第33期八翔位決定戦

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観戦記:藤森 弘希

 2016年11月12・13・19・20日の4日間にわたり、第33期八翔位決定戦が行われた。
 3連覇中の小川隆八翔位に挑むのは、成岡明彦選手(A級)、菊池一隆選手(東京支部)、中村浩三選手(東京支部)の3名。
 各選手の紹介や意気込みについては別途戦前インタビューが行なわれているため、そちらをご覧いただくとしてここでは割愛させていただく。
 また、今年度の八翔位戦は初の試みとして3日目限定であるがスリアロチャンネルによる放送対局が行なわれ、多くの101ファンの皆様にその激闘の様子をご覧いただけることとなった。
 それでは4日間におよぶ激闘の様子を私、藤森弘希がお伝えさせていただきます。(以下文中敬称略)


【1回戦(起家から以下同)菊池・成岡・小川・中村】
☆東1局その1
 四者の中で一番配牌が良さそうな荘家菊池。メンツ手が近いと思いきやツモは縦。捨て牌に2組トイツが被るも9巡目にチートイツをテンパイして成岡から24。幸先よいスタートを切った。


☆東1局その2
 前局放銃した成岡が早めの挽回を図りをポンするとすぐに全員が対応。10巡目にドラを引き込んでテンパイを入れ一人旅となるも流局。決してラス目には楽をさせてくれないのが101のマージャンである。


☆東2局
 第一ツモでドラが重なると789のサンショクとチャンタを見据えてトイツのを一枚落とす菊池。観戦子ならばここかのメンツ手は難しいとみてチートイツも見据えあたりから切っていたかもしれない。その後菊池の狙い通りに手は進み、小川がと入れ替えて切ったをポン、2巡後にを引き入れてテンパイ。すぐさまをツモって20・40と大きくリードを広げる。


☆東4局その1
 オヤの中村、7巡目に最高ピンフイッツードラ1まで見える手のリャンシャンテンからダブを放つ。次巡ピンフとイッツーが崩れるもイーシャンテンとなるをツモって小考。結局中村はリャンメン2つのイーシャンテンに取るのであるが、この小考で中村がまだテンパイではないと読み切ったのかドラのをぶつけていく菊池。しかしここは中村が押し切って16巡目に10オール。


☆東4局その2
 配牌リャンシャンテンの菊池、2巡目役無しではあるがテンパイ。対して中村は配牌サンシャンテンからほぼ無駄ヅモなしで5巡目にピンフドラ1のテンパイ。ここは勢い良くリーチを掛けるのかと思いきや、中村は慎重にダマテンを選択。第一ツモでペンチャンが埋まり、その後のピンズの伸びも良い。ラス目の成岡の手はさほど早そうではなく、リーチを掛けてツモればトップ目に立つ。観戦子がよく知っているいつもの中村なら間違いなくリーチかと思っていたのだが、ここはちょっと意外であった。結果はほどなくツモって14オール。


☆東4局その3
 小川6巡目テンパイも役なしドラなしペンチャン待ちという手。一手変りでサンショクになるが、手変わりもツモりもせず11巡目に撤退。流局。


☆南1局
 配牌からがトイツで9巡目にドラが重なった中村は最後までまっすぐ手を進め14巡目にとドラのシャンポン待ちでテンパイするも流局。ただこの手牌、中村はをポンすることを前提に8巡目のをツモ切りを雀頭に固定してしまったのだが、この時のトイツ落としをしておけば13巡目のをツモ切ることなく結果14巡目のでマンガンをツモっていただけにちょっともったいない感じであった。


☆南2局
 菊池が5巡目にカンをチー。その菊池の手牌を見ると手牌にドラのはなく

 
といった形のリャンシャンテンである。しかもは場に2枚切れ。
 しかし他家からすれば舐めてかかったが故に大けがをしては真っ平ゴメンなので対応せざるを得なく、この後ピンズの出がピタリと止まる。
 しかしラス目でオヤの成岡はタンピンが見える手牌であり、いつまでも一枚持ちのを抱えているわけにもいかず8巡目にリリースして12巡目にリーチ。これをツモれればラス抜けするのはもちろんのこと、トップも見えてくるが、その願いも虚しく流局。


