第34期八翔位決定戦

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観戦記:山田 史佳

 今回の観戦記の依頼が来た時に、どんなことを書いたらいいのかずっと悩んでいた。しかし色々な人のアドバイスを受けて、自分の分かること感じたことを素直に書こうという結論に至った。感じたことが正しいかは別として、今回の観戦記は自分の中で「へえぇ〜」と思ったことを取り上げて書いていってみたいと思う。
 今回決定戦に残った4人の中で、菊池のことは良く知っている。自分が雀荘勤務している時からのお客様で、何度も相手をしてもらったりイン東京での同卓の機会も多い。率直な印象はとにかく強い。色々強い。平賀は順位戦での対局がほとんどであるが、かなり押しが強い打ち手だなと思っている。坂井は相手にキッチリ対応しながら針の穴を通すようにアガリを手にするタイプなのかな、と思う。唯一対局したことがないのは板川なのだが、その名を知らぬ者はマージャン界にはいないだろう。かつて最強戦を制したこともあるのだから、文字通り最強といっても過言ではないだろう。
 そんな4人で繰り広げられる101とはどんなものになるのか?激しいぶつかりあいか?拮抗したじっとりとした内容か?色々考えながら対局室に向かった。

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◆◆◆ 1日目/1回戦 ◆◆◆
起家より 平賀・坂井・菊池・板川
 1回戦東1局【牌譜1】、恐らくこの局にそれぞれの「らしさ」が発揮された局ではないかと感じた。菊池は先制点を確保するために遠くからファンパイを仕掛ける。それに対し平賀・板川はまっすぐと手を進め、板川がリーチをかけてノーテンの平賀が即で放銃する。一人蚊帳の外の坂井。
 いわゆるイメージとして描かれる101らしさとはおよそかけ離れた立ち上がりだと感じた。しかし各選手が自分の中で磨いてきたものがぶつかりあった新しい101だと感じた1局だった。
 そんな激しいぶつかり合いを横目で見ながら坂井が東3局【牌譜2】にキッチリメンゼンで仕上げて13・26。これが決定打となって坂井がトップをもぎ取った。
 坂井に比べて、他3者は割と仕掛けて相手との間合いを計りつつ前に出ている印象を受けた、となると坂井はこの決定戦でこの後相当苦戦を強いられるのではないか?というのが1回戦を見た率直な感想だった。


◆◆◆ 2回戦 ◆◆◆
板川0・坂井1昇・平賀△1・菊池0
 そんな坂井が攻撃的な面を見せたのが2回戦南2局その1【牌譜3】。ラス目菊池に第1打から仕掛けられ、4巡目にしてもはや局面はド終盤。こうなればラス目と刃を交えて戦うもやむなしと、ラス落ちなれどリーチを敢行しキッチリと菊池から討ち取った。寒い立場から一気にトップ目に突き抜け、その後も10オールと加点するが最後は超ド級の役満緑一色(配牌リャンシャンテン)が飛び出し悲しいかなトップは板川のものとなった・・・。
 うぅむ、牌のめぐり合わせとは時に残酷なものだ・・・。


◆◆◆ 3回戦 ◆◆◆
坂井1昇・平賀△1・板川1昇・菊池△1
 そろそろトップが欲しい現八翔位菊池。立ち上がりは平賀へ40放銃スタートからという悲しいものだったが、東4局の親番で10オール、板川から30&18と傷を癒す。そんな菊池に平賀の恐ろしい魔手が伸びた【牌譜4】
 菊池は自身がラス親であるということから、同点である状況を打破するために仕掛けたのだろう、すると平賀も負けてられないとばかりに仕掛け返し・・・。あれよあれよという間にチンイツテンパイ。しかも入り目が嬉しくないはずなのにそのロン牌を菊池がすぐ掴むという菊池にとっては最悪な展開となってしまった。
 当然こうなれば平賀は悠々とトップを取り、放銃が続いた板川がラスを引くという終わり方。


◆◆◆ 4回戦 ◆◆◆
坂井1昇・菊池△1・板川0・平賀0
 不幸というものは連鎖するのだろうか。菊池にとってこの半荘もツライものとなった。板川が坂井の96に飛び込むスタート。次局は菊池が4・8ツモと下の心配もいらず上を虎視眈々と狙えるポジションにつけた、と普通なら思う。3回戦では平賀の魔の手が伸びてきたが、今度は板川から魔の手が伸びてきた【牌譜5】
 こうもチートイツしかできそうもない手ばかり来ると気が狂ってしまいそうだがツモが噛み合ってなんとかイーシャンテンに、と思っていたところに板川からリーチがかかり、あっさりと20・40を引き上がられ親かぶりでラス目に叩き落とされてしまった。
 しかし八翔位はこの程度では怯まなかった!!オーラス綺麗にチートイツを作り上げしっかりとラス抜け。さすが。


