
第36期順位戦A級 第4節
第4節観戦記:鈴木聡一郎(最高位戦日本プロ麻雀協会・1日目)・坂井 準司(2日目)
日本の伝統芸能において、後継者問題は常に悩みの種である。私の所属する最高位戦日本プロ麻雀協会においても同じであり、ここ101競技連盟においても同じである。
誰が101A級の魂を受け継ぎ、次世代のエースとなるのか。その継承が待たれる。
対局後、私は101の魂が受け継がれるところを見た気がした。
場所は、秋葉原の居酒屋。
「今年のA級は、今年の名翔位を決める決勝戦であると同時に、来年のA級を打つための準決勝でもあるわけよ。だから来年の決勝戦に出るために必死にA級に残れよ」
成岡からの言葉に、高島はうつむきながらも「はい」とうなずいた。
小川がやや抜けており、高島・山田がやや離された状況となっている。誰が小川に追いつくのか、そして誰が高島・山田との残留争いに加わってしまうのか。
本日の結果で、残試合の過ごし方が決まりそうである。
◆◆◆ 21回戦A卓 ◆◆◆
堀川1昇・成岡△1・愛澤1昇・平井0


















しかし、成岡は、ここで予想だにしない一打を放つ。
成岡の選択はドラの

その後、ツモ















南1局、そんな成岡の2巡目。


















これに捕まってしまったのは堀川。

















このままの着順で決まり、成岡がマイナスをゼロに戻す。
◆◆◆ 21回戦B卓 ◆◆◆
小川4昇・山田△3・西尾1昇・高島△3

















しかし、予想に反してこれが長引く。































東1局から息をのむぶつかり合い。特に、△3となっている山田の押し返しがこの後も続いていくだろう。
東2局、10巡目に西尾がテンパイ。































東4局(山田18→高島・小川28→西尾 供託10)、ここでも山田が積極的に仕掛ける。
2巡目に
































































南1局(高島52→山田46→西尾32→小川)、高島を追う山田。6巡目に2枚切れのカン




















南3局(高島62→山田14→西尾66→小川)、2巡目に小川がサンショクイーシャンテンとなるが、小川がツモ切りを続ける中、山田が8巡目にツモ

































これで高島に迫ったが、オーラスは山田にも小川にも手が入らず、高島がトータルトップの小川を沈めながらのトップ奪取に成功した。
◆◆◆ 22回戦A卓 ◆◆◆
愛澤1昇・西尾1昇・山田△3・成岡0






























同点トップ目の山田が7巡目にトップ陥落のリーチをかけたのである。















成岡は対局後に語った。
「あの山田のリーチはどうなのかな。先制リーチはないんじゃないかな。逆に、追いかけリーチならアリだと思うんですよ」
山田の思いもわかる。残り試合数が減ってきての△3は非常に重い。「ここでこの半荘を決めてしまいたい」という思考なのだろう。また、ドラを打っている成岡の動きも止めておきたいとの考えもあったか。
対して、成岡の考えはこうだ。出て30、ツモって14オールでいったんトップ目に立てるのだからヤミテンで十分ではないか。自身のオヤ番であるため、仮に先制リーチが入ったのであれば、ツモられるといずれにしても2着めか3着めに落ちるのであるから、追いかけリーチで決めにいくというのはある。そういう考え方だ。
確かに山田の思考もわかるのだが、ここでは△3を意識しすぎているように思われた。結果、山田が

こうなってしまうと、何十年とラス回避をしてきた成岡が強い。南3局【牌譜2】(西尾20→愛澤30→成岡・山田)、


















すると、すぐに


























最終手出しが


すると、候補は









そのゆとりが、ヤマに薄かった


















◆◆◆ 22回戦B卓 ◆◆◆
小川3昇・堀川0・高島△2・平井0


































南1局(小川160→堀川40→平井80→高島)。しかし、平井がここから奮起。ラス抜けを目指す高島のリーチをかわして、20・40。


































南4局(小川70→平井90→堀川10→高島)、ラス抜けを目指す高島が6巡目に






























その間に手詰まりを起こしたのは、意外にも小川だった。苦しいながらもこの巡目までなんとか凌いできた12巡目の小川。






















しかし、小川が長考の末に出した答えは

これは意外だったのだが、さらに意外だったのは小川のコメント。
「前節にこういう

「あの小川でも精神的に崩れることがあるんだな」と、なぜか少し安心した。
この120で平井がトップ目に立つと、オーラスその2では高島がテンパイを入れるも、ロン牌が脇に流れて流局。平井がトップを取ったというより、小川が昇を逃した半荘となった。
◆◆◆ 23回戦A卓 ◆◆◆
愛澤1昇・成岡0・高島△3・小川3昇




















