
第36期順位戦A級 最終節
最終節観戦記:五十嵐 毅(日本プロ麻雀協会代表)
最終節開始前のスコアは次のとおりである。(並びは期首順位順)
愛澤圭次 2昇
平井 淳 2昇
成岡明彦 2昇
小川 隆 4昇
高島 努 △5
西尾 剛 2昇
堀川隆司 △1
山田史佳 △6
高島、山田の降級逃れは相当厳しい。首位・小川を追う2昇組には全員名翔位のチャンスがあるが、小川より期首順位が下の西尾は他よりはやや難しい。堀川は下を見て戦うことになるだろう。
◆◆◆ 29回戦A卓 ◆◆◆
堀川△1・高島△5・成岡2昇・平井2昇




















東2局、わずか5・10とはいえ、高島相手にトップラスの形を作られたのは、堀川にとってはよろしくない。ここで堀川、ドラドラでイーシャンテンの配牌をもらう。




















結局、






























東3局(ドラ







東4局、成岡、



南1局、平井が



南2局、成岡



南3局【牌譜1】、高島のホンイツ仕掛けに平井


南4局【牌譜2】、平井がオヤのため10・20でトップの高島、

















成岡



◆◆◆ 29回戦B卓 ◆◆◆
西尾2昇・小川4昇・山田△6・愛澤2昇















東2局、オヤの小川が9巡目にドラ1の


















先の16の収入があるのでリーチ棒を投げても着順が落ちるわけではない。むしろヤミのままのほうが着順が落ちる危険性が高いかもしれない。田中実ならリーチをしそうだ。成岡も場況によってリーチと行くかもしれない。しかし、小川は101の原則に忠実なタイプとの認識があったので、観戦子には意外に映ったのだ。
または、4節までならヤミだったかもしれない。しかし、第5節と大詰めの認識が小川にリーチを打たせたのかも。しかし、小川は追う立場ではないのだが……。結果は流局。点差が詰まり、千点棒が1本転がった。
東3局、供託棒を狙って(?)山田と西尾が喰い仕掛けるも流局。供託が残ったまま。
東4局【牌譜3】、3人喰い仕掛けるが、愛澤




南1局、山田が3フーロ。西尾がピンズのメンホン、








南2局、流局。
南3局、西尾のリーチ打牌

南4局、ラス抜けまで24の西尾、9巡目に、

















結果は17巡目に

◆◆◆ 30回戦A卓 ◆◆◆
平井3昇・高島△5・西尾1昇・山田△6


東2局【牌譜4】(ドラ




しかし、信じられないことが起こった。9巡目に平井がハネマンツモ。















平井のツモは凄い。9巡目までにソウズ以外でツモッたのは2牌だけ。次から次へとやって来るソウズに押し出されるようにピンズ、ワンズの無スジを切り飛ばしているが、前局の放銃でラス目に落ちていなければここまで開き直れたかどうか? 現物の

東3局も平井は早々とピンフドラ1をテンパイし、山田から打ち取る。本当にこの日の平井はよくアガる。101A級最年長のはずだが、ツモはいちばん若い。
東4局、高島がリーチをかける。















南1局(ドラ





























南2局、オヤの高島が5巡目リーチ。

















南2局その2は平井の喰いイッツーペン

南3局、オヤの西尾が

南4局、平井の7巡目、





































山田はこれをツモ切った。たしかに




すると

3メンチャンとはいえ、

その2【牌譜5】、平井が山田に120放銃。ご覧のとおり、高島から出た




絶好調の平井だが、さすがにこの2度目のマンガン放銃を覆す力はなかった。
◆◆◆ 30回戦B卓 ◆◆◆
堀川△1・小川5昇・成岡1昇・愛澤2昇
東2局、流局。
東3局、成岡リーチをツモアガって26オール。















東3局その2は、堀川が5・10。















東4局(ドラ

















南1局、オヤの堀川が


南1局その2(ドラ











































南2、3局と流局し、ラス目の愛澤がオヤのオーラスに。
南4局(ドラ

















南4局その2も、















南4局その3も10オール。

















ラス目に落とされた小川は次局フリテンとはいえ、



◆◆◆ 31回戦A卓 ◆◆◆
堀川△1・西尾0・平井3昇・小川4昇

東2局、オヤの西尾、ピンフ・ドラ1を小川からアガる。
その2(ドラ




















東3局、小川、喰いタンで必死の2フーロ。ドラが

東4局、南1局、と流局。
南2局、堀川と小川がともにピンズのホンイチに向かい、両者ともテンパイする。堀川は、






























南3局、堀川がメンツモ・ドラ1の5・10。オヤが平井だったため、微差ながら平井がトップ目から落ち、堀川と並ぶ。西尾+8・平井、堀川+6・小川△20。
オーラス【牌譜6】、ラスオヤの小川が


