第32期八翔位決定戦 戦前インタビュー

インタビュー:木村 由佳

 2015年八翔位戦(第32期)の決勝を戦う4人が、9月27日に出そろいました。現八翔位・小川隆選手(おがわたかし・A級)、堀川隆司選手(ほりかわたかし・A級)、大貝博美選手(おおがいひろみ・B級)、関根秀介選手(せきねひでゆき・一般)です。この4名の方に「八翔位決定戦」を戦うに当たっての意気込みなどを聞いてきました。

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 まず、八翔位決定戦3回目の、堀川選手です。準決勝B卓で須藤浩選手(麻将連合)、高島努選手(A級)、藤森弘希選手(B級)を下して、6回戦で勝ちあがりを決めました。

―――まずはおめでとうございます。今の率直なお気持ちを聞かせてください。
「素直に、うれしいです。10年以上前に2年連続八翔位決定戦に出ましたが、それ以来なので、本当にうれしいですよ」

―――B卓で戦っていて、勝ち上がりを意識したのはどの時点ですか?
「5回戦でトップを取って単独2昇になった時ですね。このチャンスを生かしたい、という気持ちを強くしました」

―――1回戦では藤森選手、2回戦は高島選手にトップを取られましたが、このメンツはどうでしたか?
「メンツを見たときから、やりやすいメンツだと思いました。勝ちやすいということではなくて、比較的守備重視型の3人なので、自分も戦いやすいと思いました」

―――実際、4回戦は3・6のアガリが高島さんと須藤さんに1回ずつしか出ず、点棒の動きが少なかったですね。
決定戦のメンツについてはどう思われますか? (ちなみに、2000年の決定戦のメンツは、田地裕さん。涌田悟さん、安川秀樹さんで優勝は田地さん、2001年の決定戦のメンツは有馬理さん、田地裕さん、小川隆さんで、優勝は有馬さんでした。)
「誰が相手か、ということはあまり考えず、まっすぐな気持ちで行きたいと思います。3回目とは言え、10年以上たっているのですから前回のことはほとんど忘れてしまっています。初出場だという気持ちで打ちますよ。ただ、101の選手が決定戦に3人残ったのはよかったと思います」

―――堀川さんは今年、最高位戦クラシックに5組から出場して準決勝まで勝ち進みましたね。順位戦も3節終わって1昇で暫定4位とよいところにつけておられます。今年、好調の理由を教えてください。
「最近は毎日フリー雀荘で打っているんですよ。マージャン中心の生活にして、開店から約9時間打っています。だからこそ、ここまで勝てたのだと思います。クラシック準決勝にしても順位戦にしても、自分でも調子がいいという感触を持っています」

―――はい、じつは私もそこで何度も同卓させていただいているので知っていますが、本当に毎日淡々と、きっちり規則正しく打っておられますね。決定戦までの3週間はどのように過ごされますか?
「もう、これまで通り、普段通りに過ごすつもりです。だから毎日フリーにいますから、来てくれたらいますよ。ただまっすぐに、マージャンを打つ。それだけです」

 続いて、C卓を勝ち上がった関根さんにお話を伺いました。C卓は村田光陽選手(B級)、小田宏一選手(麻将連合)、中村ゆたか選手(麻将連合)で、規定の6回戦では決着がつかず、2回延長となりました。

―――勝ちあがりを決めた8回戦は、東2局に小田さんから80アガって、ずっとトップ目でしたね。どの辺で「勝ち」を意識されましたか? 8回戦は、関根さんか中村さんがトップを取れば勝ち上がり、という状況でしたが。
「いやもう、オーラスの中村さんが自分の手番で最後の牌をツモって、何も言わなかったときです。それまではまったく安心できませんでした」

―――関根さんは準決勝に進むのも初めてでしたが、1人勝ち上がりの準決勝の感想を聞かせてください。
「メンツはとてもキツかったと思います。私は一瞬、落ちる寸前まで行ったんですよ。6回戦、小田さんがトップで私がラスならば小田さんの勝ち上がりで、山越しも警戒していた局面で南2局に手詰まってオヤの小田さんに放銃し、更にその後20オール引かれて、小田さんトップ目で自分がラス目という並びを作ってしまいました。南2局その3で中村さんが20・40引いてトップになってくれて助かりました。1打のミスが致命傷となるそれが八翔位戦だとつくづく思い知らされました」

