第33期八翔位戦 卓別リポート

  1次予選2次予選 | 準決勝 | 出場選手システム

2次予選:6戦制/各卓上位2名勝ち上がり


A卓:
A卓
終了
成岡 明彦 A級 2昇
菊池 一隆 東京 1昇
佐藤 文彦 東京 △1
村田 光陽 東京 △1



B卓:2日目の大逆転
B卓
終了
堀川 隆司 A級 △1
山内 啓介 B級 3昇
須藤  浩 推薦 △3
古川 正和 東京 1昇

文:古川 正和
 6回戦制の所まで来たの何年振りだろう?4回戦制で確か11回戦まで行ったことがあったと思うが、短期戦だけに1回戦から全てが肩にチカラの入った勝負で11回。最後は気力も尽きていたと思う。
 6回戦制であれば短期戦ではないという思い込み。前半3回戦までは肩の力を抜いて戦おう。「6回戦トータルで」なんて戦略を持ち合わせているわけではないので気力温存のため。3回戦終わって「絶望的な位置にいなければそれでよし」くらいの感じで。


【1回戦(起家から以下同)須藤・山内・堀川・古川】
 南4局ラスオヤを迎えて、山内18→古川50→堀川54→須藤 。をポンして18はすぐにでもアガれそう手牌であったが、今は軽いノリ。トイトイも付けてやろうということになり、須藤から78をアガってしまった。
(◎古川/●須藤)


【2回戦 古川1昇・山内0・堀川0・須藤△1】
 南4局を迎えて、堀川60→山内129→古川318→須藤 。長打が飛び交う乱打戦となったが、須藤が黙っているはずもなく、60オールツモ。あっという間に尻に火が。ただ、今日はどうした?その2でポンの後、カンチャンがすぐに埋まって、リャンメンをあっさりツモれるなんて。
(◎堀川/●須藤)


【3回戦(須藤△2・古川1昇・堀川+1昇・山内0】
 東2局に52、南1局に16を山内に放銃してしまい、南4局を迎えて、山内83→堀川03→須藤65→古川 。配牌はタンヤオとかピンフとかは全く見えず、が2枚とドラのが1枚あるくらいであとは冴えない。それでも何とかを暗刻にして、終盤どうしても使わないといけないを無理やり使ったカン待ちでテンパイ。ヤミテンツモでも同点ラス抜けとわかってはいたが、まあ、色々考えずにリーチ。最終手番1巡前がで、このときは「惜しい」としか思わなかったが、後で言われたのがヤミテンだったらどうなっていた?」。確かにおそらく待ち変えをして頭を抱えていた。そう最終手番が、いるなんて思っていなかった。望外。
(◎山内/●須藤)


【4回戦 山内1昇・古川1昇・堀川1昇・須藤△3】
 ここまでは当初の狙い通り(かなりツイているだけ)いい位置に付けられた。そうなるとやはり肩にチカラが入って来る。そしてそうなると、これまでのようには行かないとわかっている。
 東2局に堀川と手がかち合い96をアガれたが、これは運。その2の堀川→須藤40を挟んで、東3局にで堀川に78を放銃したのは実力である。全く不用意な放銃。96アガっていけると思ったところで須藤に差を詰められ、我慢がきかなくなってしまった結果である。こんなミスをこの三者が許してくれるはずはなく。
(◎山内/●古川)


 初日はここで終了。最終戦で力量不足を露呈してしまったが、ここで日を改められるのは助かった。このまま続ければおそらくズルズル行っていた。


【5回戦 堀川1昇・山内2昇・須藤△3・古川0】
 気力リフレッシュ、とにかく我慢強く粘っていこう。
 南1局その2で堀川08→須藤17→山内18→古川。我慢強く放銃なしでこの位置。数少ないチャンスを生かすしかないが、それがこの局。ドラを3枚重ねてタンヤオへ。仕掛けて行きたいがそんなに甘くない。結果メンゼンでを入れてテンパイ。昨日助けられたカンなどと思う間もなく、次巡にツモアガる。こんなこともあるんだ。まだまだツイている。

 南2局もその勢いのまま山内からタンヤオ16をアガって、南3局で古川81→須藤12→堀川21→山内。このまま行けば1昇が3人並んで延長濃厚となるが、それは許さない山内が9巡目にリーチ。
 これに堀川が引かない。
 リーチを打たずギリギリまで攻めるつもりだったのだろうが、ペンは堀川といえども読みづらかったのか放銃。こんなしのぎを削り合う勝負を横目に、何となく訪れたワンチャンスにツモってしまった自分がトップというのは理不尽なゲームである。
(◎古川/●堀川)


【6回戦 堀川0・須藤△3・山内2昇・古川1昇】
 堀川のナンバーワンターゲットは古川、須藤のオンリーワンターゲットは古川。ということは2人も敵がいる。特に須藤は山越しも狙ってくるに違いない。息をつく間は一瞬もなさそうである。


 東1局タンピンをツモって悪くないスタートを切ったので、当面は前に出る必要がなくなったが、腰の引けた打牌で逃げに入っても中盤からは重苦しく難解である。

 何とか東2・3局をしのいで東4局、まだ安牌貯蓄作業中の5巡目に山内から「ロン」の声。
 を打ったのは何と堀川、ツイてない。当然貯蓄作業中の自分が放銃していても何の不思議もなかった。今回、山内は要所要所で効率よくズドンとアガっていた。ここは期せずして古川にとって願ってもない好展開をもたらした。

 しかし、一方、これで堀川の猛獣化も必至の状況になったわけである。そして早々と猛獣が襲いかかる。南1局オヤの堀川から10巡目にリーチ。怖い、怖い、怖い。
 堀川のことだ、ほぼほぼツモことになるのだろう。自分にできることは、「ロン」の声が聞こえても心乱されぬように、瞑想に入るしかない。とても長く感じられる時間が経過して、全員が牌を伏せた。タンヤオチートイツのドラ待ち、たまたまツモらなかったが、やはり1発で致命傷に近いものを負わされるところであった。

 南2局オヤの須藤から11巡目にリーチ。前半に貯蓄作業をしているので、このリーチだけであればしのげるが、堀川を須藤以上に警戒しなければならないので全く楽ではない。苦しい。苦しい。そしてここも何とか流局。

 堀川、須藤のオヤ番が終了して、南3局で山内45→古川45→須藤87→堀川(供託20)。山内・古川の放銃がないものと仮定すると、堀川はここでアガらないとかなり厳しくなり、須藤はこの仮定の中では堀川をトップまで押し上げるしかない。もちろん、この中で最も甘い古川の放銃の可能性は十分あるので、当面そこを狙って行くのであろうが。

 その南3局堀川が16巡目にリーチ。しかしツモれず。

 オーラス、山内45→古川45→須藤97→堀川(供託30)。堀川に64以上、須藤に160以上の放銃をしなければ勝ち上がり(その他レアケースは考えても仕方ない)というところまでたどり着いた。前半、堀川はワンズ気配、須藤はコクシかソーズ気配。ピンズだけを貯めたいがそうそう集まってはくれず、字牌を貯めざるを得ないが、中盤以降は、堀川が切ったヤオチュー牌、その後須藤がツモ切りでも信用できない。唯一の信用できるのは山内の切った牌だけ。終盤まで運よく手詰まらず、安牌の数も足りるところまで来た。ただ、明らかに堀川のツモの動作にチカラが入っていた。
 レアケースちゃんと出来ていた。これもたまたまツモらないという幸運に助けられた。
(◎山内/●堀川)

 改めて振り返ると、これだけの幸運に恵まれていたんだ。まあ、そうでないと勝ち上がれないでしょ。

C卓:
C卓
終了
大貝 博美 A級 2昇
田中  実 B級 △1
中村 浩三 東京 2昇
涌田  悟 大阪 △3



D卓:今回は延長なしでした…
D卓
終了
平井  淳 名翔位 △1
坂井 準司 B級 △2
菊池 智江 B級 2昇
桜井 一幸 仙台 1昇

文:桜井 一幸
 今回4年ぶりの参加となった八翔位戦。一次予選では初の3回戦コールドか?と思われたとこからの7戦目決着で無駄に4昇してしまうという、ある意味記録ずくめの一次予選にしてしまった。まあ、ほかでもっと長い回数やっているとこあったからいいかな?

 さて、それから一月半。今回はいつもの対局室で手積みによる対局。やはり101は手積みだよなー♪という気持ちであるが、4年ぶりということもあり、点数の暗記や山積みに不安の残るままの対局当日となった。いつも通り10時半に御徒町駅到着。当然のようにジョナサンへ。しかしながら4年前と違う自分は初めて禁煙席へ向かう。が、なんか違和感ある。そして30分前に会場入りし手積みの練習。不安があったが、自転車と同じで久しぶりでもなんとかなるものですな。

 二次予選のメンツが発表になってからいろいろ考えた。全員と対局経験があるので、一応の雀風は予想がつく。攻撃力抜群の人、チートイツが得意な人、下りるのが苦手な人。しかし、かなり昔になる場合もあるしフラットで行こうと思っていた。でもターツ選択になったら名翔位の現物を残そうというのは決めていた(笑)。
【1回戦 平井・櫻井・坂井・菊池】
 いきなり平井・菊池の二人テンパイ気配。毎回こうなるのかなー?という間もなく菊池がツモ、10・20(ツモイッツー)。次局は平井が7・14であっさりラス目へ転落。しかし次局にすぐに坂井から20とホッと一息。東4局に菊地テンパイ気配であっさり引き下がったが、あがり形を見て少し違和感。6オールなのだが、テンパイ取らないほうが良かったのでは?というのが第一感。そこから流局を挟み、南2局オヤは櫻井。上家平井がコクシ模様のところ、2巡目に、
 ここからのトイツ落としへ。そこへ と引いてあっという間の120テンパイ。直前に平井に打たれたのでどうかな?と思っているとトップ目菊池からの出アガリ。あとはラス争いかな?と見ているとラス目菊池の仕掛けにドラまたぎであっさり平井が40を献上。これにあおりを食らった形となった坂井が初戦黒星スタートとなった。
(◎櫻井/●坂井)


【2回戦 坂井・櫻井・平井・菊池】
 東1局もポンテン即引きアガリで好調なのかな?と思う間もなくあっさり菊池が20・40のオヤカブリでラス目へ。しかしこのアガリにも違和感。なぜか2枚切れのカン。ちょっと読みがずれているかも?と感じながらラス目のまま局は進む。南2局オヤ、を鳴いたはいいがカンチャンとペンチャンが3つにドラ受けターツでどれを切るか?ここで名翔位の現物以外をチョイス。終盤に手詰まったトップ目菊池から30を出あがることが出来ラス抜けに成功。ラス前にラス目坂井の仕掛けに無造作に振り込んだ平井がラス。
(◎菊池/●平井)