ここで成岡がすでにツモ切っていたドラ
















































東3局(小川14→成岡14→愛澤42→高島)、後がない高島が6巡目に下記からドラを切る。



































しかし、その後高島が踏ん張り、ラスを成岡に押し付けた形で南4局【牌譜3】(小川152→愛澤10→高島04→成岡)を迎える。オヤはトップ目小川であり、実質的に連荘はないため、下位3名でラス決定の1局勝負となる。
2巡目に自風の
































実は、


愛澤は言う。「鳴かせて手牌構成を見えやすくしないと怖いじゃないですか」
ただ鳴かせないだけが守備ではない。こういう守備もあるのだ。
愛澤のお膳立てはここまで。ここから先、選択権を持っているのはオヤでダントツの小川である。














実は成岡が






これが成岡に当たって20。
成岡は本日2度目のラス回避。高島はトップの後、痛恨の連ラスとなった。小川は4昇に復活。危なげなく首位のど真ん中を歩いている感じである。
◆◆◆ 23回戦B卓 ◆◆◆
西尾2昇・平井1昇・堀川0・山田△4
まずは東2局、堀川から6巡目に16。





































































南3局(堀川06→山田28→平井78→西尾)、ここでもオヤ堀川がフリテンの

















◆◆◆ 24回戦A卓 ◆◆◆
小川4昇・愛澤1昇・山田△4・平井1昇
すると、東4局には愛澤の5巡目テンパイに平井が飛び込み、80。

















南1局には、山田自身も小川に30を放銃してしまい、少しトップが遠のく。

















しかし、南3局には山田が平井から24をアガり、トップを射程圏内としてオーラスを迎えた。
南4局(愛澤56→山田22→小川68→平井 供託10)。10巡目、オヤの平井がツモるとトップまで突き抜けるドラマチのリーチ。































しかし、その直後、平井の手元に

南4局その2(平井14→愛澤56→山田22→小川)、4巡目に小川の手が止まった。

















その後、手牌は順調に育って9巡目にこのテンパイ。

















逆に山田にとっては悪夢のような半荘。序盤にトップ目に立ったところから、オーラスも2着目で迎えるが、放銃せずにオーラスだけで2人にかわされラスとなってしまった。
◆◆◆ 24回戦B卓 ◆◆◆
高島△4・西尾1昇・堀川1昇・成岡0




















この仕掛けに対し、オヤの堀川が10巡目に

成岡は言う。
「切ったのが堀川なら、この

直後に


序盤のまたぎは待ちになりにくい?
いや、そういう次元の話をしているのではない。
堀川が

成岡は


















しかし、普段から「東場にマンガン放銃したぐらいでラス引くなんて弱いなあ」と自責している成岡にとっては、ここからが本当の勝負。
まずはその2で20・40。







































カッコつけすぎだ。
カッコつけすぎてカッコいいじゃないか。
次局、堀川から西尾へ80放銃。


















南1局(西尾20→堀川68→高島12→成岡)、トップ目に立った西尾が加点を目指し、オヤ番で8巡目にドラ切りテンパイ。




































南2局(西尾・成岡20→堀川88→高島)、なんと同点トップまでひょっこりやってきた成岡。ちょっとラスまで散歩してきましたわあ、とでも言い出しそうである。
しかし、成岡の散歩はこれで終わらなかった。ここで、もっと気持ち悪い手順が炸裂する。

















「この手牌のポイントは、

少々極端に言えば、発想としてはこれだ。


















とはいえ、ついついターツを残して孤立牌を切りたくなるものだが、成岡はそんな誘惑には乗らない。
そう、誘惑に乗らない。
突き詰めればそれだけなのだが、そこにたどり着くまでがマージャンであり、101A級という伝統芸能でエースの1人として活躍するということなのである。