―――決定戦のメンツについてはどう思われますか?
「じつは3人の誰とも、101を打ったことはないんです。大貝さんとは、秋葉原の雀友倶楽部で何度か同卓しましたが、101とはルールが違いますからね。彼らと打ったことがないというのはつまり、今まで自分が彼らと戦うレベルにたどりつかなかったということです。6回目の八翔位戦で初めて準決勝に進み、更に勝って、夢にまで見た決定戦に出られるのですから本当にうれしいです」

―――関根さんは今年、RMUのワンデー大会「マーキュリーカップ」で優勝されて、アマチュアの強豪としても知られています。アマチュアの代表として決定戦に臨まれる気持ちを聞かせてください。
「101の選手3人と決定戦を打てるのですから、負けても悔いはないですよ。プレッシャーもまったくないです。ただ、昨日(八翔位戦準決勝初日)までは、自分としては最高の出来だったのではないかと思っているので、今日(八翔位戦準決勝2日目)のミスを反省しつつ、気を引き締めて決定戦の日を迎えたいです。楽をしようと思って小田さんに6sを打って自ら窮地に立ったことは、戒めとして忘れないようにします」

―――何か、特別な準備など、考えていますか?
「蔵前のマージャン101イン東京に行くことと、水曜日に地主ツアー・松井ツアーが運営している麻将連合の池袋道場に行くことは決めています。やるだけのことはやって臨むつもりです」


 もう1人は、101に入って以来15年めの挑戦で決定戦の権利を得た大貝博美選手(B級)です。A卓で田村洸選手(麻将連合)、伊澤興選手(一般)、石川由人選手(一般)と戦って勝ち上がりを決めた後、大貝選手は喫煙所で私を待っていてくれて、そこで他の選手に囲まれながら心境を語ってくれました。

―――今のお気持ちを聞かせてください。
「まず、疲れました。でも率直に、とにかくうれしいです。37歳のときに最高位戦に入り、その後101に入って15年目です。休場のとき以外は毎年出場していましたが、やっとここまで来た、という感慨があります。昨日の4回戦と今日の5回戦、いずれもマンガンが欲しい局面でマンガンが仕上がったので、恵まれたとしか言えません」

―――準決勝がABCの3卓で始まって、初アガリが出たのは大貝さんが一番遅かったですね。なかなかアガれないことの焦りなどはありましたか?
「みんなの『ロン』の声を聞くばかりだったので、あのアガリはうれしかったですね。早い巡目の役あり3メンチャンだったわけですが、どう足掻いても3着キープにしかならない、つまり大勢に影響のないテンパイなんですよ。それでも『2戦ノーホーラじゃ次に弾みがつかないよなぁ』と思っていたので、無事にひきアガれた時はホッとしましたね。ドラのを打ってきた親でトップめの石川さんに対し、今にもやめる気構えでもありましたし。聞けば私と50差でラスめの田村さんにも直撃&ツモ条件のヤミテンが入っていたそうで、自分が思っていた以上に切迫した状況だったようです。伊澤さんの連勝とならなかった結果と合わせ、落ち着きを取り戻すことができた価値あるオーラスでしたね。『誰かに2昇目を挙げられてから追いかける展開は自分には不向き』と思っていましたから」

―――準決勝のメンツはどうでしたか? 全体をふり返ってください。
「卓組の発表があった時、打点の高い人がそろっているので、このメンツで自分が2昇するのは難しいと思っていました。
 トップを取れた3回戦は、とにかく恵まれていたというか、ツイてたんですよ。まず11差の番手で迎えた3回戦のオーラス、トップめの石川さんが伊澤さんの2フーロ18に飛び込んでくれて僥倖のトップでしょ。続いてラスめだった4回戦のオーラスも、喰ってイーシャンテンというチンイチ仕掛けがテンパると同時に、トップまで足りるヤミテンが入っていた伊澤さんが私のロン牌を先にひいてくれてラスからトップになれて。伊澤さんのマチはの3メンチャンで、掴んだはどうやらリン牌(零牌=最後のアガリ牌)だったみたいです。たぶん1対8くらいの感じで圧倒的に分が悪い勝負が目と出てくれたわけで、これもラッキー以外の何物でもないですよね。さらにはまたまたラスめになっちゃった(苦笑)5回戦のオーラス、最初は『マンツモ条件ならサンショクか?』と進めていたはずの手牌がなぜかホンイチになり、リーチでツモれちゃうというまさかのラス抜け。ラスめの苦し紛れの一色狙いなんて、101ではたいてい決まらないんですけどね。
終始こんな感じだったので、『勝った』という実感に乏しいんですよ。勝因らしきものが見当たらないというか。まあ元々マージャンって、そういうものかもしれないですけどね」

