第33期八翔位決定戦 戦前インタビュー

インタビュー:木村 由佳

 2016年の八翔位決定戦を戦う4人の選手が決まりました。11月12日に始まる戦いを前に、各選手のお話を伺いました。

※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※

 菊池一隆(きくち・かずたか)さんは、八翔位戦自体は3回目。マージャン101 東京に初参加して4年と、比較的経験が浅い選手ですが、その強さには定評があります。イン東京以外に、平井淳選手(A級)のガハ研でも101のマージャンをよく打っています。
 普段は会社員で、9月には二人目のお嬢さんが生まれたばかりのパパさん。最高位戦クラシック、μルール、連盟Aルールなど、一発裏なしのルールが好きで、今年は各所で好成績を残しています。

―――準決勝までの戦いを振り返って、どうですか?
菊池「誤解を恐れずに言うと、あまり苦労をしないで勝ち上がった気がします。特に準決勝はあがる回数は少なかったですが、来てほしい時に来てほしい手が入りました。かなり『ツイてた』のだと思います。」

―――準決勝勝ち上がりのカギとなった1局について聞かせてください。
菊池「2回戦の南3局ですかね。1昇持っている(菊池)智江さんがラス親でトップ目。自分は3着と18差のラス目で、トップの智江さんとは69差。そこにこのテンパイ。
 ヤミテンでもアガればラス抜けでしたが、意識はラス抜けよりも2昇を作らないことにありました。入り目がだったので手変わりをみてヤミテン。すぐにをひいてリーチをしてすぐにをツモれたのはツイてました。2昇を阻止したいのは共通の思いなので、攻めてくるかもしれない他家からの放銃でもトップをまくれる80にしようとしたことが結果的にうまくいきました。自分の放銃や供託で2昇が阻止できてもそれはそれで良い状況でしたし。これが準決勝でかけた唯一のリーチでした。準決勝ではもっとリーチするかな、と思っていましたが、リーチが必要な展開にならなかったのはやはりツイてたのでしょう。」

―――決定戦の相手についてどう思いますか?
菊池「小川さんとはガハ研でたまに打たせて頂いています。成岡さんと打ったのはイン東京で1回あったくらいでしたが、今年の2次予選で成岡さんと真剣勝負できたのはいい経験になりました。お2人とも101の代表選手ですし、ただただ強いという以外に適切な言葉が見当たらないですが、胸を借りるつもりで打ちたいと思っています。」

―――中村浩三さんとは親しいですよね?
菊池「中村さんとはセットもよくやっていますし親友です。中村さんは攻めが強いタイプなので、今回の決定戦でも場面をリードすることが多いと予想しています。よく知っている相手なのでその点では戦いやすいというのはあるかも知れません。しかし、小川さんも成岡さんも当然攻めが強いので、本当にしんどくて楽しい決定戦になりそうです(笑)。」

―――決定戦への思いを改めて聞かせてください。
菊池「101は自分が勝つのは大変ですが、誰かを勝たせないという打ち方はわりと簡単にできると思っています。小川・成岡クラスになれば特にそうでしょう。私は、八翔位決定戦は、長い時間をかけて4人で八翔位を選ぶ儀式だと捉えています。対局者に『こいつになら八翔位を取られても仕方がない』と思ってもらえるようなマージャンを打ちたいと思います。」

―――何か、準備をしていますか?
菊池「今から雀力を磨くというよりは、今持っている力を発揮できるように、手積みや所作などできる練習はしっかりしておこうと思います。腕が緊張で硬直しやすいのは練習ではなかなか治りませんが(泣)。」


 中村浩三(なかむら・こうぞう)さんは、RMUのB級ライセンスプロで事務局長。八翔位戦への参加は3回目です。菊池一隆さんとはしょっちゅうセットを打っている仲で、今回は親友2人対A級選手2人という決定戦になりました。
 ふだんは会社員で、土日はRMUの事務局長としての仕事や競技マージャンの活動をしています。2014年には101チャンピオンズマッチで優勝、スリアロの2016RMU祭りや、RMUの公式戦でも何度か優勝経験があります。