☆南3局
 トップ目の菊池、7巡目に成岡の切ったをポン、続けてチーと逃げを図る。しかしこの直後成岡からリーチの声。前局は流局だったが今度はロン牌のを引き寄せ13・26。
 しかし成岡のこの手牌、7巡目にを切った段階ではイーシャンテンとはいえ
という結構アガリにくそうな形であったが、菊池の鳴きによって
という良形に変化してあっさりロン牌まで引いてしまうのだから、結果論とはいえ鳴きの怖さを実感した。


☆南4局
 前局ラス目に落とされ行かざるを得なくなった小川。その小川の5巡目の手牌はなんと最高ハネマンまで見えるイーシャンテン。
 小川ならあっさりハネマンをツモって頭まで突き抜けてしまうのかなと思っていると7巡目のツモは。少考ののちリーチに踏み切るが101のラス目のリーチらしく残り10巡すべて空ぶって流局。
(◎菊池/●小川)



【2回戦 中村0・成岡0・菊池1昇・小川△1】
☆東1局
 菊池13巡目にドラのをリリース。タンピン高めイーペーコーの手牌だが、1昇持ちとはいえ特に守りに重視というわけでもなく、攻めるべき時はきっちりと攻めてくる。しかし三者ともにここは受けて流局。


☆東2局
 第一ツモでドラがトイツになった中村が字牌から切り出し前へ。オヤの成岡はツモが縦で、4巡目にはチートイツのイーシャンテンとなるが、6巡目にがアンコになるやトイトイに移行して次巡をポン。小川は配牌でピンフリャンシャンテンであったが、ツモが利かず9巡目にドラを引かされ撤退。成岡、中村ともにテンパイすることなく流局。


☆東3局
 菊池が7巡目にドラ表示牌をでチー。この鳴きによってがアンコでイーシャンテンだった小川が一枚浮いているが切れなくなり即座に撤退。チートイツイーシャンテンの中村が粘るがションパイのを引かされ撤退。この局も流局。


☆東4局その1
 中村7巡目に、
からドラがアンコとなり打とし、サンショクドラ3のイーシャンテンとする。その直後に二枚目のが放たれたが中村はこれをスルー。サンショク狙いでマンズのリャンメンターツを外したのは分かるが、を鳴けばテンパイする受け入れ枚数が圧倒的に増えるし、どのテンパイ形になっても80が確定するため中村がこのをフカしたのにはかなり驚きであった。
 今回の決定戦で、特に序盤戦において全体のペースを握っていくのはあくまで中村だと思っていただけに、これが中村の作戦なのか単に様子を見ているだけなのかは分からないが。1回戦の東4局その2でリーチを打たなかった時と同様に観戦子にとってはかなり意外な感じがしていた。
 一方オヤの小川も配牌からまっすぐ手を進めて11巡目イッツーのテンパイ。15巡目にツモって20オール。今決定戦での嬉しい初アガリとなった。


☆東4局その2
 配牌アンコの成岡が8巡目にチーテンを入れて15巡目に4・8ツモ。


☆南1局
 菊池が9巡目にホンイチイーペーコーのテンパイを入れるも小川がタンピンツモの7・14。トップ目の加点としては十分でありようやく小川のエンジンも暖まってきたといった感じである。


☆南2局
 菊池6巡目、
からの打。観戦子ならを一枚切ってしまいそうな気がするが、菊池は引きのロスには目を瞑り、ワンズとソーズを延ばしてメンツを作ろうという懐の深い打ち方である。その後菊池の狙い通りと有効牌引き込み、ピンフドラ2のテンパイ。そこにチートイツイーシャンテンの成岡が飛び込んで40。


☆南3局その1
 中村がドラ2の手からをポンしてからのリャンカン選択で打のカンテンパイ。すると何と次巡のツモは裏目の。フリテンのサンメンチャンに待ち変えするもチーテンを入れたオヤの菊池が即ツモって10オール。ラス目との点差が近いだけにこのアガり逃しは大きかったか。