【3回戦 菊池・坂井・平井・櫻井】
 ここまで不調と思えた坂井が18、24と連続の出アガリ。この24が結果的に差し込み以外で唯一の振り込みとなったわけだが、手順の前後で回避できた感じもあったので、もったいない気もしていた。またもやラス目となるわけだが、次局ですぐ抜けられる。オーラスを迎え、菊池10→坂井15→櫻井28→平井。恐らくテンパイ一番乗りは平井。菊池はオリ、坂井は前に出られない手牌か?しかし櫻井も危険牌を切ることなくテンパイに取ると即ツモの40オールで突き抜け。このままだと早くも死のシフト完成(気が早いけど)。次局はそのまま終局か?というところで60オールを引いておいた。このとき坂井はメンチンのテンパイだったそうだが、上がりを宣言するのか?は人によって意見が分かれるところ。これが事件を起こす。その3に平井がテンパイ気配バリバリ。しかしリーチ宣言はない。このまま流局かと思われたホウテイで菊池がを切ると坂井から驚いたようにロン!の発生。チートイツ・ドラ2の64で菊池がラスに。平井の現物ではあるが、坂井が見逃しをする可能性があることを考えていなかったのか?定かではないが、これで大切な昇を失うこととなった。
(◎櫻井/●菊池)


【4回戦 坂井・櫻井・平井・菊池】
 坂井・平井・菊池と順番にツモアガって、気づけばまたまたラス目。よくもこんなにラス目になれるものだ。南3局を迎え、菊池48→平井63→坂井10→櫻井。をポンテンの。しかし平井もテンパイ気配。こちらは平井の現物ということもありしばらくは押すつもり。まあラス目だしね。ここにを引いて打。なぜか?トイトイになるからだ。このまま12をアガってもわずか02差だし、少しでも離したい、ツモれば頭までも狙える。変えた途端に平井から切られる。まあそうだよね!と思った次巡にが平井の河に。ピンフドラ2のテンパイだったらしいが、そこまで高いとは思わなかったのか?まだテンパイしていないと思われたのか?結局オーラスには坂井がラス抜けし、平井はラスを請け負うこととなった。
(◎菊池/●平井)


 初日を終えて、櫻井2昇・菊池1昇・坂井△1・平井△2という俗にいう死のシフト。
 しかも5回戦でコールドゲームになる組み合わせが複数ある状況だ。かなり有利な状況で2日目を迎えることとなったので、隅田川の花火大会には行かずに築地で美味しいお寿司を食べることにした。


【5回戦 菊池・櫻井・平井・坂井】
 菊池・櫻井VS平井・坂井の構図。出だしから並びを考える下位2人を尻目に、菊池・櫻井が2人から出アガる。そして迎えた南1局、平井からリーチ棒が飛んできた。全員オリるが平井もなかなかツモれない。そこで平井のツモ番を増やすために坂井が鳴き、本来は無いはずのハイテイで見事ツモアガリ20・40。オーラスを迎え、平井118→櫻井49→菊池04→坂井 ここでまた菊池・櫻井VS平井・坂井の構図となる。このまま終われば死のシフト。下位2人はなんとしても菊池をラスに落としたい。しかしその願いも菊池が役牌を鳴き、すぐに2フーロし櫻井からの差し込みで死のシフト完成。
(◎平井/●坂井)

【6回戦 平井・菊池・桜井・坂井】
 延長条件は「◎平井/●菊池」のみ。これまでの長い八翔位戦でもこのシフトを突破したことはないと言われるもの。東の1局から場が動く。ラスにはならない櫻井が動くとオヤ平井からリーチが入る。当然理想は菊池からの直撃で座順の並びも良かったが、櫻井が出てくる以上は仕方がないという感じか?アガリが出ないまま迎えた東4局に坂井がダブをポン。そこに平井が当然被せて菊池からの直撃を二人で狙う。平井の手牌は、
のテンパイ。坂井の河にはがあるが・・・・。結果は、坂井がアンコのを切っての10オール。平井の手牌がわからないだけに仕方がないか?次局に平井リーチに坂井が被せてまたもや菊池を攻める。坂井はチートイツドラ2のテンパイも高いのがネック。終盤に平井への差し込みを選択し28を献上。南2局を迎えた時点で、坂井04→平井18→菊池・櫻井。ここで平井が菊池を被らせることが出来れば延長の並びが出来る。手に汗握る展開でロン!!と発生したのは??菊池渾身の40オール(タンヤオ・ツモ・ドラ3)。こうして歳下2人が準決勝の舞台へと進むこととなった。

 
E卓:リベンジなるか?
E卓
終了
愛澤 圭次 A級 △2
藤森 弘希 B級 1昇
熊谷  修 東京 ±0
寺西謙多郎 東京 1昇

文:藤森 弘希
 1次予選終了後、2次予選の組み合わせ発表があった。
 対戦相手は愛澤圭次理事長、熊谷修さん、寺西謙多郎さん。組み合わせを見た瞬間は「これは厳しい卓だな」と感じた。というのも私は初参加の3年前の八翔位戦1次予選で愛澤理事長に敗退している。また、2年前の八翔位戦1次予選では熊谷さんに敗退している。寺西さんとは八翔位戦初顔合わせであるが、近年マージャン101では結構やられている気がする。したがって、この八翔位戦においては「今回は私がリベンジさせていただく」という強い気持ちを持って戦いに臨んだ(文中敬称略)。

【1回戦(起家から以下同) 寺西・藤森・熊谷・愛澤】
 熊谷が開局早々ツモイッツーの10・20をアガって幸先良いスタートを切るも、東3局に寺西にピンフドラ1高目サンショクの方に放銃してラス目となる。

 寺西が離れてしまったためラス回避にウェイトを置いていた藤森であるが、南1局に7・14をツモり、トップ取りに少し気持ちが傾く(寺西46→藤森32→愛澤30→熊谷)。

 その結果というわけではないが、南3局その1にテンパイからラス目のオヤの熊谷と勝負をして18を放銃。さらに次局には愛澤から熊谷への18放銃もあってとうとう熊谷をラス抜けさせてしまう(寺西64→藤森08→熊谷24→愛澤)。

 それでもまだ2着目なので、「このまま大人しくしていればラスにはならないかな」と甘い考えでいると、南3局その3に愛澤がフリテンながらもメンピンドラ2をツモアガり、ラスから一気にアタマまで突き抜け、藤森は3着目となってしまう(愛澤04→寺西64→藤森28→熊谷)。

 こうなるとオーラスは「愛澤−寺西のトップ争い」と「藤森−熊谷のラス抜け争い」になるはずだが、マンガンでアタマまで見える藤森が、熊谷のリーチ宣言牌であるドラのをポンしてと自風のマチの王手飛車でトップ争いに割り込む。
 結局藤森は2牌勝負した所でオリを選択するのだが、後から考えるとこれはちょっと消極的だった気がする。仮に全て押していたとしてもアガりは無かったが、トップを取るためにアンパイを減らしてまでドラをポンしたのだから、明らかに熊谷のロン牌だと確信できる牌でオリたのならともかく、「何か危ないな」くらいの牌でオリてしまったのは何とも中途半端な打ち方をしてしまったと思う。
 一方リーチを掛けた熊谷は結局アガる事ができずに流局。
(◎愛澤/●熊谷)


【2回戦 寺西0・熊谷△1・愛澤1・藤森0】
 東1局、40テンパイの藤森が熊谷に12を放銃。勝負手なので放銃自体は後悔していないのだが、をポンした直後に下家にをツモ切られ、結果論ではあるがメンゼンテンパイを逃した上での放銃なので感触は良くない。

 東4局、ピンフをテンパイしたオヤの藤森がドラのを切り飛ばし、熊谷にポンされるも即座にツモって8オール。

 南3局、中盤ドラのを切ってきた寺西に対し、藤森は、
の形からアンパイ且つ一番受けの広いドラのを合わせずにと落としてピンフドラ2狙いで対抗。結果は藤森がとツモって大きな13・26をアガる(藤森73→熊谷12→寺西13→愛澤)。

 南4局、ラスが怖い寺西だが、トップを目指してドラ1のツモ直リーチを掛ける。ラス目の愛澤も当然アガリに向かうが両者共にアガれずに流局。

 2度のアガりをものにした藤森がトップ、南3局に痛いオヤカブリをした愛澤がラスとなった。
(◎藤森/●愛澤)

【3回戦 熊谷△1・愛澤0・藤森1・寺西0】
 東1局、寺西が12を熊谷から、東3局、熊谷が16を愛澤から、南1局、オヤの熊谷がリーチツモの10オール。この時藤森は熊谷の現物マチでピンフドラ1をテンパイしていたがアガれず。
 南2局その1、ラス目の愛澤が熊谷からピンフイーペーコーの30をアガって熊谷と同点トップ目に立ち、藤森はラス目となる(熊谷・愛澤02→寺西12→藤森)。
 南2局その2、今度はラス目に落ちた藤森がツモピンフの4・8をアガってオヤカブリした愛澤と天地が入れ替わる(藤森06→熊谷02→寺西02→愛澤)。
 南3局、熊谷がツモドラ1の5・10をアガって再びトップ目に立つ(熊谷24→藤森03→寺西02→愛澤)。
 南4局、トップからラスまでが29差以内にいるという大混戦。誰もがトップを目指したいが、一歩間違えると奈落の底。1昇持ちの藤森はそこまで無理する必要はないので、早い段階からオリに回る。終盤寺西のドラのアンカンに対し、17巡目に生牌のを切ってきた熊谷。これに対しトイメンの藤森がを合わせると、熊谷がポンと鳴き返して寺西の最終ツモ番を飛ばして流局。わずか900点沈みの愛澤が連敗となった。
(◎熊谷/●愛澤)

【4回戦 藤森1・愛澤△1・寺西0・熊谷0】
 東1局に、
という配牌から、ホンイチを目指してのターツを落としていくも、すぐにを引いてメンツを河に並べてしまう。
 それでもその後必要なソーズと字牌を引き、14巡目ではあったが、
の80オールまであるテンパイを入れるも流局。
 配牌時点でホンイチ狙いの手牌構想で進めていったので仕方ないのであるが、のターツを残して手を進めて行けば、
の形で26オールをアガっていただけに、結果論とはいえ良い感触ではない。

 東2局、配牌からドラのがアンコだったが、他の形があまり良くない。それでも鳴いて行く事ができるので、ある程度手牌をブクブクにするつもりで構えていたのだが、手が進まない内に4枚目のドラを引いてきてしまう。4枚ある字牌はコクシ以外当たらないので守備には非常にありがたいが、攻める上ではカンするか1枚切るしかなく、どちらにしても警戒されてしまうので結構厄介である。全員が原点であり、特にハネマンが必要ではないこの局面において、後々の守備も考えて1枚切ろうか迷ったのだが、どうせ警戒されるならハネマンになる可能性があるのと、1枚でも多くツモりたかったのでリンシャン牌をツモるためにカンをする事にした。当然その後警戒されるのだが、それまでいらない字牌や端牌を切っていただけなので捨牌的にも強く、何とか1枚チーをする事ができてイーシャンテンとなった。
  
が三枚ずつ河に切られているため、のどれかを引いてマチがベストだが、チーの待ちも悪くない。しかしテンパイをする牌を全く引かないままトイメンの寺西と下家の愛澤にを4枚切られ、狙い目のでロンするどころかチーをする事すらできないままを引いて結局どちらを切っても空テンのタンキ待ちで一旦仮テンを取り、その後タンキ待ちをぐるぐる回している内に流局。この局もモヤモヤした状態が残った。