―――決定戦に向けての意気込みを聞かせてください。
中村「八翔位決定戦に残るのは本当に難しいことだと思います。最初で最後とまでと言い切れるくらい、ここ一番の大きなチャンスと思っています。優勝したいのはもちろんですが、同じくらい、良い牌譜を残したいという気持ちも強いです」

―――今回、八翔位戦としては初めて配信がありますが。
中村「4人の中では、私と成岡さんが比較的配信に慣れているので少しだけ、不利な要素が少ないかもしれません。それでも配信の日は相当緊張するでしょうね。配信は3日目ですからそこまでの戦い(最高8回)でいい位置にいたいと思います」

―――対戦相手について、一人ずつコメントをお願いします。
中村「小川さんが優勝したら4連覇ですよね。過去に八翔位4連覇の人はいないので、してほしくないですね。4連覇されたら、101のパーティーで『4連覇を許した戦犯』としてさらされますからねえ。
 小川さんは、平井淳選手(A級)のガハ研で打ったり、練習セットにも付き合ってもらったりしているのですが、愚直なマージャンを僕ら後輩に見せつけてきます。とても怖い存在です。また、自分が攻めに回った場合、小川さんは引き気味に打ってくれそうなので、極端にリードされないように気をつけます。小川さんに気持ちよく打たせたくないです」

―――成岡さんとは、初めての対戦ですか?
中村「そうですね。打ったこともないですし、成岡さんのマージャンをあまり見たこともないんです。去年、八翔位戦二次予選の別卓で、こちらが早く終わったときに後ろ見していたくらいです。だから、こういう時にはこう打つ、という情報はほとんどないのですが、強い人の打牌は決まっているので、信用して打てばいいと思っています。成岡さんは攻めか守りかというと『攻め』の人だと思うので、私と成岡さんの攻め合いになった局は攻め合いを楽しみたいです」

―――菊池さんについてはどうですか?
中村「そもそも私が101を始めたのは、菊池さんがきっかけなんです。秋葉原の雀友倶楽部のノーレートフリーで菊池さんと出会った時、『この人は抜群に強い』と思いました。菊池さんと打つのが楽しみで土曜日も雀友倶楽部で打っていたのですが、菊池さんが、横でやっているイン東京に行ってしまうんですよ。それまでイン東京は横でやってるだけでまったくかかわっていなかったのですが、菊池さんがそんなに惚れ込むなら行ってみようと思って、菊池さんについていきました。だから、今この決定戦を私が戦えるのは、菊池さんのおかげです。
 八翔位戦の初回は1回戦で菊池さん・平井選手・奥田直裕さんと当たり、菊池さんと私は撃沈しました。それから、菊池さんと一緒に猛特訓するようになりました。菊池さんとは101だけでなく、クラシック、發王戦などいろいろなルールのセットをしている、親友であり、好敵手です。でもタイプは全然違いますね。菊池さんはまず守って、チャンスを見逃さず前に出てくるタイプです。自分が戦うのにおかしいですが、1ファンとしては彼に勝ってほしいです。でも、今回はそれだと自分が負けてしまうので、その気持ちは当日からは封印します(笑)」

―――4人の中では、中村さんが一番攻めるタイプだそうですが。
中村「そうですね。まず前に出て、みんなの対応を見ながら有利な位置を築いていくと思うので、私対あとの3人という1対3の形になりやすいです。放銃を恐れずに生牌も切り、他家に対応させながら打ちます。
 それがうまくいくとトップになりやすいし、失敗すると撃沈しますね。平賀聡彦選手ほどではないにしても、東1局で20・40アガっても、まだ攻めますよ。攻めることも防御のひとつだと思っています」