―――最後の半荘は、逃げ切った、という感じでしょうか。
 「2昇を持って迎えた最終6回戦、東1局で26オールをツモった後はとにかく山越しを警戒して必死で打ちました。私がラスになるか石川さんのトップで延長ですからね。終盤手詰まることを覚悟しながらしっかり打てたなあ、と思います。ちゃんと打てたのは最終戦だけですよ」

―――決定戦はどう戦いますか?
「とにかく初めての舞台なので、皆さんに挑戦するつもりで打ちます。私が勝つ可能性があるとすれば、それは初めに誰も飛び抜けないで、終盤にもつれ込む展開になって、最後に私にラッキーな出来事があったときだと思います。だからこそ序盤を大事に、自分から転んでチャンスをつぶすことがないように打ちたいと思っています。」

―――大貝さんはB級でも好調(このインタビュ時、5昇で暫定1位)ですね。
「今日ダメだったら、B級でもダメなんだろうなと思っていました。今日勝てたのでまたB級でしっかり戦える気がします。みんなに追い越されてきたので、頑張りたいです。 準決勝が終わったあとに石川さんが言ってたじゃないですか。『しかし八翔位戦って異常に面白いよね、他のタイトル戦とは全然違う。何だろ、この面白さは』って。全く同感ですね。だからこの感覚を、少なくともあと10戦味わえることになったのは嬉しいです。もちろん面白さ以上に、泣きたくなるようなカラい思いもたくさんするんでしょうけど」


 さて、この3人を迎え撃つのは現八翔位の小川選手です。小川選手は、「マージャン101チャンピオンズマッチ」の前日、マージャン101イン東京に参加されたので、そのときにお話を伺いました。

――今回の決定戦のメンツが出そろいましたが、今のお気持ちを教えてください。
「一人ずつ話しましょうか。まず堀川さんとは、101に入ってからC級で3年打って、B級では一緒にならなくて、そのあとAでずっと打っています。2001年に一度、八翔位決定戦を戦いましたが、その時は2人して有馬さんに負けました。今年、二次予選、準決勝と堀川の戦い方を見ていましたが、順位戦とは違ってずいぶん攻撃的なので驚きました。最近、彼は毎日しっかりマージャンを打っているらしいし、やるべきときはピシッとやってくるから、気を引き締めて戦いたいと思います」

―――大貝さんとは、順位戦では打つ機会がないと思いますが。
「かなり前、C級で2年間打ちましたね。彼が101に入った時は、王座をとった直後で『怪物くん』というあだ名がついていて、注目されていました。A級を経験していないとはいえ、ずっと辛抱強いマージャンを打っているという印象があります。今年の八翔位戦では、一次予選、二次予選、準決勝と一度もラスになっていませんし、順位戦でも暫定一位と調子がよさそうですね。彼は堀川さんとは違い、今年は順位戦も八翔位戦も同じように戦っている印象があります。」

―――決定戦を戦う皆さんのインタビューをしていて、大貝さんが一番鼻息が荒いというか、インタビューもすごく語ってくれて迫力がありますよ。
「大貝さんが昇を持っている時に点棒を預けると、本当にそれを奪い返すのが難しいと思いますね。直撃を警戒してしっかり、スキのないマージャンを打ってくると思います。しかし過去に大貝さんにも八翔位戦では負けたことがないので、しっかり戦って勝ちたいと思います。そういえば八翔位決定戦で、自分より年上の人と戦うのは、今回が初めてなんですよ。だから年長者に敬意を表して……」(ここはごまかされましたが、このことは書け、と言われました。)