その直後、11巡目の西尾。















3着争いは、南3局に高島が以下の手でリーチ。































対局後、残った何人かで居酒屋へと行き、冒頭に紹介した高島へのエールが成岡から発せられた。
しかし、それに加え、成岡は続けた。
「でも、全力で落とすからな。いま降級ポジションにいるってことは、みんなお前と山田にだけは浮上させないように打つから。簡単に残れると思うなよ」
残留ラインまで4つ。ここからの逆転はかなり難しい。そういうメンバーであるし、「101競技連盟 順位戦A級」という伝統芸能だからだ。
それでも、高島は前を向いて打ち続ける。来期の決勝に残る戦いが、101の魂を受け継ぐ試練が、始まった。
◆◆◆ 25回戦A卓 ◆◆◆
愛澤2昇・堀川0昇・西尾1昇・小川4昇
その小川が躓いたのが東2局。西尾に早いヤミテンが入り、ピンフドラ2リャンシャンテンの手牌だった小川が7巡目に放銃。
































東3局、開局から頭を下げ続けていた堀川にようやく勝負手が入る【牌譜4】。








































この局筆者は西尾の対面で観戦していたのだが、ダブ







そしてこの局、実は最も印象に残ったのが愛澤の捌き。愛澤も7巡目からイーシャンテンで10巡目には以下の形になっていた。

















「














東4局 ラス目のオヤ小川のテンパイ取りが悩ましい【牌譜5】。








































一方、




















































南1局、南2局は流局。南3局はトップ目愛澤が堀川から16の追加点でオーラスを迎えた。
南4局(愛澤25→西尾32→堀川05→小川)【牌譜6】、愛澤の手牌が抜群に良く5巡目でピンフのイーシャンテン。
































こんなアガリを見ると、天邪鬼な筆者としては「こりゃ誰かがやってしまったのでは?」と犯人を探したくなるのだが、今改めて牌譜を眺め返しても小川以外の3人に疑問手らしきものは見当たらない。愛澤は譜の通りだろう。堀川にもアガリはない。とすると残るは西尾だが、実は愛澤が8巡目に捨てた
















西尾から見ると「手牌トイツの


そうするとこれはもう、アガリった小川を褒め称えるしかないのだろう。東4局以降、頭を下げ続けてきた小川の往き方が間違ってなかったことの証左か、現八翔位の底力か。ちなみにリーチの時点で小川のロン牌はなんとヤマに5枚残りであった。
南4局その2(小川18→愛澤25→西尾32→堀川)、盤石の展開をたった1局でひっくり返された連合軍、このまま終わる訳にはいかない。特にトップ目を捲られた愛澤はそう思ったはず。こういう時の愛澤は静かに、しかし激しく闘志を燃やすタイプだ(と筆者は密かに思っている)。
「小川のトップを絶対捲る!」そんなオーラが愛澤から立ち上がっていた気がする。気合が牌山に乗り移ったか、その愛澤に10巡目テンパイが入る。

































期首順位は誰よりも上の現名翔位愛澤、会心の逆転トップで小川の背中を捉える3昇目をあげた。
◆◆◆ 25回戦B卓 ◆◆◆
成岡1昇・山田△5・高島△4・平井1昇
東2局、西家平井が1巡目に

その後は流局が続き、迎えた南1局。今度は平井が第一打を横に曲げる。時間はかかったが12巡目にツモって5・10 やはり「マージャンは配牌か?」と筆者以外にも脇の2人が思ったかどうかは定かでないが、これでオヤカブリの成岡が僅差のラス目に(山田23→平井01→高島05→成岡)。
東1局以降も成岡には何度かテンパイが入っていたが、アガリには結びつかずにますますストレスが溜まる羽目に。唸り声をあげて頭を掻き毟るその様子は隣の卓の記録子が思わず振り返るほどで(記録に集中しましょうね、O川戸さん)暗雲立ち込める展開かと思いきや、南2局にトップまで突き抜ける爽快な20・40のツモアガリ。

















成岡は南3局にも13・26をツモアガリ、オーラスは流局して危なげなく2昇目をあげた。ラスはノーホーラノー放銃の高島。筆者も経験があるが、放銃なしでのラスは本当につらい。
◆◆◆ 26回戦A卓 ◆◆◆
堀川△1・小川4昇・西尾1昇・山田△5












