 東4局、
のイーシャンテンからピンズのターツを落として最終的に
のテンパイとなるが、既にが河に3枚切られており流局。イーシャンテンの時にから落としていけば別の形でのアガり手順があり、結局この局もチャンスを逃す事となった。

 結局こうやってアガリ逃しをしている内に徐々に手も入らなくなり守備重視の局が続く中、他の誰からもアガりが発生せずに、なんと南2局が終了した時点で全員が原点という非常に拮抗した状態であった。

 南3局、第1打からを切ってきた愛澤にをぶつけてポンさせる藤森。△1とはいえ愛澤が第1打から役牌を切ってきたのである。それなりに手が整っているに違いない。にもかかわらずまっすぐ突っ込んで行くとは全くもって場が見えていない。というよりかはゲーム全体が見えていない。1昇を持っている藤森がなぜ△1の愛澤と勝負しなければならないのか?もちろん2昇目を挙げる事ができれば大きく勝ちに近づくだろう。しかし一旦ラスを引いてしまえば現在首位であったとしても敗退の危険性は十分にある。残り2局、既にオヤもない藤森は放銃さえしなければラスになる可能性は少ない。全員がフラットで残り2局、アガればほぼトップというこの状況に藤森は完全に盲目状態になっている。結果は愛澤が熊谷にチートイツ16を放銃し、藤森は難を逃れた。

 南4局その1、前に出た寺西が熊谷のバックの18に放銃してラス目に転落(熊谷34→藤森16→愛澤02→寺西)。

 南4局その2、タンピンサンショクが見える手牌にまたも突っ込んでいく藤森。序盤の
という手牌にもうトップしか見えていない。イーシャンテンまでは早かったのだが、そこからテンパイする牌を引く事ができず、寺西が切るを捕える事ができない。さすがにもうアガリを目指すのは無理だと判断してオリに回るのだが、これだけブクブクに構えていたのでオリ切るのも難しい。寺西が切ったを頼りにあらかじめも切られている事からスジを追ってを切ったところ、ポンされすぐさまリン牌のをツモられてラス抜けをされてしまった。「寺西がラスであれば上下を分断する事ができたのに」と悔やみながらもプラスのスコアで終えられたのでよしとしつつ一日目を終えた。
(◎熊谷/●愛澤)

【5回戦 寺西0・藤森1・熊谷1・愛澤△2】
 昨日の最終戦で特に酷いマージャンを打ってしまった藤森だが、一晩経って心機一転気合十分。その気合が牌に乗り移ったのか東1局から配牌が良い。
この配牌に第1ツモが何とドラので、打。次にを引き、いつもならのどれかを引いたらを落としてタンヤオに移行できるようにこのはツモ切るのであるが、この時はとにかく1巡でも早くリーチをかけたいと思い、一枚でも受け入れを多くするために打として完全イーシャンテンに受けた。次巡を引いてテンパイ。を切ればのシャンポン待ちで、を切れば待ち。3巡目のリーチならで待つ方がアガり易いのかなと思ったのだが、誰かから80出アガるのと、20・40をツモアガるのでは後者の方が有利であるし、何よりこの局は寺西のオヤ。この半荘寺西とのトップラスを決める事ができれば6回戦を死のシフトで迎える事ができる。まだ東1局とはいえ寺西にオヤカブリをさせる意味はあるため、ツモアガりを目指してのリャンメン待ちでリーチを掛けた。
 この時「この局は私がもらいます。向かって来るのは構いませんが、放銃したら高いので覚悟して下さい。」という心境であり、子方のラス落ちリーチとか関係なく前に向かって行った。その気合が実り、2巡後に20・40をツモって幸先の良い2日目のスタートを切った。

 東3局、この局藤森にとって好ましくない出来事が起きる。をポンした寺西が、9巡目にさらに自風のをポンしてを立て続けに手出しする。仕掛けと河から察するにどうやらピンズのホンイチを狙っているようであるが、手出しが多いためまだテンパイしていないようにも見える。そこに恐らくテンパイであろうオヤの熊谷がをぶつけると何と寺西からロンの声。その色で当たったら間違いなく高いはずのその手牌はやはりホンイチ役2の80。
  
 この半荘上下の分断を図りたいと思っていた藤森にとって、これは大きな誤算であった。
 同じく昇持ちであり、スコア的に仲間になるはずであった熊谷が大きなラス目に落ちたという事は、熊谷は自身のラス抜けが無理な場合は愛澤を押し上げる事を考えるだろう。
 点差の小さいラス目であればまだアシストのしようもあるが、80の放銃となると藤森も熊谷を助けるほどの余裕はない。
こうなったらもう上下分断などと言っている場合ではなく、何としても自分のトップを守り切る事に専念する事にした。

 東4局その1、オヤの愛澤が寺西からタンヤオチートイツをアガる。しかし一巡前に寺西が同じ牌を切っており見逃している。もちろん藤森からの直撃を狙っての事だが、一瞬たりとも気が抜けない(藤森10→愛澤71→寺西52→熊谷)。

 東4局その2は熊谷が10・20をツモってラス抜けを目指すがその後が続かず。2本投げたリーチ棒はいずれも流局し、愛澤が南2局に7・14ツモ(+10)、南4局に熊谷から18(+10)をアガってとうとう藤森はトップめをまくられてしまった(愛澤18→藤森81→寺西80→熊谷)。

 南4局その2、逆転トップを目指す藤森はタンヤオ高目サンショクの仕掛けをする。
 をチーして待ちは。ツモればどちらでもトップだが、出アガりだとしかトップになれない。熊谷がこれ見よがしにを切ってくるが、ロンするはずもない。結局藤森はをツモれないまま熊谷が愛澤のトップを守るラス確定のアガりでゲームを終了させた。

 藤森にとっては自身がラスになる次に望ましくない1・0・0・△1のスコアで6回戦を迎える事となってしまった。
(◎愛澤/●熊谷)

【6回戦 熊谷0・愛澤△1・藤森1・寺西0】
 いよいよ規定の6回戦。藤森は一番優位なポジションにいるものの、延長の可能性も十分にあるスコアであるため、延長も辞さない覚悟でラスを引かない事を最優先として臨んだ。

 東1局、ほぼトップ縛りの愛澤がリーチと出るも流局。その供託リーチ棒を東3局に寺西が回収し、さらに迎えたオヤでも6オールをアガってリードを広げる(寺西84→熊谷10→愛澤・藤森)。

 東4局その2、このまま寺西のリードを許しておくわけにいかない熊谷が愛澤から40をアガる。本来はこの半荘のトップ目に迫る寺西か昇持ちをラス目に落とす藤森からアガりたかっただろうが、少しでも寺西との点差を詰めておくためには致し方ない。このアガりは藤森にとってもラス目から少し離れる事が出来たため嬉しいアガりであった。

 南1局、ラスを抜けなければならない愛澤がワンズのホンイチを狙う。藤森は字牌を絞りつつ配牌で一番多かった色のピンズに寄せていったところ、持っていたピンズと字牌がすべて重なり、勝ち上がりに向けて非常に大きなホンイチチートイツをツモアガる事が出来た。
 まだ気を抜く事は出来ないが、この瞬間勝ち上がりに大きく近づいたのは間違いない。(藤森06→寺西64→熊谷70→愛澤)

 南2局その1、藤森をラスにする事が難しくなった以上トップを取るしかない愛澤がメンピンツモの14オールをアガる。このままでも一応延長の並びではあるが、△2で延長してもほとんど勝ち上がる可能性はない上、藤森と寺西がこの点差ならいくらでも押し上げが可能なため、愛澤はトップを捲くるしか道はない。

 南2局その2、連荘したい愛澤だが熊谷に52を振ってしまう。熊谷は一度はロン牌を見逃したものの、続けざまに打たれてはアガるしかなかったか。ただ80をアガればトップ目に立つ事や、愛澤が前に出てくる事などを考えるとここはリーチでも良かったのではないか。

 南3局、寺西が熊谷から20をアガってトップ目に立ち、決着の並びとなる(寺西14→藤森38→熊谷98→愛澤)。

 南4局、熊谷と寺西の差は52。寺西がオヤのため熊谷は10・20以上ツモ、28以上寺西からの直撃、64以上の出アガりで逆転決着となるが、52だと同点トップとなり3人が1昇持ちの延長となってしまう。それだと藤森はせっかくここまで築いてきたアドバンテージを一瞬にして失ってしまうため、同点トップを阻止するために熊谷がリーチを掛けてきたらすかさずリーチ棒を投げるつもりでいた。一方の愛澤は延長に持ち込むためトップを捲くるか藤森をラスに落とさなければならない。30・60以上ツモ、160以上出アガり、80以上藤森からの直撃が必要である。
 中盤熊谷がドラのを切る。「そろそろリーチが来るかな?」と待っているのだが、なかなかリーチが来ない。「それともダマで条件を満たす手が入ったのか?」とも思ったのだが、熊谷が必死で悩んでおりどうもそんな様子でもない。それにもし仮にダマで手が入っていたとしても、熊谷からリーチが掛からない限り自らリーチ棒を出すわけにはいかない。17巡目、ようやく熊谷からリーチが掛かるが、藤森はこの巡目が最終ツモ番なのでリーチを掛ける事が出来ない。熊谷はたった1回のツモにすべてを掛けるが流局。藤森と寺西の勝ち上がりとなった。
(◎寺西/●愛澤)

 こうして何とか2次予選を勝たせていただく事が出来た。スコア的には2戦目に取ったトップをその後ラス無しで守り切り、一見安定していたかのように思えるが、その内容は非常に危なっかしいものであった。

 次は昨年敗退した準決勝。今年こそは突破して決定戦に行けるよう、その時までに少しでも成長して臨みたいと思います。

F卓:ラス逃れに奮闘して
F卓
終了
大川戸 浩 A級 ±0
山本 裕司 推薦 △1
中村ゆたか 推薦 3昇
山舗  徹 大阪 △2

文:大川戸 浩
 昨年度、昇級した恩恵で、今年の八翔位戦は2次予選から。

 他の3人が1次予選を勝ち抜いて来た中で、1人ここからスタートはどうにも分が悪いと感じていたのであるが、いざ組み合わせを見たらさらにその感覚が強くなった。
 同卓者は麻将連合の中村、山本と、協会の山舗。バラエティ豊かというか、乱打戦の予感しかないというか。どこまでついていけるかが勝負かなと思いながら卓についた。

【1回戦】
 まったくテンパイが入らない。手を進める打牌での放銃が2つあって、アガりがなければ当然のラス。トップは山本。


【2回戦】
 山本に42を打ってオーラスでラス目。
 カン待ちのイーペイコー・ドラ1をテンパイ。28ではラス抜けしないのでリーチをかける。をポンしていた山本がを加カンしたら、リンシャンからもってきたのがまさかの。打った42と、その後のリーチ棒を取り戻し、終わってみれば「5・10のオヤカブリ」の私と、「20・40のオヤカブリ」の山舗の「カブった分の差」で山舗がラスに。
 2戦終わって、1昇が2人に△1が2人。この時点で星勘定をしても仕方ないが、気は重い。