◆◆◆ 5回戦 ◆◆◆
板川△1・菊池△1・坂井2昇・平賀0
 初日の最終戦ということもあって、板川・菊池はなんとか借金を返して気分良くお家に帰りたいところだろう。願わくば坂井とのトップラスを決めておきたいところだけどそんな贅沢考えていいのかな??
 しかしそんな贅沢を味わえそうな展開がとうとう菊池にも訪れた、東1局東2局と坂井から連続して直撃!!!
 これは坂井も流石に意気消沈かと思ったが、絶対にラス抜けしてみせるぞという意気が伺える粘りの1局を見せてくれた【牌譜6】
 平賀の仕掛けに対応しつつもギリギリまで攻め込むこの執念は流石。
 はてさてこのまま菊池トップ坂井ラスなのかと思いきや、坂井に放銃した平賀に火がついてしまったようで、東4局に大長打炸裂!!【牌譜7】
 これには菊池も愕然としてしまっただろう・・・。あれ?でももし坂井ラスのままなら・・・平賀とのトップラスになるくらいならトップをど〜ぞと坂井からの支援も期待できるかもしれないぞ!!
 予感もバッチリ的中!!坂井はオーラスにキッチリとラス確をしてトップ取りを助けてあげていた、板川の・・・。【牌譜8】
 菊池相当メンタルに来そうな展開だなぁ。


◆◆◆ 6回戦 ◆◆◆
板川0・菊池△1・坂井1昇・平賀0
 こうもトップが取れないと気が滅入ってしまうな菊池。でもひと晩たって色々と変わったんじゃないか?
 なんてね、そんな簡単には負の連鎖は断ち切れません。膠着状態が続いて迎えた南3局、坂井の気合の入ったリーチ一発ツモ!【牌譜9】
 この点差だったら仕掛けてマウント取りに行くのも当然の動きのはずだがどうも噛み合わない菊池。なんとも歯がゆい。
 坂井前日の最終戦ラスを余裕で回収しラスも平賀に引き受けさせ大満足。


◆◆◆ 7回戦 ◆◆◆
板川0・菊池△1・坂井2昇・平賀△1
 さて、そろそろ全員で協力して坂井の昇を削ることを意識しないとヤバそうな気がするけどどうなるのだろうか。とか思ってたら坂井大きな先制点【牌譜10】
 これはいよいよもってヤバイ。3昇になることだけは何があっても避けなくては。そんな願いが天に届いたか、南2局菊池に大物手。【牌譜11】
 しかしこれを平賀が潰してしまう。むむむ・・・これは菊池目線からすると相当ショック。親番も蹴られてしまうし、もし自分が坂井を捲れないとなったら平賀か板川にトップをとってもらう他ないが自分のスコアを考えると積極的な差込みはしたくないし・・・。しかし現実は非情なり。菊池は平賀に点棒をプレゼントし、最後は自らラスを受け入れた。この我慢の姿勢が八翔位に繋がると信じて。


◆◆◆ 8回戦 ◆◆◆
板川0・平賀0・坂井2昇・菊池△2
 坂井にラスを押し付けることは叶わなかったものの、3昇にさせないという目的は果たした現八翔位菊池。その苦労がここで報われる!
 なんてこともなく平賀板川が自由にアガリまくってしまう始末。でもでもオーラスについにきた!!逆転手!!【牌譜12】
 しかし当然板川も立ちふさがってくるわけです。こんな手、どうしろって言うんですかね?と続けて回れと?そんなことしてる巡目でもないし状況でもないし。ラス目だからつっぱって失敗してラスを引き受けるのはまだ良いとしても、なにもこんな決定戦でどうしてもラス引きたくないなって時にこんな手が来て余剰牌が刺さるなんて悲しすぎる。


◆◆◆ 9回戦 ◆◆◆
板川1昇・平賀0・菊池△3・坂井2昇
 きた・・・ついに菊池の怒りのトップ!!【牌譜13】
 これは相当腹くくったリーチなんでしょうかね。というかもういい加減トップ取れないとキツくてキツくて精神的にやられてしまいそう。な・の・に!!板川が追いすがってくるくる【牌譜14】。そりゃそうですよね、なんせ板川はここでトップを獲れば次で決着権持てるんですから。トップ争いを板川と菊池がしている一方で下界でも激しい戦いが繰り広げられていた。そう、同点ラス目という恐ろしい状況なのである【牌譜15】。もう坂井の心境からしたらヒヤッヒヤもんですよね。誰かがツモった瞬間にラスは確定なわけですから。しかもみんなそれを望んでいるわけですから。しかしまさかまさかの流局。菊池は念願のトップをモノにすることができたが・・・。ラスなしじゃつまらないよね・・・。