東3局に堀川→山田16、東4局に山田→堀川12、南1局に山田→西尾20と小刻みに点棒が動いた後の南2局、堀川の痛烈な一撃が山田を襲った。

















南4局(堀川16→西尾24→小川128→山田)、前局の小川のツモアガリで三つ巴の様相を呈したオーラス。トップ目堀川を追う2人は山田にさえ放銃しなければラスはないので、ここはとことん前に出てくるだろう。最初に動いたのは20出アガリでトップの北家西尾。9巡目に



































































リーチ後に西尾に澱みなくツモ切られた



まさかこうなることを予測してアンカンしなかったわけではないだろうが、結末はドラマチック、幸運の女神に見初められたかの如く、西尾に鮮やかに逆転トップが転がり込んできた。
◆◆◆ 26回戦B卓 ◆◆◆
高島△5・成岡2昇・平井1昇・愛澤3昇

































成岡はこれで連勝(前日最終戦からだと3連勝)と絶好調。なんだか、鉄人デーになりそうな予感が。対局の詳細は高島選手の自戦記をご参照ください。
◆◆◆ 27回戦A卓 ◆◆◆
高島△5・愛澤2・堀川△1・山田△5
その2は流局後の東2局、堀川に絶好手が入る。5巡目に、
















毎局のようにテンパイは入るもののアガリに結びつかない堀川だったが、南1局にまたまた絶好手が入る。





































































代わってのラス目はオヤカブリの愛澤。山田に対して「何であなたが堀川のラス抜けを手伝うのですか?」と言いたげな高島と共に展開に納得がいかない様子に見えた。
南3局(高島68→堀川12→山田08→愛澤)、トップ目高島が序盤に
































オーラスはラスオヤ山田が再び8巡目にリーチといくが誰も相手をせず、お決まりの流局でそのまま終了。
◆◆◆ 27回戦B卓 ◆◆◆
西尾2昇・平井1昇・成岡3昇・小川4昇
東1局、オヤの西尾が10巡目にチーテン。

































東2局、成岡がタンヤオチートイツをツモアガって16・32。あっさりと平井に並びかける。


















東3局、オヤ成岡がダブ




















「そんなに高い手だとは思わなかった」と局後に語っていたが、点数以前にトップ目として振り込んではいけない場面だと思うのだが。実は「前局の成岡のツモアガリが相当ショックで平常心を欠いていた」らしい。それほどまでに成岡のツモアガリは強烈だったようだ。ともあれ、これで成岡のトップは磐石で、その2と東4局は西尾のツモアガリで更に小川がラス目の理想形に・・・と思われたのだが、南場に落とし穴が待っていた。
南1局(成岡95→西尾16→平井31→小川)【牌譜7】。2局連続でツモアガリして気分よくオヤ番を迎えた西尾が反撃の狼煙を上げた。成岡2副露の後、小川からチートイツドラ2の96をアガったのだが、西尾3巡目に






南1局その2、成岡が

手牌には1枚も安牌がない成岡だったが、それでも何とか凌いで流局だろう、と思って隣の卓を覗いていると小川のロンの声が!「まさか、ツモアガリしたのか?」と戻ってみると成岡が1人で点棒を支払っているではないか。


















南2局、6オール、14オールと平井連荘で迎えたその3(西尾32→平井21→成岡134→小川)。平井11巡目、





































































南3局(ドラ












































南4局 (西尾32→平井31→成岡134→小川)【牌譜8】。今期の名翔位争いを左右することになったかもしれない1局。まずは平井。供託2本でアガればトップ!の気合を前面に押し出して12巡目にテンパイ。


















































成岡は小川の少考をイーシャンテンからの待ち選択(ノーテン)と読んだのだろうか?大半の無筋は平井が通しており、残っている両面はこのドラまたぎの



南4局その2【牌譜9】、ダブロンを頭ハネされた平井だったが、ワンモアチャンスの1局。1巡目に上家の西尾が切ったばかりの自風


































想定1は、7巡めにツモアガリの、


























































次巡平井、

































タラレバの


◆◆◆ 28回戦A卓 ◆◆◆
高島△4・成岡2昇・山田△7・小川4昇





















南3局、成岡に速いイーシャンテン、3巡目で以下の形に。













南4局、ラス目山田5巡目リーチ。



















トップ目を逆転された成岡「何となく捲られそうな気がしていました。小川さん(がトップ目)だと流局するんだろうけど、弱いトップ目だな・・・」とは(すべて本心だとは思えないが)何とも寂しいコメント。
◆◆◆ 28回戦B卓 ◆◆◆
平井1昇・西尾3昇・愛澤2昇・堀川△1
