【3回戦】
 中村にドラで20を打った後、サンショクドラ1をのシャンポンでをツモって7・14。本日初のトップ目に立ったが、これで許してくれるほど甘いメンツではない。
 オーラスを迎えてやっぱりラス目。ただし上から下まで詰まった状況。アガればラス抜けできるが、メンツ手にならず、チートイツに。アガりたいラス目がチートイツというのが、本日の苦しさを象徴している。
 どうにかこうにかイーシャンテンまで持ってきたが、残り3枚が(ドラは)。
 ドラが重なってチートイツをテンパイ。打。どこからアガってもトップになれるが、いかんせん巡目が遅い。無理かと思ったが、山本からロン牌のがこぼれる。

 目をつぶって振ったバットに偶然当たったサヨナラスリーラン、といったところであろうか。
 これで個人的にはイーブン。全体でも1・0・0・△1という並びに。


【4回戦】
 中村が東1局から20オール、40オールのあと、山舗が20・40で追いすがる。私と山本が置いてけぼり。
 最後は、中村が山本から連続してアガってゲームセット。


 初日を終わって、「中村2昇・山本△1・山舗△1・大川戸0」という結果。
 数字だけ見れば上々のようだが、実態はというと、ひたすらラス抜けだけ考えていた一日であった。
 オーラスにラス目が3回、3着目1回というのはどう考えても「イケてない」が、それでもマイナスになってない分ツイていると考えるべきか。

 日付が変わって2日目。昨日よりはもう少し何とかなるといいなーと思いつつ卓につく。

【5回戦】
 山本の5・10をオヤカブリしたが、その後、山舗から中村への52の横移動が入って、昨日よりは上を見れるか、という感じ。
 6オールをツモって、さらに上が近くなる。
 南場に入って、オヤの山舗からリーチ。トイツのを切ったら、シャンポンにジャストミート。一気に下が近くなる。今日もこんな感じか。。。

 その後、山本が立て続けに山舗に80、40と放銃して、上と下が入れ替わり、山本との差が51。

 トップ目山舗と中村との差は21で南4局を迎える。このまま流局すると、2・0・0・△2だが、山舗がリーチをかけてくる。
 目的は何だろう?山本へのアシストだろうか?いずれにしても打てないので、山舗の現物を河に置いたら中村がロン。オヤなのでもう一回なのだが、点数は最低限の18。しかも、リーチ棒のおかげで中村がトップ目に。

 このまま中村が3昇となると、山本が私をまくった場合は3・△1・△1・△1となり、ほぼ「次戦一発勝負」となる。
 一方、このままだと、3・0・△1・△2で、△2の山本は私とのトップラス以外はトップが取れない。
 私にとっては、「他者に条件を課す」という意味で後者のほうがいいので、その2は何も起こらず流局が望ましい。

 が、やはりそうは問屋が卸さず、山本がリーチとくる。こちらは前に出られる形ではないので、ひたすら頭を下げる。13巡・・・14巡・・・一打一打が重い。
 そして、最後までロンの発声が出ず、流局となった。


【6回戦】
 「ラス以外でありたい」私と「私のラスがほぼ必要」な山舗、山本。高みの見物の中村。孤独な戦いの始まりである。

 東1局から山本が攻め立ててくるが、流局。
 東2局、山舗が10-20ツモアガリ。オヤカブリの山本がラス目に。
 東3局、私が山舗に12の放銃。私がラス目に。
 東4局、私が中村から12。ラス抜け。
 1周、どうにか条件クリア(山舗(+52)・大川戸(△10)・山本(△20)・中村(△22))。

 南1局、流局間際に中村が13-26ツモ。オヤ番が山舗のため、中村が微差のトップ目に。
 南2局、山本が山舗から42。私がラス目に。雲行きが怪しい。
 南2局その2、山舗がリーチのあと、山本が26オール。リーチ棒を出したため、山舗が03差のラス目に。
 山舗からすれば悪夢のような展開か。

 南2局その3、中村が 5・10のツモアガリ。焦点は「私と山舗、どちらがラスになるか」の一点になる。この時点で、山本(+87)・中村(+24)・大川戸(△54)・山舗(△57)。

 南3局、私が中村からタンヤオで18。これで山舗と21差。南3局その2、自身のトップがほぼ見えた山本が山舗を支援。
 ソーズのをチーした山舗にで12を差し出す。これで山舗との差は09で南4局。状況は 山本(+75)・中村(+06)・大川戸(△36)・山舗(△45)。
 アガりたい山舗、アガらせたい山本、防ぎたい私。唯一の望みは、山本が山舗の下家であることか。山本は、ヤマゴシで私からの直撃もあるため、山舗、中村の河に頼れない。一打一打、慎重に進行させる。場に1枚切れのトイツの(自風)すらもうかつには打てないのだ。ひたすら、ただひたすら山本に合わせ打ちをして巡目を進めていく。中盤を過ぎて終盤になるあたり山本がを打つ。私が合わせる。ワンズは山舗の河に高い。が、中村までを合わせて、山舗がチー。中村さん、あなたはワンズ打っちゃダメですってば!山本が山舗の無筋を連打する。が、山舗から声が出ない。巡目が進む。山本の最後の捨て牌が河に置かれ、ハイテイだった私が4枚目のを打つ。

 こうして、09差をしのいで、中村と私の勝ち残りが決まった。
 6戦中、トップ1回ラス1回、あとはすべて沈みの3着。よくぞ残ったものだと思う。
 準決勝は勝ちにいくマージャンが必要である。バーでしのいでいるだけではどうにもならない。どこまでできるかはわからないが、精いっぱいやるつもりだ。

1次予選:4戦制/各卓上位2名勝ち上がり


A卓:
A卓
終了
高島  努 B級 △2
大原 泰孝 大阪 ±0
山舗  徹 大阪 1昇
涌田  悟 大阪 1昇

文:高島 努
 1次予選は規定4戦全体で考えるべきである。1戦単位でのみ捉えることが出来ず、その結果をみてから次戦の戦い方を考えているようではまだまだである。そう痛感させられたA卓の対戦であった。上記星取表通り、涌田・山舗の勝ち上がりとなり、私は2次予選への進出が叶わなかったが、1回戦の戦い方が大きな敗因と言わざるを得なかった。

 1回戦の並びは、起家から涌田・大原・山舗・高島。ラスオヤとなった私は、嫌な悪寒を感じていた。その悪寒は、東1局にいきなり現実のものとなった。普段から攻め屋である大原に対し不気味に押した涌田が、を手元に引き寄せた。
 これでトップは確定。あとは3者のラスの押し付け合いである。この争いで一番不利を被るのはラスオヤというのは101の常識。どこかで南4局突入時に最低でもマンガンツモのオヤカブリでもラスに落ちないような2着めに立っておかなければいけない。ただし、翻牌をラフに打つなど敵に塩を送るような選択も論外(先日のB級戦でも厳しく指摘を頂いたばかり)。相手にアガらせないこと(テンパイを入れさせない)を最優先するよう配慮を施した。
 ただ、それはマージャン101での話であって、八翔位戦や順位戦ではそれだけでは欠陥商品。この場合は、トップを確定させた涌田ができるもう一つの権利を分かった上でその思惑を利用するのか阻止するのかを考えなければいけない。それは、「涌田がラスを誰に押しつけたいのか」である。
 次局、涌田は早々に大原が切ったをポンする。無論、切った大原もマークすべきだが、涌田がなぜ大人しくしなかったのかを考察してみた。とりあえず、見に回ってみた。結果は、大原が涌田に30の献上。流れのままにアガリに行っているのかなと感じたが、それが勘違いだと分かるのに時間は要しなかった(値段が30であるのも、下位3者の均衡を保つためには適正であり、仮に120以上ならば山舗・高島を楽にしてしまい、下手すればリスクなしでまくりにかかられる可能性もでてくるため)。
 当然ラス抜けを目指し全ツッパする大原は、東2局に10オール。その後細かいやり取りがあり微差のラス目に落ちるも、南1局には、涌田から3フーロというおいしいプレゼント。これで涌田が「ラスに落としたいのは高島である(山舗はラスオヤでない上にノーホーラの私よりも先駆けて12をアガっているためラスの餌食からは除外されている)」ことが明らかとなった。ただし、涌田は大原からも2回出アガリをしていたため露骨な見逃しなどはしない方針をされていたように感じられたため、私の脳裏には?が点っていた。
 そして、南4局開始時、下位3者の点差は、「山舗20→高島06→大原」となっていた。これは明らかに高島には不利。大原にとっては上家の涌田頼みもこの局に限っては期待してもよいようにも見えていた。山舗は、この寒い点差では大原に28とでも言われようならば洒落にもならない状況。ただ、なりふり構わず山舗にツモアガリされた値段が7・14以上ならば私が洒落にならない。どうにかして、山舗にも撤退を表明してもらいたい。その時は、私にできる努力が、大原にテンパイを入れさせないことならびに山舗に攻めさせることを止めさせることであると思っていた(涌田の大原へのアシストは驚異ではあったが…)。これだけではダメだったのが、後の反省会から分かった。勿論、大量リードであったとはいえども涌田の思惑を歪ませることができなかった点にあった。上述通り、ラスをひかせたいのは高島。下家にいるのは、「出るポン見るチー」をさせやすい大原。そうなればやることは決まっているはず。露骨に鳴かせるのかなと思って見ていたら、なんと涌田からのリーチ宣言。高島をラスにするもう1つの選択肢はオヤカブリなのだ。このリーチが5・10なわけが絶対にないのだ。すると大原がリーチ宣言牌をチーし、数巡後にのシャンポンマチを涌田から見事にジャストミート。自分がツモアガってもよし大原にアガってもらってもよしという涌田の構想通りの結末にしてしまった。
 ただ、このゲームはラスにしたいのが大原よりも高島だけには留まらなかった。後に涌田に伺ったところ、高島をラスにしたいというよりは大原を1回戦で負債持ちにしてしまうと次戦大原が負債を返そうと奮闘する過程において3回戦を終わってみて最悪「1・1・1・△3」になるケースも出てくるかもしれないためラスにはしたくなかったとの回答を頂いた。冒頭でも記した通り、涌田が「4戦単位」で捉えて対局していたことがよくわかり、それができていない私に課題を1つ与えて下さったということである。過去に私が初めて八翔位戦に参加させていただいたときに、八翔位戦1次予選における3戦終了時のスコアのパターンを考えて臨んだことがあった(ちなみに12パターン)が、その際に「それよりも1戦目のほうが大事だよ」と指摘を涌田から頂いた。それは単に「1戦目」だけではなく、4戦目までのストーリーを描いての1戦目ということも、この日改めて教えていただいたように気がしてならない。
 また、南4局のリーチは、山舗にも楽には打たせないようにする、すなわちこのポジションからも手づまりしたらラス(実際手詰まりしたら出そうな28のリーチであった)に落ちることも見せることで2回戦以降も涌田に対して甘く打たせないようにする意図もあったとの回答も得た。だからこそ、道中で大原からも出アガリをしていたわけであった。「そこまでは甘くはありませんよ」と…。

 涌田は、2戦目でラスをひくものの、3戦目では再度トップを取り首位に返り咲くことに成功(ただ、3戦目大原をラスにできなかったのを悔やんでいた。実現できていればスコアは1・1・△1・△1となり涌田にとっては優位の度合いが増すため)。

