から準決勝まで残った選手です。マージャン101イン大阪で、青野研究会にも入っていました。場数も踏んでいますし、実際、強いですよ」
C「藤森弘希選手は、101の両国時代によく来ていた人です。昨年の八翔位戦には参加しましたね。今となっては数少ない両国経験者の彼が、なぜ今になってやっと101に入ったんだろうと、不思議な気さえします」
E「両国で打っていた亀井と藤森が、御徒町の対局室でまた戦う姿が見られるとは、感慨深いものがありますね。亀井が休場から復帰してよかったです」
A「大川戸浩は、棋士会のプロで、やはり八翔位戦にも出ています。最高位戦や麻将連合のルールでもよく打っていると思います」

―――それを迎え撃つ選手たちも強者がそろっていますね。
C[「私は、過去にタイトルを取った人に昇級してほしいと思っていますよ。この中では名翔位からいきなりBに降級した田中と、1997年阿佐田哲也杯、2005年王座を取っている大貝ですね」
F「101以外のタイトルは関係ないでしょう」
C「えー、そうですかね。やはりタイトルには相応の価値があると思いますが」
F「田中はいきなり名翔位から落ちましたから、がんばらないといけませんね」
C「田中のマージャンには、最近、スキがあるような気がするんですよ」
F「星取表を見ていると、昨年の田中は連敗が多いんですね。順位戦では特に、『連敗する』というのは地力がついてない証拠だと思います。どこで打っててもみんな連敗したら『ついてない、ついてない』などと言いますが、それは本人のマージャンの力がついてないんですよ。 『連敗する』とか、『敵に連勝される』とかのときは、よほどがんばらないといけませんね」

―――せっかくB級の選手数が4の倍数になったんですけど、岩沢さんと安居さんが休場なのは残念ですね。
B「あの、何でも切ってくる岩沢がいないということで、B級の戦い方に影響があるかもしれませんね」
A「その代わりに大川戸が入ってますから、何でも切ってくる人がいるのは同じではないでしょうか」
E「大貝も、オリてる局面でびっくりするような牌が出てくることがありますよ。変な粘りがあってね。『オリてるんじゃないの?』と首をかしげるような牌が出てきます」

―――見ていて本当に首をかしげるのはやめましょうね。あ、これはEさんじゃなくて、ここにはいないGさんに言わなくちゃ、ですね。私たちアマチュアは観戦態度わりと厳しく言われるんですけど、選手の人がけっこう動いてますから気をつけてください。
E「オリるとなったら、村田がうまいですね。他の人が動けなくなるようなオリかたをします。村田がBでは強い、と言われるのはこのオリかたが一枚上手なのかも」
C「B級の選手こそ、村田のBでの戦い方をもっと研究するとよさそうですね」
E「一方で小宮山は放銃が多いですね。しかも点数に見合わない放銃が多いです」
C「山内のように、重厚に打たないと、ということですか」

―――Dさんも、昇級者の予想をしてもらえますか?
D「坂井と、あと1人だれか。とにかく坂井は1節につき1昇ずつすると思いますね。そしてあと1人……大川戸ですかね」
A「え、大川戸はないでしょう」
E「そりゃまあ、身贔屓ですな。『予想』と『応援』は別のものだと思いますが、選手として愛されて、『応援』を得るのも大事なことですよ。だから、ここでなかなか名前があがらない選手は、もっとがんばりましょうね」


―――さて、そろそろA級の話をしましょう。B級のときは「降級点」については言及しませんでしたが、A級は1人が名翔位になり、2人が来年B級に降級します。上の話と下の話がなるべくごっちゃにならないようにしゃべってほしい、と言いたいところですが、まあ、しゃべりやすいようにしゃべってください。まずは、期首順位の確認です。A級選手については、過去のタイトルは略します。いろいろ重複していてかえって面倒だからです。
 愛澤 圭次(現名翔位)
 平井 淳
 成岡 明彦
 小川 隆(現八翔位)
 西尾 剛
 高島 努
 堀川 隆司
 山田 史佳