―――アマチュアの関根さんはどうですか?
「何年か前のチャンピオンズマッチでも優勝していますし、強い人だと思います。じつは、ミューのビッグワンカップの本戦1回戦で当たったことがあり、その時は負けました。ミューの仇を101で討つ、という気持ちでいますよ」

―――小川さんは平日は愛知県でお仕事をして、土日に101のために東京に来る、というパターンが続くようですが、昨年同様、今年もそんなふうに過ごされますか?
「いえいえ、じつはこの後、海外に出張なんですよ。しかも昨日までの3日間は神奈川県の大磯で研修で、全然自宅で寝てないですね。木曜日に帰国して、金曜日に会社に行って、終業後新幹線で東京に来て、土日が八翔位戦。飛行機のトラブルがないように祈るばかりです」

―――では、さっき(このインタビュー前に)マージャン101イン東京で藤森選手や私と打ったマージャンが調整になればよいのですが……?
「さっきの対局では、いろいろなことを考えすぎて。肝心なところで反応できませんでしたね。じつは、あなたが切ったをカンしなくてはならなかったのです。サンカンツが確定しますからね」

―――あれ、ソウズのホンイチだと思ってたのですが……、あの巡目で打つ方も打つ方でしたね。決定戦ではあんな生牌は出てこないですね。
「そうだとしても、やっぱり出たら対応できるように。ポン、カンを忘れないように気をつけないといけないですね。昨年は優勝できましたが、内容を見るとあまりいいマージャンを打てていなかった気がします。今年は、いいマージャンを打って勝てるのが理想ですが、仮に負けても、『ちゃんとしたマージャンを打った』と自分も相手も観戦者も納得するようなマージャンを打ちたいと思います」

―――無事帰国なさることを祈っています。ありがとうございました。

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 八翔位決定戦は、10月17日(土)、18日(日)、11月7日(土)に、東京対局室で行われます。ツイッターでの速報も随時流れますので、楽しみにお待ちください。準決勝終了から決定戦まで3週間しかなく、インタビュー記事のアップが直前になってしまい、すみませんでした。
(了)



第32期八翔位戦 システム

【出場資格】
・麻将連合推薦、オープン参加選手及び連盟所属選手
・ オープン参加選手は、昨年度のマージャン101における打荘数が24ある者から各支部内で選抜。
【1次予選】
・各卓4戦(1日)を戦う。
・規定回終了時のスコア上位2名を勝ち上がりとする。
・4回戦終了時に上位2名が確定しない場合は、これが確定するまで延長戦を実施する。
【2次予選】
・2次予選シードの連盟所属選手及び1次予選通過者により行う。
・各卓6戦(2日)を戦う。
・規定回終了時のスコア上位2名を勝ち上がりとする。
・6回戦終了時に上位2名が確定しない場合は、これが確定するまで延長戦を実施する。
【準決勝】
・2次予選通過者により行う。
・各卓6戦(2日)を戦う。
・6回戦終了時に単独で2昇以上の首位者が決定戦の出場資格を得る。
・6回戦終了時に単独で2昇以上の首位者が発生しなかった場合は延長戦を実施し、7回戦以降はその回の開始時の首位者のスコア+1昇に単独で到達する者が発生するまで延長戦を実施する。
・「初めて、4者同スコアで決着権がある状態」となった場合は、その一戦の終了時の単独首位では決着としない。
  ただし「再度、4者同スコアの状態」となった場合は、同戦終了時の単独首位で決着とする。
【決定戦】
・八翔位及び準決勝通過者により行う。
・10戦(1日4戦)を戦う。
・10回戦終了時に単独で3昇以上の首位者を優勝とする。
・10回戦終了時に単独で3昇以上の首位者が発生しなかった場合は延長戦を実施し、11回戦以降はその回の開始時の首位者のスコア+1昇に単独で到達する者が発生するまで延長戦を実施する。
・「初めて、4者同スコアで決着権がある状態」となった場合は、その一戦の終了時の単独首位では決着としない。
  ただし「再度、4者同スコアの状態」となった場合は、同戦終了時の単独首位で決着とする。