 そして、迎えた4回戦。座巡は、大原・高島・涌田・山舗。涌田は、自身バー以上で大原か山舗に昇差をつけると勝ち上がりである。延長にはさせない努力はしてくるだろう。私も、「2・0・0・△2」といった延長などありえないと思って、自分のトップが困難な場合は涌田ラスといった生き残り策もあるだろうが、涌田に限ってそんなことはありえないと思って、まずは自由にとれるトップ(同点などの特殊な結果は除く)を目指して対局に臨んだ。
 東1局は、いきなりの山舗の先制リーチ。これが数巡後あっさりと両門マチをひいて10・20。早くも50のビハインドである。東2局は、大原にリーチがかかるが、これは流局。アガれば懸賞付のチャンスとなった。そして、東4局。山舗のオヤ番である。私にとっては最大の山場となった。無論、山舗にとっても同じである。高島の希望は根こそぎむしり取らなければならないからである。私は11巡めに役ありのテンパイ(イーペイコー含みのピンフドラ2)へと変化。安い方は河に2枚出ているが高い方はドラ近辺とはいえ使いにくいところ。ここは腹を括るものの、ツモ切ったが山舗に捕まり、こちらはイーペイコー含みの42のタンヤオ。
 それでも、その2もあきらめずに私はカンマチのタンヤオサンショクでリーチ。道中、役なしテンパイを拒否したのトイツ落としが涌田と対死(トイシ)となっておりこれをポンされる。この時点で涌田は3フーロと腹を括る決意。涌田が怖くないといえばウソになるが、コワイなどとは言ってはいられない。ところが、私が喉から出るくらい欲しかったを手元に引き寄せたのは、私ではなく左隣の方であった(ペンマチ)。
 そして迎えた最終局。点差は、山舗74→涌田51→大原52→高島。涌田は、放銃だけは確実に避けてくるような打牌をしてくるだろう。山舗は、高島よりはよもやの大原への放銃だけは避けてくるだろう。私は、涌田からの52直撃かハネマンツモを願いつつ8巡目にはこのような手牌。
 先にが入れば涌田からの直撃しか選択肢はない(下家にいるのは微かな希望かも)。また先にが入れば悩ましいところだが、リーチするとは決めていた。
 しかし、そのような「悩む」権利を頂く事すら私には与えられなかった。大原が11巡目に4枚目のを切ったその瞬間、大勢は決したのであった。

 もし、1回戦の南4局で、私が字牌を絞るのは当然としても、現物の合わせ打ちに例えられるようなオリを表現しなければ、涌田が大量リードであるとはいえ連荘を嫌うがあまりリーチをかけたり、大原にゆるい牌(高島には通る牌を除く)を打ったりされなかったのかもしれない。
 まだまだ、私には「分かっていてもできていない」こと、「分かっていない」ことがたくさんある。色々と勉強して「できること」を増やせるように邁進していきたい。勝って偶然、負けて当然という気持ちを忘れずに…。


B卓:
B卓
終了
山内 啓介 B級 2昇
寺西謙多郎 東京 1昇
星賀 一彦 東京 ±0
松井 秀成 東京 △3



 


C卓:死の卓の王様
C卓
4 5 6
終了
坂井 準司 B級 ±0
明村  諭 推薦 △2
菊池 一隆 東京 3昇
平山 友厚 東京 △1

文:坂井 準司
 関西在住の私(坂井)が1次予選では初の東京対局となった今回の八翔位戦。まずは対局メンバーを簡単にご紹介しよう。ただし、レポートも含めて私個人の主観と独断による内容となっている点は、筆者の特権ということでどうかご容赦願いたい。(以下、敬称略)
 あれは確か3年ほど前。私がマージャン101イン大阪に本格的に参加できるようになった頃、イン東京でダントツで昇を稼ぎまくっている男がいた。(当時は参加者の成績が定期的に公開されていた)その男こそが「菊池一隆」。それまであまり聞いたことがない名前で「いったいどんな打ち手だろう?」と、その時より私がマンマークを開始していたことを当の本人は知る由もないはず。昨年から順位戦に参加した私だが、対局上京時に参加させて頂いてる私設研究会(通称:ガハ研)にてその菊池と対戦することができた。実際に牌を交わした感想は、やはり「とてつもなく強い!」の一言。そして某八翔位でさえもマイナス昇を抱えているというその恐ろしい研究会で、通算昇でダントツの1位(しかも確か50昇以上)と勝ちまくっているのが「平山友厚」。恐るべき攻撃力でアガリだすと止まらない、マージャンも酒も桁違いに強い非常にやっかいな方である。そして対戦相手の中では唯一の初顔合わせとなるのが麻将連合(μ)認定プロの「明村諭」。だが、明村についてはいまさら紹介する必要もないだろう。第24期・25期八翔位であり、その高い実力については既に皆様が御存知の通りの超強豪だ。
 1次予選からこれだけの豪華メンバーに囲まれるとは、よほどクジ運が悪いのか、はたまた日頃の行いが悪いのか・・・と、弱気になりかけた私だったが「いや、望んでも得られないようなこの面子で勝ち抜いてこそ価値がある!」と、どうせなら前向きに捉えて対局に臨むことにした。  戦前、死の卓とも噂され激戦が予想されたC卓だったが、フタを開ければなんと、菊池が圧倒的な強さで4連勝を飾った。おそらくは1次予選初の快挙だろう。それでは早速その軌跡を追ってみよう。

【1回戦 起家から(以下同)坂井・明村・菊池・平山】
 開局に菊池が平山からイーペーコードラ1の28を出アガリ。次局も、
 東2局、南家菊池が、
  
 トイトイの13・26と軽快にアガリを重ねる。  その後、私が平山から東4局28、南1局24出アガリで追い上げて迎えたオーラス(菊池41→坂井65→明村67→平山 供託10)。平山がリーチ。
 ラス目平山のこんな親リーチ78にテンパイ打牌が捕まった私が痛恨のラス。オーラスその2は明村が20・40をツモるがシバ差届かず、菊池が逃げ切りまずは緒戦を制した。
(◎菊池/●坂井)


【2回戦 菊池1・坂井▲1・平山0・明村0】
 全員が1回ずつアガる僅差の展開となった2回戦。7・14で先行した平山から菊池が技ありのクイタン12(場に安いワンズ単騎マチ)を直撃して供託2本つきのこのアガリを守り切った。菊池自身も初めてという「12出アガリ1回だけ」の省エネトップで2連勝。
(◎菊池/●明村)


【3回戦 明村▲1・平山0・菊池2・坂井▲1】
 負債を抱える明村・坂井としては是非ともトップが欲しい3回戦だったが、東1局に菊池がタンヤオドラ3の80を明村からアガってその思惑を打ち砕く。さらに東2局に親の平山が26オールをツモった時には下位陣にとっては最悪の展開かと思われたが、その後は菊池が自然体で和了を重ねて平山を捲って3連勝。マイナス組としても、平山トップで死のシフト(2・1・▲1・▲2)にならなかっただけ救われた結果となった。それにしても菊池、手牌に従って前に出るだけで自然にアガれるようになっており、体勢上もスコア上もまさしく手がつけられない王様状態に!この時点で早々と(事実上の)勝ち上がりを決めた。
(◎菊池/●明村)


【4回戦 坂井▲1・明村▲2・平山0・菊池3】
 規定の4回戦は東2局の親番で明村がドラ単騎チートイツをツモって40オール。これで明村がダントツとなったが、明村トップの場合は平山ラスが延長条件であり、その点は私も全く異論のないところ。となると焦点は「平山にラスを押しつけられるかどうか?」この1点だが、南4局を迎えた時点では僅差ながら下位陣の狙い通りの点数状況となっていた(明村36→坂井43→菊池18→平山)。

 このままなら延長だが、@平山が明村トップのままラス抜け、あるいはA私が平山ラスのまま明村を捲ってトップ、のどちらかなら決着だ。明村としては何が何でもこのままの並びで終わらせたいところだろう。そのオーラス、あわよくば逆転決着を狙う私に微妙なテンパイが入った。
 このままヤミテンだとは菊池からはアガれず、ツモっても明村に届かないが、テンパイ直前に平山がを捨てており「今この瞬間なら下家明村からの直撃(山越)が狙えるかも」と明村の河に熱視線を送るが、想い届かず空振りに。すると同巡、平山からリーチがかかり、一気に場が緊張に包まれる。そう、急に卓上の重力が増したかのよう。ゆっくりと山に手を伸ばす菊池、ツモってきた牌を見つめながら何かを決めかねるかのように長考に沈む・・・「まずい、平山に打たれたら終わってしまう」・・・私だけでなく明村も覚悟を決めたであろう次の瞬間、菊池以外の3人が全く予想していなかったことが起こった。
「・・・ロン!」なんと、菊池がツモっていた牌を表に向けてアガリを宣言したのだ。
 てっきり平山に打ちに行くかどうかで迷っているのかと思ったが、そんなレベルの話ではなかったようだ。実は東3局にも菊池は平山の親リーチを蹴って7・14のツモアガリをしている。この半荘、必ずしも菊池ラス=決着条件ではないため、菊池としても自分から積極的にラスを引き受ける気はなかったのだろう。このオーラスも「坂井トップ・菊池ラス」で「2・0・0・▲2」の延長だけは避けるべく、アガリの可能性を残した手組を行っていたという。そこで平山リーチにジャストタイミングで訪れたアガリ牌の、「平山に打てば終わるのはわかっているが、このオーラスの、いや、この半荘の自分の往き方をいまさら裏切る訳にはいかない・・・何より牌がアガれと言ってるではないか!」想像するに、そう決断してのアガリではなかったか。どうやら王には王の、凡民には計り知れない苦悩があったようだ。だが、もしも、ツモがアガリ牌以外だった場合には菊池は何を打ったのだろうか。私のテンパイ気配は察知していたという菊池、であれば私の現物でやはり平山に差しに行く?いや、菊池なら両者に通る牌でオリを選択していた気がする。自分は勝ち残り確定としても残りの1人を自分の打牌で、しかも展開にそぐわない不自然な牌を打つことで意図的に決めるのは「自分のマージャンではない!」おそらく菊池はそう考えていたと思う。ともあれ、この26オールでまたもやトップまで突き抜けた菊池、その2では35差の明村に
 こんなテンパイが入るが、手変わりを待ってる間にツモってしまい万事休す。対局後に明村本人も「リーチ」の一声が出なかったことを悔やんでいた。71差を追いかける私にも序盤にドラ2の好形が入っていたが、
 以降のツモが全く効かず、テンパイすら入らずに流局となった。菊池これで破竹の4連勝。
(◎菊池/●平山)


【5回戦 菊池4・明村▲2・平山▲1・坂井▲1】
 明村トップなら再延長、平山か私がトップなら決着の5回戦だったが、菊池のあまりのデキの良さに、ひょっとすると「菊池トップ・平山ラス」で決着なんてことがあるかも(そうすると▲1でも勝ち上がりか〜そんなこと今まであったかな?)などとつい考えてしまった私だったが、「いやいや、そんな他力本願でどうすんのよ?どう考えても自力でトップをとって決めるべき場面でしょ!」と1人ツッコミで深く反省、気合を入れ直したところで延長戦が開始された。