―――中村さんは、多井隆晴プロにマージャンを教わったのですか。
中村「私はファクトリーに参加するために入会したような変な奴なんです。入会1年目は古久根英孝プロから。その後はファクトリーの講師は必ず多井代表自身がやってくれたんです。その7〜8年多井プロに教わったことの全てが、自分の競技マージャンの基礎となっています。そこでつけた力を発揮して、いい戦いをし、恩返しをしたいと思います」


 成岡明彦(なるおか・あきひこ)さんは、順位戦A級選手で、スロアロチャンネルの「麻雀の鉄人」の鉄人でもあります。八翔位決定戦進出は2年ぶりです。

―――八翔位決定戦に向けての意気込みを教えてください。
成岡「名翔位獲得が3回なので、八翔位獲得も3回にしておきたいですねぇ」(成岡選手は2003年、2006年、2012年の名翔位、2005年、2009年の八翔位です)

―――今回、なぜ決勝に残れたと思うか、教えてください。
成岡「トシとともに『集中できる日』『どうしても気持ちが入りきれない日』の差が激しくなってきており、ホンマはこんなことじゃあかんで、『いつも集中』にせないかんのですが、生きていればイロイロありますんでね。なんとか対局の日を「気持ちが入る日」に合わせようとして、それがうまくいった感じはありますね。

―――対戦相手について、一人ずつコメントをお願いします。
成岡「小川さんは強いから、やっつけるのしんどいですね。だからこそやっつけたいです。中村さんは、RMUの事務局長で、RMUの仕事もしながら、マージャン101もたくさん打ってくれて、凄いなぁと思っています。攻守のバランスがいいようなイメージですね。
 ずったか(菊池一隆さん)は、マージャン101の成績とか異常やし。まあ強いですね。彼に対してはあまり技を使わずに正面からぶつかった方がよさそうやと思っています」

―――どのように戦うか、どういう展開を目指すかという戦略があれば教えてください。
成岡「序盤は八翔位戦やからこう、てのは今回はないですね。一昨年は『1人が走ることがないように』とか思ってましたけど。今年は初めから正面からぶつかります。後半はそらスコアに合わせての打ち方になるのは当然ですね」

――― 今回八翔位戦では初めて、スリアロチャンネルで配信対局があることについてもコメントをお願いします。成岡さんは101祭りや鉄人入れ替え戦、鉄人としての対局と、一番場数を踏んでおられると思いますが。
成岡「見てくれる人がいるのは嬉しいですね。まあ、自分のところの公式戦なので、見せるために何か変わったことをやるとかはないですね。スリアロや視聴者にナンボ文句言われても理牌しないでしょう」


 小川隆(おがわ・たかし)さんは、現在八翔位3連覇中。私(木村)がこの決定戦直前インタビューをするようになってから、毎年お話を伺っています。(そろそろ飽きてきました。←小川さんがこう書くように言うのです……私のインタビューに飽きたんですね)
 今年は、いよいよ前人未到の4連覇がかかった決定戦。昨年とは違った顔ぶれの決定戦を前に、お話を伺いました。

―――毎年、お時間いただいてありがとうございます。次勝つと、4連覇ですね。
小川「4連覇は意識しないようにしています。去年もおととしも同じことを言ったけど、挑戦者のつもりで、自分のマージャンを打てるように臨みます。弱気になって、受け過ぎて攻め潰されないように心がけます」

―――今年は3日目にスリアロの配信がありますが、それについてはどうですか?
小川「2014年の101祭りの時以来ですね。全国、全世界、全宇宙?で見られるので、多くの方々に『101』の存在を広めたいです。スタジオでの対局はその時に一度経験していて、緊張感はないはずですが、タイトル戦特有の雰囲気に飲み込まれないように戦いたいです」