東3局、前局オヤカブリでラス目となった西尾がリーチといくが流局。後で聞いたら、ヤミテンでもラス抜けできる役ありだったらしい。どうやら「リーチ」の声にびっくりして幸運の女神はどこかへ逃げてしまったようだ。
この半荘の決定打は南場での平井の2回のツモアガリ。南2局、平井9巡目リーチ。




















南3局その2、平井2巡目リーチ。




















南4局 (平井08→堀川16→愛澤92→西尾)。平井、この点差では気が気でなかっただろうが、本人が思っていた以上に体勢は盤石だったようで、番手の堀川、愛澤ともどもテンパイは入らず。拍子抜けするほどあっさりと流局となり、待望のトップに。
いよいよ残るは最終節。小川4昇を先頭に2昇が愛澤、平井、成岡、西尾の4人と近年稀に見る激戦となった名翔位レースを誰が制するのか、最後まで目が離せない。
第4節自戦記(23回戦A卓:小川 隆)
前2回戦ともに痛い目に合い、芳しくない精神状態に陥ったが、対局前からこの23回戦の自戦記を担当することが確定していたこともあり、何とか気持ちを奮い立たせて本日3戦目の対局に臨む。
No.1【東1局】
7巡めの成岡のドラのツモ切りに恐る恐る対応。幸運なことに際立ったハイを打ち出すこともなく自然とテンパイが入る。この巡目ならロンパイがこぼれ落ちそう。直に期待通りの結末が待っていた。
No.2【東2局その1】
高島のポンテンでオヤの成岡がテンパイ。そして1巡おいてリーチ。即、決着はしたが、長引くと手詰まり模様の自分がトイツ落しのを選んでいたかも。
No.3【東2局その2】
愛澤の序盤のリャンメンターツの切りに怯え、早々に防御に徹する。12巡めに刺激的なションパイのが出現。それを見送った成岡が危うそうな
をツモ切り、次巡の愛澤のテンパイ打ハイの
を仕掛け、さらに押してくる。この時点で愛澤のアガリハイは4枚。すべてヤマに眠っていた。
No.4【東3局】
ドラを2枚引いてきた。ほくほくである。ラスめのオヤが、余剰ハイなく手を進め、ドラを打ち出してくれた。望外なポンテン。さらにカンチャンが3メンチャンに変わって、もう容易には引き下がれなくなるが、すんなりとツモアガった。
No.5【東4局】
アガりには遠そう。ファンパイを絞って長期戦に。10巡めに愛澤からションパイのがツモ切られるが、恐れ多く声を出せない。2巡後にはドラがツモ切られ、愛澤への注目度がより一層高まる。にもかかわらず、珍しく成岡が突っ込んで行った。
No.6【南1局】
前局のアガリで勢いづきそうなオヤの放銃により、三家が接近した好ましい展開になる。高島がヤミテンにしたのは、まずはラス抜けを優先したからであろう。
No.7【南2局】
ハイパイでドラが3枚。思わず緩んでしまいそうな表情を隠しつつ、ツモる指先に力が入る。ラスめのオヤの仕掛けにも動じることなく、ドラ3を保有したトップめの強みで密かに突進。これをアガって決定打としたいところだが、さすがに警戒されてしまった。
No.8【南3局】
愛澤のホンイチ模様の仕掛けにワンズが打ちにくくなる。トップめでしかも上家の自分がテンパイを入れさせるわけにはいかない。そのワンズを1枚も余すことなく、うれしいカンが埋まってピンフのテンパイ。いつでも後退する気構えでいたが、先にロンパイをつかんでくれた。