東1局から小川とのトップラスポジションを続けてきた平井。前局で並びが崩れ、この局で完全に裏返った。ドウシテコウナッタノカ?
その2に移る洗牌の際、平井の悪い癖が出ていた。貧乏ゆすりである。平井、ラス抜けどころかトップ返り咲きまであるドラ2をテンパイ。




















小川◎で5昇、平井●で2昇と、その差は3にも開いた。南2局まではこの半荘で逆転の筋書きができていたはずなのに……。
平井の打った42は本当に重い。このまま小川が名翔位に就くとしたら、この半荘が大きな意味を持つことになるだろう。
◆◆◆ 31回戦B卓 ◆◆◆
高島△5・愛澤2昇・成岡2昇・山田△5
東2局(ドラ




その2(ドラ

















東3局、愛澤が成岡のメンホンに














その2では愛澤がテンパイを逃す。


















素直に
































東4局は流局。
南1局、愛澤が7・14ツモ。
南2、3局も流れて、成岡+105・山田△15・高島△22・愛澤△68の状況でオーラスに。オヤの山田、
















リーチして26オールでも成岡にまだ16たりないので101ではリーチせずが基本なのはわかる。しかし、それでもリーチして欲しかった。
リーチ棒を出せば3着に落ち、ラス目愛澤のターゲットになる。しかし、愛澤がツモってのラス抜けを考えるならば、どのみちターゲットはオヤの山田なのである。加えてリーチをすれば、終盤に愛澤は差し込みに来る可能性もある。
この半荘を含めて残り5戦で現状△5、もはやラスを怖がる時期ではない。むしろ狙えるトップはすべて逃すわけにいかないという気構えが必要ではなかったか。
その2、愛澤がリーチ。






























しかし次局、今度は成岡が点棒の壁を今度は成岡が利用する。愛澤がペン


成岡、「どうせ僕からは当たれんでしょ」と



◆◆◆ 32回戦A卓 ◆◆◆
高島△5・堀川△1・山田△5・小川5昇

















東2局 小川メンツモ・

東3局、流局。
東4局、山田、4巡目にピンフをテンパイ。すぐに小川が放銃。ドラ無しで12。
南1局(ドラ
































南4局(ドラ
















その2が衝撃的であった【牌譜7】。堀川が13巡目にテンパイ。

















ところが、これがアガれたのである。
小川が次のイーシャンテンから、


















むしろ驚いたのが堀川。「ホントかよ!?」と言わんばかりに目を見開き、身を乗り出して叫んだ「ロン!」の声は会場中に響き渡った。
堀川ばかりでなく、観戦子も驚いた。一瞬何があったかわからず、「確かテンパイしていなかったよな」と、小川の手牌を見直しに行ったくらいである。いや、たとえテンパイしていたとしても101ではありえない放銃である。しかも、小川である。なおさら信じられなかった。
ちなみに、堀川のホウは8巡目から余ったワンズが打ちだされていて、ワンズのホンイチに見えにくいとしても、小川の手の中には


小川は成岡のような鋭さはないが、101の定石を忠実に守り、ジワジワと昇を伸ばしていくタイプである。我慢強く、その点では愛澤に似ている。
その小川が、オーラスのラス目のリーチに、それも点差を考えれば危険な色は明白なところで放銃。しかも誰かを追う立場ではない。トータルで首位の立場である。
「小川の歯車が狂っている」――メモにはそう書かざるを得なかった。
小川が名翔位を逃すことがあれば、この一局が大きな要因となろう。
一方、高島と山田のターゲットとなっていた堀川が逃げ切り残留を成就できたら、やはりこの一局が大きな意味を持つはずである。
◆◆◆ 32回戦B卓 ◆◆◆
平井2昇・愛澤1昇・成岡3昇・西尾0