 東1局流局、東2局に坂井→菊池12の点棒移動のあと、局面が大きく動いたのが東3局。
 平山が菊池から場に2枚切れので78をアガったのだが、放銃した菊池も手順上やむをえない振込だったようで、無論差し込みなどではない。「ふむふむ、菊池がラス牌で78振込とは、これは明らかに今までとは風向きが違ってきたようですな〜」と冷静に分析している場合ではない。まずい、平山トップはとにかくまずいのである。点差90はデカいが、なんとか平山のトップを捲らなければ・・・そんな切なる願いが天に通じたか、その2で私に絶好手が入る。11巡めに、
 この国士テンパイ。既にドラを飛ばしてテンパイ気配ムンムンの明村に注目が集まっていたためか、私のテンパイ後も3人から無警戒に19字牌が捨てられており、国士テンパイとは気付かれてない様子だ。(ひゃっほう〜これはアガれるかも!)と期待したのもつかの間、ツモ切ったが無情にも明村の待ちピンフ12に放銃となった。「役満を空振りしたうえに振込とあっては、これはどう考えても嵌りのパターンですな・・・」と放心状態になったついでに俯瞰できたのが良かったのか、次局の親番では喰い仕掛けの誘惑に負けずに起死回生のチートイツリーチをツモアガることができた。

 東4局、親坂井リーチ。
 なんと、この32オールで一挙に待望のトップ目に!その2でも以下のテンパイが入る。
 「よっしゃ〜これをアガったらいけるのでは?」と、かなりノリノリで手応えを感じていたのだが、ここは明村にかわされてしまった(平山から52出アガリ)。
 序盤戦は攻守の歯車が噛み合っていないように見えた明村だったが、ここにきて復調したようで、南場の親番での40オールでこの半荘のトップを決めた。
(◎明村/●菊池)


【6回戦 明村▲1・坂井▲1・菊池3・平山▲1】
 ▲1の3人並びとなった6回戦、まず間違いなくこれが最終戦となるだろう。菊池は1人確定で、残り3人の中でトップをとった者が勝ち上がりだ。
 東1局、親明村に勝負手が入る。10巡めに、
 前回トップの余勢をかってか、テンパイ気配を隠そうともしない明村が力を込めてツモる度に「ロン!」と言われそうでドキドキしていたが、何とか無事に流局となった。次局「さあ、今度はこちらの番!」と取った配牌がこの日1番の優れもので「1段目で両面以上のテンパイならリーチ!」と固く心に決める。ところが1巡目から平山がポン、チーと仕掛けだした。おそらくはドラが2枚以上か役牌絡みの手牌だろうが、そんなの関係ねえ!ここが勝負所と踏み込んだ。
 すると平山から即で60のアガリ!これは正直嬉しかった。決定打とはいえないがこれで有利に戦えるはず・・・と思っていたら、その2で平山から早々にリーチがかかる。
(前局あんな60打っといてリーチだなんて、どうせドラそばの悪形でしょう)と自分に都合良く解釈して無筋を飛ばしていったが(というより安牌がないだけ)中盤平山が「ロン!」と手牌を開くと、これがなんとメンピンツモドラ1の13・26ですと!「何者なんだ、このオッサン!(失礼)」と想定外のアガリに呆気にとられていると、東3局12、東4局10オールと瞬く間にトップ目を逆転されてしまった。「なんという生命力・・・」平山の怒涛の連続アガリに驚愕するが、「いや、ここは120差を逆転されたことを嘆くよりも、60直撃していたことを喜びましょう!」と嫌なことは忘れて目の前の点差(10)だけを考えることに。すると気持ちを切り替えたのが良かったのか、その2では役牌ポンテンの12を菊池からアガることができ、僅か02差ではあるがトップ目に返り咲くことができた。
(坂井02→平山69→明村・菊池)ところが南入すると一転して場が重くなり、アガりが出ない膠着状態に。トップ目の私としては「このまま、このまま」なのだが、流局続きで迎えた南3局、明村が6巡目に中ポンと仕掛けてきた。明らかなドラ色のホンイツ模様であり、12巡めには、
 
 トップ逆転の80テンパイが入るが、その後ツモ切ったが先にテンパイを入れていた私のタンヤオ16への放銃となった。
 これで明村はマンガンツモでも届かない点差となり、残すところは平山のラス親だけとなった。さあ、いよいよ最後の正念場だ。南4局(坂井18→平山69→菊池16→明村)  そして迎えたオーラス、私の配牌は三元牌を含む字牌がバラバラ。自分から役牌を切り出すわけにもいかず、早々に穴熊作戦を決行する。ハネツモ以上を目指す明村の捨牌も字牌が高く全体的に役牌が出ない展開となったが、終盤手にならずと見た明村が親平山へのアシスト(役牌切り)を開始する。だが、幸いなことに平山から声はかからない。「ひょっとして平山も手になってないのでは・・・」と期待しかけた16巡目、突如として平山からツモ切りリーチがかかった。「ヤミテンだったということは、役ありで手変わりを待っていたということか?それとも私との点差を考えて18を30にするリーチだろうか?あるいは・・・」驚きの中、いろんな考えが頭の中を交錯するが、私にできるのはただ現物を切ることだけ。このまま流局だと敗退が決まってしまう明村がやむなく平山に差し込もうとするが、その平山の手牌は・・・
 ドラが固まっているところがいかにも平山らしいが、マチ牌のは既に場に3枚切れ。そして平山がリーチ前からアシストを期待していた雀頭の、最後のアガリ牌の、その両方とも全て私の手牌の奥底にしまわれており、菊池と私の勝ち上がりが決まった。

(◎坂井/●明村)


D卓:
D卓
終了
菊池 智江 B級 2昇
三上 龍玲 推薦 △2
佐藤 文彦 東京 1昇
堀井 統之 東京 △1

文:菊池 智江
 何年ぶりの八翔位戦だろう。
 今年より順位戦復帰はいいが、B級ではトップなしの手痛いスタートとなっている。
 果たして今日はトップが取れるのかが課題。

【1回戦(起家から、以下同)佐藤・三上・菊池・堀井】
 まずは三上から佐藤へ16の放銃でスタート。
 次いで堀井がうまくまとめる。中盤私がイーシャンテンからのトイツ落としを始めた瞬間、山越しで佐藤のが堀井のチートイツドラ2に捕まる。これは本来私の失点だった。
 佐藤がオヤで6オール。
 その後、私が役牌ドラ1の20を初アガリ。これが望外に堀井から。これでトップまで24。
 続いて佐藤が今度は堀井から20のアガリ。これでラスが入れ替わる。そしてトップまで400点!(佐藤△10・三上△22・菊池+14・堀井+18)
 しかしこれが遠い。トップ条件、ラス抜け条件は厳しくない。上から下まで40だ。しかし、すぐにラスになる点差ともいう。各者テンパイを入れるも、静かに流局。
(◎堀井/●三上)


【2回戦 菊池・佐藤・堀井・三上】
 まずは佐藤の10オールから。
 その後私がトイトイをツモって13・26。
 続いて三上。テンパイ気配ムンムンで押してくる。タンヤオのイーシャンテンだった私は即オリ。をツモってピンフツモドラ2の13・26。トップが並んだ。
 しかし佐藤がコツコツとあがりを重ね、オーラスを迎えて30差。
 5巡目までにが4枚並んだにもかかわらず、諦めきれずにを残していた私のミス。を打って、次にを打つと佐藤からロンの声。チートイツのみの16。佐藤の前巡にはが置かれており、私がから切ればを切ったとのこと。
(◎佐藤/●堀井)


 小休止。1回戦400点差の2着、2回戦200点差の2着。偶数着は縁起が悪い。実はここまで3回マンガンのテンパイが入っている(子で2回、オヤで1回)。これを全て三上に蹴られている(放銃2回、アガリ1回)。相性ってあるのか?


【3回戦 菊池・佐藤・堀井・三上】
 さすがにそろそろトップが欲しい頃。
 東1局、まずは6オール。
 次いでその2。ドラのをイーシャンテンで放し、タンヤオサンショクのカンをツモって40オール。
 これで少し楽をできるかと思えば、さすがに甘くない。佐藤がタンピンサンショクツモドラの30・60。薄い高めを見事にツモった。
 さらに脇であがりが続くが東1局の貯金で逃げ切り。
(◎菊池/●堀井)


【4回戦 堀井・佐藤・菊池・三上】
 1・1・△1・△1のスコア。
 東1局は最悪の出だしとなった。
 ドラにも関わらず、堀井が手だし、ツモ切り、ツモ切りと来ているのに、ツモ切り。何て甘い牌。これがピンフドラ1に捕まり30。
 その2は堀井が5巡目リーチ。現物は何もないが、これ以上放銃するわけにもいかず、ひたすら降りる。なんとか流局で事なきを得る。
 場に残ったリーチ棒。トップラス条件があるだけに気持ち悪いが、これを佐藤が三上から20の出アガリで回収する。トップが佐藤に移り、ひとまずホッとする。
 すると今度は三上のリーチ。ラスと同点になるリーチ棒だ。これも無事流局。
 小さいながらもアガリを拾え、リーチ棒を回収する。まずはラス抜け。
 ラス前のオヤ。イーペイコー片アガリの24を2回あがり、トップ目に。
 オーラスは2巡目、佐藤のをポンと三上。オヤに連チャンをさせてはいけない。うっかり堀井の120に刺さってもいけない。北家ゆえ、牌を絞る。終局間際堀井が三上に刺しにいくが全て空振り。
(◎菊池/●三上)
 短期戦で0でも残る可能性があるとはいえ、1回は取りたいトップ。ノンラスは望外の出来だった。


E卓:
E卓
終了
須藤  浩 推薦 1昇
五十嵐 毅 新潟 ±0
伊澤  興 東京 △2
熊谷  修 東京 1昇



F卓:
F卓
終了
小宮山 勤 B級 △1
山本 裕司 推薦 1昇
関根 秀介 東京 △1
中村 浩三 東京 1昇


G卓:不敗神話に挑む
G卓
5 6 7
終了
田中  実 B級 1昇
中村ゆたか 推薦 1昇
猪俣 裕之 東京 △1
奥田 直裕 東京 △1

文:田中 実

 今期の1次予選の組み合わせが発表されると、「今年も終わったな」「2次予選の立会人がどうの・・・」など暖かい言葉あふれるメールを何通かいただきました。それもそのはず八翔位戦予選で無敗を誇る奥田中村コンビ(べつに組んでるわけではないです。念のため)を含め3人が昨年と同じメンツだから。

 マージャンは4人でやるものだから、誰と誰ではどっちが強いかではなく、むしろ4人それぞれの特色がどう作用するかが、勝敗に与える影響が大きいのではないか。そういった意味で印象に残ったことを中心にレポートしてみようと思う。


【1回戦(起家から、奥田・猪俣・田中・中村)】
 東3局、奥田の攻めに3者は防戦一方、このまま流局するかと思ったが、ホウテイで手詰まった中村が、サンショクのほうで、40放銃。昨年の1次予選(私と中村・奥田・熊谷)でも、攻め合っての放銃はたくさんあったが手詰まりでの放銃は中村から奥田への20が1回あったのみ(ちなみに私はそのときオヤでタンヤオドラ3のリャンメンテンパイ)で、そのときのことが思い出された。安全牌を増やすようにオリることもできたので、なんでもかんでも他者に厳しくすればいいわけではない典型的な1局となった。

