第37期八翔位決定戦
観戦記:平井 淳
第37期八翔位戦決定戦が漸く始まった。ただでさえコロナ禍で開幕が遅れ決定戦のメンバーが決まったのは昨年の10月であったうえ、堀井のアクシデントにより更に日程は延期され決定戦は年明けとなった。予選を打つことがなく、腕が鳴っていたであろう堀井(少し鳴りすぎたみたいだが)、失冠以来の小川、この4年で3回目の出場となる板川、そして順位戦参加から30年目にして初めて決定戦に駒を進めた山内。そんな各者の思いが交錯する中戦いは始まった。
起家より 板川・山内・小川・堀井
東1局その2は、7巡目にピンフドラ1テンパイの山内が、小川のテンパイ打牌を捉えてトップ目に立つと、次局もを仕掛け6オールと加点した。近頃の101ではこれくらいの点棒移動でもやはりジャブにしか感じない。
ストレートパンチが飛び出すのは東2局その2【牌譜2】である。小川の4巡目、
でもでもというところであるがラス目小川の選択は。その後と引いたテンパイは7巡目で打のヤミテンとするが板川が仕掛けると躊躇なくリーチとした。板川の河にがあるにもかかわらず。一度アガリを逃した後だけに本人も余り気持ちのいいリーチではなかったであろうが、Bコースのツモアガリとなった。これでラス目から一躍トップ目である(13・26)。
その後は4者が繰り出すパンチは大きくはヒットすることなくこのまま1回戦は終わった。板川・山内は無難なスタートに不満はなかったであろうが、一度空振ったパンチが何とか当たった小川と、一発も出なかった堀井はどう感じたのだろうか。
小川1昇・山内0・堀井△1・板川0
一方、南家・山内は4巡目にドラのを重ねてリャンシャンテン。
形では圧倒的に小川が良いのだが山内はここからを2枚引き、8巡目にテンパイし、小川を追い抜く。小川は山内から1巡遅れて追いつくが、その前巡に板川からが打たれヤマに1枚のマチとなってしまう。かたや山内のロン牌は2枚ヤマにいる。7・8巡目の小川のに堀井は仕掛けることもできたが、如何せん形が悪すぎる。たとえ声が出たとしても下山にが2枚積まれておりいずれにせよ山内は僥倖の20・40を得る。
南2局で堀井は決定戦の初アガリ(ツモのみの3・6)に少し手ごたえを感じたのか、南3局のオヤでは積極的に攻めに出る【牌譜4】。
テンパイは山内が早いが、堀井は最後のオヤ番、山内は安牌がしかないため二人は歯を喰いしばってツモ切りを続ける。そして18巡目の堀井はもも打てなくなりを抜いた。19巡目のツモはなんと。このアガリ逃しは点数的には大きくはないが、この展開はやはり不調を意識するのではないだろうか。
南4局、小川にラス抜けのリーチが入るがそこまで。観戦子には1回戦のトップがまぐれに思えてしまう。
堀井△1・板川0・山内1昇・小川0
この時、東家・堀井は配牌からを引いただけの
イーシャンテン。3巡後を引きテンパイとなるが1巡前に引いていたのがで40の放銃となった。
東2局、今度はその板川の7巡目にチャンタのイーシャンテンが入る。
9巡目、板川がドラをツモ切ると山内からロンの声が発せられる。チートイツの64である。禍福は糾える縄の如しか。
その次局、ラス目板川がらしくない打牌をする。5巡目、
選択はで大物手狙いとした。ある意味板川らしいのかもしれないが、結局は有効牌が引けず流局する。
東4局【牌譜5】に、再び糾える縄が山内にやってくる。否、自分で糾えたのか。先ずは4巡目の堀井がらしくないように思える。
堀井の選択はでこれを東家・小川がポンする。普段の堀井であれば打で様子を見るような気がする。ポンした小川はイーシャンテン。
それでも山内は、南1局に堀井からチートイツ(16)をアガってラス抜けをするが、次局堀井にカンチャンマチをツモられ(3・6)、再びラス目に落とされる。更に南3局の東家では板川の5巡目ポンテンを最終ツモでアガられオヤカブリする。