―――対戦相手の3人について、一人ずつコメントをお願いします。
小川「成岡選手とは順位戦、八翔位戦でも準決勝や決定戦で戦っていますので、それなりに分かっているつもりです。自分の読みを信じて打っているようだから、凄いです。いい時のマージャンを打つと怖いですね。今年、本を出したこともあって、いろいろな意味で燃えていると思います。
 中村さんは、『101』を始めてさらに強くなったと評判です。所属しているRMUの中では『101』に理解がある貴重な方です。実は8月に中村さん、菊池さん、そして某選手らと一緒に温泉合宿をしたのですが、その中の二人が勝ち上がってよかったと言うべきか……。中村さんは、このメンツの中では攻めが強烈で要注意です。決定戦進出を決めた南4局のハネマンツモは衝撃的でした。心臓に悪いです。
 菊池さんについては、歴代『菊池』と名の付く方はいい打ち手が多いと勝手に思っています。イン東京で知り合い、研究会などで対戦しています。しっかりとした受けで、点棒を簡単に放してくれません。中村さんや菊池さんのように『101』に熱意のある方が稽古を積んで勝ち上がってきて素晴らしいことです」

―――小川さんもふだんはサラリーマンですよね。お仕事も忙しい時期だそうですが。
小川「今年は4人ともそうですか。昨年は決定戦の直前に海外出張が入って、2日前に戻ってきましたが、今年はないといいですね。ただ、仕事が忙しいのは間違いないです。気がついたら『あ、もう今週末が決定戦か』という感じで迎えられたらいいと思います。
 とにかく、大塚へ行く日(配信日)までに、決着権を持たせないようにしたい。自分が決着権を持っているのが理想ですが、そんな贅沢なことは決して言えません。ここだけの話でよろしく」

※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※

 八翔位決定戦は11月12日(土)、101の対局室(御徒町)で始まります。観戦には事前申し込み・許可が必要です。
 尚、19日(土)はスリアロチャンネルで配信されます。4人の選手の戦いを、ぜひご覧ください。
(了)



第33期八翔位戦 システム

【出場資格】
・麻将連合推薦、オープン参加選手及び連盟所属選手
・ オープン参加選手は、昨年度のマージャン101における打荘数が24ある者から各支部内で選抜。
【1次予選】
・各卓4戦(1日)を戦う。
・規定回終了時のスコア上位2名を勝ち上がりとする。
・4回戦終了時に上位2名が確定しない場合は、これが確定するまで延長戦を実施する。
【2次予選】
・2次予選シードの連盟所属選手及び1次予選通過者により行う。
・各卓6戦(2日)を戦う。
・規定回終了時のスコア上位2名を勝ち上がりとする。
・6回戦終了時に上位2名が確定しない場合は、これが確定するまで延長戦を実施する。
【準決勝】
・2次予選通過者により行う。
・各卓6戦(2日)を戦う。
・6回戦終了時に単独で2昇以上の首位者が決定戦の出場資格を得る。
・6回戦終了時に単独で2昇以上の首位者が発生しなかった場合は延長戦を実施し、7回戦以降はその回の開始時の首位者のスコア+1昇に単独で到達する者が発生するまで延長戦を実施する。
・「初めて、4者同スコアで決着権がある状態」となった場合は、その一戦の終了時の単独首位では決着としない。
  ただし「再度、4者同スコアの状態」となった場合は、同戦終了時の単独首位で決着とする。
【決定戦】
・八翔位及び準決勝通過者により行う。
・10戦(1日4戦)を戦う。
・10回戦終了時に単独で3昇以上の首位者を優勝とする。
・10回戦終了時に単独で3昇以上の首位者が発生しなかった場合は延長戦を実施し、11回戦以降はその回の開始時の首位者のスコア+1昇に単独で到達する者が発生するまで延長戦を実施する。
・「初めて、4者同スコアで決着権がある状態」となった場合は、その一戦の終了時の単独首位では決着としない。
  ただし「再度、4者同スコアの状態」となった場合は、同戦終了時の単独首位で決着とする。