 東4局、ラスめに落ちたオヤ中村が3巡目リーチ!これをツモられるようだと、1年前の再現濃厚と目の前が真っ暗になったが、奥田がイッパツで放銃したので、今年はまだいけるなと一喜一憂。チートイツの48は利子をつけてお返しした格好で再び4者が僅差に。東1局の12放銃でラスめだった猪俣がコツコツ加点しトップめに立って南4局を迎える(猪俣04→田中16→中村36→奥田)。
 オヤ中村に2つ仕掛けられたところでこの形、
 ワンズとピンズは通りそうな牌がまったくわからないので、2メンツできているソウズを打っていくツラい進行だが、が通ったので危険な牌を打つことなくワンズを使い切ることができた。
 奥田も中村に差し込んでまでもう1局やろうとはしていなかったので、猪俣はかなりトップ濃厚だと思っていたのではないか。私がゴリ押しでアガり切ったときより、がっくりしてるんじゃないかと勝手に手応えを感じた。
(◎田中/●奥田)


【2回戦(起家から、田中1昇・奥田▲1・中村±0・猪俣±0)】
 東1局にピンフドラ1の20を中村からアガり先制した奥田だったが次局、猪俣に80放銃。
 なんでも押すと思われている私ですら、猪俣の圧力にあっさり白旗を掲げていたのだが、それに対して危険な牌を躊躇なく打った奥田。やりすぎじゃないの?とも感じたが、このあとの奥田の攻めが脅威になるのも事実で、気持ちはラス逃れに一気に傾いた。

 しかし誰も私の気持ちなど汲んではくれない。南1局に奥田がドラ3のリーチをツモり、オヤカブリで中村と並んだ3着めとなってしまう。

 南3局(猪俣40→奥田60→田中・中村)、逆転のトップを目指す奥田が厳しく攻める。ツモられてもラスめになる中村は焦りがあったか、で猪俣に52放銃(ダブドラ1)。苦しい状況でも自滅しないように辛抱し続ける印象が強い中村にしては珍しい自らラスめへの転落で、少し気持ちが楽になった。

 南4局は奥田がツモればサンアンコのリーチをかけるが流局。
(◎猪俣/●中村)


【3回戦(起家から、猪俣1昇・田中1昇・奥田▲1・中村▲1)】
 東2局、猪俣から30見逃して14オール。ピンズを2つ仕掛けてわざわざ地獄の北タンキにするあたり、死のシフトを意識しすぎでしょ。見逃したあと白タンキにかえてあっさりアガれてしまったが、1昇持っているのになぜ自分を追い込むのかと反省。

 その2は奥田のリーチが空振りし、東3局に猪俣が7・14をアガると理想的な並びになり、見逃した甲斐があったなあと10分前の反省気分はどこへやら。まったく現金なものだ。(田中07→猪俣49→中村17→奥田)

 並びができるのが東場では早すぎたか、東4局は追い込まれた2人の反撃が始まった。奥田が1をアンカンする。中村がピンズに寄せて仕掛ける。奥田はテンパイしたら概ねリーチとくるだろうから、そのときアガりやすい待ちになるようチートイツの孤立牌を選ぶ。(ドラ)のイーシャンテンとなったところで奥田からリーチ、宣言牌はだ。中村はまだ押しますよと打!次のツモでテンパイすればチャンスだ、と胸が躍る。期待通りツモでテンパイ、待ちを選んだ。危険牌をつかまされた様子の中村が小考のすえを打った。このときはやはり中村の手にある可能性の高いにすべきだったかと(心の中で)天を仰いだ。その後無スジのに待ちかえし、さらにドラまたぎのを引かされてギブアップ。私がテンパイを崩すと中村の手からが出てきた。ようは、どっちの待ちにしようが中村がオリを選択した時点で私のアガリはなかったわけだ。直後に奥田がをツモり20・40でトップめに立つ。(奥田27→田中07→猪俣69→中村)

 このままの並びだと、1昇、1昇、0、▲2となり、中村はかなり厳しいオヤカブリをしたと思っていただろうが、こちらとしては、隙なく手仕舞いされて、上手く打たれたなという感じ。

 南4局、このまま奥田トップ・中村ラスで終えても4回戦有利なことは間違いないが、死のシフト完成はすぐ目の前とあってはそれを狙わずにいられようか。結果、中村に42を放銃してまさかのラスに転落。やはり反省しないやつはダメなんだ。
(◎奥田/●田中)


【4回戦(中村▲1・猪俣1昇・田中±0・奥田±0)】
 東1局、お得意の軽い仕掛けで10・20の先制。次局、中村が仕掛ける。とりあえずラス抜けしたいです、という雰囲気が微塵も感じられない、卓上がいやーな空気に包まれる。そのドラ3に飛び込んだのはここまでほとんど名前の出てきていない猪俣。ただ1人目立ったミスがなく、勝手に負けていく人たちを尻目に無難に勝ち上がりを決めそうだっただけに、この放銃はとてももったいなく感じた。1昇の猪俣がこけたので延長突入は濃厚になった。あとは有利な立場で迎えられるように中村をまくりに行くだけ、18、12、12と小刻みにアガリを拾って一旦トップめに立つことができた。(本日ここまで8回アガってドラ2枚とは寂しいかぎり)

 南3局、(田中22→中村82→奥田98→猪俣)、猪俣がラス抜けすれば、2人の勝ち上がりとなるのでなんとか条件を緩和しようとがんばった。がんばりすぎたか目が曇っていた。中村のトイトイに80放銃で決着どころか掴みかけた昇も失って延長戦へ。
(◎中村/●猪俣)


【5回戦(猪俣・奥田・中村・田中、全員±0)】
 東1局、またも猪俣から出アガリの16で先制する。

 東2局、中村がタンヤオで1つ仕掛ける。トイトイさらにリンシャンのオマケつきで30・60の長打炸裂。

 東3局、中村がダメ押し狙いでリーチをかける。(中村134→田中32→猪俣14→奥田)この点差でトップめがリーチとは珍しいが、この5回戦を制したものが勝ち上がりに大きく近づくことは間違いないので、それを強く意識したものでしょう。それはこちらも事情は同じ、ハネマンひかれたくらいで簡単に諦めるわけにはいかない。中村のを仕掛けて20のテンパイを入れる。待ちはリーチの現物、「中村に放銃したら終わりだから」といった感じで猪俣から20。このアガリで中村との差は94、すぐにマンツモ圏内に入れたのは大きい。このあと、無理に差を詰める必要はなく一撃のチャンスを待つ余裕ができる。

 流局が続き、南3局にダブが2枚とドラ1枚のチャンス手がきた。13巡目でカンチャン同士のターツ選択を迫られるリャンシャンテンではアガリを求めるのは厳しいと感じていたが粘りに粘ってハイテイでをツモり20・40。ついに中村をまくった。

 南4局、流局間際に奥田が猪俣に28放銃でラスが入れ替わった。
(◎田中/●奥田)


【6回戦(中村±0・田中1昇・奥田▲1・猪俣±0)】
 マイナスを背負った奥田が攻めたおす。東2局リーチ(流局)、東3局6オール、10オール、東4局12(←猪俣)と他を寄せ付けず盤石のトップ。アガリのなかった猪俣がラスでついにマイナスの世界へ。
(◎奥田/●猪俣)


【7回戦(奥田±0・猪俣▲1・田中1昇・中村±0)】
 東1局、奥田リーチ(流局)。東2局、猪俣から12をアガり、この回で決着するためにはちょうどいい少し浮きのポジションを手に入れた、と思ったのも束の間、次局猪俣のピンフドラ1をオヤカブリし、点差は(猪俣08→田中15→中村10→奥田)となった。これは正直助かったと思った。仮にリーチをかけていた場合の点差は(猪俣44→田中09→中村10→奥田)となり、この方が中村・奥田が後半「猪俣のトップならよし、ラスだけは勘弁」とシフトする可能性が高いと感じる。もちろん待ちの良し悪しなどもあるが、猪俣はここでバクチでもよかったのではないか。実際はリーチ棒が残ったとき負けに直結することもあるので、一概にリーチが勝るとは言えないが、わたしがこのあと下手を打たなければ悪い結果にはならないだろうと心に余裕ができたことは間違いない。

 東4局、牽制だけで終わっても十分と序盤から軽く仕掛ける。結果は猪俣から16と再びトップめに立つ。

 南2局に猪俣から奥田に12移動して、南3局(田中29→奥田02→中村05→猪俣)猪俣はラス抜けだけのアガリはできないので、奥田か中村に捲られて決着するのは比較的容易に思える。しかし、どちらかをアシストするつもりが猪俣を助けてしまってはわけがわからないので、じつはあまりできることがない。自然に捲られない場合は無理な決着を狙わず2昇を持って8回戦へ行く心の準備だ。(時刻はすでに21時を過ぎており、夜通しでもやってやる!と捨て鉢な気持ち)
 を仕掛けた中村が終盤ツモアガった。この日アガリが最も少ないながらも、要所で高打点のアガリを繰り出してきた中村が、ここで点差詰めのわけがない。ダブアンコの13・26で突き抜け勝負を決めた。
(◎中村/●奥田)


H卓:今期最長の一次予選
H卓
5 6 7 8
終了
藤森 弘希 B級 2昇
石川 由人 東京 △3
木村 由佳 東京 ±0
古川 正和 東京 1昇

文:藤森 弘希
 規定4回戦のオーラス、各自の点差は次のようになっていた(木村△1・古川0・藤森0・石川1昇)。木村34→石川07→藤森68→古川。藤森は木村との41差をまくれば石川との勝ち上がりである。また古川がラス目のため、石川が木村との34差をまくっても同じく勝ち上がりという並びになっていた。
 何とか決着をつけるべく手を進めていくが思うように手が進まず、このまま流局かと思っていたところ最終手番で古川が13・26をツモアガり、オヤかぶりとなった石川がラスとなって全員0昇のまま延長戦へ突入となった。
(◎木村/●石川)


【5回戦 藤森0・木村0・石川0・古川0】
 東1局、4回戦までオールバーで粘っていた藤森であるが、そろそろトップが欲しい。第1打からダブを切って臨戦態勢で手を進めていく。木村がこのをポンして応戦するが、藤森が木村からタンヤオイーペイコードラ2の120をアガる。
 東1局その2と東2局に古川が連続で10・20をツモアガって藤森との点差を10まで詰める。この点差であれば最後調整して同点トップの一発決着という可能性もあるが、まだ東場であってはそう思うように事は運ばず。
 その後はラス目の木村が粘って3着目石川との差を66まで詰めるものの、南3局に藤森にチートイツドラ2を放銃して万事休す。藤森が延長戦に入ってようやく待望の1昇をあげた。
(◎藤森/●木村)


【6回戦 木村△1・古川0・藤森1昇・石川0】
 東1局からアガリが飛び交う。
 東1局 木村、鳴きタンヤオドラ2ツモ 20オール
 東2局 古川、ピンフツモドラ1 14オール
 東2局その2 藤森、ドラ1の48を木村から
 東3局 藤森、鳴きダブツモ 10オール
 南1局 藤森、ピンフツモイーペイコー 7・14