一方これでケツに火のついたトップ目小川であるが、35差を捲くるべく板川がピンフのイーシャンテンで打ち出したドラのが鳴けると次巡60オールとした。
その2はチョーマに余裕のできた小川が堀井に差し込み(20)、山内の1昇は0に戻った。しかし、小川は本調子なのか。
板川0・堀井△1・山内0・小川1昇
なんだか山内らしくない。順位戦ならペンチャン外しであろう。その後、道中色々あったがアガリはこの1回のみである。
こうなったら一番つらいのはラスオヤの小川である。それでも小川は4巡目に好形のイーシャンテンとなる。
しかしこれが引けない。それどころか堀井・山内に動かれてしまう。10巡目には撤退せざるを得なくなる。後は互いの振込或いは流局を望むのみだ。
動いた二人の目論見は、堀井はホンイチからのトップ獲り、
堀井△1・小川0・山内0・板川1昇
ここに既にチートイツをテンパイしている板川から6枚目となるのが放たれる(3枚2枚切れ)。勿論堀井はチーテンを取るのだが、下家に流れたのがで流局となった。本人が知らないのが救いなのだが。
東2局は101では珍しい4人テンパイ【牌譜7】。ただ、小川の「高目なし」、堀井の「役なし」は勢いの差なのであろうか。ここは板川の絵合わせが合わず、山内がヤマに5枚あるロン牌を掘り当てた(20・40)。
流局を挟んで東4局、その山内に早いテンパイが入る。4巡目に、
リーチで押さえつけることもあったのだろうがここはセオリー通りのヤミテンとした。このため板川のチーにより小川のロン牌が流れてきてピンフ12の放銃となった。盤石のはずの山内のトップ目がここから崩れていく。
南1局、東家の堀井は10巡目に国士無双のイーシャンテンとなるが次巡のツモは。ドラがだけに一瞬手が止まったがそのまま河に置かれ、これが板川の高目でタンピンドラ1の40の放銃となった。
次局は流局し、明暗を分けたのが、南3局【牌譜8】である。
山内の配牌でテンパイしており、一手変わりでサンショクになる。かたや板川の配牌はファン牌がトイツだが、4シャンテン。これがと引いて姿が立ち上がってくる。山内の切りも仕方なく、堀井の切りも普通であろう。ただ板川のツモヤマに驚かされるだけである(20・40)。
のテンパイが入るのだから。ただ山内の6巡目は出アガリができない以上フリテンにとるのもあったかもしれない。
南4局は、山内の逆転リーチ(ただしフリテン高目限定)が入るが何事も無く流局し、2昇者ができた。
山内0・小川0・堀井△2・板川2昇
堀井が、
とテンパイが入っていた。
これに窮したのは板川で筋を頼りに山内にで放銃する(24)。
後は細かい動きとなり東3局小川20←堀井、南1局板川16←小川で迎えた南3局【牌譜9】。堀井に漸く納得するアガリが出た(14オール)。
構想は決まっていたが、なかなか有効牌を引けず、イーシャンテンは15巡目、テンパイは17巡目、ツモアガリは最終ツモの18巡目と際どいものだったが一躍トップ目となった。
アガリを逃していたのは3着目板川で13巡目に、
で打とすれば次巡のでツモアガリであったが、5巡目に打としてまで残したのマチはサンショクへの手変わりの可能性もあり変えられなかった。
それでも次局の板川は、サンショクを作って14巡目にリーチを打つ。
ヤマにはが1枚とが1枚あったが、それらは王牌に仕舞われていた。
南4局【牌譜10】を迎えて、堀井12→山内20→小川22→板川(供託10)とまだまだ勝負は分からない。その中、トップ目堀井が山内の第1打にポンを掛けた。
山内0・板川1昇・小川0・堀井△1
のターツは2巡目に嫌い始めたもの。との選択だがを引くとためらわず打とした。もし最初からを嫌っているとリーチはかけられず、12巡目ツモの14オールであったろう。河もリーチを掛けやすい模様である。とが2枚ずつ切られている。しかも高目なら40オールだ。もっとも小川にあんな手が入っているとは思っていないのだが。安目であるが、山内はこれをツモアガって、大きなリードを得た。