No.9【南4局】
ラスめの成岡が自風を叩き、2巡めにしてイーシャンテン。対決の意志を示した高島も2枚目から仕掛けて応戦する。
2着めの愛澤以外にはマンガンを直撃されても自分のトップは不動。手役が明快な二人に対して差し込みのつもりで打ってみると、成岡のタンキ待ちに放銃した。
愛澤の捨てハイにがあれば、それを選んだであろう。成岡の待ちどりが上手かった。
第4節自戦記(26回戦B卓:高島 努)
「今年は、厳しくなるよ。」これは、今年の就位式で愛澤名翔位が私に仰った言葉である。昨年度の残留は、私との期首順位差や実力差などが起因となり「残留させていただいた」という表現がピッタリであった。ところが、今年は、モロに実力差が明るみになり、他の6選手からは「残留争いは今季はないかな」と捉えられても致し方ない状況となった。悔しさ以上に情けない限りである。
第4節の初日終了後に、初日立会人であった山内さんに、(ほぼ負け(降級)を覚悟し)意地を見せていないように感じられたことを指摘された。そして、「これからどないするねん」と。
(実力差は重々理解はしているが)無論諦めてはいない。終戦モードが微かにも出ていたことを改めて反省した。成岡選手にも「うちらは名翔位を目指してやっているんだから、A級(の椅子)にしがみつくべき」とも仰られた。
そう、私のやるべきことは「残り3日で1昇ずつ取り返していき、不格好でも残留を成し遂げること」である。
ところが、私の気持ちとは裏腹に「黒星」が25回戦でついてしまった。それでも、挽回すべく26回戦に取り組んだ。
対局面子は、名翔位を明確に意識した期首順位ベスト3と地を這っている者との構図となった。トップを取るためのシナリオといえば、フラットなポジションで行っている「マージャン101」のような単純なトップをとる方法だけではなく、(昇差を活用し)私に対してのアシストもあり得るかということで、対局相手が置かれている状況や思惑を考慮しつつトップを勝ち取る方法も考えた(以降、文中敬称略)。
No.1【東1局】
成岡が、7巡めにあっさりと先制点を挙げた。「での放銃は、交通事故」と開けられた手牌と河を見て感じたが、私もこの
は下手したら打っていたかもしれないと思うと寒気が止められずにいた。
平井の手牌から照らし合わせたら、「交通事故」だと思うが、牌譜をみて私がを打てば「しかたないよ」とは誰も言ってはくれないと思う。
なぜなら「保険」のカンの受けは要らないからである。だって、カン
の役なしテンパイになることだってある。それで、堂々と勝負できるのか?
喉から手が出るほど欲しいのは、言うまでもなく。
を切って
を引いても「失敗」にはならない。
次に、が手元に残っている点である。気持ちがから回って、やってはいけない「中張牌ブクブクマージャン」をしてしまった。
や
がアンコになったときの保険であるが、そないな確率どれだけあるねんって話である。速攻ツモ切っておく手である。
さらにもう1点。をツモ切っている点である。
を引いてきた時には打
としておかないと、
のリャンカン形が雀頭候補となったときにリャンメンターツが生まれなくなってしまうからである(すべて、打ち上げ後に成岡さんからご指摘を頂いた)。
というわけで、最終形は、