東2局、流局。
東3局、平井が成岡から16。平井、7巡目のテンパイは、

















2巡後に



次巡の


東4局(ドラ




























その2は、西尾がタンヤオ・ツモの10オールでさらに加点。その3は流局。
南1局はオヤの平井がリーチツモの10オール。





















南2局は流局したが、南3局に成岡がオヤでリーチ。

















その2、ラス目に落とされた西尾が終盤テンパイ。
















西尾、次局オーラスオヤでのテンパイは早かった。4巡目のポンテン。
















明けて全てが決まる最終日を迎えた。
◆◆◆ 33回戦A卓 ◆◆◆
愛澤1昇・高島△4・西尾△1・平井2昇
















南2局、















しかし、高島が

南3局でも高島は平井に20を打って傷を深める。平井2着に浮上。愛澤+120 平井△20 西尾△26 高島△74。
オーラス、オヤの平井がリーチ。



















この1巡で平井のアガリ確率が高まるような場況の変化はない。しいて上げれば、愛澤が平井の目から見て4枚目となる


「気合いが乗ってしまったリーチ」は1巡後テンパイした高島に追い掛けられるが、そのリーチは、














平井のマチは

◆◆◆ 33回戦B卓 ◆◆◆
堀川△1・小川4昇・山田△5・成岡4昇





しかし、18巡目に山田がツモ。



















東2局は小川がツモのみ6オール。
その2、東3局は流局。
東4局は成岡が堀川に12放銃。
東パツのオヤかぶりでラスになった堀川が04差でラスを脱出して迎えた南1局のオヤ番では手が入った。ドラ




その2では小川がチートイツドラ2の

















これにより成岡をダンラスにして、山田+48 堀川+44 小川+36 と、3者接戦となったが、南3局にオヤの山田が成岡からピンフの18、リーチ棒付きで28を取り、その2でタンヤオチートイツツモの32オール(この

その3は成岡が3・6ツモ。
オーラスは成岡が26オールで粘るも、まだ小川と73、堀川と81差。最後は




◆◆◆ 34回戦A卓 ◆◆◆
成岡3昇・平井2昇・西尾△1・山田△4
東2局ではドラ2の手をもらって



東4局は平井がメンツモ・ドラ2で10・20をアガるも西尾にまだ08たらず。そこで次局、積極的に仕掛けた。
南1局、平井の仕掛け(ドラ















実は




















南2局は自風










南3局、山田が高目ツモハネマンの567サンショクをリーチするも、平井が1回もツモらせずにカン

オーラス、チートイツをドラ


◆◆◆ 34回戦B卓 ◆◆◆
堀川△1・高島△5・小川4昇・愛澤2昇



















その後2局連続流局したが、東4局、高島にとって歓迎せざるアガリが出る【牌譜8】。堀川がドラ



さらに南1局オヤ番でメンツモ。ドラ1の14オールで単独首位に。
その2は小川が3フーロで大暴れ。















南2局、ドラ

南3局、オヤの小川は678サンショクにこだわりすぎたか、流局。手なりで打てば、

















オーラス、オヤの愛澤、名翔位連覇のためにはここでのトップは必須。逆に言えばラス逃れにはあまり意味がない。トップ堀川まで184差だけに60オール、それが無理でも40オールは狙いたい。ドラ

















































最終35回戦が始まる前の星取表は以下のとおり。
小川4昇、平井・成岡3昇、愛澤1昇、堀川0、西尾△1、高島・山田△5
高島・山田は降級確定。愛澤・堀川・西尾は残留確定。名翔位の可能性を残すのは小川・平井・成岡の3名である。
この3人の期首順位は平井―成岡―小川の順である。ひとり4昇持ちの小川はトップを取れば無条件だが、同昇で並ばれた場合には平井、成岡、どちらに対しても下になってしまう。
平井の優勝条件は自分がトップで別卓の小川がトップでないこと。トップが取れなくても小川ラス、成岡がトップでない場合に3人が3昇並びとなって平井が優勝となる。
成岡は自分がトップ、かつ平井がトップでない場合に優勝。トップが取れなかった場合でも平井、小川ともにラスなら優勝である。
◆◆◆ 35回戦A卓 ◆◆◆
平井3昇・堀川0・山田△5・愛澤1昇


