と思ったが、次局に小川が最終ツモで20・40をツモアガる。
小川のテンパイは10巡目で実はこれより早く板川にも7巡目にテンパイが入っていた。
小川がビシビシとをツモ切るため板川は出アガリも期待したであろうがこのツモアガリはショックである。
山内も原点リーチのリスクを冒したリードがこんなにも儚くなくなるとは思っていなかっただろう。それでも山内には牌が押し寄せた。次局、5巡目テンパイ。
マチが少々苦しいとみていると、山内は次巡のドラを手に残し打とし、もっと苦しいマチとした。
小川、7巡目に
これではは出ていくしかない。山内2度目のドラタンキマチでのアガリである(52)。
流局3局を挟んだ南2局、小川にも牌が押し寄せた。小川4巡目、
山内との点差が88であったので小川の選択はヤミ。そうなれば動き出すのが東家・板川で7巡目にポンした。
その板川に難しいパズルがやってきた【牌譜12】。
板川の13巡目、
河にはが2枚、が3枚切られている。板川の選択は打。とで2メンツは難しいと判断し、ピンズの下にもう1メンツを求めたのだ。の情報がなくなんとも言えないが決して非難される選択ではないだろう。否それが一番懐の広い打ち方かもしれない。しかしツモは皮肉にも、、とやってきた。流局。
南4局は、山内が鳴きイッツーで〆て単独トップとなった。
小川0・板川0・堀井△1・山内1昇
これに対し7巡目の小川は、
と受け気味に打ち、同巡板川はその打牌を曲げようとした。
山内の気迫があふれる28である。
東3局、今度は小川が仕掛ける。6巡目、
その巡の板川は、
としカウンターパンチも狙えるが2巡後の堀井のにポンテンを入れた。そしての1枚切れを見てか小川の13巡目のに喰いを入れマチカエする。ドラ引きの受け作りなのか。次巡小川は覚悟を決めたのかをツモ切った(40)。小川には小川の意地があるということか。
堀井20+供託←板川、板川18←堀井、山内20←小川で迎えた南4局は、山内36→板川・堀井84→小川となった。36差を捲りに行く板川、堀井は真っ直ぐに手を進めるがまとまらない。一方東家・山内は強くアガリを求めたわけではないが、手をソウズに寄せると10巡目に、
とテンパイを果たす。すると下家小川からすぐにがツモ切られた(78)。120差の安全圏に逃げるアガリではないのでまだ安心はできないが、山内の2昇目を阻止する80の差し込みは心配しなくてよくなった。
その2【牌譜13】はなんとも面白い牌譜になった。兎に角山内の2昇目を阻止すべく堀井が動き出し、それを上家・板川がサポートする。の切り巡も絶妙でその間に堀井がをツモる巡目を与えている。
堀井0・山内1昇・小川△1・板川1昇
そんな思惑の中、山内が軽い動きを見せた。4巡目に自風を仕掛けたのである。
次局、山内のリードは許さないと板川がリーチをかける【牌譜14】。最初の仕掛けは小川で、二役トイトイのイーシャンテンとする。勿論板川には分かないが小川への放銃は上等との意識もあったのだろう。また、このマチの景色が良い。結構感触のよいリーチではなかったか。しかしもう一人小川のポンでテンパイを入れた者がいた。堀井である。ここはヤミテンとし、板川のリーチに比較的押し易いをツモ切ると次巡ロン牌を引き寄せた(5・10+リーチ棒)。堀井らしさが戻ってきた。
リーチを空振ぶった板川だがそんなことで挫けるわけにはいかない。次局も5巡目にイーシャンテンとする。
引きだけは嫌な形だけに次巡のツモで打とするが以後有効牌が引けない。と関連牌は来るがテンパらない。漸くテンパイしたのが12巡目のツモである。