☆南3局その2
 中村の捨て牌が異様である。ピンズのホンイチもしくはトイツ手に見える。菊池は4巡目にチートイツイーシャンテン、小川は6巡目にピンフドラ1高めサンショクのイーシャンテンとなるが、その後両者共にオリを選択。後はチートイツテンパイの中村とラス抜けを図る成岡との勝負だが、興味深いのが成岡の14巡目。成岡は、
の形にをツモってここから1巡前に中村が切ったを切った。は成岡が既に11巡目に切っており、その間中村はずっとツモ切りなのでこの牌は通るはずである。ではなぜ成岡はを先切りしたのであろうか?それはここでを先切りしておく事によって、もしを引けた時にのオリ打ちが狙い易くなるからに他ならない。次巡成岡は狙い通りのを引き入れテンパイ。これに手詰まったのが菊池。のアンコがあるが、中村に対して切れない。結局菊池が選んだ牌は成岡のロン牌である。成岡狙い通り、してやったりのラス抜けである。


☆南4局
 成岡が5巡目にのチー。トップまでは80必要だがドラのは一枚しかない。他家に牽制を掛けつつドラが重なればトップ狙いにいく算段であろう。ラス目の中村は123のサンショクを狙うがテンパイすることが出来ず。
 成岡も途中からオリにまわり流局。
(◎小川/●中村)


【3回戦 小川0・成岡0・中村△1・菊池1昇】
☆東1局
 9巡目にタンピンテンパイの成岡。小川、中村共に攻めているが、12巡目のドラツモ切りを見せられてはさすがに撤退。一方の菊池は成岡のアンパイを切りつつも15巡目にチートイツをテンパイすると突然無筋の切り。菊池はマチは成岡のロン牌であるだが、も決して安全というわけではない。1昇持っているにもかかわらず結構大胆である。結果は16巡目に成岡がツモって7・14。


☆東2局その1
 オヤ成岡の配牌がトイツでドラ2枚のチャンス手。早々にを鳴きたいがこれが簡単に出てこないのが101のマージャン。そう思っていると11巡目にメンゼンでテンパイ。直後イーシャンテンの中村がをツモ切って120の放銃。マイナスをリカバリーしたい中村にとっては非常に痛い放銃である。


☆東2局その2
 菊池5巡目にピンフサンメンチャンのテンパイ。サンメンチャンだからとかドラをツモればとかいう理由でリーチするような事はせず、ここはしっかりダマでアガって確実に成岡のオヤを流した。


☆東3局
 菊池4巡目にカンをチーしてホンイチのテンパイ。門前で仕上げれば最高ハネマンまで見えるが、そんな絵に描いた餅よりあくまで現実をきっちり取りに行く菊池。今はまだ今後来るであろうチャンスに備え、ラスとの差を開きトップとの点差をコツコツ詰めて行く時だと考えているのだろう。ラス目オヤの中村もをポンして応戦するも結果は菊池に放銃。中村は中々アガりに結び付ける事が出来ず、依然苦しい状態である。


☆東4局
 4巡目にダブがアンコになった菊池。ここで成岡との点差を一気に詰めるべくホンイチを狙いに行くが、9巡目に成岡がカンをチーすると即座に撤退。成岡の手はイッツードラ1の20であるが、万が一一色手のマンガンやハネマンなどに放銃したら一気に下が寒くなるのでここは安易に向かって行く事は厳しいだろう。成岡ここは皆を降ろす事に成功。


☆南1局
 中村はピンズのホンイチ、菊池はドラのがトイツのダブルバック仕掛け。通常であれば菊池のこのような仕掛けに対しロン牌が出てくるはずもないのだが、菊池はラス目の中村の手が煮詰まってくれば出てくる可能性があるかも、もしくはツモったらラッキーくらいの仕掛けであろう。ここは流局。


☆南3局
 オヤの中村が10巡目にチャンタ仕掛けでをポン。この段階でリャンシャンテンであるようではアガりに結び付けるどころかテンパイする事すら厳しい。これに対してこの中村の鳴きでドラを二枚引き入れ、サンショクドラ2のイーシャンテンとなった菊池が押し返し、最後は残り1回のツモしかないのに中村に高目120のテンパイを入れさせる打。菊池はまだ中村がテンパイしていないと読み、例え残り1回でも勝負してみる価値はあると思っていたのだろうか?菊池は繊細な中にも結構大胆なところがあるが、この打牌にはかなり驚きである。