東2局流局。
東3局も平井に手が入り、タンピン


東4局、ついにアガリが出る。堀川が5・10ツモ。オヤが愛澤だったので、このままの着順で終われば来期の期首順位は堀川が愛澤より上になる。
南1局流局。局が進むごとに平井の配牌が悪くなっていくようだ。徐々に平井に焦りの色が見え始める。
そして南2局、平井はオヤの堀川に18放銃してラス目になる。いや、平井にとってラス落ちはあまり関係ないだろう。ただ、トップまで61差と開いてしまった。
南2局その2、愛澤がタンピンツモ・ドラ1の13・26。トップ目が入れ替わり、平井からは78差になる。平井の溜息の回数が増えた。愛澤がラスオヤなのでオーラス13・26で並びトップの道もあるが、いずれにしろ残り2局が正念場。
南3局、西家・平井の配牌。


















2巡目、






















「おいおい、なぜか平井に追い風が吹いているぞ」そう思って見ていた。だいたいこういうときは、ネックとなるドラ


7巡目、その残り少ないほうの

このマンガンツモにより、平井+44・愛澤+22・堀川△08・山田△58という状況でオーラスに。山田にはもはやモチベーションはない。堀川は愛澤からマンガン直撃した場合に期首順位が上がるが、それほどシャカリキになって狙うようなものではないだろう。残るはラスオヤの愛澤。平井が勝つにしても、現名翔位としてそう易々と勝たせるわけにはいくまい。
愛澤は最後の壁となるべく、序盤から仕掛け、揺さぶりをかけた。
















◆◆◆ 35回戦B卓 ◆◆◆
高島△5・小川4昇・西尾△1・成岡3昇



流局を挟んだ東3局、成岡がリーチピンフツモ。

















東4局、小川が4巡目に



















8巡目、西尾




しかし好事魔多し。次局、西尾がドラの































南2局、今度は成岡。またも純チャンサンショク。ピンフにドラも付けて今度は実らせた。

















確かに決まった。小川との勝負は。
しかし、この少し後に別卓から、ずっと音沙汰無しだった平井の「28年の思いロン」が静かに聞こえてきたのだった。
しかし、これは集中力を極限にまで高めていた成岡には聞こえていなそうだ。興奮MAXとなったところに冷水を浴びせられた成岡。だがいずれにせよ、相手は別卓。どうすることもできない。
あとは小川である。小川は平井の声が聞こえたという。小川だけは自分がトップになりさえすればいいのだ。しかし、デカすぎるバイマンで224と広げられた差を残り2局で捲るというのはあまりにも無理な相談であった。
ラス前は、ホンイチチートイツ狙いからホンイチトイトイサンアンコ狙いに変化→ポンテンが取れる牌が出ることもなく、イーシャンテン止まり。
オーラスはシーサンヤオチュウを狙うも、まったく手にならず、流局。
平井淳、名翔位初戴冠おめでとう! 筆者とは同い歳だけに感慨深いものがある。海の向こうのイチローとはスケールが違うが「中年の星」として輝いた瞬間だった。
最後まで可能性を残していた小川だったが、やはり32回戦のオーラスに堀川に打った

しかし、まさか平井にこんな日が来るとはね……。
「大手の会社員だから長続きしないだろう」と、師匠にも思われていた男が順位戦に居座り続けて28年。気が付けば最年長現役選手として君臨し、名翔位最年長記録を塗り替える存在となった。
筆者自身、褌を絞め直そうという気になったし、順位戦の後輩たちにも希望を与える結果になったのではなかろうか。
あれっ、そう言えばもう一人同い歳がいたな。お〜い山内啓介、何をしてるんだ??
名翔位・平井 淳 記:木村 由佳
第36期名翔位になった、平井淳。平井にとってこの戦いは、成岡明彦との戦いだった。
2014年12月14日、愛澤圭次が名称位になった日、A級最終戦を終えた平井は叫んだ。「やったー! 成岡の上になったぞー!」
101の順位戦は、期首順位が決まっていて、規定打数の35回戦終了時に同昇だった場合。期首順位が上の者が勝つ。平井はここで「成岡と同点ならわしの勝ち。負けなければええんやな」ということを何度も確認していた。
その場(対局室でのビールと乾きものによる打ち上げ)で私は、「おっちゃん、うるさいなあ。みんなが愛澤さんにおめでとう言うてんのが、聞こえへんやん」と文句を言っていたのだが、そのことを1年後にまざまざと思いだすことになった。
2015年12月13日、A級の最終戦(35回戦)を迎えるにあたって、名翔位になる可能性があるのは3人に絞られた。期首順位順に平井3昇、成岡3昇、小川4昇。最終戦の卓組は平井がA卓で、成岡・小川がB卓だ。
小川は自分がトップならば優勝。平井は小川がトップでなければ自分がトップで優勝、成岡は自分がトップかつ平井がトップでなければ優勝となる。他に小川がラスだったら……などいろいろなパターンが考えられるが、とにかく、3人の戦いになった。
B卓の勝負が決まったのは南2局。そのときの点棒状況は東家から小川+07・西尾+06・成岡△9・高島△49。成岡の配牌は、