は場には1枚も切られていない。一度はヤミテンとするが、13巡目のは横に曲げられた。実際にヤマに生きていたのは4枚目の1枚だったがそれは板川の次のツモにあった(20・40)。
次局、オヤ・板川は更に攻めを見せる【牌譜15】。7巡目にをポンした形が、
のイーシャンテンとなっていた。が、板川の仕掛けに8巡目のツモにテンパイを取った。から入れば落としを目論んでいたが状況がそれを許さない。その2巡後のツモがドラは筋ではあるが押せない。ここからが堀井の真骨頂だろう。少し厳しいが打とすると次巡でドラタンキマチのテンパイとなる。更にを引き戻すと再びのテンパイ崩しとし、次巡にサンショク確定の大復活を遂げる。これに流局上等で対応していた板川が幻惑される。アガリへの細い細い道を見てしまったそうだ(52)。
勿論堀井だってツモに恵まれなければこんなことはできない。そしてもう一人このドラマに助演したものがいた。西家・山内である。山内のイーシャンテンは7巡目、
次巡のツモではが勝負できないとテンパイを取らず、2巡後のではフリテンのテンパイを取ってを勝負している。結果としては山内に最高のものとなった。
南1・2局と卓上の殴り合いは続くが、ここは流局した。
南3局、山内にチャンス手が入る。8巡目に、
と、イーシャンテンとなり、テンパイは11巡目のツモ。しかし既に堀井は7巡目に、9・10巡目にの手出しをしていた。その堀井に山内は15巡目のを止めることができなかった(40)。
これで小川と山内は同点3着目となった。
南4局【牌譜16】、小川の5巡目ポンから状況は目まぐるしく変化する。板川からすれば小川の狙いは単独3着であろうから小川が手を高くすることはないと踏めるし、堀井のテーマも山内の単独ラスである。堀井は小川が動くと渙発入れずに無筋を連打する。が、板川が動けば話が違う。それでも何とかが抜けないかと見ていると小川が4枚目のを引き寄せた(3・6)
板川1昇・小川△1・山内0・堀井0
3回連続でアガった山内は、その後の4局を丁寧に打ち回し流局として南場のオヤ番を迎える【牌譜18】。 山内4巡目、
3巡目にをほぐしているのだからここはでもよいと思えるが2枚ある三元牌を処理しに行った。山内は1巡目の板川のチーをどう見たのであろうか。ドラ表示牌だけにジュンチャンやサンショクのキー牌に思え遠い仕掛けと見たのだろうか。三元牌を板川の鳴かれると頭のも落とせない。前4局には見られない打牌だった。
は板川には鳴かれないが、堀井の仕掛けを呼んだ。
南4局を迎えて、堀井04→山内74→小川08→板川となり、上下僅差かつ下から上を望める展開となった。そのためトップ目・堀井も手を進めるべく5巡目から仕掛ける。
堀井までは86でありサンアンコやWでアガればトップを望める。ということで一旦はヤミテンとした。なお、現状でツモアガるとラス目は抜けられるが堀井・山内が同点トップになりスコアは「板川1昇・山内1昇・堀井1昇」となる。その後堀井の加カン、ツモ切り後のを板川はアンカンするとその手が止まった。暫し間を置くと板川は点箱から千点棒を出した。この間は何なのか。どうもトップを望める手ではないと他3者は感じたろう。しかし現状の順位に不満のない3人は丁寧に降りた。それでも板川はその腕力でを引き寄せた(8・16)。
山内は棚ぼたの1昇で板川と並んだ。板川としても苦渋の選択だったのだろう。
山内1昇・堀井0・板川1昇・小川△2
その11回戦でも山内はまたも軽い仕掛けから入った。5巡目にポンテンを取る。
小川は、9巡目にを引くとリーチとすると、山内はを引き安全牌がないこともありと振りかえ40を小川に献上した。
次局は、板川が9巡目にテンパイを入れる。
板川は、2巡目にを切っていたがライバル山内の前局放銃もあったのだろう打のフリテンリーチとした。これに対しラス目山内もイーシャンテンとなっており、10巡目に追いかけた。
山内のロン牌がヤマに1枚に対し、板川のロン牌は6枚あったが流局した。