◆◆◆ 10回戦 ◆◆◆
平賀0・菊池△2・坂井2昇・板川1昇
 さあ、まずは坂井のトップだけは絶対に阻止しなくてはね。と、ここで平賀も延長に持ち込んだ時に決着権もちたいからと原点リーチからの10オール。次局は坂井から42直撃と幸先の良い滑りだし。しかしこのまま終わると菊池以外が全員1昇になってしまうから菊池としてはすご〜く嫌な展開なんじゃないでしょうか。そんなことになったらほぼ決着しちゃうじゃないか!
 とはいえラス引き続けていくわけにもいかないから最後の親番で頑張るぞと意気込んだ菊池だが願い虚しく平賀にあっさりと蹴られてしまう【牌譜16】
 じゃあなんとか板川ラスだな!そうだそれしかない!【牌譜17】
 あぁ・・・こうなってしまっては悪夢の3人決着権になってしまうのか・・・。しかしそれだけはキッチリ菊池は阻止します。お化け配牌オーラスにもらったんですけどね・・・。使いようもない余剰牌が親の板川のリーチのアガリ牌だったという悲しい悲しい局だったんです【牌譜18】


◆◆◆ 11回戦 ◆◆◆
板川2昇・坂井2昇・平賀0・菊池△3
 さて、途中までは通常通りの101で進行していくと考えても良いでしょう。でもどちらかが八翔位を取りそうだなという気配が出た瞬間、他3名による阻止が始まるのはもはや言うまでもありません。
 菊池が東1局にドラを坂井から叩いて20・40。坂井や板川とのトップラスを決めるためにも嬉しい先制点。
 だが、ここで坂井の勝負勘が冴え渡った【牌譜19】。このフリテンリーチをキッチリ仕上げきる。しかもしかも次局は板川から64直撃という八翔位コースまっしぐら!
 さあ、となるとですよ。もう黄色信号なんてとっくになくて、赤信号さえも点滅しちゃうくらい王手かかってきてるわけです。南場からはもう坂井潰しだけに専念したっておかしくないくらい。【牌譜20】ここら辺、菊池はもっと手が入ってますよアピールするために鳴いていけば良かったって言ってましたけど、実際どうなんでしょうか。板川目線からすればこれでやることは明確になりましたけどね、トップは無理そうだから平賀か菊池を押し上げる役割をするかって展開ですかね。しかし無情にも南4局まで流局してしまうんですねこれが。菊池は終わったあとに言ってました。人生で一番悪い配牌だったと。こんな手協力があったってアガれないですから!!【牌譜21】【牌譜22】でも面白いのが、平賀に坂井から直撃するとトップから引きずり下ろせる手が二度も入っているという所。恐ろしいですね。これが菊池の手牌とすり替わっていたら、もうちょっと八翔位戦長引いていたのでしょう。

 ともあれ八翔位戦を制したのは坂井。自分以外の3人が攻撃的な中、耐えるべきところは耐え機を見つけては鋭い一撃を放つ見事なマージャンを見せてくれたのではないでしょうか。
 坂井八翔位、おめでとうございます。


第34期八翔位インタビュー:


只今、準備中です。

第34期八翔位決定戦 成績表


11月4・5・25日(東京対局室)

選手名
10
11
スコア
菊池 一隆 八翔位 △3
平賀 聡彦 B級 ±0
坂井 準司 B級 3昇
板川 和俊 大阪 1昇

※平賀聡彦は最高位戦日本プロ麻雀協会の所属選手



第34期八翔位戦 システム

【出場資格】
・麻将連合推薦、オープン参加選手及び連盟所属選手
・ オープン参加選手は、昨年度のマージャン101における打荘数が24ある者から各支部内で選抜。
【1次予選】
・各卓4戦(1日)を戦う。
・規定回終了時のスコア上位2名を勝ち上がりとする。
・4回戦終了時に上位2名が確定しない場合は、これが確定するまで延長戦を実施する。
【2次予選】
・2次予選シードの連盟所属選手及び1次予選通過者により行う。
・各卓6戦(2日)を戦う。
・規定回終了時のスコア上位2名を勝ち上がりとする。
・6回戦終了時に上位2名が確定しない場合は、これが確定するまで延長戦を実施する。
【準決勝】
・2次予選通過者により行う。
・各卓6戦(2日)を戦う。
・6回戦終了時に単独で2昇以上の首位者が決定戦の出場資格を得る。
・6回戦終了時に単独で2昇以上の首位者が発生しなかった場合は延長戦を実施し、7回戦以降はその回の開始時の首位者のスコア+1昇に単独で到達する者が発生するまで延長戦を実施する。
・「初めて、4者同スコアで決着権がある状態」となった場合は、その一戦の終了時の単独首位では決着としない。
  ただし「再度、4者同スコアの状態」となった場合は、同戦終了時の単独首位で決着とする。
【決定戦】
・八翔位及び準決勝通過者により行う。
・10戦(1日4戦)を戦う。
・10回戦終了時に単独で3昇以上の首位者を優勝とする。
・10回戦終了時に単独で3昇以上の首位者が発生しなかった場合は延長戦を実施し、11回戦以降はその回の開始時の首位者のスコア+1昇に単独で到達する者が発生するまで延長戦を実施する。
・「初めて、4者同スコアで決着権がある状態」となった場合は、その一戦の終了時の単独首位では決着としない。
  ただし「再度、4者同スコアの状態」となった場合は、同戦終了時の単独首位で決着とする。