「ロン!4000・8000!」






























10巡目にツモった平井は、卓内にだけ聞こえる声で言った。
「ロン。2000・4000」
B卓は成岡が休憩を要求し、トイレに立った。そのとき、A卓の横を通るので、平井は「成岡は、当然、A卓の状況を見て行ったと思った。だから俺がトップ目にいることはわかっていると思っていた。」
ところが、成岡はそれを見ていなかったという。だから、成岡はトップのままB卓が終わったときに「なぜ、だれも自分に『おめでとう』と言わないのだろうと思った」と後にもらしたそうだ。それを聞いた平井はあきれ顔。「成岡はほんまに、集中したら自分のことしか見えへんねんな。金子さんと一緒や。俺には考えられへん。」
平井がA卓で勝負を決めたときの配牌は、
















3人の勝負で、まず自分は必ずトップを取らなくてはならない。しかも敵の動向次第で勝てるかどうかわからない、という状況で、成岡と平井に見えていたもの、聞こえていたものは、周りが「どうせ見えてるでしょ?聞こえてるに決まっているでしょ?」と思ったものとは、かなり違ったようだ。
こうして、平井は成岡に勝ち、名翔位になった。1年目で順位を上にしておき、2年目で同昇で優勝という、2年がかりで獲得した名翔位、20年目にして初の戴冠である。
平井は、そのあとの打ち上げでも、忘年会でも「いやほんまにうれしい。それしかない」と何度も繰り返した。
2月に行われた就位パーティーでは、A級の選手は「平井を名翔位にしてしまったA級戦犯」として整列し、皆さんに反省の弁を述べた。その余興(?)、いやメインイベントは大いに盛り上がり、平井の学友の皆さんも、大いに楽しまれたようだ。 平井は、毎週金曜日に「ガハ研」という研究会を主宰していて、101の選手やアマチュアの愛好家の勉強の場を設けている。「平井さん、本当に頑張ってるんやから報われてよかったね」というのが、みんなの率直な感想の最大公約数ではないだろうか?
101は、選手の人数は少ないが、みんなそれぞれに個性的で、競技マージャンの世界で注目されていることは間違いない。八翔位3連覇の小川隆、戦術本を発表して動画配信への露出も増えてきた成岡明彦、そして良くも悪くもどこに行っても目立ってしまう名翔位の平井淳という主力選手の先導で、今期の101の順位戦がどういう方向に進むのか、またいろいろなタイトル戦への参加で選手たちがどのような評価をされていくのか、ますます目が離せない。
第36期順位戦A級 最終節 星取表 (12月12・13日/東京)
選手名
|
開始前
|
29回戦
|
30回戦
|
31回戦
|
32回戦
|
33回戦
|
34回戦
|
35回戦
|
終了時
|
順位
|
愛澤 圭次
|
2昇 | A − | B − | B ● | B − | A ◎ | B ● | A − | 1昇 | 4 |
平井 淳
|
2昇 | A ◎ | A − | A ● | B − | A − | A ◎ | A ◎ | 4昇 | 1 |
成岡 明彦
|
2昇 | A ● | B ◎ | B ◎ | B ◎ | B ● | A − | B ◎ | 4昇 | 2 |
小川 隆
|
4昇 | B ◎ | B ● | A ◎ | A ● | B − | B − | B − | 4昇 | 3 |
高島 努
|
△5 | B − | A − | B − | A ◎ | A ● | B − | B ● | △6 | 7 |
西尾 剛
|
2昇 | B ● | A ● | A − | B ● | A − | A − | B − | △1 | 6 |
堀川 隆司
|
△1 | A − | B − | A − | A − | B − | B ◎ | A − | ±0 | 5 |
山田 史佳
|
△6 | B − | A ◎ | B − | A − | B ◎ | A ● | A ● | △6 | 8 |