供託が2本となった東3局、3巡目に山内のに板川の声が掛かった。
結果は山内もテンパイはするが、と引いた板川にで30+リーチ棒2本を献上する。
東3局その2では、3巡目やはり山内のに対し、板川の連荘は適わないと堀井が動いた。
堀井・小川の連合軍に頼るしかないと思われた山内だが、チャンスがやってくる。東4局4巡目、
83沈み、3着目板川まで107差だがイッツーまでは狙っていられない。堀井トップ目を守って局を進めるべくリーチとし、即でを手繰り寄せた(13・26)。
さらに、山内は南1局のオヤ番で14オール。
その2は堀井から18。
その3は、板川が遠いホンイチの仕掛けで山内の足を止め流局させる。
南2局は、堀井に6巡目チャンタサンショクのイーシャンテン
が入ったところで板川にはテンパイが入る。
トップ目山内とは32差でリーチを掛けてツモれば捲くれる点差である。高目への手変わりもあるため板川はヤミテンとしたが次巡ツモ切りリーチとした。これが堀井にどう映ったのか、無筋を1枚通すと板川のにポンテンを掛けた。そして次のツモで放銃となる。
板川にとっては痛恨、山内にとってはラッキーなのか。追う堀井・小川にとっては黙ってツモらせたほうが良かったのか微妙な点差である。
南3局【牌譜19】、トップ目山内以外は真っ直ぐに手を進め、最初のテンパイは堀井の5巡目、
こんなものは勿論ツモ切りとなり、次のテンパイは8巡目の小川。
こちらは安目などと文句を言っている暇はない。打と即リーチとした。
イーシャンテンの板川はオリに回るが、堀井はフリテン高目を引いてテンパイ。出アガリは勿論28+リーチ棒でトップ目まで行けるが堀井は小川からのアガリは望んでいなかった。それでは南4局がアガリ競争になるし、仮に流局決着となると12回戦が3人決着権持ちとなることを嫌ったのだ。だが、は脇からは出るはずもなく、また変え頃の牌が来ないまま小川からがツモ切られた。堀井苦渋の「ロン」(28)。
南4局【牌譜20】、板川が18差を追うべく苦しい仕掛けを入れるが、堀井が7巡目テンパイ。板川の現物を催促するリーチに小川が応えた(16)。
山内1昇・堀井1昇・小川△3・板川1昇
殴り合いなら俺に任せろうということなのか、11巡目に役なしでテンパった板川が即リーチとする。
は河には無く、ドラ表示牌1枚が見えているだけだったが、既に6枚は手牌に、残る1枚も王牌では、剛力板川でも引くことはできない。
次局も板川に7巡目にテンパイが入る。
今度は役ありのためかヤミテンとした。このため堀井、山内に追いつかれるがを引き当て供託のリーチ棒を回収した。ちなみに河にはが1枚のみ。自身の河が強かっただけにリーチもあったかと思えたのだが(7・14+リーチ棒)。
35のリードを得た次局の板川は、3巡目に仕掛ける。
板川のロン牌を引いてのテンパイで山内有利かと思えたが、を鳴かせた堀井がチートイツのイーシャンテンから板川に放銃した(12)。山内は暗然とした気持ちでこのを眺めたであろう。
板川ペースで進む半荘に小川が不可思議な動きをする【牌譜21】。小川9巡目、
そんな小川は南入した次局8巡目にピンフをテンパイすると即リーチとした。
板川までは47差あり点差を詰めておくだけのリーチだ(ドラは板川の1巡目と小川の5巡目に切られている)。
これに東家・山内が追いつき、リーチとした。
こちらもピンフのみだが引けばトップ目まである。気合を入れてリーチ棒を出したが、小川が直ぐにを引き山内にツモのチャンスもなかった(7・14+リーチ棒)。これで板川02→小川62→山内02→堀井となり、南4局までこのままいけば板川がラスオヤなのでツモアガリさえすれば板川を引きずり下ろせる。
ということもあるのか、次局は山内が堀井ので16をアガリ局を進めた。