☆南4局
 菊池は配牌イーシャンテンで5巡目にカンの役無しテンパイ。しかしツモる事も手変わりする事もないまま場にが三枚見えてしまい中村の暗カンを見て撤退。中村はラス抜けするためにハネマンツモか小川からマンガン直撃条件であるが、小川が放銃する事は考えにくいため実質ハネマンツモを狙わなくてはならず、配牌を見るにそれはかなり厳しいように思えた。しかし中村のツモは凄まじく、7巡目には何とハネマンツモが見えるイーシャンテンとなっていた。
 12巡目に4枚目のを引いてテンパイするも、これでは条件を満たさないので当然アンカン。15巡目に待望のを引いてリーチ。この時点では残り一枚生きていたがあえなく流局。
(◎成岡/●中村)


【4回戦 小川0・中村△2・菊池1昇・成岡1昇】
☆東1局
 中村、5巡目にを引いてテンパイするとノータイムでリーチ。スコアが△2という事も理由にあると思うが、ようやく中村らしさが出てきたと言える。
 しかしここに待ったを掛けたのが成岡。成岡は7巡目にを引いてテンパイするとを勝負。すぐに中村から出て20(+供託10)のアガり。中村またも厳しい出だしとなってしまう。それにしても成岡のこの手牌、5巡目のイーシャンテンの段階で
だったのだが、中村のリーチがなければ成岡はチンイチに向かったのだろうか?配牌からのピンズの伸びが非常に良いため、それを感じ取ってチンイチを狙いに行きそうな気もするし、堅実に20を拾いに行きそうな気もしてしまう。果たして成岡はどう考えていたのだろうか?


☆東2局
 成岡がピンズのホンイチ、小川はワンズのホンイチ狙い。先にテンパイしたのは成岡。しかし同巡テンパイした小川にドラのを勝負される。
 次巡成岡は菊池が切ったばかりのに合わせるマチに受けかえるが、同巡小川にそれまでのマチだったを打たれてしまった上にを引かされてはさすがに撤退せざるを得ない。は小川のロン牌ではないが、この辺りの押し引きの判断はさすがである。成岡がオリに回ったため小川の一人旅になるかと思いきや今度はイッツーのテンパイを入れた菊池がを切って参戦。それまでワンズを押さえてうまく廻りながらテンパイを入れたところできっちり勝負。菊池のこの押し引きも素晴らしい。しかし結果は流局。


☆東3局
 今度は小川がソーズのツモをうまく捉えメンゼンでホンイチをツモって13・26。


☆東4局
 今度は菊池がソーズのホンイチを狙って9巡目にハネマンのテンパイ。
 
 次巡を引き、ここで確実にアガりたい菊池は当然の事ながらマチの多い三面張の方に受けかえたのだが、非情にも3巡後のツモは最初のマチであった。菊池のロン牌であるも山にかなり残っていたのだがすべて脇に流れ流局。このアガり逃しは仕方がないとはいえ菊池にとって嫌な感じが残る1局であっただろう。


☆南1局
 10巡目にピンフドラ1をテンパイした中村がリーチ。菊池も同巡テンパイするも次巡危険牌を引くと安牌を切って回る。ところがこの回っている間にフリテンではあるものの、テンパイを入れ直したのである。その菊池、16巡目にを引いて手が止まる。中村の捨て牌を見ると3巡目と4巡目にが切れており、かつ全体で三枚見えているので一見するとかなり通りそうに見える。しかし菊池はそんなワンチャンスとか通りそうとかそんな単純な理由で勝負したりするような打ち手ではない。菊池はテンパイし直した自分の手牌に相当な好感触を持っており、それで押すか引くかのせめぎ合いで悩んでいたのであろう。結局意を決してを勝負するが放銃。しかし放銃した菊池は納得した様子で「ハイ」と手牌を伏せていた。自分でよく考えて出した結論に後悔はないのであろう。


☆南2局その1
 前局の放銃でラス目に落ちた菊池、6巡目にピンフイッツーのイーシャンテン。道中何度かノミ手のテンパイをするものの、ある程度点数が欲しい菊池はノミ手のテンパイ取りをすべて拒否して中村に放銃。小川も中村と同じマチでドラ2のテンパイをしていたが役なしでアガれず。菊池も中村への放銃なら良しといったところか。