―――まず、皆さんの名翔位の予想を、お願いします。1人じゃなくても、注目選手を数人挙げていただいてもいいですよ。
A「まず堀川。前年バックステップを踏んで1年間B級で戦ってきて、助走をつけていると思います。次は山田です。古参の選手にとっては未知数だからです。そして平井。久しぶりに下を気にしないで、名翔位を見たレース展開に期待したいです」
B「私は、小川と成岡です」
C「昇が低いところでの戦いになると、愛澤と堀川です。逆に、昇が高いところでは小川と平井に分があると思います。特に、平井はぶっちぎりでないと勝てないでしょうね、このメンツでは」
D「私は、堀川と小川です」
E「私は、毎年、心情的に平井を応援しています。そろそろ名翔位になってほしいなあと」

―――5人の方に2〜3人ずつ挙げてもらって、出てきた名前が6人ですね。注目する理由やしない理由を、もう少し掘り下げてもらえますか?
D「成岡は、最近、かっこよく勝とうとしているような気がするんですよね。上位に絡んで3位か4位にはきそうな気がしますが、名翔位となると、今年は無印です」
B「A級の戦いも、昔とは変わって来ましたからね。高島がAにいること自体、信じられないという人もいるでしょうが、彼はチートイツ以外は丁寧に打っていると思いますよ。まあ、上を目指す人は、高島のことは気にしなくていいと思いますが」
C「堀川の状態が、前回彼が名翔位になった時と似ている気がしますね。今まで彼は『残留』を目的として打っていたような印象なのですが、一度落ちて戻ってきて、今年は勝ちに来るような気がします。期首順位が低いのはしんどいところですが」
F「A級に坂井がいたら、本命でしょうかね」

―――選手としての情報が少ないということは、そんなに有利ですか?
F「そう思いますね。だから山田は案外怖いんですよ。山田はイン東京などでよく101を打っていますが、A級の選手はイン東京に参加することが少なくて、どんな打ち方かわかってませんからね。まあ、山田本人が名翔位になるとは考えにくいですが、展開のカギを握るかもしれません」
B「全体のレース展開を予想すると、初節にコケは選手がヤバいでしょうね。初戦でコケたら、成岡が降級になってもおかしくないですよ。逆に言えば、最初に走らせたらイヤなのが成岡ですね」

―――あ、もう降級の話になってますね。降級の予想も、どうぞ。
F「山田、高島、そして西尾が微妙だと思っています。西尾は案外、ラスが少ないので、どうなるかわかりません」
B「絶対に落ちないと言えるのは、小川だけでしょう。現に小川は、Aにあがってから一度も落ちていない選手ですし」
C「今年は、堀川も落ちないと思いますよ。降級のラインは△4と予想します」
B「愛澤は、この状況でも落ちる心配をしながら打つんですよね」

―――今年の田中もそうですし、過去には名翔位連覇から降級した萱場貞二さんの例もありますからね。期首順位が上でも、とにかくみんなS−0(スタートゼロ昇)からですから、負けたら落ちますね。
A「やはり初めに負けた人が年間通してコケそうですね。初節△1までならいいと思います。△2になったら落ちそうですし、△3や△4の人がいたら、もう降級者は1人決定したようなものでしょう」
C「そうなるとむしろ、高島と山田の2人が落ちる、という展開になりにくいから、戦い方が難しそうですね」
B「高島は昨年の初節に4昇して本人がビビってしまったかもしれませんが、そんなに下手ではないと思いますよ」
F「場にそぐわない牌を打つのは、西尾の方ですね」
B「A級を知らない山田と、山田を知らないA級選手たちの戦いも楽しみです」
C「将棋のような1対1の戦いではないので、なかなか未知の相手を見切れないかもしれませんね。上を見るにも下を見るにも、山田がカギになるんじゃないですか?」

―――全体をまとめると、名翔位に近いのは小川、堀川、平井で、A級全体のキーマンは山田、という予想でしょうか。あとは始まってみないとわかりませんね。初節か第2節が終わった時点でもう一度この座談会の続きをしたら、また盛り上がりそうです。皆さん、「こうなったらこうなるだろう」「ああなったら逆にこうなるだろう」と考えておられることがよくわかりました。
B「次に会ったら、今日と全然違うこと言う人がいそうです」
C「それだけ、状況に柔軟に対応していくからですよ。出たとこ勝負じゃなくて、それぞれの選手が丁寧に対応していくのを見るのが、とても楽しみですね」

―――また、機会があれば途中経過を踏まえて予想を伺いたいと思います。ありがとうございました。

(了)