南3局は、南4局の条件を逃れようと板川が最後までテンパイを目指すが、牌に恵まれずイーシャンテン止まりとなった。また、他3者も板川の打牌に途中から降りに回り、決着を南4局に賭けた。
南4局【牌譜22】、堀井にドラトイツのサンシャンテンの配牌が入る。
ただ、の3度受けはやや厳しい。2巡目ににがくっつき好形に変化する。道中小川に喰いを入れられるがカンチャンから埋まり本人には手応えのあるリーチだった。だが牌譜を見てお分かりの通りは配牌で7枚配られており、残る1枚も小川が4巡目に引いている。
さて、その小川だが、出動は6巡目。
なお、山内のリーチは堀井のリーチ棒に過剰反応し板川との点差ばかりに気を取られツモった場合は小川が01だけ上であることを失念したもの。この瞬間に堀井は出アガリができるとぬか喜びをしたのだが。山内のリーチ棒はこの夜の美味しい肴となったそうです。
板川1昇・堀井0・小川△2・山内1昇
東1局は、堀井が押し気味に進め7巡目に自風とのシャンポンマチでテンパイすると13巡目にドラのを引きを切り一歩引く。その後のツモがで僥倖のリードを得る(13・26)。
次局、そのリードした堀井のオヤ番で、堀井の現物なら片アガリイ―ペコー(ドラなし)のテンパイとした山内がメンツ落としを見せている堀井にピンフ18を放銃する。
その2【牌譜23】はタンヤオテンパイの堀井が12巡目にドラをツモ切ると山内から「ロン」で52。
山内は、7巡目に、
となり、少考を入れ打としてテンパイしていたのだ。それまでにと怒涛のピンズツモだけに一気に染めてしまうことも考えたはずだが、ラス目であることも考慮したのかドラタンキとしていた。山内、決定戦3度目のドラタンキの出アガリである(他者はなし)。
トップ目に浮上した山内は、流局を挟んだ東4局のオヤ番でも追撃陣の打牌をうまく捕らえ30(堀井)を加点し逃げ切りを図る。
しかし、ここで山内を走らせてはいけない板川が、その2では仕掛けを見せ流局に持ち込むと自身のオヤ番でその力を見せた。
南1局【牌譜24】、板川8巡目、
に自信があったのか、喰い伸ばしのためのが1枚あればよいとしたのかはわからないが、ポンからを引き寄せ、チャンス手を得ていた小川の切り遅れたを咎めた。
その2【牌譜25】は、山内が仕掛ける。
板川は山内のチーを喰い伸ばしと読み、マチはほぼと決めていたそうだが、兎に角ここを勝負所とした。一方の山内もこれに応えた。と無筋をツモ切るのだ。板川は嫌ったカンを先に引くが力強くを引き寄せ山内ににじり寄った。
その3【牌譜26】の板川の対抗馬は堀井だった。板川がポンテンを入れる。
これに板川は無筋を含めたツモ切りで応じる。このため小川が堀井に差し込みに行けない。しかし18巡目に板川の手が止まる。ドラ以外にもう1枚切りたくない牌である。板川はここで降参する。そして持ってきたハイテイ牌(役はない)は無情のであった。いや、まだ3局ある。
南2局【牌譜27】板川が残したリーチ棒が焦点となる。いち早く動いたのは山内である。
この時板川の手牌は、
とまだ好形とは言えないリャンシャンテンだったが、引きからポンと追いついた。
南3局【牌譜28】も壮絶だった。
板川の6巡目、
山内との点差を考えるとドラ受けは外せないので選択はかとなる。板川の指はを選んだ。しかし次巡のツモがで打とした。この結果が12巡目のフリテンリーチ。
を残していないと頭が出来ていない、更にを引いているのだから板川の選択にミスはなかった。ただ引きを除いて。
一方、リーチを受けた山内は無筋を切って押し返している。山内にしても4巡目、
に打としてアガリを逃している。第1打でを外しているならカン引きで素直に打としていれば10巡目にテンパイ(想定牌姿)
板川リーチ後の小川のを捕らえることができていた。それでも板川がを掴むことを願って(局後談)山内は勝負掛けしていたのだ。なお小川は山内のを見て後は二人の安牌を並べた。堀井・小川にとっては無事流局しオーラスでの20・40で延長戦とするチャンスが残った。