 この時点での点差は、藤森67→古川31→木村25→石川であり、藤森と古川の勝ち上がりの並びとなっていた。しかし南2局で木村がリーチツモドラ2の20・40をツモアガり、再度トップ目に立つ。そう簡単には勝たせてくれない。

 南3局、オヤを迎えた藤森にチャンスが訪れる。第1打に木村が切ったドラのをポンして5巡目にテンパイを入れる。これをアガればほぼ勝ち上がりでの決着となる手である。
 
 さらに6巡目にはをツモってのリャンメンマチの良形テンパイとなり、かなりアガりの期待が高まったのであるが、石川がかなりの長考をして藤森の切ったにチーを入れ、危険を承知でアガりにかわしに来たのである。ここは何としても藤森にアガらせてはならないという石川の強い気迫が伝わってきた。
 2巡後、この気迫が実り石川が片アガりのダブをツモってこのピンチを切り抜けたのである。
 

 南4局 前局チャンスを潰されてしまった藤森であるが、木村との点差はわずか700点でありこれをまくれば決着である(木村07→藤森82→古川11→石川)。また、古川が木村からアガって藤森をトップに押し上げても良い。ラス目の石川は一旦連荘してラス抜けさえしておけば、次局藤森が木村をまくって共に勝ち上がるチャンスがある。しかし結局この半荘でも決着は付かず、木村が藤森から12をアガってトップを守り切った。
(◎木村/●石川)


【7回戦 古川0・木村0・石川△1・藤森1昇】
 東1局 木村、イッツードラ2の80を石川から
 東1局その2 藤森、ファン牌ドラ1の20を古川から
 東3局 藤森、ファン牌ドラ3の80を石川から
 東4局 石川、タンヤオの16を古川から
 東場を終えて点差は藤森20→木村116→古川108→石川となっており、この状態では延長の並びであるが、藤森と木村の点差が近いためチャンスがあれば木村をトップに押し上げることを考えていた。

 しかしあまり早くにアシストをしてしまっては、最後に石川や古川に点数を合わされてしまう可能性があるため、アシストするのであれば終了間際、できればオーラスにて行いたいと思っていた。そのためまずはなるべくこの点差をキープしたまま局を進める事を優先とした。
 もちろんそんな思うように事が運ばないのは承知の上であるが、南1局、南2局と流局し、理想通りに局が進んでいく。

 そして南3局、藤森は木村との20差を合わせに行くべく、誰も(特にオヤの石川)テンパイをしていなさそうな事を確認してから、ツモ番1回を残したところでノーテンリーチを打ち、千点棒を場に供託した。

 南4局(藤森10→木村116→古川108→石川(供託10))、いよいよオーラス、木村または古川は藤森からトップをまくれば藤森と共に勝ち上がりである。
 一方の石川は、勝ち上がりの決着条件を持っていないため、延長させるためにはトップになるヤクマンツモか藤森をラスに落とすバイマン以上直撃または藤森をトップから落とさずかつ自らラスを確定させるアガりをするしかない。
 藤森は木村をトップに押し上げるのが一番手っ取り早い決着方法であるため、いつでも差し込めるようスタンバイしながら局を進めて行く。
 5巡目、石川が木村の切った牌にチーを入れる。このチーは恐らくかわし手であり、トップに立つアガリが難しいと判断した石川は自らラスを引き受け、この並びのまま延長させてしまおうという作戦に出たのである。
 これを見た藤森、木村にアシストしようとしている間にこの手をアガられて延長してしまう事を嫌い、すぐさまこの直後の手番でリーチ棒を投げ、同点トップの並びを作り出した。この同点トップにより、石川はこのかわし手を自らツモアガる事も、古川からの差し込みを受ける事も出来なくなり、唯一出来ることは木村から直撃する事のみとなったのである。
 一方の古川、流局すると敗退が決定してしまうため、自らトップをまくるか木村をトップから降ろすアガりをするしか方法はない。藤森のリーチ棒でハネマンツモからマンガンツモへと多少条件は緩和されたものの、101マージャンにおいて限られた1局の中でマンガンをツモるというのは非常に厳しい条件であり、このまま流局して決着する可能性が濃厚だろうと考えていた。
 ところが、である。2巡後、木村のツモ切った牌に石川が非常に驚いた様子でロンの声を掛ける。それもそのはず。現在木村はトップ目であり、このまま流局すれば藤森と共に勝ち上がりだったのである。まさかその木村からロン牌が出てくるなどとは思ってもいなかったであろう。
 全ての対局が終了した後、木村にこの件について尋ねてみたところ、何やらテンパイが入っていたとの事。確かに自らアガってしまえば決着であり、早く決めてしまいたい気持ちも分からなくはないが、それによってせっかくほぼ手中に収めていた勝ち上がりをふいにしてしまっては元も子もない。ここはぐっと歯を食いしばって流局までしのぎ切って欲しかったと思う。
 こうしてほぼ決着するかと思われた7回戦は延長し、今期1次予選最長の8回戦目へと突入する事となった。
(◎藤森/●石川)


【8回戦 石川△2・古川0・藤森2昇・木村0】
 東1局 オヤの石川が原点からのラス落ちリーチを掛ける。藤森とのトップラスを決めなければほぼ終わってしまう石川にとってラス落ちなど関係ない。まずは自分のトップを確定させてから、その後古川と木村を押し上げて藤森をラスにする作戦であろう。しかしここは流局。
 東2局 木村が石川から12+供託10をアガるが、その後は流局が続く。これまでの半荘の違い非常に場が重い。
 南2局 木村3・6ツモ
 南3局 流局

 南4局(木村37→藤森03→古川19→石川)、いよいよオーラス、各自の条件は次の通りである。
 木村 流局すれば勝ち上がり
 古川 7・14以上ツモ、28以上木村直撃、52以上出アガりで勝ち上がり(但し藤森または石川からの40出アガり、もしくは木村からの20出アガりは木村と同点トップで延長)
 石川 64以上藤森直撃で延長

 5巡目、流局させれば良い木村が藤森の切ったにチーを入れる。その直後古川がドラのを切ってリーチを掛ける。藤森は古川がトップになる手であれば差し込みに行っても良いのだが、もし40だった場合は自分がラスになった上に古川と木村が同点トップで延長という最悪の結果となってしまうためここは静観。
 2巡後、古川が静かにロン牌を手元に引き寄せて藤森との勝ち上がりを決めた。
(◎古川/●石川)


 おかげさまで今年も1次予選を勝ち上がる事が出来たのですが、道中は本来トップを取れるはずの半荘をミスして逃してしまったりしてフラフラ状態でした。2次予選ではこのようなミスを少しでも減らし何とか勝ち上がれるように頑張りたいと思います。

I卓:
I卓
5 6 7
終了
平賀 聡彦 B級 △6
桜井 一幸 仙台 4昇
牧野 卓人 東京 1昇
村田 光陽 東京 2昇


出場選手一覧

1次予選 2次予選 準決勝 決定戦
選手名 選手名 選手名 選手名
                  八翔位 小川  隆
      名翔位 平井  淳 D          
      成岡 明彦 A 成岡 明彦 C    
      愛澤 圭次 E    
      堀川 隆司 B    
       大川戸 浩 F 大川戸 浩 B
  大貝 博美 C 大貝 博美 B
高島  努 A        
小宮山 勤 F        
田中  実 G 田中  実 C    
山内 啓介 B 山内 啓介 B 山内 啓介 A
坂井 準司 C 坂井 準司 D    
藤森 弘希 H 藤森 弘希 E 藤森 弘希 C
菊池 智江 D 菊池 智江 D 菊池 智江 B
平賀 聡彦 I        
推薦 明村  諭 C
推薦 須藤  浩 E 須藤  浩 B
推薦 山本 裕司 F 山本 裕司 F
推薦 三上 龍玲 D
推薦 中村ゆたか G 中村ゆたか F 中村ゆたか A
OP 五十嵐 毅 E
OP 石川 由人 H
OP 猪俣 裕之 G
OP 伊澤  興 E
OP 大原 泰孝 A
OP 奥田 直裕 G
OP 菊池 一隆 C 菊池 一隆 A 菊池 一隆 B
OP 木村 由佳 H
OP 熊谷  修 E 熊谷  修 E
OP 桜井 一幸 I 桜井 一幸 D 桜井 一幸 C
OP 佐藤 文彦 D 佐藤 文彦 A
OP 関根 秀介 F
OP 寺西謙多郎 B 寺西謙多郎 E 寺西謙多郎 A
OP 中村 浩三 F 中村 浩三 C 中村 浩三 A
OP 平山 友厚 C
OP 古川 正和 H 古川 正和 B 古川 正和 C
OP 星賀 一彦 B
OP 堀井 統之 D
OP 牧野 卓人 I
OP 松井 秀成 B
OP 村田 光陽 I 村田 光陽 A
OP 山舗  徹 A 山舗  徹 F    
OP 涌田  悟 A 涌田  悟 C
欠場:西尾剛・亀井敬史
【凡例】選手名左の記号は今期順位戦の所属クラス。
    八:八翔位・名:名翔位
    推薦:麻将連合推薦枠出場・OP:オープン出場(支部内は五十音順)、アルファベットは卓番。
※平賀聡彦は最高位戦日本プロ麻雀協会の所属選手

第33期八翔位戦 システム

【出場資格】
・麻将連合推薦、オープン参加選手及び連盟所属選手。
・オープン参加選手は、マージャン101各支部内より選抜。
【1次予選】
・各卓4戦(1日)を戦う。
・規定回終了時のスコア上位2名を勝ち上がりとする。
・4回戦終了時に上位2名が確定しない場合は、これが確定するまで延長戦を実施する。
【2次予選】
・2次予選シードの連盟所属選手及び1次予選通過者により行う。
・各卓6戦(2日)を戦う。
・規定回終了時のスコア上位2名を勝ち上がりとする。
・6回戦終了時に上位2名が確定しない場合は、これが確定するまで延長戦を実施する。
【準決勝】
・2次予選通過者により行う。
・各卓6戦(2日)を戦う。
・6回戦終了時に単独で2昇以上の首位者が決定戦の出場資格を得る。
・6回戦終了時に単独で2昇以上の首位者が発生しなかった場合は延長戦を実施し、7回戦以降はその回の開始時の首位者のスコア+1昇に単独で到達する者が発生するまで延長戦を実施する。
・「初めて、四者同スコアで決着権がある状態」となった場合は、その一戦の終了時の単独首位では決着としない。
  ただし「再度、四者同スコアの状態」となった場合は、同戦終了時の単独首位で決着とする。
【決定戦】
・八翔位及び準決勝通過者により行う。
・10戦(1日4戦)を戦う。
・10回戦終了時に単独で3昇以上の首位者を優勝とする。
・10回戦終了時に単独で3昇以上の首位者が発生しなかった場合は延長戦を実施し、11回戦以降はその回の開始時の首位者のスコア+1昇に単独で到達する者が発生するまで延長戦を実施する。
・「初めて、四者同スコアで決着権がある状態」となった場合は、その一戦の終了時の単独首位では決着としない。
  ただし「再度、四者同スコアの状態」となった場合は、同戦終了時の単独首位で決着とする。