それにしても、字牌の扱い方はいつも難しいなぁと感じずにはいられない。成岡の捨牌を見ると堂々と1・2巡目に三元牌を切っている。「是が非でもアガリに行きたいときに限り、不要な字牌を先に処理する(敵にアガられたくない場合はそうではない)」と、こちらは愛澤さんからご指摘を頂いた。

No.2【東2局】
これも、相当寒気がした1局であった。私の手牌に「ネクストバッターサークル」に




このチョーマの動きだが、結果的にラス回避はしやすい位置となった。とにかく52差を埋めなきゃと思い、寒気が漂っていた精神状態をリセットしなおすことに専念しつつ、次局の洗牌を行った。
No.3【東3局】
めざすは、567のサンショク本線のタンピン。789のサンショクって手もあるが、最低限はタンピンを確保しておきたい。そこでようやく見えるのが残留への光である。
というわけで、ここは積極的に字牌を先切りして、意思を見せた。ところが2巡目の

6巡めの


だが、愛澤8巡めの



No.4【東4局】
ドラは2枚配牌にあり、ここでどうにかしたい気持ちが前面に出ていた。






9巡めの


ところが、同巡に成岡の手から出てきた




反省点としては、2巡めに




No.5【南1局その1】
孤立字牌の多い配牌。役牌をばらまくのは覚悟の上で積極的にいくことにした。ラス抜けメインの愛澤も同様の構えかなと感じた。いわゆる「字牌が安い場」になった。スピードが今一つ読めない(私レベルだけかもしれないが…)。成岡がスムーズって感じかも。
そうこうしているうちに9巡めに




成岡の打




No.6【南1局その2】
ドラ2の配牌だが、他が重すぎる。何とか役牌を重ねたいのが本音だが、もたついている間に、他家にアガられそうな気しかしなかった。やはり、進捗状況の速さが字牌の切り出し方に露骨にあらわれていた。5巡めにようやく


そして、平井に


ここで驚いたのは、ラスめの愛澤が私からの12を見逃している。名翔位連覇には、成岡・平井のチョーマを大きく削ったほうがいいからと思われる。

No.7【南2局その1】
ドラの






私の摸打よりは、成岡のほうを注目してご覧いただきたい。






No.8【南2局その2】
244差がついてしまった。しかし、少なくとも3回チャンスがあると思い、3の矢まで放つつもりで臨んだ。まずは、絶一門にかまえて様子をみた。成岡がダントツになった以上、ラス選びを施すと考え、マークを愛澤メインに。中盤、ピンズがある程度満ちたのもあり、ホンイチ一直線に進めた。理想は、メンゼンでのテンパイ(イッツーも勿論視野に入れるが)。ハネマン以上がベストであるためである。しかし、12巡めの愛澤の2枚目の

No.9【南3局】
チャンスが残り2回となった。でも、奇跡を起こそうとあきらめずに臨んだ。ドラの

No.10【南4局】
さすがに、この点差ではもうトップになることは相当きつい。しかもこの1局が実質ラストチャンスと思った(愛澤に差し込んでワンモアチャンスは考えないものとした)。無論ヤクマンの手が入れば勝負するが、まずしなければいけないのは、この26回戦を最低でもバーで終えて、次戦以降に希望を残すことである。
そして、成岡が1巡目に

101競技は、ラスをひくと心の底から悔しい気分にさせられる一方で、もがき苦しみながらも得られたトップ(内容の悪いトップはダメだが…)には言葉では言い表せないくらいの喜びを得られるのが非常に面白いと常に思っている。また、101競技連盟に入会できたおかげで、すごい選手と対局できて、本当によかったと思う。でも、「思い出」だけで終わらせてはいけないのも事実。一生かけても取れないかもしれないが「名翔位」を目指しているんだという気持ちも当然ながら、1戦1戦修行の気持ちを忘れず、向上できればと思う。
第36期順位戦A級 第4節 星取表 (10月24・25日/東京)
選手名
|
開始前
|
21回戦
|
22回戦
|
23回戦
|
24回戦
|
25回戦
|
26回戦
|
27回戦
|
28回戦
|
終了時
|
順位
|
愛澤 圭次
|
1昇
|
A −
|
A −
|
A −
|
A ◎
|
A ◎
|
B ●
|
A −
|
B −
|
2昇
|
2
|
平井 淳
|
±0
|
A −
|
B ◎
|
B −
|
A −
|
B −
|
B −
|
B −
|
B ◎
|
2昇
|
3
|
成岡 明彦
|
△1
|
A ◎
|
A −
|
A −
|
B ◎
|
B ◎
|
B ◎
|
B ●
|
A −
|
2昇
|
4
|
小川 隆
|
4昇
|
B ●
|
B −
|
A ◎
|
A −
|
A −
|
A −
|
B −
|
A −
|
4昇
|
1
|
高島 努
|
△3
|
B ◎
|
B ●
|
A ●
|
B −
|
B ●
|
B −
|
A ◎
|
A ●
|
△5
|
7
|
西尾 剛
|
1昇
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B −
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A ◎
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B ●
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B −
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A −
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A ◎
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B ◎
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B ●
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2昇
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5
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堀川 隆司
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1昇
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A ●
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B −
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B ◎
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B ●
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A ●
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A −
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A −
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B −
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△1
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6
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山田 史佳
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△3
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B −
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A ●
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B −
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A ●
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B −
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A ●
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A ●
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A ◎
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△6
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8
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