南4局【牌譜29】、山内は最初からオリを決めており、安牌の収集に走っている。一方追う板川は牌が縦に来る。配牌2対子が7巡目にしてチートイツになる?そう1トイツは河にできている。7巡目、
を切っておいてマチ頃の牌を待つのか、それともこのまま待ちにするのか。前巡のの顔を立てたのか、板川の決断は早かった。
この時堀井は、
の20・40の条件まではサンシャンテン。小川は、
のリャンシャンテンである。
板川のリーチした手牌が64以上あれば出アガリが効いてしまうが、もうそんなことにかまっていられない。二人は真っ直ぐ手を進めた。
4巡後、堀井にテンパイが入り、リーチをかけた。
堀井の喉から手が出るほど欲したは小川のツモヤマに3枚並べられており、板川の求めた最後のは王牌に寝ていた。
おめでとう!山内!
第37期八翔位決定戦 成績表
2月20・21日 3月6・7日/東京
選手名 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
結果 | |
堀井 統之 | 八翔位 | ● | − | − | − | ● | ◎ | − | − | ◎ | − | ◎ | ● | ● | △1 |
小川 隆 | A級 | ◎ | ● | ◎ | ● | − | − | − | ● | − | ● | ● | ◎ | − | △2 |
山内 啓介 | B級 | − | ◎ | ● | − | − | − | ◎ | − | ● | ◎ | − | − | ◎ | 2昇 |
板川 和俊 | B級 | − | − | − | ◎ | ◎ | ● | ● | ◎ | − | − | − | − | − | 1昇 |
第37期八翔位戦 システム
【出場資格】
・麻将連合推薦、オープン参加選手及び連盟所属選手
・ オープン参加選手は、昨年度のマージャン101における打荘数が24ある者から各支部内で選抜。
・「天鳳予選」優勝者(4月4日「オンラインマージャン『天鳳』」にて開催)
【1次予選】
・各卓4戦(1日)を戦う。
・規定回終了時のスコア上位2名を勝ち上がりとする。
・4回戦終了時に上位2名が確定しない場合は、これが確定するまで延長戦を実施する。
【2次予選】
・2次予選シードの連盟所属選手及び1次予選通過者により行う。
・各卓6戦(2日)を戦う。
・規定回終了時のスコア上位2名を勝ち上がりとする。
・6回戦終了時に上位2名が確定しない場合は、これが確定するまで延長戦を実施する。
【準決勝】
・2次予選通過者により行う。
・各卓6戦(2日)を戦う。
・6回戦終了時に単独で2昇以上の首位者が決定戦の出場資格を得る。
・6回戦終了時に単独で2昇以上の首位者が発生しなかった場合は延長戦を実施し、7回戦以降はその回の開始時の首位者のスコア+1昇に単独で到達する者が発生するまで延長戦を実施する。
・「初めて、4者同スコアで決着権がある状態」となった場合は、その一戦の終了時の単独首位では決着としない。
ただし「再度、4者同スコアの状態」となった場合は、同戦終了時の単独首位で決着とする。
【決定戦】
・八翔位及び準決勝通過者により行う。
・10戦(1日4戦)を戦う。
・10回戦終了時に単独で3昇以上の首位者を優勝とする。
・10回戦終了時に単独で3昇以上の首位者が発生しなかった場合は延長戦を実施し、11回戦以降はその回の開始時の首位者のスコア+1昇に単独で到達する者が発生するまで延長戦を実施する。
・「初めて、4者同スコアで決着権がある状態」となった場合は、その一戦の終了時の単独首位では決着としない。
ただし「再度、4者同スコアの状態」となった場合は、同戦終了時の単独首位で決着とする。