☆南2局その2
 成岡が高め678のサンショクにまとめあげるも安めツモで5・10。


☆南3局
 中村、11巡目にオタ風のをポンしてツモればサンアンコ付きのトイトイテンパイ。次巡成岡がリーチ。
 成岡のこの手、アガるのであればダマにしてが出たらポンした方が良いのだろうが、リーチしてもしドラを引いたら美味しい上に、中村がアガるとしたら1000点上乗せしておいた方が得策といった判断であろう。
 菊池は7巡目に嫌ったカンを即引いてフリテンテンパイに受けたがツモれず、13巡目に中村の風牌であるをツモ切って52放銃。これで中村がトップ目に立った。


☆南4局
 成岡、小川がトップを狙うも、中村トップを守りたい菊池が2フーロしてアガラス。中村にもようやく待望のトップが訪れた。
(◎中村/●菊池)


第33期八翔位インタビュー:聞き手・木村 由佳

 2016年11月20日、菊池一隆さん(東京支部)が第33期八翔位に決まりました。小川隆選手(A級)の4連覇を阻止した菊池さんに、八翔位決定戦を振り返ってもらいました。
 今回は一問一答形式ではなく、聞いた話をそのまま菊池さんの言葉として書きます。私(木村)にも分かるようにフランクに話してくれたので、菊池さんの口調を思い浮かべながら読んでくださいね(文中敬称略)。

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 八翔位決定戦は4日間にわたって行われましたが、乾燥で少し喉を痛めていた以外は体調も良く、自分なりにやれる準備はやったという充実感もあり、しっかり闘えました。ギリギリまでとれるリスクをとって自分の時間帯を多く作れたのが、結果的に効果的なアガリにつながったのかなと思います。朝一番からこの闘う姿勢を貫けたことが、「各日とも初戦は私のトップ」という僥倖につながりました。

 1日目初戦(1回戦)東2局のポンからジュンチャンに仕上げた局や、2日目初戦(5回戦)東1局のポンからやや強引なホンイツに仕上げた局、同じく東3局の成岡さんの仕掛けを喰いタンでかわした局、同じく南3局リスク承知で成岡さんの2昇目を防ぐべくリーチしてあがった局、などなど。各日の初戦の好結果が好循環を生み、決定戦全体を良いリズムの中で打つことができたと思います。

 もちろんミスもたくさんしています。自分で気づいている範囲での大きなミスは2つあります。決定戦の配信をご覧くださったみなさんがここで思い浮かべるのは、あの3日目の放銃でしょうか? いや、あれはミスではなく中村さんの執念を褒めるべきです(笑)。 自分が大ミスと思っているのは、2つとも配信のない日でした。

 1つ目の大ミスは4回戦南1局の中村さんのリーチに打った。菊池1・成岡1・小川0・中村▲2で、小場ながら、小川・成岡がトップ争い、菊池・中村がラス争いの状況。中村さんには勝負して、ここで負けたらトップまで押し上げてしまえ(どうせ最後は中村さんへのラス抜けアシストが入るし)と思ったのですが、今思えば逃げの発想でした。既にこの時点で、イヤという程感じていた、小川・成岡の強さに顔をあげてしまった瞬間……。東4局のたらればの跳満逃しも微妙に影響したかもしれません。後はの危険度の評価を誤りましたね。が3枚切れていて、しかも中村さんが2枚切っているのではワンチャンス。それでも101なら、が2枚切れなら、本命に近いだったと思います。この半荘は、その後中村さんがトップまで突き抜けてくれたことに救われました。そうでなければここでガタガタになっていた可能性すらありました。

 2つめの大ミスは6回戦南1局。ドラがでラス目のオヤの小川さんがと手出しして、さらにを手出し。その切り方にやや混乱しながら、場に2枚切れのをツモぎったところ、これが小川さんのチートイツ24に放銃。チートイツなら場況的にが良いわけでは無かったので、自分なら一旦ドラ待ちに受けてからアガれそうな待ちを変えそうなところ。必要な場面で安いアガリを愚直に取りに行く小川さんのリズムと強さを痛感した瞬間でした。このアガリをきっかけに小川さんはトップ・私はラス。それは必然のように思いました。

 ただ3日目の放送対局を前に大きなミスを2つして、それをしっかり反省できたことが、今思えば良かったのかも知れません。放送の冒頭で言った「条件戦を意識しすぎて自ら転ばないように落ち着いて打つ」というのが、私の反省の結果であり、3日目・4日目に、まさにその通りに打てたことが勝利につながったのではないかと思います。

 最後に、これから八翔位戦に挑戦してみようと思っている皆さんのために一言。8回戦の南4局その2。私はオヤで同点トップになれる30を見逃しています。見逃した後のこと、あがった場合の次局のこと、いろいろなことを考えながら。即ち、中村さんから30をアガった次局の牌譜を、どういう結果になったとしても、後世に残したくない……という感覚でした。この感覚こそが、できる限りの過去の観戦記を読んでしっかり準備をしてきた賜物であったと思います。できる準備は他にも色々あります。皆さんの挑戦を待っています!
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【インタビュー&記事執筆を終えて(木村由佳)】
 インタビューをした後、私が書いた原稿を見てもらいました。すると、菊池さんがところどころ書き直してきました。
 修正されてきた原稿を見て私が思ったのは「初めの原稿のほうが具体的でわかりやすいやん!?」ってことでした。
 でも、菊池さんの修正を生かして(語尾や言い回しはちょっと手を入れましたけど)そのまま、編集長に送ります。それは「菊池さんが木村には言ってくれるけど、不特定多数の101ファンにはまだ言わないこと」があると思ったからです。
 どうか101マガジンの読者の皆さんは、このインタビューを見ながら、牌譜や観戦記を研究して、「菊池さんが出し惜しみしている部分」を読み取ってください。そして、八翔位に挑戦しましょう!
 観戦記もお楽しみに!
(了)


第33期八翔位決定戦 成績表


11月12・13日・19・20日(東京対局室)

選手名
10
11 12 スコア
小川  隆 八翔位 1昇
成岡 明彦 A級 ±0
菊池 一隆 東京 2昇
中村 浩三 東京 △3


第33期八翔位戦 システム

【出場資格】
・麻将連合推薦、オープン参加選手及び連盟所属選手
・ オープン参加選手は、昨年度のマージャン101における打荘数が24ある者から各支部内で選抜。
【1次予選】
・各卓4戦(1日)を戦う。
・規定回終了時のスコア上位2名を勝ち上がりとする。
・4回戦終了時に上位2名が確定しない場合は、これが確定するまで延長戦を実施する。
【2次予選】
・2次予選シードの連盟所属選手及び1次予選通過者により行う。
・各卓6戦(2日)を戦う。
・規定回終了時のスコア上位2名を勝ち上がりとする。
・6回戦終了時に上位2名が確定しない場合は、これが確定するまで延長戦を実施する。
【準決勝】
・2次予選通過者により行う。
・各卓6戦(2日)を戦う。
・6回戦終了時に単独で2昇以上の首位者が決定戦の出場資格を得る。
・6回戦終了時に単独で2昇以上の首位者が発生しなかった場合は延長戦を実施し、7回戦以降はその回の開始時の首位者のスコア+1昇に単独で到達する者が発生するまで延長戦を実施する。
・「初めて、4者同スコアで決着権がある状態」となった場合は、その一戦の終了時の単独首位では決着としない。
  ただし「再度、4者同スコアの状態」となった場合は、同戦終了時の単独首位で決着とする。
【決定戦】
・八翔位及び準決勝通過者により行う。
・10戦(1日4戦)を戦う。
・10回戦終了時に単独で3昇以上の首位者を優勝とする。
・10回戦終了時に単独で3昇以上の首位者が発生しなかった場合は延長戦を実施し、11回戦以降はその回の開始時の首位者のスコア+1昇に単独で到達する者が発生するまで延長戦を実施する。
・「初めて、4者同スコアで決着権がある状態」となった場合は、その一戦の終了時の単独首位では決着としない。
  ただし「再度、4者同スコアの状態」となった場合は、同戦終了時の単独首位で決着とする。